風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場 こけら落六月大歌舞伎 第一部(6月10日)

2013-06-10 21:10:05 | 歌舞伎




杮茸落六月の第一部に行ってまいりました。
今回はやはり戻りで購入した3階A席1列目。
この席、いいですねえ!
下手寄りの席だったので花道は少々見えにくかったですが(でも七三の上半身はちゃんと見えました)、前の人の頭で視界が遮られるストレスはゼロですし、ぎりぎりオペラグラスなしで役者の表情がわかりますし。
もちろん役者の視線の動きまではわからないので、オペラグラスは持参必須ですが。
この3ヶ月の結論としては、3階1~2列目ならA席がお買い得、3列目以降ならB席で十分、1階なら5~7列目というのが私的歌舞伎座のベストシートでございます(舞台が見切れる東西の袖席は問題外)。


【鞘當(さやあて)

ほとんど前知識なしで観に行ったので、背景の美しさにまず感動。
舞台セットは『籠釣瓶~』と同じ
、夜の吉原の仲之町。連なる茶屋の店先に灯る提灯、闇に浮かぶ桜と山吹。
なんて美しい・・・・・(初夏の今には季節外れだが)
広重の絵そのままの景色です。
失われてしまった江戸の美ですねぇ。

また二人の衣装の柄が粋!
山三(勘九郎)は、「雨に濡れ燕」。
対する伴左(橋之助)は、「雲に稲妻」。
くぅ~~~、たまらない!!
ザ・伊達!

と、ここまではテンションMAXだったのですが――。
舞台に二人が揃い、編笠をとった辺りから、少しずつ降下、、、↓↓↓

なんなのだろう、この不思議なほどの地味さは・・・・・。
とくに勘九、、、男の色気が皆無・・・・・。4月の『お祭り』では結構イケてたのになぁ。
橋之助さんはなかなか素敵でしたが、やっぱり少々地味。。
魁春さんも決して派手なタイプではないですし。。

喧嘩を仲裁された二人のお決まりポーズは、今年に入って「海老蔵&亀鶴@夏祭」と「菊五郎&仁左衛門@三人吉三」に続き3回目でしたが、突出した地味さでした・・・。
上の二つの演目に比べて、衣装も背景も今回が一番派手なのに・・・。

演じる役者さんによっては最高にカッコいい演目だと思うので、他の役者さんのものも観てみたいなと思いました。
あるいはもう少し勘九に色気がついた頃に。。。


【喜撰】

こちらも季節外れな桜でございますが。
三津五郎さん!裏切らない男!
色気もばっちり(背丈は小柄ですけど)

女好きなスケベな坊さん役が、恐ろしいほどぴったりです。
そして踊りのカッコよさときたら!
歌の文句もイチイチ色っぽくて最高です!!

また時蔵さんのお梶が、艶っぽいのなんの。
でもねっとりとした艶っぽさではなく、おきゃんな雰囲気が素敵です。
紫の小袖もとてもお似合い(私は紫の衣装が好き)。
このカップル、もっのすごくいいですね!!!!

最後に花道から賑々と迎えにくる所化たちも、楽しかったです(誰が誰やら区別がつきませんでしたが^^;)

一幕目で下がっていたテンションを一気に上げていただきました。
ほんとに、楽しかったぁ。
何度でも観たい!
と思い帰宅後に一幕見の値段をチェックしたら。
一幕見は『鞘当』とセットだった・・・・・・・。


【俊寛】

海の背景が素敵です!

最初に吉右衛門さんの俊寛が登場。島生活で衰弱しきった演技の上手さに軽く感動。よぼよぼだけど、海が似合う男。

梅玉さんの成経の品の良さにうっとり。とても島で3年も暮らしたようには見えません。そのまま宮中を歩いていても違和感なし。義経とも八汐とも違って、ちゃんと若い普通の青年に見えるところがすごい。

歌六さんの康頼も、他のお二人とのバランスがよいです。

意外にも(といっては失礼ですが)、芝雀さんの千鳥がよかった。島の女性の素朴な愛らしさ&逞しさがよく出ていて。梅玉さんとのカップルも、微笑ましくてとてもよい^^ 
ただ、千鳥は海女なのに、どうしてあんなに小綺麗で華やかな衣装なのだろうか・・・。「こんな女性がいるのなら、島の生活も悪くないではないか」と思えてしまい、話の悲惨さが半減してしまうのですが・・・。 ※追記:この衣装についてはこちら参照

この四人での浜辺での祝言場面がなんとも和やかで、楽しそうで、俊寛も嬉しそうで・・・・・・・・。もう、このシーンで泣きそうに。ラストを知っているだけに・・・・・・・・。

そこに沖から
スイスイやってくる赦免船。小っちゃくて可愛い。
まず下りてくるのは、左團次さんの瀬尾。左團次さん、小憎らしい役がとってもお似合いです。俊寛たちに対するイジワルも、堂に入ってます。

で、赦免状に名前がなくて俊寛がショックに打ちひしがれているところに、仁左衛門さんの丹左衛門が登場。第一声からよく通る声で爽やか!左團次さんとのペアルックが可愛いぞ。
そして俊寛の名前が書かれた赦免状を見せます。美味しい役ですねぇ。
仁左さまは今回も相変わらず芸が細かく、船上で色々と表情を変えるので(瀬尾にトドメをさした俊寛に、無念そうに目を閉じるところとか)、舞台中央の俊寛も見なければならないし、上手の仁左さんも気になるしで、目が4つ欲しいと思いました。

熊谷&盛綱に続き、3回目の
吉右衛門さん&仁左衛門さんペア。
お二人とも、先日の第二部より、今日の方がお元気そうに見えました。
やっぱり好きですね~~~、この組合せ。
舞台の上でのバランスが、とてもよいです。

俊寛の代わりに船に乗ることになった千鳥を成経と康頼が船上で迎えているときに、丹左衛門だけは浜辺にいる俊寛にすぐに視線を戻したところ、俊寛の心情に対する思いやりが感じられて4月の『熊谷』のラストを思い出して泣けた・・・・・・。
そして船が出る前の仁左衛門さんの扇子を持った見得がそれはもうすっきりと美しくて気持ちよく見惚れていたら、真後ろからドデカイ声で「松嶋屋!」の大向こうが上がって、心臓が止まりそうになりました^^;

そして、クライマックス。
舞台の仕掛けの効果が素晴らしい!
文章で読んではいたけど、実際に観ると感動する!!!
とくに三階席からは、一面の海と俊寛の孤独がより一層強調されて・・・・・・。
花道から迫ってくる海水は、俊寛の心に押し寄せた壮絶な孤独感でしょう。
そして何かに憑かれたように、よろけながら上った岩の上。
視界を遮る松の枝を折り、よろけて、そしてじっと沖を見つめる俊寛。
無言の時間。その目の色の変化――。
最後に彼の目が見ていたものは、船の姿ではなく、明らかに別の何かでした。
想像を絶する孤独の、その向こう側にあるもの。
もはやこの世界のものではない、景色だったのかもしれません。
重く暗いだけではない、不思議な余韻の残る、見事な幕切れでした。


以上、やはり4~5月ほどの興奮はなかったとはいえ、非常に見応えのある六月第一部でございました。
楽しかった三ヶ月間のお祭りも、残すところ第三部のみ。
とても寂しい・・・・・・・・・・(>_<)


《インタビュー》
「六歌仙容彩 喜撰」坂東三津五郎

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