巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

成績のつけ方の一事例

2005-01-20 21:33:17 | 日記・エッセイ・コラム
大学院時代に、初回の授業で、自分がどのように成績評価をつけるのか、その方法を黒板に書いた講師がいた。

全部出席を50点とする
 あらかじめ連絡があった公用(仕事・学会)の欠席ではマイナス○点
 あらかじめ連絡があった私用の欠席はマイナス△点。
 連絡が後になった欠席はマイナス□点

テストの点を50点とする
 テストは100点満点で行ない、それに0.5を掛ける。

出席点を50点、試験の点を50点として足した点が成績になる。
ただしX回以上欠席したものは、試験の点が如何なるものであれ、自動的に落とす


院生としては「面白くない点のつけ方」と思ったし、正直なところ評価方法の説明を聞くにつけ、「この先生、やたら細かそう」と思ってしまい、講師に対してあまり良い第一印象を持たなかった。(授業が回を追うにつれ、なかなか良い先生だとは思うようにはなったが――三谷先生ごめんなさい。)

しかし今わたしは、似たような方法で自分の担当している科目の成績を採点している。ただし、出席と試験以外の要素をいろいろと評価に入れているので、Excelの表に少しばかりややこしい計算式を入れ込んである。こうやって、最後には機械的に点数が出るようにしている。

こんなやり方をするのは、わたしの各学生に対する普段の主観が評価に与える影響を、できる限り排除するためであり、また「この成績には納得できない」と学生が言ってきた場合に説明する資料にするためでもある。また、各学生の素点を素に、参考としてクラス全体の標準偏差を求めたり、成績の分布図を作ったり、出席とテスト(あるいはレポート)の点の、相関関係を調べる表をつくったりしている。

――そんなわたしは血液型B型


空き缶で遊んでいたヤツの正体

2005-01-19 20:00:04 | 日記・エッセイ・コラム
昼間道で缶がカラカラと転がる音が、ひんぱんに聞こえる。それもわたしが家にいる限り、ほぼ毎日だ。この辺りは静かな住宅地であまり車が通らないため、道に缶が転がる音がよく響く。

最初は、だれかが自分で飲んだ飲み物の缶を、ヒマにまかせて投げたり蹴ったりしているのだと思った。(未だ雇用環境は厳しいし、いろいろとストレスの多い世の中だし。)

ところが、ある日見てしまった。カラスが、公園のゴミ箱に捨てられていたカラのネコ缶を加えて高く舞い上がり、高いところから道に落としては、その音を楽しんでいるのを。そしてその行為を、くり返しくり返し行なっているのを。

先日、缶の音がカラカラ、カラカラとあまりにもうるさかったので、庭に出た。わたしの姿を見て、7羽のカラスたちがクモの子を散らすように逃げていった。わたしは道に転がっていた2つの缶を拾い上げ、公園のゴミ箱の中に戻し、また家の中に戻った。しばしの静寂。

10分後、またカラカラと缶の転がる音が始まった。

カラスめ…



ノラの道

2005-01-18 00:59:13 | ノラネコ
ここ3週間ぐらい、毎晩ノラネコがわたしの作業部屋の天井の上で休んでいる。近所にいる数多のネコの、どのネコかはわからない。

わたしが夜遅くまで石油ファンヒーターをつけて仕事をしているため、天井もそれなりに温まっており、天井板の裏側にいるネコにも心地がいいらしい。ネコの定位置が決まっており、天井の同じ方向から、毎晩ゴソゴソと動く音がする。たまに爪も研いでいるらしく、カリカリという音までする。

あまりにも毎晩来るので、人間側の認識が「今晩も、また来た!」から「今晩も、帰ってきた!」に変わりつつある。

うちの周りのノラネコたちは、人間を利用して生きている。人間の足もとにスリスリしてエサをもらい、さらにスリスリする。でも、エサをあげる人間だってネコを利用している。ゴロニャンされて、ネコに愛されているいい気分になるというわけ。

わたしはエサはあげないが、かの猫が天井にいることについては、大目に見てあげよう。天井からノミをふらせない限りはね。なにしろ君は、夜中に仕事をしているわたしに「たった一人で起きて仕事をしているわけではない」という、気分にさせてくれるのだから。

