職場恋愛禁止は違憲=米ウォルマートの倫理規定めぐり-独裁判所
【フランクフルト15日時事】職場恋愛ご法度は違憲-。ドイツ・デュッセルドルフの州労働裁判所は15日までに、米小売り最大手ウォルマートが導入した職場恋愛を禁じる倫理規定が基本法(憲法)に違反し、無効との判断を示した。
同社は、世界各地で適用している規定を今年初めからドイツにも導入。当事者の一方がもう一方の社員の雇用条件に影響を与えられる立場にある場合、一緒に食事に出かけたり、恋愛関係を持ったりすることを禁じた。
同社によれば、こうした倫理規定は上司による部下へのセクハラなどを想定したものだが、同裁判所は「恋愛は人格権にかかわるもので、基本法に違反する」と断じた。
(時事通信) - 11月16日
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051116-00000016-jij-int)
おお、タイムリー。ちょうど1ヶ月まえ、「国際ビジネスコミュニケーション論」の授業の中で、社内恋愛を扱ったところだ。アメリカの企業の社内恋愛に対するさまざまな対応策をあげ、その中で、ウォルマートは社内恋愛を全面に禁止しており、違反即解雇のポリシーを持っていることも説明した。
職場恋愛なら、やっぱりビジネスコミュニケーションの授業でも扱わないとね。だってほら、やっぱり恋愛って究極のコミュニケーションでしょ。
…なーんてわけはなく、この社内恋愛を「危機管理」というかたいテーマの中で扱った。
このときは事前に、「社内恋愛に対して何らかの社内規則は必要か?」というというアンケート学生たちにとったところ、6割が「いらない」4割が「必要」との回答を得た。また、「社内恋愛に何らかの規則が必要と考える理由」の中で最も多かったものは、「上司と部下のカップルの場合、上司が部下を特別扱いして、職場内に不平等が生じるから」だった。
つまり、社内恋愛のどこがまずいのかというと、「えこひいきされる人間」が出ることが良くないと考えているらしい。
また、作るべき規則については「社内では恋愛感情を表に出さないこと」「仕事をおろそかにしないこと」がほとんどで、「全面禁止」を主張するものはいなかった。
さて、海の向こうのアメリカ合衆国の事情を見てみよう。
「自由の国」のイメージがある(とはいっても最近の保守化で、そのイメージもひびだらけになっているが)米国のこと、「恋愛も自由」と思ったら、この報道のようにまったく逆だ。
企業は社内恋愛を恐れているのだ。それは「社内恋愛でえこひいきされる人が出る」などという、かなり迷惑だが見方によってはまだかわいい話ではない。時事通信の記事にあるように、企業がセクハラ訴訟に巻き込まれ多額の賠償金を支払わされたり、企業のイメージがぼろぼろになる可能性があるためだ。
社内恋愛がこじれた場合、企業にとって最も心配なのはセクハラ訴訟だ。きのうの恋愛が明日の訴訟に暗転するのを防ぐため、企業の人事担当者は先を見越した対策の必要性に気づきはじめている。
恋愛とセクハラの入り口は紙一重だ。当事者が対等の立場にあっても、線を引くのはむずかしい。上司と部下となれば、トラブルが生じる可能性はさらに高くなる。上司は恋をしているのか、職権を乱用しているのか。部下の女性は本気なのか、ちやほやされてうれしいだけなのか。それとも、怖くてノーと言えないのか。
(「ニューズウィーク日本版」"オフィスラブは会社の敵?" 1999年6月2日号 P.50 より)
上記のニューズウィーク誌の記事によると、企業によっては交際報告制度を採ったり、恋愛契約書を提出させたりしている。「不倫」や「同性愛」だった場合(この2つの単語により、ワケのわからないトラックバックが付きそうなイヤな気がする)に、従業員側がきちんと申告してくるかどうかわからないので効力のほどは不明だが、「申告制度」にしろ「契約書」にしろ、その主な目的は企業を訴訟から守ることだ。
それにしてもウォルマート。さすが米国系企業。本国の規則を、しかもこともあろうに社内恋愛に関する規則を、そのまま外国に導入するなんて。どうせなら、この規則をフランスあたりに持っていってみたら?
ちなみに学生たちの回答の中には
- 同業他社の人間との恋愛は情報漏えいのリスクがあるが、同じ会社内ならそのようなリスクが存在しない(ので、社内恋愛はむしろ好ましい)
- 規則を設けないほうが愛社精神を育てる
というのもあった。