団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

バス事故

2016年01月21日 | Weblog

  1月15日のニュース:『1月15日午前1時55分頃、群馬県から長野県に向けて碓氷バイパスの入山峠付近の緩やかな下り坂を走行していたバスが、左側のガードレールを突き破って転落。バスは横倒しとなり、木に衝突するなどして大破した。乗客乗員41人中、乗客13人、乗員2人(運転手と補助員)が死亡し、1人が重体、24人が重軽傷を負った。バス事故として10人以上の死者が出たのは30年ぶり、つまりここ30年で最悪のバス事故である。

  このバスは、東京都渋谷区のツアー会社「キースツアー」が企画し東京都昭島市のバス会社「イーエスピー」が運行していた原宿から長野県飯山市の斑尾高原に向かうスキー旅行の貸切バスであった。格安であったと言うこともあって乗客の大半が大学生であり、死亡した乗客は全員が大学生であった。』 このニュースは悲しすぎる。どうしても自分の子供と重ねてしまう。大学卒業を目前に控えた大学生が14人(重体だった学生も19日に亡くなった)も命を奪われた。

  私にとってバスで忘れられないのは、北米に展開するグレイハウンドバスである。高校生の時、カナダへ渡った。カナダで学んでいた間にどれほどグレイハウンドバスで北米大陸を旅したことか。十代で経験したバス旅行が私の人生に役に立ったと長男が大学受験を控えた高校生最後の夏休みに夏期講習に参加させずに、あえて長女が住むシアトルを起点に北米一周のグレイハウンドバスによる旅に送り出した。長男は妹がアメリカで学んでいたことを面白くないと思っていた。自分だけが日本に留まり全寮制の進学校に入れられたことに不満を持っていた。

  私はカナダの学校で学んで日本に帰国した。教員になろうと試験を受けようとした。教員になるためには日本の大学でそれなりの単位を修得していなければなれないと知った。民間会社に就職しようと思ったが、田舎の会社では外国で学んだというだけで断られることが多かった。コネもなく仕方なく教育にどんな形でも関わられるならと英語の私塾を開いた。長男にはそんな就職での苦労をさせたくなかったので、私の経験を話した。長男はただ私が長男よりも長女を可愛がっていると捉えたようだった。

  長男の北米一周バスの旅は長男を大きく変化させ成長させもした。バスの旅は列車や飛行機と違って乗り合わせた客同士が話すことはまずない。ましてや一定の時間距離によって次々に交代する運転手と言葉を交わすこともない。何度か遭遇したバス内での乗客同士のトラブルにも運転手は毅然と対応して他の乗客を守った。私は自分の経験から長男のバス北米一周旅行は危険も伴うが、あのグレイハウンドバスなら任せられると信じた。そのバス旅行のお蔭か長男は翌春の入試で国立はダメだったが志望していた私立大に合格した。

  乗客が命を託すバスの運転手も人間である。誰にでも過ちを犯す危険はある。完全な運転手などいない。惰性的な点呼指差し確認であろうが、ある意味人間が機械的動作を繰り返すことで事故を防げることもある。何もかも合理的に利益追求型の経営では、安全は確保できない。バスにつきものだった車掌やガイドの存在も安全面では大いに役立っていた。魔が差すということもありうる。信頼できるか否かは、バス運行会社の安全運行に対する取り組み方と運転手の適性と技能である。私はまず運転手の服装に注目する。きちんとした制服を身に着けていれば、その運転手の自分の仕事への意気込みと乗客の命を預かる決意を感じる。日本の多くのバス運行会社の運転手が制服制帽を着用する。バス運転手の服装と事故との関係の統計学的研究の発表を待ちたい。結果論でしかないが、自分の命は自分の判断で守らなければならない。自分の命を守るためには厳重な点検項目を設定してチェックするのも有効だ。

 国土交通省は今回のバス事故を受け、バスツアーを運営する会社のバスの抜き打ち一斉調査をすると発表した。抜き打ちとは事前に知らせることなくやることではないのか。事故の犠牲になった大学生の父親が「このような事故が二度と起こらないように・・・」と訴えていた。お役所仕事は、民意に答えることなく後手後手になる。規則や法を作るだけ作って、事故や事件が起こると自分たちは非を認めることなく責任逃れして、その違法性だけを違反者に追求する。CoCo一番のカツの横流し事件は、不正を見抜けなかった役所の怠慢である。事故事件をいかに未然に防ぐかも役所の仕事である。知恵を出しあってもっと働いて結果を出してほしい。今国会で審議中の国会議員の自分たちの給料引き上げと抱き合わせに公務員の給料引き上げに熱心になっている。公務員はこれだけ結果を出している。だから給料を上げてくれと言えるように仕事をやってほしい。今のニッポン、お上も下々もタガが緩んではいないだろうか。タガの緩みで生じる犠牲者はタガさえ締めれば相当数防げるに違いない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする