植民地戦争+α

歴史テーマの中量級のボードゲームを制作し、ゲームマーケットに出展しています。
なので歴史とボドゲの話が多いです。

魯粛の天下三分の計

2009年03月13日 19時28分40秒 | 国:日本・アジア
イスを思い浮かべてください。イスは4脚が多いですが、4脚ですとそのうち1つでも足の長さが違うとガタガタしてしまいます。
一方、3脚なら多少長さが違ってもしっかりとバランスを保つことが出来ます。
国の場合も同じで、4カ国なら2対2で争いますが、3カ国ならうち2カ国が争った場合に、残った1カ国が漁夫の利を得てしまうので、自制しやすくもっとも国を維持しやすい形では無いでしょうか?

これを実現しようと言うのが「天下三分の計」です。天下三分の計と言うと諸葛亮が劉備に説いたとされる「隆中策」が有名です。諸葛亮は、漢の再興を望む劉備に対し、その方策として荊州を得て、そして益州を奪って、曹操と孫権と肩を並べる第三勢力を築き、圧倒的な勢力を誇る曹操に対し、孫権と同盟を組むことで対処し、曹操を打ち倒すと言う提案でした。
この時、諸葛亮は言及はしていませんが、中国全土を統一し漢の再興を図ると言うことは、曹操の後は孫権も滅ぼすことを考えていたはずです。

この諸葛亮の案の数年前に、別の目的で天下三分の計を進言した人物がいます。呉の軍師になる魯粛です。魯粛は、孫権に仕える際に漢の再興を助けたいと言う孫権に対して、揚州の地盤を固めてここを領土とする皇帝に成りなさいと言います(※1)。
つまり、漢の再興や中国全土の統一すら行わず、中国の1/3を支配する「呉」と言う国を作って、そこを治めると言う当時からするとビックリ仰天なプランを進言したのです!
その実現方法として、上記の3脚のイスのように強大な曹操に対抗する為に3カ国でのバランスを保つことを目指すのですが、大きな課題が2つありました。

1つは3脚でも、1つの脚が突出して長ければバランスを保てません。つまり曹操1人があまりに強大であれば、2カ国で太刀打ちしても負けてしまいます。魯粛がこのプランを企画した際、既に曹操は北の袁紹を滅ぼし、華北一帯を支配し強大な力を誇っていました。地図で見るとそんなに広く無いのですが、北の方が人口密度が高いので、例えですが40%ぐらいは支配していたと考えましょう。
孫権が揚州で15%だとすると、残りは荊州の劉表が15%、益州の劉璋が15%、漢中の張魯が5%、涼州が5%に、交州が%5ぐらいと言ったところでしょうか?

こう考えると、曹操があと15%を支配すると過半数を超え、対抗する勢力を作れなくなります。現にその直後に曹操は劉表の病死に乗じて南下し、荊州北部(まあ5%としましょう)を侵略してしまいます。これで45%です。

もう1つは、3カ国にする為のパートナーです。パーセンテージから言えば、劉表亡き今、劉璋の15%が候補ですが、劉璋には覇を唱える気概が無く、残り張魯は宗教国家なので扱い難く、涼州は馬超・韓遂の連合状態、そして交州は未開の地といった具合でした。
そこで目を付けたのが、劉表の客将となっていた劉備です。劉備は再興を唱えており、さらに配下の諸葛亮は目的は違えど、天下三分を考えていた為、進めやすかったのもあります。
以後、魯粛は一貫して劉備をサポートし、天下三分の1脚作りに奔走します。赤壁で曹操が負けると、荊州の半分(これで劉備は5%)を劉備に貸し与え、劉備がさらに益州を支配する(これで20%)のを黙認して、自らは揚州の地盤固めと、交州への支配を進めます(これで孫権も25%)。
一方、曹操は涼州・漢中と支配に置き、荊州北部も合わせると、55%になってしまいますが、その直後劉備に敗戦し、漢中を奪われます。

かくして曹操50%、孫権25%、劉備25%と言う絶妙の天下三分が成立します。この直後、孫権の荊州攻略によって、曹操50%、孫権30%、劉備20%となりますが、体勢に影響なく、その後50年以上に渡って、魏呉蜀の三国時代を築くわけです。

そう言った点で、天下三分を手段として中華統一を目標とした諸葛亮よりも、天下三分自体を目標とした、魯粛の方が現実的なプランであり、事実、魯粛のプラン通りになったことから考えるに、実は魯粛は凄いんだって※2思った次第です。

※1:記述だけを見ると、魯粛は中華統一をせずに、揚州を地盤に皇帝に成ることを進言しただけです。しかし、曹操も皇帝に成ることは想定されると、曹操との天下二分は最低限考えていたと思われ、またその後の劉備との同盟を推進したことから、天下三分(3人が皇帝に成る)を目標としたと考えるべきでしょう

※2:いろいろな作品で魯粛は諸葛亮の引き立て役になってしまい、後世の評価は良くないです。

オリジナルカードゲーム 植民地戦争

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