孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  期待される民主化・社会安定へ向けた堅実な取り組み

2012-05-07 21:34:47 | ミャンマー

(ミャンマー・ネピドーの連邦議会下院で議員就任の宣誓をする野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首と党員ら【5月2日 AFP】http://www.afpbb.com/article/politics/2875637/8882537

守旧派の中心人物が辞任?】
国際社会が予想した以上に民主化への動きが進むミャンマーで、守旧派の中心人物とされる副大統領の辞任が一部で報道されています。
事実なら、改革へ向けた流れが更に加速する可能性もあります。

****ミャンマー副大統領が辞表?改革派、勢力拡大か****
米政府の海外向け放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」のビルマ語放送は6日、ミャンマーのティン・アウン・ミン・ウー副大統領が健康問題を理由に辞表を提出したと伝えた。

副大統領は軍政時代の最高権力者だったタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)元議長の側近。テイン・セイン大統領の政治・経済改革に反対する守旧派の中心人物とされる。
国営メディアは副大統領の辞任を伝えていないが、事実とすれば、政権内で改革派が一段と実権を強めた可能性がある。【5月7日 読売】
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【「民主化や国民和解に少数民族政党との連携は欠かせない」「国軍の支持も取り付けたい」】
もっと明確な民主化へ向けた動きとしては、憲法遵守宣誓問題の成り行きが心配されていたスー・チーさんと国民民主連盟(NLD)党員が、国民の期待を実現する形で宣誓に応じ、議員活動を開始したことがあります。

****スーチー議員が始動 初登院、軍との協力も模索****
ミャンマーの最大野党、国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー党首(66)ら38人が2日、国会議員に就任し、国政への一歩を踏み出した。国軍と民主化勢力の対立が20年以上続いたミャンマーは、国会で与野党が国民和解や経済改革などを議論する新しい時代に入った。
スーチー氏らが参加する国会の実質的な審議は、次回会期の始まる7月からとなる見込み。

NLDが得た議席は、宣誓式に欠席した3人を含め、上下両院合わせて41。議会の最大野党勢力だが、全議席(定数664、うち4分の1は軍人枠)の6%にすぎず、他党との連携が大きな課題になる。
NLDはこの日の本会議終了後、少数民族政党の国会議員約20人を招いた昼食会を開催。スーチー氏は懇談で「民主化や国民和解に少数民族政党との連携は欠かせない」と発言。さらに「国軍の支持も取り付けたい」として政治・治安面で強い影響を持つ軍との協力を模索する考えを示した。

昨年3月の民政移管とともに発足した国会は、軍人枠に加え、選挙選出枠の8割を軍政の翼賛政党だった与党、連邦団結発展党(USDP)が占め、当初は政府の政策を追認するだけとの見方が強かった。
しかし政府提出法案の否決や予算案の組み替えなど、行政を監視する立法府の役割を積極的に果たそうとの努力が見られた。民主派議員から出された政治犯釈放決議に与党議員の一部が賛成に回るなど、党議拘束なしの運営も続いた。

NLDは国会の軍人枠撤廃など憲法改正を掲げ、今後、政権与党と対立する可能性もある。国軍は先月23日、大佐が最上位だった軍人枠議員59人を交代し、准将を筆頭とする上位階級の軍人と入れ替えた。スーチー氏との論争に備えた動きとの指摘も出ている。(ネピドー=藤谷健) 【5月3日 朝日】
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“宣誓式に欠席した3人”というのが少し気になりますが、スー・チーさんが現実的対応を選択したことには安堵しました。

与党議員も、国際社会が考えていとような没個性の翼賛組織ではなく、それなりに国会議員としての役割を果たしたいという思いを抱いているように見えます。
もちろん、一気に民主化への変革が議会内で進むとも思いませんが、一定に議論を行える余地はあるようですので、民主化へ向けた動きの一助とはなるのではないでしょうか。