でもノラならノラの道があるだろう? 人間に媚びてはいけないよ。そうだ。君と君の仲間に、石垣りんという人間の詩人が書いた『略歴』という詩集の中の、「白い猫」という詩を読んであげよう。

「ノラの道」かくあるべしというありがたい詩だから、心して聴くように。

  白い猫

いまとなって
与えられたものを食うな。
いつも油断なく身構え
人の目をうかがい
そのスキをすばやくはかり
奪いとって食う。
お前は身を寄せてこない。
およそ愛らしさなど寸分も持ち合わさず
やせ細り
夜の路地裏で足をなめている。
背中は北アルプスのように尖っている。
月が背中にかかる。
生まれたときからのノラネコ
白い毛並みという毛並みを汚れるだけ汚し
人間をにくんで。
お前に手など藉(か)すものか。
お前はうつくしい
うつくしいメスだ。
(出典:ハルキ文庫『石垣りん詩集』1998年。pp171-172)


石垣りん詩集
石垣 りん 粕谷 栄市


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防腐剤の入っていない目薬

2005-01-15 00:14:52 | 美容と健康
smile_contact_pure以前の記事にも書いたが、わたしはドライアイだ。しかも、目薬の防腐剤にアレルギーを起こす。だが乱視まじりの近視ゆえに酸素透過性のハードコンタクトレンズを使っている。ああ、乾いて候。

そのため、いつもは防腐剤の入っていない人工涙液のソフトサンティアを使っている。このソフトサンティアは便利だし処方箋がなくても購入できるが、うるおいが続かない。ほら、肌が乾いているからといって、肌に水そのもの与えてもダメだろう。美容液みたいに水分保持力のあるものを与えないと、水分はすぐ蒸発してしまう。人間の涙には水分蒸発を防ぐ粘り気があるが、残念ながら人工涙液にはこれがない。

そこで人工涙液とともにヒアルロン酸入りのヒアレインミニなどの目薬も併用すると、かなり目がうるおった感じがして楽になるのだが、こちらは眼科で処方箋をもらわないと入手できない。しかしそんなに目医者に行ってもいられない。しかし乾燥する東京の冬のコンタクトレンズ使用者には、ソフトサンティアだけでは心もとない。

困っていたところに店頭で目についたのが、ライオンのコンタクトレンズ使用者用の目薬「スマイルコンタクトpure」だ。防腐剤を含んでいないというのが売りで、コンドロイチン硫酸ナトリウム(ヒアルロン酸のお仲間みたいなもの)が角膜保護成分として水分保持を担当。なるほど、これはよさそう。

しかし、大正製薬のアイリスCL-Iネオのように1回分ずつ小分けされているわけでもなく、ソフトサンティアのように開封後10日以内に使い切るようにとの注意書きもない。いったいどのような仕掛けになっているのかというと答えは、以下の通り。


040803 防腐剤を使わず抗菌
ライオンは防腐剤ではない成分を用いて抗菌作用を確保する技術を開発した。第1弾として同技術を点眼薬に利用、アレルギーやドライアイなどで角膜上皮が荒れた状態でも悪影響が出にくい商品を開発した。主力の家庭用品の市場が伸び悩む中で同社は中外製薬から一般用医薬品(大衆薬)事業の買収を決めるなど薬品事業を経営の柱にする方針で、製品技術の開発も強化する。
 薬剤のpH値を安定させるために用いる緩衝剤であるトロメタモールと、金属イオンを除去するために使うエデト酸ナトリウム(EDTA)を一定の割合で組み合わせると、防腐剤に匹敵する抗菌機能を持つことを突き止めた。両成分は防腐剤としては用いられていない。トロメタモールは注射液の基材成分として、EDTAは各種錠剤にそれぞれ広く使われており、人体に悪影響はないことが実証されているという


トロメタモールとエデト酸ナトリウムを一定の割合で組み合わせると、防腐剤に匹敵する抗菌機能を持つのだとのこと。この「一定の割合」ってライオンの秘伝かしら。

今のところはアレルギーが出ず、適度に潤いがあってよい感じ。コンタクト用ではなくてドライアイ専用もつくってほしいな。



かつて論争になった家庭科の試験問題

2005-01-14 01:56:38 | 日記・エッセイ・コラム
■ コーヒーカップの持ち手の向き

これは大昔、都立高校の入学試験に家庭科があったときに、論争になった問題だそうである。

コーヒーカップの向きは、飲む人間に対して持ち手を右側にして出すのか? 左側して出すのか?


