シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

8月の家族たち

2014-04-23 | シネマ は行

この顔ぶれと原作がピュリッツァー賞、舞台化されてトニー賞を受賞した作品ということで見に来ました。

オクラホマの田舎町。母バイオレットメリルストリープはガンに侵され、薬物依存に陥っていた。父ベバリーサムシェパードは大学の教授だがアルコール依存症。ある日、その父親が突如住み込みの家政婦ジョナミスティアッパムを雇った後失踪し、母親は娘たちに連絡をする。結局父親は小さなボートで池に出て自殺したことが分かる。

長女のバーバラジュリアロバーツは夫ビルユアンマクレガーと娘14歳のジーンアビゲイルブレスリンを伴ってコロラドからやって来た。母たちには内緒にしているが夫の浮気が原因で現在実は別居中。娘のジーンは反抗期で手を焼いていた。長女のバーバラはこの一家の精神的支柱のような存在であり、母親は遠くコロラドに引っ越して行ったことを恨んでいる。娘役のアビゲイルブレスリンちゃんが大きくなっていてびっくりしたなぁ。初めて全身が映るシーンでは画面が縦長に変に伸びちゃったのかと思ったら彼女の身長が伸びているんだった。

次女のアイビージュリアンヌニコルソンは男っ気がなく母親を心配させているが実は現在彼氏がいるが、相手のことについては何も語ろうとしない。次女のアイビーは一番母親たちの近くにいて実質的な面倒を見ている。

三女のクレアジュリエットルイスは昔から男にだらしなく、今回もフロリダから婚約者と称するスティーヴダーモットマルロニーを連れてきていた。ジュリエットルイスはこういうメインストリームの作品ではひさびさに見たなぁ。好きだけど歳の割に老けていてこの面子で三女と言われると違和感があった。次女を演じたジュリアンヌニコルソンのほうがずっと若く見える。

この家族プラス、母バイオレットの妹マティフェイマーゴマーティンデイルが夫チャールズクリスクーパーを連れてやってくる。この2人の息子リトルチャールズベネディクトカンバーバッチもあとから合流する予定だ。シャープな印象のベネディクトカンバーバッチが心は優しいがドンくさいタイプの男性を演じていて意外だった。母親のマティフェイは何かと彼に辛く当たっていて、こちらも問題のある家族っぽい。

正直なところ、よくある機能不全家族の劇で、こういう系統のものは物語の筋そのものよりも演技合戦に重点を置いて見るほうが良いように思う。今回の場合はメリルストリープとジュリアロバーツの真っ向勝負といったところか。他の役者もちょいちょい活躍はするけど、この2人のフェイスオフに比べたら可愛いもんだ。

葬儀を終えたテーブルで食事につく一家。母親はガン治療の薬物依存のためハイになっているようで、娘たち相手になんだかんだとケチをつけ始める。そして、多くの毒親がそうであるように、自分たちは苦労した。お前たちはその恩を忘れるな。と捲し立てる。しかし、娘たちも負けてはいない。特に長女のバーバラは強い。バーバラが母親に「もういまは仕切ってんのは私なんだよっ!」と言い放つところは、なんだかちょっと笑ってしまったけど、なんとも切ないというか、悲しいというか、この一家に根付いている支配力の奪い合いみたいなものを突き付けられた気がした。

ジュリアロバーツは全編を通して素晴らしかった。メリルストリープとここまで正面切って張り合う役というのは相当勇気がいると思うけど、彼女ももうかなり貫録が出てきた。アカデミー賞助演女優賞ノミネートも納得の演技だった。彼女が演じたバーバラという女性はこの両親の元に長女として生まれて強くならざるを得なかったのだろう。母親はガンのせいで薬物依存になったわけではなく前歴があるようだったし、彼女が母親代わり的な部分もあったのだろう。

長女は夫の浮気に悩み、夫は夫で浮気は悪かったと思っているけど、どうもこのバーバラの性格には我慢ならないというふうなのがすんなり理解はできた。それもこの家族に生まれたがゆえの性格だったのだろう。

