シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ケープタウン

2014-09-16 | シネマ か行

王子様的な印象で人気のあるオーランドブルームの汚れ役ということで興味がありました。

あのオーリーが飲んだくれで女にだらしない刑事役ということで、どーよ?と思っていたのですが、まずそのことに関して言うと、かなりハマっていて違和感ありませんでした。無精ひげでだらしない恰好で目も常に充血しているような感じで、切れたら何しでかすかという雰囲気もありつつ、でも悪い奴じゃないっていう雰囲気をうまく出せていたと思います。酔っ払いの疲れたメイクのせいか高校生の父親というのも変には感じませんでした。くたびれた刑事とはいえ、いままでで一番筋肉隆々だったんじゃないでしょうか。正直ワタクシはいままでオーリーがあんまり好きじゃなかったのですが、この作品の彼がいままで一番好きです。

ケープタウンで若い娘が撲殺されるという事件が起きオーリー扮するブラアンエプキンとアリソケーラ警部フォレストウィティカーが担当する。その娘の体内には麻薬が残っており、ここのところスラムで頻発している子供の失踪事件の現場で残されていたものと同じ麻薬だった。

このアリソケーラ警部という人の過去が映画の冒頭で流れていて、幼少時代父親が目の前で焼き殺されたというトラウマを持っているらしい。そして、その現場から逃げたアリ少年を警察が追い、警察犬に急所を噛まれた上に警官たちに暴行を受け、どうも性的に不能になってしまったようだ。

事件を追ううちに、スラムで失踪している子どもたちは薬物の人体実験に使用されていることが分かり、これは単なる麻薬売買の事件ではなく、もっと大きな組織ぐるみの犯罪であることが分かってくる。

舞台が南アフリカということで、やはりアパルトヘイトが絡むお話なのだけど、黒人で成功しているアリソケーラ警部は、マンデラ氏が提唱したように、白人たちを許し、お互いに融合する社会を作りたいという考えの持ち主であることが同僚たちとの会話から分かる。しかし、その彼を持ってしてもこのスラムの子どもたちの命を実験材料としか考えていない悪党どものことは許せなかったようだ。

結局切れたら怖そうだなと思われるブライアンが最終的には法を守り、この事件の黒幕に手錠をかけたのに、アリソケーラ警部はもう一人の黒幕を追い詰め殺してしまう。このクライマックスがなかなかに皮肉に思えた。

少女殺害事件が過去のアパルトヘイトの亡霊のような黒い組織につながっていくという筋書はうまくできていて楽しめました。おぉ、そんなふうにつながっていくのかと。

ただ、わざわざ冒頭で描かれているアリソケーラ警部の過去と、彼の人となりやこの事件との関連がいまいちちぐはぐな気がして、ソケーラ警部の過去とか性的不能という描写があまり必要のないものに見えたのが残念だったな。彼のじとーーーーっとした雰囲気はとてもよく出ていたしこの作品にマッチしていたとは思うのだけど。

世界の中でもワーストに入る犯罪多発地域のお話なだけに、アメリカのスラムなどを描いた作品よりもまだ一層暴力も過激で不気味な怖さがありました。

南アフリカは様々な言語が公用語として存在しているし、共通語としての英語もアメリカやイギリスの英語とは少し違っていたりして、この映画を英語圏の人たちも字幕なしで見られたのかなぁと余計な心配をしてしまいました。