孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エボラ出血熱  広がり続ける感染 国際社会は・・・

2014-10-04 22:22:43 | 疾病・保健衛生

(エボラ出血熱で兄以外の家族全員を失った少女 手にしているのは、エボラから回復したことを示す証明書 
http://www.huffingtonpost.jp/2014/10/01/ebola-thousands-of-orphans_n_5911464.html

“(ユニセフ報告によると)エボラ出血熱によって孤児となった子供たちは、地域コミュニティーのなかでエボラ出血熱の感染源として見られており、コミュニティーの汚点とみなされることもある。そのため、多くの子供たちが、大人による適切なケアを受けられずに路上生活を余儀なくされている。これらの孤児の約20%は2歳未満だという。”【10月1日 The Huffington Post】)

【「全土に山火事のように広がっている」】
西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱については、
9月17日ブログ「アメリカ 西アフリカのエボラ出血熱拡大へ異例の米軍投入」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140917
9月13日ブログ「エボラ出血熱 西アフリカ全域での感染者の「飛躍的増加」も危惧される」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140913
でも取り上げてきましたが、依然として終息の目途が立っていません。

****エボラ熱死者3439人=WHO****
世界保健機関(WHO)は3日、西アフリカのエボラ出血熱の死者が疑いを含めて1日までに計3439人、感染者が7492人に達したと発表した。前回集計した9月28日から、死者は101人、感染者は314人増えた。

国別の死者は、最も深刻なリベリアが2069人と過半数を占める。ギニアは739人、シエラレオネ623人、ナイジェリア8人。またリベリアから入国後に発症した米国での事例を含め、今回の感染国数は6カ国となった。【10月4日 時事】
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前回10月1日のWHO発表の際には、“新規感染者数は2週間連続で減ったが、WHOは「封じ込めができた兆候はほとんどない」との見解を示した”【10月2日 時事】とのことでした。

WHOの死者、感染者に関する数字はあくまで“公式数字”であり、実態がどうなっているのかわからない怖さがあります。
感染国のひとつ、シエラレオネに関して、以下のようにも報じられています。

****シエラレオネのエボラ感染、「1時間に5人のペース」 国際NGO****
子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は2日、シエラレオネで1時間に5人のペースでエボラウイルスの感染者が増加しており、病床数が大幅に不足していると警告した。

もし現在の「恐ろしい」ペースで感染者の増加が続いた場合、10月末にはシエラレオネで1時間に10人のペースでエボラウイルス感染者が増加することになると、同団体は警告した。(中略)

同団体によるとシエラレオネの先週の新たな感染例は推定765例だったが、全国に病床は327床しかなかった。

また感染者数は「大幅に」過小に報告されている可能性があるという。「多数の子どもが路上や自宅で報告されないまま死にひんしている」と同団体は述べた。

「われわれは恐ろしい流行見通しに直面している。(エボラは)シエラレオネ全土に山火事のように広がっており、3週間ごとに新規感染者数が倍増している」と、セーブ・ザ・チルドレンのシエラレオネ責任者、ロブ・マクギルブレー氏は語った。【10月2日 AFP】
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“1時間に5人のペースでエボラウイルスの感染者が増加”“3週間ごとに新規感染者数が倍増”・・・・WHO発表の数字とは異なる様相ですが、おそらくこちらが実態に近いのではないでしょうか。

なお、感染者が最も多いリベリアは上記シエラレオネより更にひどい状況にあると思われます。

困難な隔離作業
感染拡大防止のためには、感染者の隔離が必要になります。
しかし、“隔離”を完全に行うというのは非常に困難な作業です。

アメリカ疾病対策センター(CDC)は9月30日、アメリカ国内の南部テキサス州でエボラ出血熱の感染者を確認したと発表しました。

リベリアから帰国した男性ですが、症状が出た際の最初の受診でエボラ出血熱感染の可能性が見落とされたミスもあって、保健当局は接触者の隔離にやっきになっています。

当初の聞き取り調査の対象となっている人はおよそ100人に上るとも報じられていましたが、実際の隔離は10人ほどに絞り込まれたようです。

****エボラ患者接触、隔離は10人―米****
米テキサス州の保健当局者は3日、同州ダラスで男性がエボラ出血熱を発症したことに関連し、男性が接触したとみられる約50人を経過観察が必要な対象として絞り込んだことを明らかにした。

このうち10人は感染の可能性が相対的に高いと位置付けられている。ロイター通信によると10人は隔離された。

10人には、男性が発症した際、滞在先のダラス市内のアパートにいた知人4人が含まれる。これまでのところ男性以外に感染が確認された人はいない。【10月4日 時事】
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たった一人の感染者に係る“隔離”作業についてすら、上記のような大変な作業です。