14歳の娘ジーンが三女のクレアの婚約者スティーヴにマリファナ吸わされてたらしこまれてる現場をジョナが押さえたとき、ジーンは恥ずかしさでいっぱいで自分は何ともない、おっさん相手に遊んでやってただけだくらいの態度でいたのは14歳という年齢を考えれば仕方ないと思うけど、それを注意した父親に「パパの浮気相手と変わらない年齢よ」と大人ぶって生意気な口をきいた娘を引っぱたいたバーバラに「なんてことするんだ!」とそもそも自分が原因で娘にそんなことを言わせておいて、ジーンを連れて家に帰ってしまう父親像というのが実は一番腹が立ったシーンだった。親が子供を叩くのは悪とされているアメリカ的なシーンなのか?甘ったれた14歳の生意気な発言にビンタをくらわせた母親が責められるという構図が不可解だった。

クレアはそれでも掴んだ男を離したくなくて、14歳の少女にマリファナを吸わせておっぱい見せてなんて言っていたにも関わらず、スティーヴだけが悪かったはずはないわとか言って2人でフロリダに帰っちゃう。

アイビーは実はいとこであるリトルチャールズと付き合っていて、2人でニューヨークに行こうとしていた。そのリトルチャールズは実はマティフェイとベバリーの浮気の子でアイビーとリトルチャールズは異母姉弟だった。マティフェイとベバリーの浮気の末、リトルチャールズが生まれたことはバイオレットは知っていて、話を出したことはなかったけど、バイオレットが知っていたこともベバリーは知っていた。とか、なんとか、もうこの家族本当にどうなっちゃってんの?アイビーはそれを母親に暴露されてもリトルチャールズとやっていくつもりみたいだった。まぁ、彼女病気で子供産めないらしいから本人たちが良ければ別にいいとは思うけど、、、

結局のところ、バイオレットの元からは全員が去ってしまって、残ったのは家政婦のジョナだけだった。お父さんはもしかしてこうなることを見越してジョナを雇っていたのかな。しかし、ジョナもそうとう賃金もらってないとこんな人の面倒見るの大変だな。

こういう機能不全家族は残念ながら連鎖することが多い。この三姉妹を見ていても断ち切るのはなかなか難しそうだ。物語としては最後はやっぱり家族愛(ハート)みたいな甘いラストになったらちゃぶ台ひっくり返すぞと思っていたのだけど、そうはならなかったので逆に良かった。

家族の話ということでハートウォーミングなものを想像していかないように注意してください。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
機能不全家族の罵倒合戦 (zebra)
2015-07-26 09:25:45
GW休みに みました。

マジ うぜえ 母親だった。さすがメリ子(メリル)
憎まれ役上手すぎ

>家族の話ということでハートウォーミングなものを想像していかないように注意してください。
 ボクちゃん 残念ながら そう思っちゃったよ
なにせ ボク この登場キャラのリトリチャールズみたいな甘ちゃんキャラなんで・・・

>残ったのは家政婦のジョナだけだった。お父さんはもしかしてこうなることを見越してジョナを雇っていたのかな。
 まず そうでしょうね。 長年のヴァイオレットの性格の悪さに お父さんも相当 苦労させられたのは作品のやり取り見てて わかる。

しかも家政婦のジョナは ヴァイオレットが嫌っているネイティヴアメリカンの血筋というのも皮肉を利かせてます。

血のつながった家族はみんな去り 彼女の最後の砦が家政婦のジョナだけなんてね~

”遠くの親戚より、近くの他人” を 皮肉たっぷりな形で表してた
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zebraさま (coky)
2015-08-10 15:51:41
お返事大変遅くなってしまってすみません。

本当にメリルストリープの演技ってすごいですね。

家政婦のジョナはどれくらいもつんですかねぇ。
ワタクシだったらあんな人のそばで働くなんてイヤだなぁ。

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