団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

朴槿恵大統領とデモ

2016年11月16日 | Weblog

  お隣の韓国で12日首都ソウルに100万人を超える人々が朴槿恵大統領の辞任を求めてデモを行った。アメリカでは8日の大統領選挙でまさかのトランプ候補が次期大統領に選出された。これに抗議してニューヨーク、ロスアンジェルスなどの大都市で反トランプのデモが起こった。

 これらのデモをテレビニュースで観ていて、旧ユーゴスラビアのあの日が思い出された。日記を探した。2000年10月5日木曜日『1時に歯科医に予約をとってあったけれど、野党の抗議デモが激化して市の国会議事堂前に群衆が押し寄せて危険だというので歯科医の予約をキャンセルした。私ひとりで歩いてデモを見に行った。変革を望む人、人、人。議事堂前の公園のベンチに座って人々の様子を見ていた。催涙弾で舌と目が痛くなった。デモに参加している人々は私に危害を加えることはなかった。それよりむしろ友好的に「これから私たちの歴史が変わる」とか「日本人か?ちゃんと今日のことを日本に伝えてほしい」などと握手を求められた。みな実にいい顔をしていた。田舎からバスを仕立てて参加したと話す人もいた。やがて群衆は国会議事堂になだれ込んだ。警護していた警察や軍隊までも群衆の味方に付いた。ミロシェヴィッチ大統領もいよいよ終わりか。群衆のスローガンは「ゴトヴ イェ(セルビア語で“奴は終わりだ”の意味)」だった。チュニジアへの出発前にこの歴史的な日にベオグラードにいて、その最前線で自分の目で見ることができた。興奮して眠れそうもない。日本にこんなことが起こりうるだろうか』

 同じようなことが韓国でも起こっている。地方からも人々はバスに乗ってソウルに集まっている。スローガンもセルビアの「奴は終わりだ」に似た「朴槿恵は退陣しろ」だという。アメリカではまだ就任していないトランプ次期大統領に「Not my president(私の大統領ではない」などのスローガンを掲げている。まだ韓国もアメリカも暴動や警察や軍の介入する状況にはないが、この先どうなるのか心配である。

 日本でもデモは行われる。デモは一部の人のもので国を動かすほどではない。国民性もあるだろうが、国の制度にも関係があると思う。大統領のように絶大な権力を一極集中させておらず、権力も責任も分散されている。理想の完璧な政権などあるはずがない。機会があって今までに多くの国で生活してきた。特に私は主夫として、一般市民の中に飛び込んで人々と直接、接することができた。どこに暮らしても人々の生活を肌で、目で、耳で、鼻で、舌で感じることができた。どこの誰もみな我慢していることがある。

  権力というのは、我慢することを忘れさせてしまうものらしい。大統領自身だけでなく取り巻く家族、親族、占い師が勘違いして大統領の権限の傘の下で暗躍してしまう。ミロシェヴィッチ大統領もそうだった。構図はどこの国でも同じであろう。宗教、思想いかなる人間の組織にも起こりうる。

  日記をつけてきてよかった。私の記憶から消えていたことでも日記を読めばよみがえる。私も妻も権力も財力も持たない。半径3メートルいや30センチの狭い中で、妻との権力闘争もなく、ほとんど毎日同じ繰り返しの生活。凡人ゆえに、だれにも「奴は終わりだ」と引きずり降ろされることはなさそうだ。ただ恐れるのは「Not my husband」だけである。


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