シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

トロイ

2006-01-31 | シネマ た行

苦悩するアキレス。このブラッドピット演じるアキレスの描かれ方がもの凄く意外だった。そして、それがこの作品全体の良さにつながっていた。アキレス腱以外は完全無欠のアキレスがあんなふうに自分が殺した兵士たちのことを考え涙を流すとは思ってもみなかった。

ギリシャ神話の専門家にしてみれば、都合のいいように物語を切り貼りし、勝手にエピソードを作ってくっつけていたりして、気に入らない方もいるだろうけど、ギリシャ神話もさまざまな人の手によって編まれた壮大な冒険活劇の一種なのだから、新たに現代人がその歴史に1ページ加えたとしても許されるんじゃないだろうか。

たとえ2時間43分の「トロイ戦争短縮バージョン」でもやっぱりお話を語りだすとすごく長くなるので、すじについては何も言わないでおきます。みんな知ってるやろしね。

冒頭にも書いたけど、ブラピのアキレスはすごく魅力的だった。筋肉はちょっとムキムキすぎやけど、(半分、神の血が入ってるから仕方ない)体はあいかわらず美しいし、(あの体はCG?)いとこを殺されてあだ討ちに行くのは「いや、それって逆恨みちゃうのん?だって、ヘクトルエリックバナは君やと思って殺したんやし、君に化けとった君のいとこがそもそも悪いんちゃうの?」って思ったけど、プリアモス王ピーターオトゥール(さすがの貫禄!)に敬意を示し、ヘクトルを引き渡す姿もカッコよかったし、そのヘクトルの遺体に同じ兵士として涙するところも惚れ惚れするようなカッコよさ。盾を背負って暴れまわってる姿は「亀か?暴れん坊の亀か?クッパ大王か?」なぁんて思っちゃったけどね

それに引き換え、パリス王子オーランドブルームの情けないこと情けないこと。お兄ちゃんの足にしがみつくとこなんて映画史上に残るくらい情けないオーリーにはピッタリだったけどね。「木馬を燃やしましょう」ってたったひとつだけ正しいことを言ったのにあっさり無視されちゃうしなぁ。金髪ポニーテールにしてとんがり耳つけたほうがいいんじゃないの?なんてね。

そんな情けないパリス王子に生き様を見せつけ、堂々と戦って国のために死んでいく兄ヘクトル。下世話な言い方をすると“オイシイ”役ですね。この彼のおかげでパリスも最後には国への愛や忠誠心に目覚め、ヘレナダイアンクルーガーを逃がして自分は戦うために残ったのでしょう。(今ごろ目覚めやがって。もとから、そんな気持ちがあったら姫を連れてくることもなかったろうに。「次の世で一緒になれる」なんて、スパルタを出るときに言っとけば良かったセリフじゃんよー)けどまたこの兄弟(ヘクトルとパリス)の美しいこと。敵の兄弟の醜さが哀れに思えるほどだ。

そして、知恵者オデセウスを演じたショーンビーン。あのアキレスでも耳を貸す、そんな役どころですからね。ショーンビーンくらいだとちゃんと説得力ありますよね。ちょっと髪型変でしたけど。

戦い終わってまた、戦い。人が殺される描写を褒めるのも不謹慎かとは思うけど、やっぱり最新のテクノロジーはすごい。肉弾戦の最前線で斬り合う敵と味方。そこで細かい血しぶきがぶわっと霧のように散っている。すごいのひとこと。艦隊や兵士の列など圧倒されるシーンばかり。

そして、戦いだけの話かと思いきや、陰謀、忠誠、絆、愛がうまく絡み合って描かれる。音楽も美しく、全体的にウォルフガングピーターセン監督のセンスがピカピカに光っている。上に挙げた人たちそれぞれが背中に自分が主人公の神話を背負っていると言っても過言ではない壮大な物語をうまく焦点をしぼって2時間43分も飽きることなく見られる素晴らしいエンターテイメントに仕上がっている。