(ジュバ市内の空港近くにある、自衛隊宿営地。気温35度を超える猛暑の中、資材運搬車を使い宿営地作りを続ける先遣隊の隊員=2月19日、南スーダン・ジュバ(早坂洋祐撮影)【2月19日 産経】 http://sankei.jp.msn.com/images/news/120219/plc12021920350007-p2.jpg)
【「ちゃぶ1号」】
南スーダンにおける日本のPKOが本格化してきているということで、各紙がその様子を伝えています。
40℃に達する酷暑、更にマラリアなどとの戦いになるようです。
****南スーダンPKO:陸自先遣隊、敵は気温40度*****
南スーダンの首都ジュバで、国連平和維持活動(PKO)にあたる陸上自衛隊の先遣隊が宿営地整備を急ピッチで進めている。20日には第1次派遣隊の主力120人が到着する予定で、インフラ整備の計画づくりも始まった。20年以上の内戦を経て独立したアフリカ54番目の新国家を支えようと、隊員たちは乾期真っただ中の炎天下で、汗を流す。
ジュバ空港に隣接する国連南スーダン派遣団(UNMISS)司令部。気温が40度を超えた今月15日、砂ぼこりが舞う敷地内に、PKO用に白く塗装され「UN(国連)」と書かれた重機の音が響いていた。
バングラデシュ軍の横に割り当てられた約4万6000平方メートルの荒れ地が陸自の宿営地。隊員は迷彩服を汗でぬらし、間もなく来る主力が当面生活するテントの設営に追われていた。
1月中旬~下旬に到着した先遣隊のうち54人は整地して10張りのテントを立て、一つのテントで6~7人が共同生活する。砂が入らないよう密閉でき、クーラーも設置されている。
あるテントに入ると、余った木材で作ったというテーブルがあった。脇に「ちゃぶ1号」と書かれている。「ストレスがたまった時にひっくり返すんです。何度も使いました」。隊員の一人が笑った。
食事は「戦闘糧食」と呼ばれるレトルト食品で、メニューは米、ハンバーグ、豚角煮など21種類。仕事の後、周辺を他国軍の隊員たちとランニングする隊員も少なくないという。家族との連絡は衛星携帯電話で週10分以内と決められ、週末に利用する隊員が多い。
アフリカでの活動は隊員の健康管理が大きな課題だ。医官の高橋亮太3佐(33)の指導のもと、全員がマラリア予防薬を週1回服用し、熱中症対策で塩分やミネラルを含んだ錠剤を飲む。これまで軽度の熱中症の隊員が1人出ただけといい、高橋3佐は「感染症対策をマニュアル化して後の部隊に引き継ぎ、重症者を出さないよう努めたい」と話す。
陸自の想定活動期間は約5年。雨期の水はけを考え砂利も入れて地盤を固め、資材が届く3月末から長期使用に耐える仮設の宿舎や事務所を建設する。4月にはジュバ市内の道路整備などに取り掛かり、6月ごろ2次隊の330人と交代する。
人口約40万人の首都ジュバには大量の帰還民が戻り、都市が膨張している。ホテルやマンションなどの建設ラッシュで活気あふれるが、インフラ整備の遅れが目立つ。幹線道路から一歩裏に入ると、落差が1メートルもあるでこぼこ道に出くわすことも多い。
自衛隊への期待は大きいようだ。ケニアの難民キャンプから帰還したたばこ屋のピーターさん(45)は「日本人は勤勉だと聞いている。敗戦後に世界有数の経済大国を築いた力で、私たちを支えてほしい」。隣国ウガンダから仕事を求めて来た運転手のダビッドさん(33)も「道路を造ってアフリカの経済発展を助けてもらいたい」という。
道路の整備計画を担当する松崎信義3佐(44)は意気込む。「長く使える道路を造り、南スーダンの人たちの記憶に残る仕事をしたい」【2月20日 毎日】
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“水は車で約30分のナイル川から運んで浄水して使用。乾電池で動くシャワーの水は1人12リットルまでと制限がある。”【2月20日 朝日】とのことです。
【「日本のPKO史上例のない長距離かつ悪条件の陸上輸送だ」】
活動拠点である首都ジュバの空港の整備状態が悪く大型輸送機の離着陸に耐えられないため、大型車両などは陸上輸送するしかない状態で、約700キロ離れた隣国ウガンダの都市エンテベから陸路で物資を搬送しているとのことで、資材の搬入も大仕事です。
空路ならわずか1時間の距離を炎天下、1週間程度かけて、時に凸凹道を通りながらの輸送です。
****南スーダンへ物資陸送700キロ PKO成否握る大作戦****
◆炎天下1週間かけ
赤茶けた土地を切り開いた片側1車線の一直線の道路が延々と続く。道路脇を歩いて通学する子供たちの横を、南スーダンの“建国特需”にあやかろうと、ジュバに出稼ぎに向かうトラックや乗用車が次々と通り過ぎていく。
