シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ソウルガールズ

2014-01-30 | シネマ さ行

子供のころから歌が大好きで上手だったアボリジニの姉妹。長女ゲイルデボライルマン、次女シンシアミランダタプセル、三女ジュリージェシカマーボイ、といとこのケイシャリセベンス

当時のオーストラリアのアボリジニ隔離政策で肌の白いいとこのケイは彼女たちの村から政府にさらわれ白人家庭で育てられた。残った3姉妹は3人で歌を続けるがコンテストなどに出てもアボリジニということで実力は無視され続けていた。

とあるコンテストで彼女たちの才能を見出したのは落ちぶれた歌手のデイヴクリスオダウドだった。彼に頼んでベトナム慰問のオーディションに連れて行ってもらおうとする3姉妹。いまは白人社会にいるケイも呼び戻してオーディションを受けることになった。

見事オーディションを突破した「ザ・サファイアズ」はベトナムの前線へ兵隊たちの慰問コンサートに出かける。

意地っ張りでリーダー風を吹かせまくる長女・ゲイル、男のことばかり考えている次女・シンシア、まだ若すぎるし子供もいるという理由で母親から行くのを反対される三女ジュリー、白人社会で育てられて複雑な背景を持つケイ、良い奴だけど酒浸りのデイヴの5人のそれぞれのキャラクターが絡み合ってお話は進んでいく。

ザ・サファイアズの中心はなんと言ってもリードヴォーカルのジュリーだけど、私生活では長女のゲイルが権力を握っている。もともとはゲイルがリードヴォーカルだったのをデイヴがジュリーのほうが上手だとバックヴォーカルに下げてからずっとへそを曲げていたところはあったものの、ゲイルの“ママベア”体質はその嫉妬からくるものではなく、子供の時からずっと下の3人の面倒を見てきたことにあったのだろう。白人家庭で育てられたケイを“白人気取り”なんて責めるのもその裏にはケイを守りきれなかった自分へのくやしさがあったからじゃないかな。そのゲイルがデイヴと惹かれあって徐々に優しい“ママベア”になっていく姿が素敵でした。

ダメだけど、憎めないデイヴを演じたクリスオダウドが良いですね。どっかで見たことあると思ったら「ブライズメイズ」の警官か。あれも良い奴な役だった。

白人社会で育てられたケイが最後にアボリジニの土地に戻り、おばあちゃんにこの地に戻る儀式をしてもらっているときには自然に涙があふれました。ケイは白人社会に馴染んでいたようだったけど、決してアボリジニとしての誇りを捨てたわけではなかったのですもんね。それは多分本当はゲイルには十分伝わっていたと思う。

アボリジニの誇りと言えば、ゲイルがコンクールでブーイングする白人たちに向かって「あなたたちは私たちアボリジニの土地の上に立っています」と言うシーンが印象的でした。どんなに迫害されても誇りを持って生きている姿があの短いセリフに凝縮されていたと思います。

人種差別を背景にしているものの、やはりそこは“ソウルミュージック”の物語。全編が踊りだしたくなるようなソウルミュージックで彩られています。「オーストラリアンアイドル」で見出されたというジェシカマーボイの歌唱力はさすが。

最後に実際の彼女たちの現在の姿が映し出され、全員プロの歌手にはならなかったようですが、それぞれがアボリジニ文化に貢献する素晴らしい役割を担ってきたようで素敵でした。デイヴのことには一切触れられてなかったんだけど、彼は架空の存在だったのかな?

アボリジニの迫害の歴史を映画で学びたい方は「裸足の1500マイル」という作品がオススメです。ゲイルを演じたデボラルイマンがまだ少女のころに出演しています。