団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

山を崩す

2016年01月13日 | Weblog

  家の前の道路にダンプカーが突然増えたのは去年のある時期からだった。すでに1年以上もダンプカーが行ったり来たりを繰り返している。いったいどんな大工事が行われているのかと思ったがそれ以上調べることはなかった。

 そうこうしているうちに去年の暮れに中国の深圳工業団地で大規模な土砂崩れが起こった。原因は工事現場から出た残土の山が崩れて工業団地に流れ込んだらしい。懸命な救助活動の様子が連日ニュースで放映された。いつものことであるが日本の報道は尻切れトンボになることが多い。年末ということでこの深圳の土砂崩れのニュースも途切れた。年が明けると今度は北朝鮮の核実験、中国上海株式市場の暴落とサーキットブレイカー発動、原油安の進行と世界を不安におとしいれる事件が続く。深圳の土砂崩れで行方不明者の救出がどうなったかはわからない。

 家の窓から外を見るのが日課となっている。冬、我が家は陽が当たらない。向かいの集合住宅にはさんさんと陽が当たる。時々集合住宅の窓ガラスに反射した日光が我が家の北側の窓から入り込む。私はこの時とばかりにその日光を浴びる。曇っていたり雨が降ると当然陽は差さない。そこで川を挟んだ市道と県道の交通を観察する。昨日12日のごく短時間の間にもダンプカーは頻繁に行き来した。我が家に接する市道を散歩する人と犬の往来より激しい。

 最近郵便受けに今度できる会員制のリゾートホテルの案内書が入っていた。まず町長の挨拶が載っていた。一私企業の宣伝書に町長が推薦書を書く。よほどこのリゾートがこの町の活性化を推進する魂胆か。会員権の値段がまた凄い。一年間に使用回数が決められていて、宿泊するたびに使用料を払う。普通版と豪華版が用意されていて何千万円という値段である。そもそも会員権リゾートはハワイなどで普及した廉価で休暇を過ごす共同で別荘を持てる制度である。アメリカの友人がハワイのリゾートの会員権を約100万円で購入した。毎年十日間使用できる。すでに私たち夫婦も3回お世話になった。安普請であるが休暇を過ごすには問題ない。同じ地域に日本の会社が運営する会員リゾートがあったが1千万以上と聞いた。ある週刊誌の目次に『ムダに高いモノもある日本の超高級ガイド』とあったが、欧米の合理的な制度が日本に来るとまったく別の形をとってしまうのはなんとも不思議である。

  町長まで担ぎ出すこのリゾートの工事現場に行ってみた。山が大きく削られていた。もともと峡谷の片隅に建てられていた古い温泉旅館の建物が跡形もなく壊されていた。その旅館の裏山を削っている。広大な平らの敷地があった。ダンプカーの数に納得できる大工事である。

  自然の景観を巨額の投資をして破壊してまで現在の日本人にリゾートが必要なのだろうかと私は思う。リゾート会社の経営陣は言うであろう。「心配無用。これからのお客様は世界の富豪です」

  今日もダンプカーが岩石土砂を積んで疾走する。私は案ずる。あの岩石土砂はいったいどこへ運ばれるのか。深圳の土砂崩れの土砂崩れの二の舞にならなければよいのだが。これだけ重量のダンプカーの往来で道路のアスファルト舗装が持ちこたえられるのだろうか。削られた山は、下流地域の住民の生活に安全に変化を及ぼさないのだろうかと。


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