巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

不覚にも立ち読みで落涙した3冊

2010-11-06 22:29:17 | 映画・小説etc.
佐野洋子さんの逝去の報が流れてきた。佐野さんの絵本『百万回生きたネコ』は、本屋で立ち読みをしていてわたしの涙腺を緩ませた本である。

佐野さんの訃報を機に、同じような分野で、わたしが不覚にも本屋の立ち読みで落涙した3冊を挙げておこう。




■ 佐野洋子『100万回生きたネコ』

様々な飼い主のもとに100万回も生きたネコ。生き返るたびに、ネコはその時々の飼い主に愛され、ネコが死んだときに飼い主はネコを失ってしまったことをひどく悲しむ。が、どんなに飼い主に愛されても、ネコ自身は飼い主を愛さない。この猫は死ぬのなんか平気だし、自分自身が大好きで飼い主のことなどどうでもよいのである。

しかし、最後に野良猫として生まれ、白いメス猫に恋をし、結婚し、家庭を作る。こどもたちは大きくなり独立し、2匹は老いる。自分自身より好きな存在であるこのメス猫が死んだときに100万回号泣したネコは、そのあとは二度と生きかえらない。

どちらかというと、大人向きの絵本かもしれない。白いネコの号泣とともにわたしも泣いてしまった。

100万回生きたねこ (佐野洋子の絵本 (1))100万回生きたねこ (佐野洋子の絵本 (1))
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:1977-10-19





■ 菊田まりこ『いつでも会える』

大好きだった飼い主のみきちゃんの死の意味が分からず、そして死が受け入れられず悲しみにくれていた愛犬のシロが立ち直るまでをかいた絵本である。

単純な絵が効いている。ミキちゃんにかわいがられていて「いつも楽しくて、うれしくて、しあわせだった」シロが、「いつもさみしくて、かなしくて、ふこう」になる。みきちゃんを探し回っても見つからないシロの絶望感が、絵のためにいっそう迫ってくる。

これを本屋で立ち読みをして滝涙を流し、その気まずさに本を買わずにあわててその本屋から立ち去り、後でこっそりと本屋やネットで購入したのは、わたしだけではあるまい。「シロ、ってよんで。あたまをなでて」の部分で涙腺が完全に決壊した。

1999年度ボローニャ国際児童図書展のボローニャ児童賞作。

いつでも会えるいつでも会える
価格:¥ 998(税込)
発売日:1998-11





■ 荒木経惟『チロ愛死』

こちらは絵本ではなく、写真家アラーキーの愛猫の写真集。チロはアラーキーが奥様の陽子さん亡きあと、アラーキーを支えた「女」だったが、今年の3月に22歳で死んだ。

本の表紙の写真からして、死期の近づいた猫だと明らかにわかる。写真集はアラーキーのいつもの写真(女性のヌード等)や、フラッシュバックのような昔の写真(その中には、陽子さんの棺の中に、若いころのチロの写真集『愛しのチロ』が入っている写真もある)を挟みながら、次第に弱っていくチロを追っていく。遺体となったチロ、そして骨になったチロ。そしてその後、自宅のベランダからの空の写真が続く。

岩号光昭氏の猫の写真とは異なり、アラーキーのチロを撮る視点は、女性を撮る視点と同じであるようだ。しかも被写体となる猫のチロも『女優』になりきっている。

チロの死後の、自宅のベランダから見た何枚もの空の写真で落涙。

チロ愛死チロ愛死
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2010-09-18