『水曜日のエミリア』をヒューマントラストシネマ有楽町で見てきました。
(1)『ブラック・スワン』でアカデミー賞を獲得したナタリー・ポートマンが出演する映画が、このところ引きも切らず上映されるので、なかで一つぐらいはと思って、映画館に行ってきました。
この映画は、“子はかすがい”の典型のような感じの作品ではないでしょうか。
確かに、初めのうちは、エミリア(ナタリー・ポートマン)と継子ウィリアム(チャーリー・ターハン)の関係はうまくいってはいませんでした。
それもそのはず、ウィリアムは、小児科医のキャロリン(リサ・クドロー)とジャック(スコット・コーエン)の両親のもとで、何不自由なく暮らしてきたにもかかわらず、突然、エミリアが入り込んできてその家族をぶち壊したのですから。
毎週水曜日は、ウィリアムはジャックたちの家に行く日となっていて、学校の校門のところでエミリアが待ち受けています。それから、翌朝まで、エミリアは、ジャックとともに一生懸命に努力するものの、かえってウィリアムとの関係が悪化するような感じなのです。
ですが、下で触れるスケート場のエピソードとか、さらにはエミリアの両親(父親は裁判官ながら、つまらない浮気がばれて離婚)とウィリアムが親しくなったりするなどして、次第に縺れた糸がほどけてきます。
エミリアは、一旦はウィリアムから離れますが、母親キャロリンの再婚に際して、ウィリアムがエミリアを呼んだりしたことから、再度家族が形成されることになるようです(その際も、生まれてすぐに突然死してしまったイザベル(エミリアとジャックの間の子供)のことが鍵となります)。
このウイリアムを演じるチャーリー・ターハンは、どこかで見たことがあるなと思っていたところ、そうだ『きみがくれた未来』で幽霊として登場する弟のサムだったな、と思い出しました。その映画では、主役のザック・エフロンと、墓地でキャッチボールをするにすぎないものの、とても印象に残りました。
この映画では、主役は無論ナタリー・ポートマンであり、その心の揺れがきめ細かく描かれているとはいえ、チャーリー・ターハンの巧みな演技なしには、成功はおぼつかなかったのでは、と思います。なにしろ、当初は、エミリアとジャックとの生活にとって障害になっていながらも、最後にはむしろ2人を強く結びつける役割を果たすという随分と難しい役を、彼は実にうまくこなしているのですから。
ただ、誠に可愛い顔をしていながらも、1997年生まれの14歳なのです(←前田航基は12歳!)。演じるウィリアムは8歳と設定されているようですから、実に6歳もの年齢差があり、若干の違和感は否めないところです。特に、家族を描いた絵が画面に映し出されるところ、その稚拙さは8歳程度のものかもしれませんが、どうも今のチャーリー・ターハンには全然そぐわない感じがしてしまいます。
ナタリー・ポートマンの方は、ナタリー・ポートマンは、『ブラック・スワン』も結構ですが、こうした微妙な関係にある女性を演じても至極ピッタリで、クマネズミ的には、むしろこれくらいの方が好ましく感じてしまいます。
それにしても、エミリアとその夫は弁護士であり、さらにはエミリアの父親が裁判官という設定ながら、一度も法廷の場面が出てこないというのも不思議な気がします!