日本からエンテベまで空輸された陸自の物資は、陸路と空路でジュバまで届けられる。中型輸送機に積載できない大型車両や、飲料水など生活消耗品を陸送している。
国土地理院の「都道府県庁間の距離」によると、東京-広島間が675キロ。日本のように道路の舗装状態がいいわけではない。南スーダンは日本の1・7倍の国土に舗装道路が約60キロしかない。
物資を載せた大型トレーラーは、現地警察官が同乗した警護車に挟まれ、エンテベ空港から約100キロ離れたルウェロという町に到着する。そこで陸自から委託を受けた日本の運送会社の現地駐在員が荷崩れしないよう入念に点検する。
◆1時間ごとに点検
ここから先は未舗装の区間が多く路面の凹凸が激しいため、荷物点検は1時間ごとに繰り返さなければならない。トレーラーに積まれた貨物は大きく揺さぶられ、時速10~20キロほどでしか進めない。南スーダンの国境に近くなるほど路面状態はひどくなる。
南スーダンに入ると道は舗装されている。陸自幹部は「南スーダンにとって、物資が運ばれるのはこの道だけだからだ」と説明する。ただ、現時点ではないものの盗賊との遭遇も懸念されている。雨期になれば路面の陥没とぬかるんだ泥にタイヤを取られ、走行できなくなることも予想される。
輸送計画立案にあたった陸自幹部らは「日本のPKO史上例のない長距離かつ悪条件の陸上輸送だ」と言う。そして、この輸送が順調に続けられるかが「南スーダンでのPKOの成否のカギを握っている」と言い切るのだった。【2月16日 産経】
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【存在感を高めるチャイナマネー】
地道な住民生活の基盤づくりへの貢献が期待される日本PKOですが、例によって資源外交を推し進めている中国は、南スーダンの石油を狙ってジュバでも存在感を増しているようです。
****地下資源眠る南スーダン 石油争奪 中国マネー圧倒****
資源が眠る南スーダンでは、各国による石油争奪戦が展開されている。中でも中国は経済成長と人口増加で増大する石油需要をまかなうため、資源獲得外交で他国を圧倒している。進出した中国系企業は現地に雇用をもたらし、中国の存在感を高めている。国連平和維持活動(PKO)に参加した日本だが、中国に押され、存在感は薄い。
アフリカ東北部を流れるナイル川に架かるジュバ橋。南スーダンの“建国特需”にあやかろうとするウガンダ人やケニア人が長距離バスに乗り、この橋を渡って首都ジュバに入る。
「中国系企業が進出しジュバには働き口があふれている。それを目当てにみんな出稼ぎに来ているのさ」。現地の男性ドライバーはこう話す。
中国は南スーダンにとって最大の貿易相手国だ。ジュバ市内を見渡すと、中国系の石油関連企業や中華料理店が目立つ。地元のスーパーは中国製の日用品であふれ、ジュバ空港に降り立つ東洋人は中国人が多い。
「ジュバにある政府庁舎の建設費をすべて中国政府が肩代わりした」(日本政府関係者)ともいわれる。
国庫収入の98%を石油に依存するといわれる南スーダンは、これまで全量をスーダン経由のパイプラインで輸出してきた。だが使用料をめぐりスーダンと対立。スーダンが石油を抜き取っていることも発覚した。対抗措置として南スーダンは、スーダンを経由せずケニアとジブチに抜けるパイプラインの建設計画を発表した。
日本政府も参画に向け研究を進めるが、中国系企業が資金難の南スーダン政府に協力することで受注を狙っているとみられている。
ただ、中国もここにきて南北スーダンの対立のあおりを受けている。1月下旬にはスーダン側で南スーダン与党、スーダン人民解放運動(SPLM)と関係があるとみられる武装勢力によって29人が拉致される事件が起きた。解放されたものの「南北スーダンの間で中国も対応に苦慮している」(先の日本政府関係者)という。【2月20日 産経】
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【「互いの主権を尊重して領土を侵害せず、爆撃を含む一切の攻撃を加えない」】
南北スーダンの関係は相変わらず険悪ですが、上記記事にあるスーダンを経由せずケニアとジブチに抜けるパイプライン建設は、まだこれからの話です。
****パイプライン計画相次ぎ浮上=スーダンとの対立深刻化―南スーダン****
昨年7月に独立してアフリカ54番目の国となった南スーダンは最近相次いで、ケニアとジブチに抜ける原油パイプライン建設計画を発表した。内陸国の南スーダンにとって、対立するスーダンを経由しない原油輸出経路の確保は悲願だが、巨額の資金調達や政情不安の克服という難題が待ち受けている。
