シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

クヒオ大佐

2009-11-16 | シネマ か行

前売券が当たったので見に行ってきました。前売券が当たらなければ絶対に映画館で見ることはなかった作品でした。だから、特に期待もしていなかったけど、結構面白かったかな。

ジョナサンエリザベスクヒオ大佐堺雅人は、純粋な日本人であるにもかかわらず、その白人的な容姿(?)を利用し、カタコトの日本語で女性に近づき、自分の父はカメハマハ大王の末裔で、母はエリザベス女王の親戚であり、自分はアメリカ空軍のパイロットで、特殊任務についてる。私と結婚すれば、軍から支度金5000万円が支給される。などと言ってだまし、そのわりにいまはお金を持っておらず、車もないがためにデートのときはいつも女性に車を出させ、お金も出させる。この時点でまずおかしいと思わないのが不思議でしょうがないんだけど、何か都合の悪いことが起こると、「特殊任務だから」とかなんとか言ってごまかしてしまう。

映画の中では弁当屋のしのぶ松雪泰子、博物館員の春満島ひかり、銀座のホステス須藤未知子をターゲットにしている。クヒオに献身的に尽くす弁当屋の社長を松雪泰子が演じているのだが、松雪泰子という女優さんは都会的で、現代的でかっこいいイメージがあると思うんだけど、このしがない弁当屋を切り盛りするけなげな女性がよく似合っていた。彼女はクヒオの被害に一番遭っているのだけど、最後までクヒオを信じきっていた。クヒオが詐欺師だということが分かってからでさえ、自らに言い聞かせるようにクヒオを信じる道を選んでいた。これこそが結婚詐欺の怖いところなのかぁ。だまされた本人が良かったんだからいいじゃんみたいになっちゃいかねないところ。

結局、銀座のホステスに渡した名刺に3つもスペルの誤りがあることから素性がバレ逮捕されてしまうのだけど、そのとき以前警察が追っていたときにはクヒオ中佐だったのに、自分で自分を昇進させていたところが笑えた。他にもクヒオの計画があるんだかないんだかよく分からない詐欺の手口には笑ってしまう場面が多かったのだけど、もうちょっと矛盾点を突かれて窮地に陥るクヒオの姿を面白おかしく描いたほうが良かったんじゃないかなと思った。こんなバカバカしい話なのに結構マジに撮ってるのは、被害者のこととかも考えてのことなのかな?湾岸戦争と絡めた話も別にいらなかったような気がするな。

最後の逮捕後のシークエンスはちょっと長すぎたけど、クヒオが描いた自分像そのものが長すぎた夢といった感じにリンクしていたのかもしれない。

結婚詐欺師というと、なんだか最近タイムリーで、あんまり不謹慎なこと言えないなぁって感じになっちゃってて、もしかしたら宣伝のためにテレビとかも取り上げにくかったんじゃないかなぁ?この作品にとってはちょっと公開のタイミングが悪かったかもしれない。ここでもあんまり変なこと書けないかな…?

実際のクヒオ大佐については「アンビリーバボー」とかそういった類のテレビ番組が飛びつきそうな内容なので、そういうので取り上げられたことがあるんじゃないかな~。ワタクシも映画の公開前からなんとなくは知っていたけど、実際のところ7回も逮捕暦がある結婚詐欺師で、被害総額は1億円にのぼるとかなんとか。しかもさらにビックリすることに彼には結婚暦があり、一男をもうけていたらしいが、彼の逮捕後妻は彼が日本人だったことに驚いたという。そこまでいったらもうすごいのひと言だけど、それで英語が喋れるわけじゃないってんだから、たいした度胸だよね。まぁ、70年代後半から80年代前半ってことでいまほど英語を話せる人も多くなかったのかもしれないけど。

こういう何が本当で何が嘘か分からない話をするタイプの人って、ある意味どこか有無を言わせぬ変な魅力があって騙されちゃうのかなぁと思いました。最後にクヒオがしのぶに語ったおいたちだって話と映像とどっちが本当なのか。不幸な映像のほうを見ながら、同情しちゃった観客も多かったと思うけど、実際には映像より話のほうが本当だったのかもしれないもんね。しのぶのように夢を見させてくれたんだからそれでいいのよって思う人がいるのも仕方がないことなのかもしれない。

あ、書き忘れたけど、松雪泰子といえば、「デトロイトメタルシティ」の女社長役がサイコーでした。作品そのものは取り上げるほどじゃなかったので、記事にしなかったけど、この松雪はホントに最高イケてます。