ケシ栽培根絶:兵士の社会復帰や農業の生産力向上など息の長い取り組みが必要
ミャンマー政府の具体的施策のひとつとして、ケシ栽培根絶への取り組みが報じられています。

ミャンマーのケシ栽培・アヘン生産については、
“第2次大戦後、中国・国民党の残党組織がミャンマー東部シャン州に入り、ケシの栽培を進めたとされる。
シャン州とタイ、ラオスの国境地帯は「黄金の三角地帯」と呼ばれ、国民党兵士を父に持つ麻薬王クン・サー氏がここを拠点に麻薬ビジネスを取り仕切った。
同氏は1996年に軍事政権に投降。02年にはケシ栽培が禁止されたものの、武装勢力の資金源になっていた。
UNODCによると、ケシからつくったアヘンの生産は10年時点で580トンで、アフガニスタンに次いで世界の約12%を占めるとされる”とのことです。

****ミャンマー、消えるケシ畑 政府、根絶へ向け本腰****
麻薬の原料となるケシの生産が世界第2位のミャンマーで、同国政府がケシ畑の根絶へ向け、本腰を入れている。主産地だった少数民族地域で武装勢力との停戦が進み、取り締まりの手が入りやすくなったためだ。国連は、生活の糧を失った農家への食糧援助を通じて後押しする方針だ。

■国連、減収農家に支援策
「ケシはやめた。今はジャガイモとお茶を作っている」。東部シャン州の村に住むウカンナンティーさん(48)は、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長とともに現地を訪れた外国人記者団にそう話し、草刈り機でケシを刈り取ったという自分の畑を指し示した。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、栽培面積の大半が集中する同州では、この1年で3分の1以上の畑が消えた。ミャンマー政府は、2011年半ばに全土で4万3千ヘクタールあったケシ畑のうち、半分以上の2万3600ヘクタールを根絶したと主張する。跡地は水田に転作していると説明するが、実際にはそのまま放棄された畑が多いとみられている。

ケシ栽培は、山間部や国境地帯に住む農家にとっては、魅力ある現金収入源だった。UNODCによると、ケシ栽培の収入は1日当たり5千チャット(約480円)。米作の1500チャット(約140円)の3倍以上だ。違法性の認識は低く、家族を養うためにやむを得ず栽培してきた農家が多い。

UNODC幹部は「畑をつぶすだけでは、解決策にならない」と指摘する。停戦や和平がさらに進めば、銃を置いた元兵士たちの就職問題が持ち上がるとみられ、農村の経済全体を立て直す必要がある。

こうした状況を踏まえ、ミャンマー政府は国連に支援を要請。世界食糧計画(WFP)は当面、来年の収穫期までの1年間、米などの食糧を配る方針だ。長期的には、灌漑(かんがい)施設の整備など公共事業を通じて元兵士の雇用を生みだし、開発を同時に進める計画だ。

ミャンマー政府は14年までに麻薬を根絶するという野心的な目標を掲げる。潘氏は「政府が公約として掲げることの意味は大きい」と評価するが、実際には達成は困難との見方が強い。
国連幹部は「国連はここで20年以上、麻薬対策に取り組んできたが、政府と少数民族の対立で政情が不安定で、失敗続きだった。停戦が進んだこの機会をとらえて、兵士の社会復帰や農業の生産力向上など息の長い取り組みが必要になる」と指摘した。5月4日 朝日】
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“主産地だった少数民族地域で武装勢力との停戦が進み、取り締まりの手が入りやすくなった”ことによるものですが、代替作物生産への助成・元兵士の社会復帰という根本的課題への対応を適切に進めれば、少数民族問題は更に進展し、社会の安定も可能となります。

国際的な注目を集めやすい制度的な民主化もさることながら、こうした社会全体の改善・安定化に資する地道な取り組みをミャンマー政府が継続することを期待します。
そうした対応がとられるのであれば、日本を含めた国際社会は強力な支援を惜しまないことでしょう。

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