スーダンから独立した南スーダンでは、日量約35万バレルの原油を産出し、原油輸出による収入が国庫収入の98%を占める。だが、スーダン経由のパイプラインで全量を輸出しており、使用料などの対立からスーダン側が原油を抜き取っていることが発覚。先月に原油生産を停止した。
南スーダン政府は「国際基準に照らして過大な使用料を要求している」と反発。スーダンも南の独立で産油量の4分の3を失い、産油地帯アビエイの帰属争いもあり、譲歩は難しい。【2月15日 時事】
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その険悪な両国が「不可侵条約」を締結したとのことですが、その実効性についてはよくわかりません。
少なくとも、悪い話ではないとは思いますが。
****スーダンと南スーダンが不可侵条約締結****
スーダンと南スーダンは、エチオピアの首都アディスアベバで10日、両国の国境画定問題をめぐるアフリカ連合主導の交渉で「不可侵条約」を締結した。
仲介の中心役となった南アフリカのターボ・ムベキ元大統領は、記者団に対し「両国は不可侵と相互協力に合意した」と述べた。
条約の調印は、南スーダンの情報局のトップ、トーマス・ドース氏と、スーダンのムハンマド・アタ国家情報治安局長が行った。
条約によると、両国は「互いの主権を尊重して領土を侵害せず、爆撃を含む一切の攻撃を加えない」ことに合意した。
協議は11日もアディスアベバで引き続き行われ、石油収入とパイプラインの使用料について主に話し合われる。
南スーダンは前年7月にスーダンから分離独立を果たした際、独立以前のスーダンの油田の4分の3を獲得した。しかし、すべてのパイプラインと輸出関連設備の権利はスーダンが握ったままになっている。
南スーダンは前月、スーダンが8億1500万ドル(約635億円)相当の原油を盗んだと非難し、原油生産を停止している。【2月11日 AFP】
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【「部族対立は歴史的に続いている。どこに行っても殺される」】
南スーダン内部における部族間の争いも相変わらずのようです。
ジョングレイ州ピボル周辺では今年1月6日、地元当局者が、昨年末以降3141人の遺体が確認されたと発言して驚かされました。誤報だったとも言われていますが、実態がよく把握されていないのが実情のようです。
“3141人”はともかく、報復の連鎖が続いているのは間違いないようです。
****「銃あれば報復する」=根深い部族対立―陸自PKOには影響軽微か・南スーダン****
「銃があれば報復する」―。南スーダン東部のジョングレイ州で昨年末から今年1月にかけ、牛強奪を背景とした歴史的な部族衝突が激化、数千人が死亡した。同州南西部のチェイニョク村では、4人の子供を奪われた男性が怒り、報復のすべのない村人たちは「武器もなく逃げ場もない」と打ちひしがれていた。
州都ボルから約150キロのピボル周辺では今年1月6日、地元当局者が、昨年末以降3141人の遺体が確認されたと発言。世界に報じられた。
ピボルは、首都ジュバから直線距離で約300キロ。国連平和維持活動(PKO)に加わる陸上自衛隊の活動には影響はないとみられている。
ジュバからボルまでは四輪駆動車で悪路を約4時間かけてたどり着く。ボル郊外のチェイニョク村では住民の大半が逃げ、行き場のない数十人が恐怖におびえていた。村には南スーダン最大部族のディンカ族が住んでいるが、ムルレ族が年末から襲撃し始めた。自動小銃を乱射し多数を殺害した上、子供を奪った。
6~12歳の子供4人を強奪されたデン・ユニさん(40)は「部族対立は歴史的に続いている。どこに行っても殺される」と天を仰いだ。2人の子を持つヨムさん(23)も「どこにも行けない」と途方に暮れた。
同州では、ロウ・ヌエル族の武装集団が、対立するムルレ族を襲撃したり、ムルレ族がロウ・ヌエル族やディンカ族を襲ったりと、復讐(ふくしゅう)が復讐を呼ぶ複雑な衝突が続く。公教育の普及が遅れ、公用語の英語は通じない。部族独自の言語が意思疎通を妨げる。牛を奪われ、子供を誘拐され「憎悪の悪循環」となる。【2月22日 時事】
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道路などは日本陸自のPKOでなんとかすることはできますが、国民統合は南スーダン政府が最優先で取り組むべき課題です。
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