映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

キラー・ヴァージンロード

2009年10月07日 | 邦画(09年)
 「キラー・ヴァージンロード」を渋谷のヒューマントラストシネマで見てきました。

 今年はこれまで、品川ヒロシの「ドロップ」や木村祐一の「ニセ札」、ゴリの「南の島のフリムン」などというように、俳優・タレントによる監督第一作映画がいろいろ公開されています。
 私の方も、それらを何とか追いかけようとしてきたので(といっても、「ドロップ」と「さくらな人たち」の2つにすぎませんが←後者はDVDで)、この岸谷五朗による作品も見たいものだと思った次第です。

 さて、オープニングのダンスと歌のシーンを見ると、評論家の渡まち子氏が言うように、「これが“関所”だ。ここでノレた観客には楽しめる作品かもしれない」、とすぐにわかります。
 そして、続く「ひろ子」の部屋の場面になれば、〝流れに気楽に乗って行こう〟という気になって、旅行トランクに入った死体と一緒に女二人が逃げ回るという展開の中でどれだけ破天荒な面白さを観客に見せてもらえるのか、そこが勝負だな、と思いながら見ていました。

 私としては、ピークは「ゴリラバタフライ」で(この場面があるだけで、わたし的には本作品は○です)、それと樹海の中での上野樹里と木村佳乃の掛け合い漫才が出色だと思いました。木村佳乃の動きの良さ、巧みな台詞回しは、主演の上野樹里を食ってしまっています!

 ですから、この作品にわざとらしいテーマを持ち込もうとする後半のシーンになってくると途端につまらなくなってしまいます。例えば、祖父が、皆の幸福とひろ子の幸福との関係についていろいろ話す場面(回想シーンを含めて)などは退屈至極です。

〔10月8日号の『週刊文春』の「笑えない「芸人映画」ワーストワン決定戦」によれば、「「普通に」演出される後半は「普通に」笑って泣けるだけに、才気走って掘った墓穴がなんとも惜しい」とのことですが、話は全く逆ではないかと思います。どうして、新人監督が「普通」のことをしなくてはいけないのでしょうか?総じてこの記事は、悪意を持って貶めるためだけに書いている低レベルの論評ではないかと思いました←オダギリジョー「さくらな人たち」とか役所広司「ガマの油」が抜けていたりしますし!〕

 ただ、ドタバタだけでは逆に一本調子になってしまうでしょうから、こうした場面もある程度必要かもしれません。とはいえ、もっと刈り込んで、さらなる破天荒な仕掛けを持ち込むべきではないでしょうか!

 前田有一氏は、「二人の演技はすばらしいが、全体的に舞台演劇的なつくりで、映画としてはやや物足りない。とっぴなオープニングで不条理劇に巻き込む手法は常道だが、その後の展開がアイデア不足というか途中で種切れの印象で、引っ張りすぎの一発ネタの印象を脱しない」と述べていますが、この評は私からすると至極的を得ていると思います。
 特に、「舞台演劇的なつくり」という点は、上野樹里の演技(遠くを見る時や驚く時の)にも現れていると感じました。

 他方で、渡まち子氏は、「関所」の入り口で躓いてしまったせいか、「それぞれのエピソードはテンションが高いだけで、あまりにもつながりに欠けているので、ストーリーを追う気力が奪われた」などとして20点の評点しか与えません。
 とはいえ、この映画で「ストーリー」を持ち出してもお角違いもはなはだしいと思うのですが。

 なお、この映画も、二人の女性が大活躍しますから、登場する男性陣は、ひろ子の隣室の男をはじめとして駄目男ばかりになってしまいます(祖父を除き)。こう設定する方が映画を作りやすいのでしょうが、コメディの「男と女の不都合な真実」は、女性が中心の映画ながらマッチョな男性が登場するのですから、あるいは作りようなのかもしれません。


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2 コメント

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殺されたのは誰か (小ワルスキー)
2009-10-20 23:11:17
  基本的に上野樹理のファンなので、出来の良さを問わず見てきた次第です。もともとドタバタと忙しく展開するコメディなので、出だしで映画に入り込めなければ、それでまず終わりです。私は、その辺は問題がなかったのですが、それでも脚本が良い出来だとはいえず、あまり前後の話を気にせず、流れだけに気楽に乗っていけば、なんとか最後まで辿り着けたという感じです。こういう映画は、あまり難しく考えないこと、真面目に受け取りすぎないことが必要ではないか、そうすると少し楽しんでおしまいという感じになるのかと思います。いちいちアラを取り立てて見ると、楽しくありませんし、そういう人にはお薦めできない映画でしょう。
  製作会社のアミューズ関係の俳優が多く出ていましたが、樹理君をはじめ、こうした配役も映画の内容からすると、ちょっと勿体ない感じもありました。つまり、岸谷五朗の実験作という気持ちは分かるのですが、木村佳乃以外はあまり活きていないという感じもありました。出演する俳優のファンであっても、好き嫌いが分かれる映画かもしれません。
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ゴリラバタフライ (クマネズミ)
2009-10-21 06:22:52
 小ワルスキーさん、コメントありがとうございます。
 「こういう映画は、あまり難しく考えないこと、真面目に受け取りすぎないことが必要ではないか」とありますが、その通りだと思います。
 この映画のオープニングのミュージカル仕立てを見れば、あとは監督がどんな面白い手を出してくるのかワクワクし、最後も何とか盛り上げてくれるだろうと期待します。
 そういうことからすると、ラストがヤヤ尻すぼみではありましたが、途中の面白さがなかなかのものですから、総合的に○ではないか、と思いました。 
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