『国民性十論』
1. 忠君愛国
2. 祖先を崇(とうと)び家名を重んず
3. 現実的・実際的
4. 草木を愛し自然を喜ぶ
5. 楽天酒落(らくてんしゅらく)
6. 淡泊瀟洒(たんぱくしょうしゃ)
7. 繊麗繊巧(せんれいせいこう)
8. 清浄潔白
9. 礼節作法
10. 温和寛恕(おんわかんじょ)
これは1907年に出版された芳賀矢一(はが やいち)著『国民性十論』に書かれている日本人の国民性である。
3月2日の日曜日、映画『明日への遺言』を妻と観に行った。封切りを待って映画を観に行くことは数十年ぶりのことである。映画を観ながらずっと芳賀の『国民性十論』が頭を離れなかった。観客のほとんどが年配者で若者はほとんどいなかった。私の前の席に25,6歳の青年が座った。この歳でよくこの映画を観ようと思った、と感心させられた。ところが映画の途中で外へ出ていってしまった。映画は裁判場面が多く、目で見る映画というよりは、耳でセリフを聞く映画だった。それに英語が混じり、聞いていても英語が理解できなければ尚更、興味を失い、集中力が途切れてしまう。若者は苦しんでいるようだった。我慢できなくなって立ち上がったのだろう。
外国で映画を観る場合、吹き替えの映画はその言葉が理解できなければ観ていられない。私は何度か挑戦したが、集中力が続かず、途中であきらめて退場した。字幕が英語の映画なら観ることが可能になる。ところが中国語の字幕は絶対に観ることができない。字幕が漢字だから、どうしても私の目と脳は反応してしまう。耳で英語を聞き取らなければならない。それには結構集中力が必要である。集中力はそう長く持続できるものではない。おもしろい楽しい映画ならまだしも、難解な裁判ものなどは、私など20分と持たない。そういう意味でこの『明日への遺言』は、難しい映画だと思う。
映画が終わって即、席を立つ人がいなかった。終わってからじわじわと映画の内容が身につまされる。もちろん泣いて目を腫らしてしまい、すぐに外へ出られない隣に座っていた私の妻のような事情があった人もいただろう。
芳賀の言う日本人の国民性十論を満たすような日本人には、今では中々お目にかかれない。私自身だってほど遠い。映画の主人公岡田資中将の一貫した“日本人”ぶりに目が覚まされた思いがした。ほとんどセリフのない富司純子(ふじ すみこ)演じる岡田の妻も好演であった。岡田のアメリカ人弁護士も良かった。検察も良かった。しかし3人の裁判官の演技が場違いの存在に見えた。私自身、腑に落ちなかった点やセリフは二、三あったが、それには今回ふれない。
重い映画であった。家で妻と、この映画の意見交換が終わったのは、午前一時を過ぎていた。そんな時間を私達に与えてくれたこの映画に感謝する。
映画に誘発されて、小林多美男著『忘れられた墓標』全3巻を読み直したくなり、読み始めた。
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