『イタリアは呼んでいる』を渋谷ル・シネマで見ました。
(1)気楽な御当地物ではないかと思って、映画館を覗いてみました。
本作(注1)の冒頭は、親友のロブ(ロブ・ブライドン)からの電話を受けるスティーヴ(スティーヴ・クーガン:注2)。電話の内容は、オブザーバー紙からグルメ取材の話があるとのこと。
ロブは、「イタリアだ!良いワイン、いい女」「月曜日から」と言っています。
次の場面では、早くも、二人の中年男(注3)が乗るミニ・クーパーがイタリアを走っています。
ロブが、「刺激的なレストランに行く。音楽もi-podに入れてきた。イタリア・オペラとかウェールズの音楽を入れてきた。トム・ジョーンズも。僕は、トムと体型がそっくりなんだ」と言うと、スティーヴは「お前のカラオケ好きは御免だよ」と応じます。
さあ、これからの二人のイタリア旅行はどんな塩梅になるのでしょうか。………?
本作は、風光明媚なイタリアの名所旧跡やら美味しいイタリア料理を紹介しながら、お固いイギリス男性と奔放なイタリア女性との恋物語が綴られるお定まりの映画かなと思っていたところ、確かに、綺麗なイタリアの景色は映しだされ、イタリア料理もふんだんに紹介され、恋物語もあるにはあるのですが、そんなことよりなにより、登場する二人のイギリス人俳優のお喋りのものすごさに圧倒されまくりの映画でした。
(2)なにしろ、一方で、バイロンやシェリーの詩が飛び出すかと思えば(注4)、他方で、『悪魔をやっつけろ』のハンフリー・ボガートや『ゴッドファーザー』のアル・パチーノなどたくさんの映画俳優のモノマネで会話が進められるという具合(注5)。
英語が堪能で、なおかつ洋画に詳しければ詳しいほど、この映画を楽しむことができるでしょう!
本作において、スティーヴとロブはイギリスの人気コメディアンで俳優とされていますが、二人は実際にもそのとおりであり、役名も実際のものが使われています(注6)。
その上、劇場用パンフレットの「解説」では、「(本作には)脚本は存在せず、(監督の)ウィンターボトムが書いた大まかなシノプスに沿って、クーガンと(ロブ・)ブライドンが即興で演じ」たと書かれています。驚きました。
日本で言えば、さしずめ『東海道中膝栗毛』の弥次郎兵衛・喜多八コンビの現代版といったところかもしれません。例えば、二人をタモリとタケシが演じて(注7)、『奥の細道』や『赤光』を携えて、山形市の立石寺とか上山市の斎藤茂吉記念館とかを訪れながら、国道13号線(昔の羽州街道)を福島から秋田方面に向かって走るというプロジェクトはどうでしょう?少なくとも、宿泊地(温泉)と食べ物には何の問題もないでしょう。
(3)フリーライターのりんたいこ氏は、「ときには、2人が人生について考えたり、感傷的になったりする場面もあるが、おおむね彼らの軽妙洒脱な会話が楽しめる愉快な仕上がりだ」と述べています。
(注1)監督は、マイケル・ウィンターボトム。
原題は、『The Trip to Italy』、上映時間108分。
(注2)スティーヴ・クーガンは、『あなたを抱きしめる日まで』で初めて見ました。
(注3)海に面したレストランを訪れた際、二人は、「若い者は俺たちを無視している」「海を見よう、自然は俺たちを拒まない」などと話します。
(注4)本作で二人は、ジェノヴァでバイロンの旧居を、そしてレーリチでシェリーの旧居を訪れています(バイロンとシェリーとは付き合いがありました。なお、シェリーは1822年にレーリチで暴風雨に遭って死んでいます)。
(注5)二人がどんな映画や俳優を持ちだしているのかについては、劇場用パンフレットに掲載の「『イタリアは呼んでいる』をもっと楽しむための手引き」に詳しく書かれています。
同記事によれば、本作では、1953年の『ローマの休日』から2012年の『ダークナイトライジング』までが引用されています。
(注6)劇場用パンフレットには、「アカデミー賞脚色賞にノミネートされた才人スティーヴ・クーガンと、自身の名を冠したTVバラエティーで知られるロブ・ブライドン。それぞれが本人を演じているのですが、映画の中の人物設定と実人生との微妙な重なり合いがミソ」と述べられています。
(注7)ただ、この二人では歳が行き過ぎて『龍三と七人の子分たち』と同じ雰囲気になりかねません。
やはり、本作と同じように50歳くらいの俳優を使うということになると、例えば、阿部寛と堤真一のコンビも考えられるかもしれません(とはいえ、映画に対する造詣の深さとかモノマネということになると、どうでしょうか?)。
★★★☆☆☆
象のロケット:イタリアは呼んでいる
(1)気楽な御当地物ではないかと思って、映画館を覗いてみました。
本作(注1)の冒頭は、親友のロブ(ロブ・ブライドン)からの電話を受けるスティーヴ(スティーヴ・クーガン:注2)。電話の内容は、オブザーバー紙からグルメ取材の話があるとのこと。
ロブは、「イタリアだ!良いワイン、いい女」「月曜日から」と言っています。
次の場面では、早くも、二人の中年男(注3)が乗るミニ・クーパーがイタリアを走っています。
ロブが、「刺激的なレストランに行く。音楽もi-podに入れてきた。イタリア・オペラとかウェールズの音楽を入れてきた。トム・ジョーンズも。僕は、トムと体型がそっくりなんだ」と言うと、スティーヴは「お前のカラオケ好きは御免だよ」と応じます。
さあ、これからの二人のイタリア旅行はどんな塩梅になるのでしょうか。………?
