団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

Listen

2021年10月29日 | Weblog

  手元に一冊の本がある。題名が『LISTEN 「聞くこと」は最高の知性』とある。日経BP発行著者Kate Murphyで2200円(+税)で503ページの厚い本だ。

 日本の第100代内閣総理大臣に就任した岸田文雄さんが「私の特技は人の話をよく聞くこと」と言った。それを聞いた私は、「私の良い所は、他人の話を聞くのが好きなこと」と反射的に思った。

 英語で日本語の“聞く”は、“hear”と“listen”。“hear”は耳に入って来る音をとらえる現象。“listen”は、自らの意志で音をとらえようとする行動と習った。カナダの学校で学んでいた時、教室がざわつくと教師は、よく「Listen!」と怒鳴っていた。

 妻は学校の成績が良かった。試験が好きだったとも言った。私は日本での高校の成績は、酷いモノだった。妻に尋ねた。「どうして試験が好きで、成績も良かったの?」「だって授業で先生の話を聞いていれば、どこが試験に出るかわかるもの」残念ながら私にその経験がない。

 試験が嫌いで、授業中も教師の講義を“hear”していたが“listen”していなかった。そんな私だが、英語の学習には“listen”できた。アンディ・ウイリアムズやパットブーンのレコードを聴いて歌詞をノートに書きとった。最初はまったく歌詞を言葉としてとらえることさえできなかった。しかし聴くこと10回20回になるにしたがって、どんどん書きとれる単語が増えた。そして50回ぐらいで歌詞すべてを書きとった。次にケネディ大統領の演説やマーティン・ルーサー牧師の演説も聴いて書きとった。何事も人より遅れ気味だったが、続けることで何とか学校で学ぶことを続けられた。カナダの学校の成績は、日本の高校の成績とは比べ物にならないくらい良かった。

 保育園から高校まで一緒だったI君は、試験の前に教科書を100回声を出して読んだという。I君は成績抜群で東大に現役合格した。中学でI君の真似をしたが、4,5回読んだだけで強い眠気が襲い掛かって中断した。後にこの学習法は“只管朗読”といって、目で読み、口で声を出して、耳で聴いて、脳が理解するのだと知った。

 カナダから帰国して教師を目指したが、日本の教員免許がないと教師になれないと解り、自分で英語塾を開いた。多くの生徒に教えた。やはり成績が良くなる生徒は、“listen”ができた。“listen”には集中力が必要だ。教科書100回読みの学習法も進めたが、実践した生徒は皆無だった。やはりI君は、凄かった。

 私が妻と結婚を意識したのは、「この人の話をずっと聴いていたい」と思ったからだ。最近私の耳が難聴気味で、聞き取りができなくなってきたが、それでも最後まで話して聴いての生活を望んでいる。

 岸田首相は、人の話を聞くことが得意という。あちこちで車座になって国民の声を聞いているそうだ。人々から聞き取ったことを熟慮して、これからの日本の将来に対して、今度は岸田首相の方から、自信に満ちた声で国民に“Listen”と呼びかけ具体的な政策を語って欲しい。

 衆議院選挙も大詰めを迎えている。候補者も所属政党も支持団体も、自分たちが言いたいことだけ声をからして叫んでいる。その内容は美辞麗句と大風呂敷。彼らは皆、選挙期間中、聴く耳を持たない。選挙が終わって、運よく当選すれば、国会で居眠り手づくなしてダンマリ。たまに口を開けば、汚いヤジ。『Listen』の著者は、「優れた聞き手は、愚かな人を見分ける」と書いている。それができるのは、選挙前だけである。

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