(2)この映画を見て、『マイ・ブラザー』を思い出してしまいました。
その映画では、刑務所から出所したばかりの男トミー(ジェイク・ギレンホール)が、妻グレース(ナタリー・ポートマン)を寝とったのではと兄サム(トビー・マグワイア)に疑われるのですが、そうなるのも、サムはアフガンで戦死したものとばかり考えられていたからなのです。
そして、まだサムが戦場から帰還する前、トミーはグレースと一緒に、兄夫婦の子供たちを連れて近くの公園のスケート場に行くのですが、その様子は、今回の映画で、エミリアが、夫の連れ子のウィリアム を連れてスケート場に行く場面と重なってしまいます。
今回の映画では、ヘルメットを着けずにスケートをさせたことがあとで問題となるものの、実際には、エミリアの指導でウィリアムが一人で滑れるようになって、2人の間でなんとなく信頼関係が作られたようです。
同じように、『マイ・ブラザー』でも、当初トミーを嫌っていたグレースが、スケート場で子どもたちと打ち解けあっている様子を見て、トミーのことを憎からず思うようになっていきます。
なお、『マイ・ブラザー』においてナタリー・ポートマンが演じるグレースは、あまり自己主張の強い女性のようには描かれてはいませんが、今回の映画では、彼女が演じるエミリアは、法律事務所で新人として働くようになると、すぐに上司のジャックに魅入ってしまい、出張先で関係を持つようになります。
この点では、ナオミ・ワッツが演じる『愛する人』のエリザベスに類似すると言えそうです。なにしろ、エリザベスも敏腕弁護士であり、新しい法律事務所で働くようになると、上司のポール(サミュエル・L・ジャクソン)とすぐに性的関係を持ってしまうのですから(尤も、エリザベスは略奪婚はしませんが)。
(3)福本次郎氏は、「物語は自分に厳しく他人にも寛容になれないヒロインがたどる心の変遷を通じ、本当の幸せとは何かを問う。オフィスと家庭、出産と子育て、選択肢が増えた分、迷いも多くなる。映画はそんな彼女が感じている、女として生きるには不確実な時代の空気を濃密に封じ込め、揺れ動く思いをリアルに再現する」として50点をつけています。
★★★☆☆
象のロケット:水曜日のエミリア
(1)『ブラック・スワン』でアカデミー賞を獲得したナタリー・ポートマンが出演する映画が、このところ引きも切らず上映されるので、なかで一つぐらいはと思って、映画館に行ってきました。
この映画は、“子はかすがい”の典型のような感じの作品ではないでしょうか。
確かに、初めのうちは、エミリア(ナタリー・ポートマン)と継子ウィリアム(チャーリー・ターハン)の関係はうまくいってはいませんでした。
それもそのはず、ウィリアムは、小児科医のキャロリン(リサ・クドロー)とジャック(スコット・コーエン)の両親のもとで、何不自由なく暮らしてきたにもかかわらず、突然、エミリアが入り込んできてその家族をぶち壊したのですから。
毎週水曜日は、ウィリアムはジャックたちの家に行く日となっていて、学校の校門のところでエミリアが待ち受けています。それから、翌朝まで、エミリアは、ジャックとともに一生懸命に努力するものの、かえってウィリアムとの関係が悪化するような感じなのです。
ですが、下で触れるスケート場のエピソードとか、さらにはエミリアの両親(父親は裁判官ながら、つまらない浮気がばれて離婚)とウィリアムが親しくなったりするなどして、次第に縺れた糸がほどけてきます。
エミリアは、一旦はウィリアムから離れますが、母親キャロリンの再婚に際して、ウィリアムがエミリアを呼んだりしたことから、再度家族が形成されることになるようです(その際も、生まれてすぐに突然死してしまったイザベル(エミリアとジャックの間の子供)のことが鍵となります)。
このウイリアムを演じるチャーリー・ターハンは、どこかで見たことがあるなと思っていたところ、そうだ『きみがくれた未来』で幽霊として登場する弟のサムだったな、と思い出しました。その映画では、主役のザック・エフロンと、墓地でキャッチボールをするにすぎないものの、とても印象に残りました。
この映画では、主役は無論ナタリー・ポートマンであり、その心の揺れがきめ細かく描かれているとはいえ、チャーリー・ターハンの巧みな演技なしには、成功はおぼつかなかったのでは、と思います。なにしろ、当初は、エミリアとジャックとの生活にとって障害になっていながらも、最後にはむしろ2人を強く結びつける役割を果たすという随分と難しい役を、彼は実にうまくこなしているのですから。
ただ、誠に可愛い顔をしていながらも、1997年生まれの14歳なのです(←前田航基は12歳!)。演じるウィリアムは8歳と設定されているようですから、実に6歳もの年齢差があり、若干の違和感は否めないところです。特に、家族を描いた絵が画面に映し出されるところ、その稚拙さは8歳程度のものかもしれませんが、どうも今のチャーリー・ターハンには全然そぐわない感じがしてしまいます。
ナタリー・ポートマンの方は、ナタリー・ポートマンは、『ブラック・スワン』も結構ですが、こうした微妙な関係にある女性を演じても至極ピッタリで、クマネズミ的には、むしろこれくらいの方が好ましく感じてしまいます。
それにしても、エミリアとその夫は弁護士であり、さらにはエミリアの父親が裁判官という設定ながら、一度も法廷の場面が出てこないというのも不思議な気がします!
