シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

最強のふたり

2012-09-10 | シネマ さ行

公開前から話題になっていた作品でしたので、気になって見に行きました。
話題になっているとは言えここまでの人気とは思わなかったのですが、大阪の大きな劇場がいっぱいになるほどの動員数でした。

パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった大富豪フィリップフランソワクリュゼは新しい介護人を探していた。彼の性格のせいか、介護が大変なせいか介護人はなかなか長続きしない。そんな彼のところに面接にやって来たのは失業保険をもらうために面接に行ったという実績がほしいだけのスラム街の黒人青年ドリスオマールシー。ドリスのなめきった態度をフィリップはなぜか気に入り、彼を雇うことにする。

大富豪であり、障害者であるフィリップは周囲の同情的に気を使う態度にうんざりしていた。そこへ登場したドリス。彼は一切フィリップを同情の目で見たりしない。それどころか、障害者であることをネタにジョークを飛ばしたり、フィリップを車イスから降ろしてフィリップのかつての愛車マセラッティに乗せ街をぶっ飛ばしたりとやりたい放題。

妻も亡くし、重度の障害を負い、ほとんど生きる意味を失っていたようなフィリップにドリスが唯一と言っていいほどの生きる活力を与えてくれた。

ドリスの飛ばすジョークに5分に一回は笑わせられるという驚きの展開でした。いわゆるハートウォーミング系の作品だと思っていて、もちろん途中に笑いの要素はあるだろうけど、それよりも感動が前面に押し出された作品だろうと思っていたので、思わぬ笑いの連続にびっくりしながらもめちゃくちゃウケてしまいました。結構毒舌だったり、下ネタもあったりするんですが、そこはドリスの無邪気であっけらかんとしたキャラクターで全然嫌味なく笑うことができて、いつも憐みの目で見られて周囲に遠慮ばかりされていたフィリップの心がほぐれていくのがとてもよく分かります。

そしてドリスのキャラクターの他に、この作品で大きな役割を果たしているのが音楽です。冒頭でドリスが落ち込んだフィリップを乗せてマセラッティで暴走するときにかけるアースウィンド&ファイアーの「September」が大音量で劇場に響いた時から、とても良い予感がしていたんだけど、その後もクラシック好きのフィリップとアースウィンド&ファイアー好きのドリスのテイストの違いがまたまた良いケミストリーを生み出して最高のシーンを作り出していきます。フィリップの誕生パーティに来てくれたオーケストラの奏でる音楽をすべて「あー、知ってるよ。コーヒーのCMだろ?」とか「これ有名じゃん。職業案内所の案内のBGMさ」とか「あ、これ、トムとジェリーだろ」なんていうふうに次々と答えるドリスが最高でした。そして、その後の「Boogie Wonderland」。できればオーケストラの人も一緒に踊ってほしかった。

この二人を取り巻くフィリップの家にいる他のスタッフとのやりとりでもドリスの人懐こさをうまく表していてとても良かったと思います。

ともすれば過剰になってしまいそうな障害者を扱ったジョークなどもその笑いの起こる瞬間が絶妙でものすごく心地よく笑わせてくれます。ドリスのキャラはもちろんなんだけど、それを時に冷静に時に面白がって突っ込むフィリップも実は相当この作品の笑いに貢献しているんです。そんな二人の掛け合いをずっと見ていたいような気にさせてくれます。

正直、ドリスの弟がフィリップの屋敷に逃げ込んできたときには、その後弟のろくでもない仲間たちがこの屋敷に強盗に入るとかそういう事件が起こるんじゃないかと不安になったりもしたけど、実際そんな事件は起きず、冒頭の車の暴走シーン以外は特に大きな山場がある作品でもないのだけど、そんなものは一切必要のない二人の友情と交流が描かれている素晴らしい作品で、これは本当に何年に一回出会えるかといったような類の作品だと思いました。あれだけ笑わせて最後にはジーンと感動させることができる作品はそうそうあるもんじゃありません。公開中に間に合えば、ぜひ映画館へ足を運ばれることをオススメします。