本作は、風光明媚なイタリアの名所旧跡やら美味しいイタリア料理を紹介しながら、お固いイギリス男性と奔放なイタリア女性との恋物語が綴られるお定まりの映画かなと思っていたところ、確かに、綺麗なイタリアの景色は映しだされ、イタリア料理もふんだんに紹介され、恋物語もあるにはあるのですが、そんなことよりなにより、登場する二人のイギリス人俳優のお喋りのものすごさに圧倒されまくりの映画でした。
(2)なにしろ、一方で、バイロンやシェリーの詩が飛び出すかと思えば(注4)、他方で、『悪魔をやっつけろ』のハンフリー・ボガートや『ゴッドファーザー』のアル・パチーノなどたくさんの映画俳優のモノマネで会話が進められるという具合(注5)。
英語が堪能で、なおかつ洋画に詳しければ詳しいほど、この映画を楽しむことができるでしょう!
本作において、スティーヴとロブはイギリスの人気コメディアンで俳優とされていますが、二人は実際にもそのとおりであり、役名も実際のものが使われています(注6)。
その上、劇場用パンフレットの「解説」では、「(本作には)脚本は存在せず、(監督の)ウィンターボトムが書いた大まかなシノプスに沿って、クーガンと(ロブ・)ブライドンが即興で演じ」たと書かれています。驚きました。
日本で言えば、さしずめ『東海道中膝栗毛』の弥次郎兵衛・喜多八コンビの現代版といったところかもしれません。例えば、二人をタモリとタケシが演じて(注7)、『奥の細道』や『赤光』を携えて、山形市の立石寺とか上山市の斎藤茂吉記念館とかを訪れながら、国道13号線(昔の羽州街道)を福島から秋田方面に向かって走るというプロジェクトはどうでしょう?少なくとも、宿泊地(温泉)と食べ物には何の問題もないでしょう。
(3)フリーライターのりんたいこ氏は、「ときには、2人が人生について考えたり、感傷的になったりする場面もあるが、おおむね彼らの軽妙洒脱な会話が楽しめる愉快な仕上がりだ」と述べています。
(注1)監督は、マイケル・ウィンターボトム。
原題は、『The Trip to Italy』、上映時間108分。
(注2)スティーヴ・クーガンは、『あなたを抱きしめる日まで』で初めて見ました。
(注3)海に面したレストランを訪れた際、二人は、「若い者は俺たちを無視している」「海を見よう、自然は俺たちを拒まない」などと話します。
(注4)本作で二人は、ジェノヴァでバイロンの旧居を、そしてレーリチでシェリーの旧居を訪れています(バイロンとシェリーとは付き合いがありました。なお、シェリーは1822年にレーリチで暴風雨に遭って死んでいます)。
(注5)二人がどんな映画や俳優を持ちだしているのかについては、劇場用パンフレットに掲載の「『イタリアは呼んでいる』をもっと楽しむための手引き」に詳しく書かれています。
同記事によれば、本作では、1953年の『ローマの休日』から2012年の『ダークナイトライジング』までが引用されています。
(注6)劇場用パンフレットには、「アカデミー賞脚色賞にノミネートされた才人スティーヴ・クーガンと、自身の名を冠したTVバラエティーで知られるロブ・ブライドン。それぞれが本人を演じているのですが、映画の中の人物設定と実人生との微妙な重なり合いがミソ」と述べられています。
(注7)ただ、この二人では歳が行き過ぎて『龍三と七人の子分たち』と同じ雰囲気になりかねません。
やはり、本作と同じように50歳くらいの俳優を使うということになると、例えば、阿部寛と堤真一のコンビも考えられるかもしれません(とはいえ、映画に対する造詣の深さとかモノマネということになると、どうでしょうか?)。
★★★☆☆☆
象のロケット:イタリアは呼んでいる