
ドイツでは誰もが知っている英雄シュタウフェンベルク大佐トムクルーズのヒトラー暗殺計画「ワルキューレ作戦」の映画化。
うん、そうですね。これ、ちょっと映画としてはどうかな。ヒトラーが暗殺されたんじゃないってことは誰もが知っていることだしな。ということはこの作戦が失敗に終わるって分かってて見ないといけないわけだ。たとえそうでも観客を惹きつける作品を作ることはできるだろう。でも、この作品はそこまで惹きつけられるものではなかったな。悪くはないけど、もう一声ってとこですかね。
なんで、トムクルーズが?ハリウッドが?英語で?みたいなことはこの際置いときます。世界市場を考えれば、そういうことも普通に行われるのだということでしょうし。トムクルーズがシュタウフェンベルク大佐を演じることに関してはドイツでは意見が分かれ、遺族は反対していたということだけど、ならばなぜドイツ人がドイツ語で彼を題材に映画を作らない?と思ったらドイツでテレビ映画が2004年に作られているのね。ドイツがこれを大々的に世界市場の映画として作らないのは、ヒトラーを否定はしていてもドイツ軍の将校をドイツ自身が肯定的に描くことに、批難が出ることを恐れているからなのかな?あ、これは単なるワタクシの憶測です。
映画としては、生真面目に作られている感じはするし、好感は持てるのだけど、もう少し将校同士の人間関係とか、仲間を見つけるまでのスリリングさとかを描いてほしかったなと思います。あんなふうに反ヒトラーの仲間がたくさんいたのは事実なんだろうけど、誰が反ヒトラーで誰が親ヒトラーなのか、あの体制の中で反ヒトラーの仲間を見つけるのはそう簡単ではなかったろうし、下手すれば話を持ちかけた相手に密告とかされちゃってそのまま死刑とかになりかねないのに、結構簡単に仲間がゾロゾロと集まってくるところがなんだか簡単に見え過ぎたような気がする。この作戦が失敗することは分かっているんだから、そういうところに重点を置いても良かったような。
会議中に爆弾をしかけ、爆発はさせたものの爆弾も1個しか仕掛けられなかったし、爆破は密室ではなかったし、ヒトラーが死んだことを確認できたわけでもないのに、シュタウフェンベルク大佐がムキになって作戦を推し進めようとしたところが、それまでの焦燥感などが描ききれていなかったがために、「えっ?なんでそんな無理すんのさ」って感じに思えて、意地だけで進めるには犠牲になる命が多すぎやしないか?と思ってしまった。実際にはどうだったかは知らないけど、映画を見るとそう感じてしまう。もちろん、これは結果論でそのときはイチかバチかやってみるしかなかったのかもしれない。だからこそ、そのあたりをうまく描き出して欲しかった。
ヒトラーが死んだかどうか報告する役目だった人がどうしてあんな中途半端な報告をしてしまったのかっていうのがどうにもよく分からなかったし、通信部と予備隊を味方につけられなかったのは失敗だったけど、時間が足りなかったことを考えると仕方なかったのか。ここでも反ヒトラー派と親ヒトラー派の攻防みたいなものをもう少し描いて欲しかった。
この作品を2時間ちょうどに収めたことはかなり評価できますね。最近は長い映画が多いからね。それにトムクルーズの大作ですから、脇役もいい人が集まってるし。ビルナイの演技も良かったし、ケネスブラナーがこの作戦が失敗したことを知って自決するシーンはこの映画で唯一うるっときたシーンでした。
ドイツでは超有名なシュタウフェンベルク大佐ですが、国外では知らない人が多いだろうし、それを誰も見ないようなドイツ映画(失礼!ワタクシなら見ますが一般的にという意味です)で作るよりハリウッドがビッグバジェットで作ったほうが世界的にナチスに対抗したドイツ人兵士がたくさんいたということを知れるいい機会になると思うので、それに関してはいい評価をしてもいいんじゃないでしょうか。
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