団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

国際争奪戦 ドラゴンフルーツの巻

2016年08月08日 | Weblog

  暑くて外へ出られずにいた。電話がなった。留守電のスイッチを入れてあるので10秒で「只今留守にしています・・・」の録音がスタートしてしまう。この10秒は日本人100メートル競走選手が破ろうとする悲願の壁である。私の書斎から寝室の電話機まではおよそ12,3メートル。毎回私は留守電の録音が始まる前の到着を狙う。未だに達成されていない。

 到達した時まさに呼びリンが鳴り終わった。受話器を上げる。ここが機械の迷いが発生する微妙な時間帯なのだ。発信者、機械、受信者3者、沈黙。「図書館ですが、○○さんですか?」 よかった。間に合った。多くの発信者はこの1秒前ですでに電話を切っている。「はい、○○です」「依頼された本届きました」

 本は妻に頼まれたものだった。10日程前に図書館から借りてくるように言われた。早速行って図書館で検索したが置いてなかった。県内の他の図書館からの取り寄せサービスを依頼してあった。私は県境市町境の飛び地に住んでいる。生活は90%他県の他町の世話になっている。いつか何らかの感謝の気持ちを表したいものだ。

 図書館へ出かけた。暑い。いつもなら駅近くの町営駐車場に車を止めて図書館へ行く。1時間以内なら200円だ。4,500メートルの距離を炎天下歩く気がしない。それに階段もきつい。良い考えが浮かんだ。図書館の近くのスーパーの駐車場に止めて帰りにスーパーで買い物をすればいい。スーパーも車を止めてはダメだとは言わないだろうと自分勝手に決め車を止めた。まず涼しい店内で涼んだ。

 数日前にこのスーパーでベトナム産のドラゴンフルーツを1個100円で売っていた。他所の果物屋などでは300円以上で売られているものだ。偵察がてら果物売り場を覗いた。あるある30個以上山盛りになっている。早速3個大きくて重く見映えの良いものを選んだ。カゴを持っていなかった。結構重かった。待てよ、図書館で本を借りてきてから買えば、と躊躇した。ドラゴンフルーツを山に戻した。

 図書館のカウンターにすでに本が用意されていた。5分も経っていなかった。涼しいスーパーに駆け込んだ。ドラゴンフルーツめがけて階段を下りた。「えっ」と声を上げそうになった。ドラゴンフルーツが3個しか残っていない。あの山盛りのドラゴンフルーツは私の見た幻だったのか。ぼう然と立ち尽くす私の脇をフィリピン人らしい女性が二人タガログ語で話しながら通り過ぎた。カゴにもの凄い量の品物が入っていた。女性たちは重そうにカゴを持っていたが何か嬉しそう。カゴの中に私のドラゴンフルーツがごろごろ入っていた。

 山のように積まれていたドラゴンフルーツ。残っていた3個は見た目も貧弱で美味しそうにはどう見ても見えない。それでも私はその3個を買った。この失敗を良き教訓にしよう。そのためにも妻にことの詳細を話そう、と思った。

 私は妻に「買い物のコツは最初の閃きが大事で、まずその場で買うこと」と言い続けてきた。特に旅先では。妻と外国でどれほどこうせずに後で閃いた品物を見つけられず悔しい思いをしたことか。妻が帰宅した。正直にことの顛末を話した。妻は笑って聴いていた。

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