この問題を作った人間は正解を「左」とした。しかし入試直後からケンケンガクガクの議論となり、その道の専門家たちが「右だ」「左だ」と新聞上で議論したと聞いている。

結論から言えば、「どちらでもよい」であった。その理由は以下の通りである。

まず、コーヒーカップは、コーヒーを飲む人間が右手でコーヒーを飲むと仮定して出される。(左利きの方、ごめんなさい。)

濃いコーヒーには、普通はコーヒーに砂糖やクリームを入れる。(もちろんブラックで飲んでもよいのだが。)右手にもったスプーンでコーヒーをかき混ぜることになるが、その動作の時に左手で持ち手を押さえることになる。ゆえに持ち手は飲む人間に対して左になる。

薄いコーヒーでは何も入れずに飲むことが普通なので、コーヒーをスプーンでかき混ぜる動作は不要だ。そのため、最初から持ち手を右にしておく。

前者がイギリス式、後者がアメリカ式といわれるのは、伝統的な「アメリカン・コーヒー」(=浅炒りのコーヒー)のようなものは、何も入れないで飲むことが多いからだということらしい。ちなみにアメリカン・コーヒーの豆の炒り具合は本当に色が浅く、炒りあがった豆の色が違う。「薄い」という印象のわりにカフェインが多かったりするので、すきっ腹に飲むと胃が荒れるかもしれない。(でもいまは、アメリカでも浅炒りのコーヒーは廃れているようだ。)

■ 「おかゆを作るのに適した鍋は何か?」

こちらは、1970年代前半、わたしの中学の家庭科のテストで出た問題だ。

出題者である家庭科の先生は、「厚手の鍋」と鍋の特徴で答えてもらいたかったらしいが、生徒のほうは「鍋の種類」を答えるのかと思い、

文化鍋、ホーロー鍋、ラーメン鍋、土鍋…

と様々な回答が出てきてしまった。(「文化鍋」とは時代を感じるよ。)

これらの答えは、生徒自身の家ではどのような鍋でおかゆを炊いているかを反映したものであった。

わたしは土鍋と答えた。おかゆを炊くときはいつも土鍋を使っていたからだだが、厚手の鍋の一種なのでこれは○になった。友人はホーロー鍋と答えて当初は△。先生に「うちのホーロー鍋は厚い。うちではいつもホーローでおかゆを作っているが、おいしくできる。」と猛抗議の結果、○に昇格。たしかにペコペコのアルマイトの鍋よりは厚手だ。

ラーメン鍋と答えた人は×をもらった。薄手だからね。

■ 「ムニエルに適した魚」

「おかゆの鍋」の先生は別のテストで、次のような問題が出たことがあった。

夕飯にムニエルを作ろうと思う。次のうちどの魚を選べば良いか?


四択の問題だったが、他の2つの選択肢は難なく排除することができた。問題は次の2つであった。


  • 魚屋で安くて活きのいいイワシを見つけた

  • スーパーで手ごろな価格の冷凍の白身魚を見つけた



わたしは「安くて活きのいいイワシ」を選択したが、先生の正解は「冷凍の白身魚」であった。

わたしは「なぜ"安くて活きのいい"のじゃダメなんですかぁ!?」と抗議した。
「ムニエルは白身魚でしか作らないから」と、「アンタ料理ニツイテナニモシラナイデショ」とでもいうような、人をバカにしたような表情で先生は言った。

わたし「粉をまぶしたイワシをフライパンを焼いてもいいじゃないですか!」
先生「イワシをつかったら、それはムニエルとは呼びません!」

そう、昔の日本人は、ムニエルといえば白身魚でつくるものと思っていたのだ。

数年後、故辻静雄氏監修の本に「イワシのムニエル カレーソース」を見つけて溜飲が下がったが、失われた点数は帰ってこないのであった。


ムニエル【meunière(フランス)】
魚に小麦粉をまぶし、バターで焼いた料理。ムニエール。(広辞苑 第五版)