巣窟日誌

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ペットの犬との初詣のマナーとは?

2009-01-02 20:23:00 | 日記・エッセイ・コラム
タイトルを読んで、「犬を連れての初詣なんてありえないので、ましてやマナーなんかあるわけない」と思った人も多数いるはずだ。

そう、本来は神社の境内に四足の獣はご法度。しかし昨今はペット連れ、とくに愛犬連れで初詣に行く人は結構いる。他人から見ればイヌだけれど、本人たちにしてみれば立派な家族の一員だ。それに、参拝のマナーだって時が経ては徐々に変化するものだ。

第一、わたしだって参拝のマナーを厳密に守っているわけではない。かろうじて二礼二拍一礼かその神社が勧める方法でお参りをしているが、二礼二拍一礼自体が後付けルールらしい。そして、わたしの参拝の服装は改まったものではなく普段着である。

が、昨日5つの寺社を回り、その時にちょっとこれは…と思う愛犬連れの参拝に2件遭遇し、それがどちらもそれなりに由緒ある神社での出来事だったので、神社の簡単な紹介とともに、この出来事を書きとめておくことにする。場所はいずれも東京都板橋区である。

■ 「事例1:西台天祖神社にて」

わたしにとっては地元の産土神(うぶすなのかみ)に相当するので、ここのお参りは外せない。女性である天照皇大神(あまてらすすめおほかみ=「アマテラス」)を祭っているためか、神社には珍しい下り参道である。(通常神様は上のほうの祭られるので、上り参道になる。)古い地元民にとってこの天祖神社の通称は「おしめさま」である。社号が明治6年に(おそらく明治3年の大教宣布のために)「天祖神社」に改められるまで「神明社」だったことから、ここから来た通称であろう。

この天祖神社の境内には他の神様がいくつも祭られており、境内をぐるりと回ると日本中の主だった神様をお参りしたことになる。神々の中で最も大きいものが番場稲荷神社で、参拝コースとしてはまず天照大神様に参拝した後、次にその左手にある番場稲荷神社への階段を上って手をあわせ、さらにはその他の日本の主だった神々を回り、最後にローカルな「おしわぶき様」を拝むことができる。(このおしわぶき様のお姿は石で作ったリアルな男性のシンボルとしか形容できず、このところ風邪をひいて咳に悩んでいるわたしには、いくら「おしわぶき様は咳にもよい」と言われても、女性であるがゆえに手を合わせにくいものがある。)また、これらの神々とは離れた位置にあるが、鳥居の横には御嶽神社がある。

さて、境内には小型犬を連れた家族が来ていた。古来、狐と犬は相性が良くないものとみなされ、ゆえに御稲荷様に配慮すれば、犬をそばに近づけないほうがよいということになる。しかしこの家族、愛する家族であるワンコを、天照皇大神への参拝のあと御稲荷様へも連れて行ってしまった。しかも…

このワンコは、何とたくさんの神々の前、御稲荷様のすぐそばで、脱糞行為に及んでしまった。

ワンコに罪はない。彼または彼女に神様の前という意識はないのだから。そして、もちろんこのワンコを連れていた家族はすぐにそれを片づけた。でもそもそも、片づけいいというものでもないような気がする。それだけ大人数で来ているなら、誰か一人が犬と一緒に境内の外で待っていたほうが良かったのでは? ペットも含めて一家そろって初詣したいという気持ちも、わからないでもないけれど、飲み会にも "designated driver" (日本語の定訳は「指名ドライバー」でOK?)ってのがあるでしょ。

■ 「事例2:徳丸北野神社にて」

この北野神社は、近隣の赤塚諏訪神社とともに国の重要民俗無形文化財である「田遊び」の行事で知られている。田遊びは五穀豊穣(このあたりは戦前は東京の穀倉地帯だった)と子孫繁栄を願う行事であって、ゆえに男女の性に関する描写がある。(この描写が「五穀豊穣」「子孫繁栄」を象徴しているといわれても、「いや、そのものの意味じゃないですか?」と思ってしまう。昔は真夜中にやっていた行事ではあるし。)

さて、ここでも小型犬づれの家族が来ていて、わたしの後ろに並んだ。この犬はいやに落ち着きがなく、飼い主がリードをもってはいるものの盛んに動き回り、わたしの足を何度も踏んだ。小型犬に足を踏まれても痛くないし、わたしは動物に足を踏まれるのには慣れている――我が家の庭をテリトリーにするノラネコどもが私の足を踏むのである――し、元来動物好きであるので、このぐらいは別にどうってことはないのだが、飼い主は見て見ぬふりをしている。もし逆にわたしがこの犬の足を踏んでしまったのであれば、きっとこのワンコとその飼い主の家族にあやまらなければならないだろうなと思うにつけ、ちょっと不機嫌になる。いや、神様の前で不機嫌はよろしくない。平常心、平常心…

さて、皆がずらっと参拝待ちで並んでいる横には、お焚きあげのスペースがあった。このスペースは払い清められなければならないがゆえに、四角いスペースの四隅に斎竹(いみだけ)が立てられ注連縄(しめなわ)が張られていた。

落ち着きのないワンコがあまりにもうるさいと思ったのか、飼い主はワンコのリードを斎竹の1本に結びつけてしまった。これでちょろちょろしなくなると考えたのだろう。ところが、こともあろうに

そのワンコはこの斎竹にマーキングしてしまった。

びっくりした飼い主はワンコの頭をひっぱたいたが、これは彼のせいではないよ。ひっぱたかれなければならない立場のものがいるとしたら、それは飼い主の頭のほうのような気がする。

いずれの場合も、それぞれの家族に一言物申そうとして、すんでのところで止めた。神社には「境内は犬禁止」の貼り紙等の告知はなかったし、多勢(数人の家族ずれ)に無勢(今年は母の体調が悪いため、わたし一人が参拝)だ。第一正月から神様の前で言い争いはしたくない。

でも黙っていたために、「他にも犬を連れてきた人はいっぱいいたし、文句もいわれなかった」「豊川稲荷に犬を連れて参拝したけれど何にも言われなかったら、犬連れでも大丈夫だよ」といった事例を作ってしまったことにもなるのかな…


ちなみに徒歩で歩ききった今年の参拝コースは:

西台天祖神社(本文参照);
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松月院(曹洞宗のお寺、ちなみにわたしはこの幼稚園を卒園);
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乗蓮寺(東京大仏で有名だが、わたしが子どものころはここにはありませんでした);
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赤塚諏訪神社(徳丸北野神社とともに田遊びで有名。ここを訪れる方は新大宮バイパスに分断されてしまった旧参道全体にもご注目ください。);
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(ユニクロ 板橋四葉店…正月からわたしはなにやってんだか);and
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徳丸北野神社(本文参照)。