シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた

2007-12-19 | シネマ あ行

この作品のことはぜんぜん知らなかったんですが、何かの映画を見に行ったときの予告編で見て、サンダンス映画祭で絶賛されたということを知り、見に行きたいなぁと思った。ワタクシは勝手にこんな映画のこと誰も知らないんじゃないの?って思っていたんだけど、映画館は狭いところだったけど、結構な混み具合だった。

主人公はDVまがいで束バッキーの夫アールジェレミーシストを持つウエイトレスのジェンナケリーラッセルはパイ作りの名人。パイコンテストに優勝し、その賞金で夫から逃げる計画をしているところへ、妊娠が発覚。あぁ、アールにお酒を飲まされた晩だ、これでアールから逃げられない、と落ち込むジェンナ。

予告で見たときはジェンナがとても若く見えて、20代前半の女の子のあったかサクセスストーリーかと思いきや、よく見るとジェンナ、30代前半?(ケリーラッセル31歳ですね。あとから調べました)ちょっと疲れた女性の人生リセット物語ってところか。

既婚31歳の女性の物語だから、恋愛も自然、不倫となってしまう。相手は妊娠発覚で行った産婦人科のお医者さんネイサンフィリオン。しかも彼も結婚していていわゆるW不倫ってやつです。これでは、「あったかサクセスストーリー」になりえませんね~。下手するとドロドロ劇になっちゃう。もし、お互いが離婚してハッピーエンドになったとしても、なんとなく釈然としないなぁと思いつつ見てました。たとえ、不倫の末でもお互いが離婚して再婚するというのはワタクシ個人的にはOKなんだけど、こういうほのぼのあったかストリーを求めてる物語にはふさわしくないなぁ、いったいどういうふうにこのお話にケリをつけるつもりだろうと途中からそういう興味で見ていました。

結論は、このジェンナという女性が誰に頼るでもなく、誰のせいにするでもなく、きちんと自分の足で立って歩いて行くようになる物語というふうにまとめられていて、大満足でした。

ジェンナは美人だし、パイ作りもズバ抜けてうまいけど、それだけが彼女の魅力ではなくて、ちゃんとした性格美人なんですよね。友達想いだし、みんなが疎ましがるオールドジョーアンディグリフィスの相手だってちゃんとしてあげる。このオールドジョーがとっても魅力的なおじいちゃんでね、イヤなことばっかり言ってるんだけど、ジェンナに不倫はいけないとそっと諭したり、最後にはドデカいプレゼントまで用意してくれちゃって。笑えるセリフもたくさん言ってくれるんですよね、この頑固じじいが。

他にもジェンナの女友達二人シェリルハインズ、エイドリアンシェリーとか、いろんなところで笑わされたけど、ジェンナが出産直後にダンナに「離婚して。半径5メートル以内に近づいたらぶっとばすわ。そして、それを楽しんでやってやるわ」って言ったところが一番笑えた。後半の楽しんでやるってところが字幕になってなくて残念だった。

アメリカ人のアイデンティティ的にパイへの思い入れというものは日本人の数百倍は深いだろうから、ジェンナが即興で次から次へと作るパイはアメリカ人の心をかなりくすぐったに違いない。ジェンナの「悪魔的においしい」パイ、ワタクシも食べてみたい

オマケこの作品はジェンナの友人を演じているエイドリアンシェリーが脚本、監督なんですが、彼女、去年40歳で亡くなっています。騒音トラブルで殺害されたのだとか。彼女が残した娘さんのソフィーちゃんが、ジェンナの娘ルル役でこの作品に登場しています。