携帯電話auショップに行った人にショップがプリントを配布した。そのピリントには後日にメールで届くアンケートに「大変満足(店舗の満足度)」「非常によい(スタッフの対応)」「笑顔(スタッフの良かった点)」と回答するよう依頼の説明が書かれていたという。携帯電話業界は熾烈な客の取り合いを長年続けている。Auの親会社であるKDDIがショップを厳しく管理しようという目的で客から得るアンケートを役立てる意図は理解できる。しかし問題はそのやり方である。
近頃アンケートが流行っている。アマゾンで物を買っても、デパートで商品を買っても、あちこちでアンケートを依頼される。パックツアーに参加しても旅の終わりに添乗員がアンケート用紙を配布して回収する。だいたいどのツアーでも不満たらたらの私たち夫婦は、ここぞと厳しい判定をして、尚そのうえ“ご意見”欄には、紙にボールペンの先が突き抜けるくらい力を込めて欄全体が埋まるほど書いてくる。これで結構不満のガスが抜かれてしまう。旅行会社はそれを知ってアンケートを参加者に書かせているとしたら、「おぬしも悪よのう」。
パックツアーには年3回はこのところ参加している。書いたアンケートも10は越す。私はある時、旅行会社にアンケート用紙の“ご意見”欄でこう提案した。「アンケートを取るのも結構ですが、その後の処理に一言。各旅行の集計を参加者に送付願いたい。そうすれば他の参加者と自分の感想の違いが判ります。そしてツアー全体の満足度が見えてきます。ぜひ実施ください」 その後も何の反応も変化もない。
会社は自社の営業に役立てようと手のかかるアンケートを実施する。日本の会社は横並びで金太郎飴である。A社がやるからB社もC社も遅れをとらじと真似をする。そこまでするならそこに一工夫二工夫すればよいものを、そこまでできる会社はなぜかない。こういう場面でこそ“出る杭”が必要なのだが。どこの会社にも“出る杭”は早ばやと深く打ち込まれて沈んでいるらしい。
アンケートと言えば、初めて飛行機に乗って10代でカナダの学校へ移った時、機内で配られたカナダ出入国カードを思い出す。アンケートと出入国カードが同じではないが様式は似ている。私がアンケートに過度に反応してしまうのは、カナダの出入国カード経験が影響していると思われる。機内食が無料ともしらず食べなかったので空腹と緊張による不眠で頭がもうろうとしていた。人種、宗教、髪の毛の色、目の色までは理解できたが、sexの項を勝手に違う意味にとらえタジタジになった。あのカードは自主申告書であって小さな字で虚偽記載された場合は処罰されるとあった。
Auショップのアンケート操作はKDDIの厳しい管理を免れるための愚策であった。しかし巷にあふれるアンケートの多くは“褒められたい”という人間だれしもが持つ欲求を始点にしている気がする。褒められたければアンケートを意識することなく普段の心がけを向上させるほうが効果大だと思う。アンケートを頻繁に繰り返すのは無駄である。ある程度の奮闘努力の末に問うべきだ。
そういう私も褒められるのが大好きである。願わくば、私が死ぬ直前にアンケートのように1表示で妻の正直な気持ちを枕元で見せて欲しい。5 4 3 2 1でも甲 乙 丙でも優 良 可でも大満足 満足 不満足でもどれでもいいから。日々、精進、精進。