シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

カルテルランド

2016-05-18 | シネマ か行

予告を見てキャサリンビゲローが製作総指揮を務めたドキュメンタリーということで興味を持ちました。

メキシコのミチョアカン州と、アメリカのアリゾナ州メキシコ国境周辺で同時期に結成された2つの自警団を追うドキュメンタリー。

メキシコのミチョアカン州では麻薬カルテルテンプル騎士団が権勢を振るい住民を相手に残虐な行為を繰り返していた。彼らは住民に“税金”を払うよう脅し、払わなければ見せしめに小さな子供を含めて家族全員殺された。しかも、考えられる限りの残忍な方法で。

住民がそんな状態にあっても、カルテルと裏でつながっている警察は何もしようとはしない。そこで医師ホセマヌエルミレレスは仲間たちと銃を取り、自警団を結成してカルテルと戦うことにした。

アメリカ・アリゾナ州メキシコ国境周辺ではメキシコからの不法移民の流入を防ごうとティムフォーリーが仲間たちと自警団を結成し、昼夜パトロールを行っている。

カルテル関連ではつい先日「ボーダーライン」を見たばかり。「ボーダーライン」の中にもカルテルに虐殺された惨い死体が登場したが、こちらの作品ではそれらの映像がすべて本物。首を切られた死体、高架から首つりされた死体、火をつけられた死体などなどなど。男も女も子どもも赤ちゃんも関係ない。もうこれはまさに戦争状態だと思うんだけど、それに政府も警察もグルだって言うんだから、そりゃ自分たちで立ち上がるしかないよね、と思えてくる。

でもこれが、、、武器を持って自分たちが正義だーってやってるうちに分からなくなってきてしまうのが人間のサガなのかな。罪があるかどうか分からない人を捕らえて尋問しているときの彼らは楽しそうに見えたし、家宅捜索に入ったカルテル幹部の家で逆に自分たちが略奪したり。ミレレスがリーダー会議でそれを問題にしても、他のリーダーたちはニヤニヤとするばかり。“パパフマーフ”と呼ばれるミレレスの腹心だった人は良い人そうに見えて無茶苦茶腹黒だった。

結局1年もしないうちに政府に買収されたような形で、自警団を合法化してもらって警察の傘下にはいってしまった。それってつまりカルテルとグルの側ってこと。カルテルとグルどころか、自警団の中で麻薬を製造する奴とかまで現れて、いまや制服を来たカルテル状態という。どうせ俺たちがどんなに頑張っても甘い汁を吸う奴らがいて状況は変わらない。それなら甘い汁を吸う側になったほうがいいじゃんかってことか。

アメリカのティムフォーリーたちに関しては、彼らが直接的に暴力を振るうシーンとかは撮影されていなかった。ただ不法侵入してきたメキシコ移民を見つけて当局に引き渡したかメキシコに返したかしただけっぽかったな。「俺たちがここで不法移民を見つけて警察を呼んだとしても、警察がやってくるまでどれほどの時間がかかると思う?」という彼の主張は分かるし、メキシコからどんどん麻薬が入ってきているのに無策な政府に嫌気がさすのも仕方ないだろう。彼は絶対トランプ支持派なんだろうなぁと思いながら見ていました。もし実際にトランプが大統領になったとしたら、メキシコからの麻薬の流入を防げるのでしょうか。

ミレレスは信じていた自警団の仲間に裏切られ、命まで狙われる身になってしまうのですが、最後に非常に驚いたことになんと現在は武器所持で逮捕されて刑務所にいるのだとか。政府も警察も自警団も彼に内情を語られるのを恐れての逮捕ということらしい。なんてことだ。。。衝撃のシーンの多い作品だったけど、この最後の彼の姿が一番衝撃だった。