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公務員の妻に配偶者としてついて回った14年間の海外生活、帰国するたびに日本の韓流ブームが凄いことになっていた。日本から持ち帰る新聞、週刊誌にもそれに関する記事や写真が多かった。
サハリンではリンさんが日本からの雑誌をおみやげとしてとても喜んでくれた。とにかく勉強熱心で日本のことを日本語で読んで、解らない事を私に質問した。サハリンで日本のヨンさま現象についてリンさんに話したことがある。最初のリンさんの質問は「なぜ“さま”つけますか」だった。私は今日本で多くの女性が、韓国の男性映画テレビ俳優に夢中になっていると説明した。リンさんは「日本人は韓国人きらいでしょ、そんなことあるのですか。もし日本人が私をリンさまと呼べば、私は怒ります。それは馬鹿にしているとわかるからです」
私は言った「リンさん、日本は変わってきましたよ。特に日本の女性は本当に変わってきました。これからもっともっと変わっていくと思います。若い人も変わってきています。昔の日本人とは違ってきています。日本人も勉強しました。きっとよくなります」リンさん、「そうですか。私はわかりません。でも私が子供だったころでも、子供は皆同じに私には思えました。日本人も朝鮮人も」私、「リンさん、私はカナダへ高校生の時行き、カナダの学校で勉強しました。日本人のことジャップと言って差別する人もいたし、いつも助けてくれた人もいました。どこの国の人でも悪い人もいれば良い人もいます。この13年間いろいろな国で暮らしたけれど、どこの国でもそう思いました」リンさん、「あなたの言うことよくわかります。ロシアもそうです。私は日本に恨み強いです。戦争は悪いです。でも国と人は違う、と考えます。でも心に消えない強い怒りが残っています。時々苦しく思います」
私たちは川、山、海で本当によく話しをした。その日も焚き火にあたりながら話していた。「でも山本さんが言うように、日本人の朝鮮人に対する考えが変わってきたなら良いことです。私は、人間は皆同じだと思います。食べて寝て、出す。皆、同じことしていて、どこ違いますか?」私「そうですね。私は人間が大好きです。特に気配り、目配り、手配りのできる人間が。今日本の多くの女性は、それができる韓国ドラマの中の登場人物に夢中です。日本だけではありません。だれだってそういう理想の人間を探しています」「そうですか。いい時代になってきましたね。さあ明日は、もっと釣りましょう。山本さんと話すのためになります。おやすみなさい」 寝袋に入った。リンさんは、すぐに寝息をたて始めた。
サハリンの夜空に『冬のソナタ』のドラマように満天の星がきらめいていた。
写真:霧の中のリンさん
本日3月11日毎日新聞 夕刊にリンさんの小さな記事が載ります。