シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

サウスポー

2016-06-16 | シネマ さ行

ムビチケを買っていたのに、公開から一週間で上映回数がかなり減っていたので焦りました。そう言えば特に宣伝もしてないし、マイナー映画扱いなのか~。ワタクシは楽しみにしていたのにな。

楽しみにしていたのはジェイクギレンホールの出る作品にはいつも注目していることとレイチェルマクアダムズが好きだからです。ジェイクギレンホールのファンというわけではないけど、彼の出る作品はいつも興味深いものがあるのでチェックするようにしています。

施設で育ったやんちゃなボクサー・ビリーホープ(ギレンホール)は殴られれば殴られるほど燃え、相手にたくさん殴らせたあとに相手を倒すというスタイルのボクシングでチャンピオンの地位を守っていた。ビリーの妻モーリーン(マクアダムズ)は彼のスタイルを心配し、防衛戦に勝った今日も素直には喜べない。「こんなスタイルを続ければあと2年で廃人よ。そうなったとき、いまあなたに群がっているゴキブリたちはさっさと逃げて私とレイラ(娘)ウーナローレンスしかいなくなるわ」とキツイけど真実を突いたアドバイスをする。

挑戦者に慈善パーティで「お前のベルトとオンナを奪ってやる」と挑発されカッとなったビリーは止めるモーリーンを振り切ってケンカになり、何者かが放った銃がモーリーンに当たってモーリーンは帰らぬ人となってしまう。

ビリーにとってすべてと言っても過言ではなかったモーリーンを亡くし、自暴自棄になってしまった彼はお酒を飲み交通事故を起こし、裁判で娘のレイラを保護施設に取られてしまう。

そこからなんとか立ち直ろうとビリーは地元の小さなボクシングジムで昔自分を倒したことのあるボクサーのトレーナーであるティックウィルズフォレストウィティカーにトレーニングを頼む。

レイチェルマクアダムズが好きで見に行ったのにあっと言う間に死んでしまってめちゃくちゃ残念だった。こないだ見た「スポットライト」では可愛い笑顔を封印してシリアスな役者に徹していた彼女が、今回は施設で育ったアニマル柄が似合いそうなビリーの不良の取り巻きどもも簡単にあしらえるいい意味でのビッチをこれまたうまく演じていた。この役もこれまでの彼女の可愛らしいイメージとは随分違っていて、案外こういう役をリアルに演じるのは難しいと思うんだけど、意外にもすごくハマっていた。これまで彼女が演じた中で一番好きかも。見た目は可愛いのに、ビリーの敵の挑発を「あなた誰だったっけ?」と軽くいなすほどワイルドで家庭のこともビリーの試合の契約も全部仕切っていたしっかり者のモーリーン。彼女の役に説得力がなければこの後のビリーの荒れように説得力が出なくなる。モーリーンを亡くしたことを観客も一緒に悲しめなければこの物語全体が成り立たない。

しっかしこれはボクサー映画の王道だと思うんだけど、相手に挑発されてリング以外で簡単に殴り過ぎ。バカ!ビリー!お前さえあの時我慢していればモーリーンは死ななくて済んだんだよ。「ベルトとオンナを奪う」なんて使い古された言葉に挑発されるなんてほんとバカ。

とは言え、立ち直ろうとするビリーを応援したくなるのはひとえに娘レイラ10歳の傷ついた姿を見ているから。最愛の母親を突然に亡くし、支えになってくれるはずの父親は1人でバカやってる。裁判ではパパと暮らしたいと泣き叫んだものの、こんな状況に自分を置いた父親を恨んでもいる。そんな10歳の少女のイライラが素直に描かれていて好感が持てました。こういう作品の子どもってどこか良い子過ぎる感がある場合があるんですが、この作品のレイラはそんなことなくて自然体で良かったです。

ティックにトレーニングを頼んでからこれまでのスタイルを変えガードを固く相手のミスを誘いジャブで点数を稼ぐボクシングを覚えるビリー。これがモーリーンがずっと言っていたボクシングだよ。気付くの遅いよ。「モーリーンと気が合いそうだ」とティックに言っていたビリーはそのことに気が付いたのでしょう。このおバカさんがそれに気付くための代償がモーリーンの命というのはちょっと大き過ぎる気はしますが。

レイラを取り戻すべくボクシングに真面目に取り組みチャンピオンの座奪回のリングに上がるビリー。こういうスポ根ものの場合、どうせ勝つんやろ?と思って見ていることが大半ですが、この作品の場合はたとえビリーが負けたとしても彼のそれまでの努力だけで物語として成り立つと思っていたので、本当に勝つかどうか分からずに見ていました。勝っても負けても良い作品になることができたと思います。

ベタだけど父と娘の関係に泣けたなー。ジェイクギレンホールの肉体改造っぷりもすごかった。やはり彼の作品にはこれからも注目していこうと思いました。