(2)この映画を見て、『マイ・ブラザー』を思い出してしまいました。
その映画では、刑務所から出所したばかりの男トミー(ジェイク・ギレンホール)が、妻グレース(ナタリー・ポートマン)を寝とったのではと兄サム(トビー・マグワイア)に疑われるのですが、そうなるのも、サムはアフガンで戦死したものとばかり考えられていたからなのです。
そして、まだサムが戦場から帰還する前、トミーはグレースと一緒に、兄夫婦の子供たちを連れて近くの公園のスケート場に行くのですが、その様子は、今回の映画で、エミリアが、夫の連れ子のウィリアム を連れてスケート場に行く場面と重なってしまいます。
今回の映画では、ヘルメットを着けずにスケートをさせたことがあとで問題となるものの、実際には、エミリアの指導でウィリアムが一人で滑れるようになって、2人の間でなんとなく信頼関係が作られたようです。
同じように、『マイ・ブラザー』でも、当初トミーを嫌っていたグレースが、スケート場で子どもたちと打ち解けあっている様子を見て、トミーのことを憎からず思うようになっていきます。
なお、『マイ・ブラザー』においてナタリー・ポートマンが演じるグレースは、あまり自己主張の強い女性のようには描かれてはいませんが、今回の映画では、彼女が演じるエミリアは、法律事務所で新人として働くようになると、すぐに上司のジャックに魅入ってしまい、出張先で関係を持つようになります。
この点では、ナオミ・ワッツが演じる『愛する人』のエリザベスに類似すると言えそうです。なにしろ、エリザベスも敏腕弁護士であり、新しい法律事務所で働くようになると、上司のポール(サミュエル・L・ジャクソン)とすぐに性的関係を持ってしまうのですから(尤も、エリザベスは略奪婚はしませんが)。
(3)福本次郎氏は、「物語は自分に厳しく他人にも寛容になれないヒロインがたどる心の変遷を通じ、本当の幸せとは何かを問う。オフィスと家庭、出産と子育て、選択肢が増えた分、迷いも多くなる。映画はそんな彼女が感じている、女として生きるには不確実な時代の空気を濃密に封じ込め、揺れ動く思いをリアルに再現する」として50点をつけています。
★★★☆☆
象のロケット:水曜日のエミリア
裁判物ときたら、現時点ではどうしても『ステキな金縛り』になりますね!ナタリー・ポートマンの敏腕弁護士と、深津絵里の三流弁護士とでは、一見違う気がしますが、二人の女優魂は共通しているといえるでしょう!
なお、「落ち武者、もとい、将軍がジャック・ブラックっぽい」とは、またまた難解な表現です。
あるいは、「別の映画」で裁判所に召喚される幽霊の「将軍」としては、『ステキな金縛り』の西田敏行に似たジャック・ブラックが適している、ということでしょうか(さらに、この映画でナタリーの夫の名前がジャックであることも、引っ掛けているのでしょうか)?
ナタリー・ポートマンが独立戦争時代の将軍の幽霊を殺人事件の参考人として召喚しようとしていた話はきっと又、別の映画として作られるのでしょう。
落ち武者、もとい、将軍がジャック・ブラックっぽいよなあ。