備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

朝顔の原種発見……

2013-10-09 11:16:45 | Weblog


台風24号の思わせぶりな態度で、昨日の台風対策の労力が……。
見上げる空は天高く、紅葉とのコントラストを美しく見せています。

これから自然界の『赤』は目立つなぁ。

足元にも小さな赤い花。




その昔、まだ独身で落語に出てきそうな長屋に住んでいた頃。20代前半。
長屋はかなり年季の入った建物で、「何をしてもよい(=修理はしませんよ)」という条件で結構居心地が良かった。
家賃も格安だったので修行中のヤキモノ屋さん率が高くて宴会も日常茶飯事。

その長屋に庭(?)がありました。
大概は雑草まみれになっていたけれど、買ってきたネギや三つ葉の根っこを植えたりしていました。
一時は完全に自生のニラにマルチされて、風が吹く度の葉擦れでニラの香りが部屋に充満するのも御愛嬌といった具合。
ニラに引っくり返した植木鉢を被せて、日光を遮断しておいて『なんちゃって黄ニラ』も作ったねぇ。
栄養分が抜けたような心もとない食感と味でしたが、若い時のお遊び。否、真剣にやってたか。


その庭にある時、見慣れない花が群生した。
「小さい朝顔?」
「小さい朝顔! これはひょっとして朝顔の原種なのか!? 原種発見か?」と嬉しがっていました。

師匠に報告すると、花の色を聞いただけで「違うな」
奥様にも尋ねると「違うと思うよ」
「むむむ、原種発見の為には調べねば~~」と、インターネットの無い時代の事、図書館へ行くべし。
その気合の入った外出前に、ひとまず手持ちの本を片っ端から見ていく。

……と!
ハイ、載ってました。原種とちゃいますわ。というか別もの。
仮にちょこっと本棚から見ただけなのに……あっさりと判明。意気消沈。


名前は『縷紅草(るこうそう)』の仲間で、群生しているのは『丸葉縷紅草(マルバルコウソウ)』と判明。
しかも、帰化植物で江戸時代には栽培が流行ったらしい。
「江戸時代なら!」と思って、オヤヂから長期拝借していた『和漢三才図会』を見てみると載っていました。
もう確定です。



原種でもなく、昔流行った園芸品種が野生化してた……と。
しかも江戸時代の方が漢字が美しい。『留紅草』。

原種発見のテンションがプラスマイナス入れ替わっての恥ずかしさ。


翌日。しょんぼりと師匠に報告。
静かに笑われました。奥様からは「園芸種あげようか?」
「いえいえ」管理が悪くて育てられないと思い、丁重に辞退しました。(ええ、うちには野生がお似合いです……)


ちなみに、今も園芸店でも見かけます。
葉っぱが涼しげな『羽衣縷紅草(ハゴロモルコウソウ)』とか『紅葉葉縷紅草(モミジバルコウソウ)』という名前。
普通の『縷紅草(ルコウソウ)』でも充分可愛いんだけど。

いまだに『丸葉縷紅草』を見ると、「可愛いな」と思うと同時に「オハズカシイ」という気になります。
……と言いつつも、完全にネタにしてんだけど。(←失敗をネタにする関西人)


朝、道端の可憐な花を見て、ふと思い出しました。

若気の至りは天高くあって遠くとも懐かしい。くすぐったさのある思い出。


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