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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ザ・コール 緊急通報指令室

2013年12月24日 | 洋画(13年)
 『ザ・コール 緊急通報指令室』をヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。

(1)予告編で見て面白そうだと思い映画館に行ってきました。

 本作のはじめの方で、主人公のジョーダンハル・ベリー)が、「911」の緊急通報指令室に入ってきた携帯電話からの通報を受け取ります。
 それが「誰かが家の中に入ってくる!独りなの」という内容だったことから、ジョーダンは、一方で、「現場に急いで」とパトカーに連絡するとともに、他方で通報者の少女レイアには、「直ぐに警察が着く」、「電話は切らないで」、「窓はある?」などと話します。
 窓ガラスを割って家の中に侵入した男は、あちこち探し回った挙句、窓が開いていてその下に靴が投げ出されるのを見ると、家から出ていこうとします。
 ホッとしたレイアが携帯を切ってしまうと、丁度その時に、ジョーダンから電話が入り、レイアが手にしている携帯の呼び出し音が鳴ってしまいます。
 その音に気づいた男が戻って、ベッドの下に隠れているレイアを引きずり出して、………。

 その時の失敗にジョーダンは酷く落ち込みますが、気を取り直して新人研修を行っています。講義の後に新人たちと緊急通報指令室内を見回っている最中、男に誘拐されて車のトランクに押し込められた少女ケイシーアビゲイル・ブレスリン)が、「911」に携帯電話をかけてきたのに遭遇します。
 事態の重大さを見てとって、ジョーダンが受け取って対応することになります。



 ですが、ケイシーが運ばれている車の位置がなかなか判明しないため、ケイシーもジョーダンも焦ります。時間が無駄に流れていきますが、ケイシーは無事に助かるのでしょうか、………?

 見る前は、緊急通報指令室と通報者とのやり取りが描かれるサスペンス作品なのかなと思っていたのですが、実際にはホラー映画まがいのサイコ・スリラーとなっていて驚きました。でも、その緊迫感たるや普通でなく、巷の評判が高いのもよくわかります。

(2)本作については、何よりとにかく映画を見て楽しんでいただく必要があり、いろいろ言い立てても意味がないように思われます。
 それでも言うとしたら、一方で面白いと思ったのは、ご都合主義的と思わせる状況が次々に打ち破られて(注1)、ついにジョーダンはケイシーとマッタク連絡が取れない状況に陥ってしまい、一体どうしたらいいのかというギリギリのところまで追い詰められてしまうという点でしょうか。

 他方で問題があるとしたら、最近の映画の全般的な傾向がそうともいえるところ、本作はまさに女性だけが主体的な作品であり、男性がホンの添え物になっているにすぎないという点なのかもしれません(注2)。
 例えば、ジョーダンの職場は男性職員が混じっているにもかかわらず、彼女の上司は女性ですし、また、ジョーダンの恋人は警察官で、ケイシーの捜索に加わっているものの(注3)、ケイシーを彼の手によって発見することは出来ません(注4)。



 ラスト近くになると、なんとジョーダンの単独行動になってしまうのです(注5)。

 まあ、こうなるのも、レイプ事件や誘拐事件が異常に多いアメリカの状況に対する女性側からの抗議の意味合いもあるのかもしれないと思えて納得するのですが(注6)。

(3)渡まち子氏は、「ラストには疑問が残る」など「いろいろと文句を付けてはいるが、この作品のユニークさ、テンポのよさ、無駄のない脚本には実に感心させられる」として70点をつけています。



(注1)ケイシーは、友人が置き忘れていった携帯をパンツのポケットに入れていたために、誘拐された時に、自分の携帯を落としてしまいましたが、友人の携帯を使って「911」に連絡することが出来ました。
 さらには、ケイシーは、ジョーダンからの指示に従って、トランク内にある器具を使って、車のテールランプを外側に外します。そしてそこにできた穴から、手を出してみたり、トランク内にあったペンキを車の外に流したりします。トランク内によくペンキ缶が置いてあったと思いますし、ケイシーがこうした作業を行っても、運転する車内の男に聞こえなかったのは、男が大きな音量でカーステレオをつけていたからです。こうした好都合な状況にもかかわらず、捜索しているヘリコプターは、路上に付けられたペンキの跡を見つけることは出来ませんでした。

(注2)本作は、ある意味で、『リミット』と対極的な作品といえるかもしれません。
 本作が、誘拐犯によって被害者が車のトランクに押し込められてしまうのと同様に、同作は、テロリストによって主人公は棺桶の中に押し込められ砂漠に埋められてしまうという話であり、さらに外界との連絡は携帯電話しかないという点もあわせ、両作は酷く類似している感じながら、本作の被害者が少女であるのに対し同作の主人公は男性ですから。
 また、本作では、携帯の連絡先である緊急通報指令室のジョーダンが大活躍するのに対し、同作では、埋められた男に連絡してくる人物は画面に一切登場しないのです。

(注3)警察は、誘拐犯人の特定までいきますが(病院の検査技師で、その自宅まで踏み込みます)、道路の検問とか乗り捨てられた車の調査等くらいではなかなか犯人の居場所まではたどり着けません。

(注4)その他には、ケイシーの機転によって、ガソリンスタンドの男が誘拐犯に気が付きますが、逆にガソリンを浴びせられて殺されてしまいます。さらにもう一人、誘拐犯の行動を怪しいと睨んだベンツに乗る男がいるものの、不注意な行動によって、この男も誘拐犯に殺されてしまいます。

(注5)ジョーダンは単なる電話オペレーターに過ぎず、武器を携行していないにもかかわらず、単身で酷く怪しい場所に入り込んでいくのです(尤も、連絡を取ろうとした携帯を落としてしまったこともあるのですが)!

(注6)ジョーダンとケイシーが取り押さえた誘拐犯を警察に引き渡すことをしないラスト(二人は、犯人に「モウ手遅れよ」と言い残します)も、アメリカ社会に対する強い抗議の意味合いがあるのではないでしょうか?



★★★☆☆





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2 コメント

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ジョーダンの髪型がすごい (すぷーきー)
2013-12-25 22:06:46
訪問&TBありがとうございます。
アビゲイル・ブレスリンちゃん、大きくなりましたね~。
ハル・ベリー主演で、センター内でおとなしくしてる役のわけがないと思ったら、やっぱりかけつけましたね。
行っちゃいけないとこに行くのは、この手のお約束ですね。
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Unknown (クマネズミ)
2013-12-26 05:57:23
「すぷーきー」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、アビゲイル・ブレスリンは7年前の『リトル・ミス・サンシャイン』の時と比べたらずっと大きくなってしまいました。何しろ当時は10歳っだったのですから!
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