感染者が公式数字でも7492人にものぼり、もともと十分とも言えなかった現地医療体制は崩壊しているとも言われ、路上に患者が放置されている、あるいは患者がタクシーで病院を探して街中を走り回っている・・・・そんな現地において、どのような“隔離”が可能なのかは推して知るべしです。

広い地域全体を隔離するという方法もありますが、その地域内に取り残された住民はどうなるのか・・・という非常にシビアな問題が出てきます。

エボラ出血熱の流行は1976年以来アフリカで繰り返されてはいます。
これまでは感染地域の村落が全滅することで、自然に感染拡大も終息に向かっていましたが、今回は都市部に広がり、更に国境を越え、手の付けられない状態となっています。

驚愕の“最悪シナリオ”】
関係者から「闘いに負けている」「完全に圧倒されている」という言葉が出ていることは、前回ブログでも紹介しました。

そんななかで、先週“とんでもない”数字も発表され、話題となりました。

****西アフリカ2か国のエボラ感染者、最悪140万人に 米機関****
米疾病対策センター(CDC)は23日、西アフリカのリベリアとシエラレオネでエボラ出血熱の感染者数が最悪の場合、2015年1月までに140万人に急増する恐れがあると推測した報告書を公表した

CDCは、来年1月20日までのリベリアとシエラレオネ両国におけるエボラ感染者数を55万~140万人と予測している。

これは、史上最悪の規模となった現在のエボラ出血熱感染は実情より過少報告されていると推測し、把握した数字を2.5倍して算出したものだ。

一方専門家らは、CDCの推測は、これまでに感染者約6000人の約半数が死亡している西アフリカのエボラ出血熱の対策を米国が強化する以前の8月時点の数字を基にしており、現状を正確に反映していないとの見解を示している。【9月24日 AFP】
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“CDCのトム・フリーデン所長は記者会見で、看過した場合の代償を世界に示すため、予測モデルの公表に踏み切ったと説明。「もう一刻の猶予もない。今後の一日一日が結果を左右する」。
ただし、望みがないわけではないと、フリーデン氏は強調している。「今すぐ対策を講じれば、沈静化を期待できるだろう。最悪のシナリオが現実になることはないと私は確信している」。”【9月24日 ナショナルジオグラフィック】とも。

アメリカ疾病対策センター(CDC)という、世界でもっとも権威ある機関のひとつからの数字ですから、驚きました。
あくまでも“最悪シナリオ”ではありますが。

国際社会の支援も加速
フリーデン氏によれば、予測モデルには3週間前のデータが使用されており、アメリカの兵士や医療従事者が現地スタッフの訓練や支援を開始した現在、状況は変わり始めているとのことです。

オバマ米大統領の特別顧問とアメリカ国家安全保障会議のシニアディレクターを務めるゲイル・スミス(氏は記者会見で、「毎日のように新たな人材が投入されている」と説明しています。

更にアメリカは、3200人としていた派遣規模を拡大する可能性も示しています。

****4000人規模に拡大も=エボラ対策で現地派遣米軍****
米国防総省のカービー報道官は3日、西アフリカで流行するエボラ出血熱の感染拡大阻止に向け、現地に派遣する米兵の規模を、既に動員が決まっている約3200人から約4000人に拡大する可能性もあるとの見通しを示した。記者会見で語った。

報道官は「派遣規模が4000人近くになるかもしれないと考えている。どれだけ必要になるか毎日見積もりを見直している」と語った。

報道官によれば、既にリベリアの首都モンロビアに205人、セネガルに26人の米兵が到着している。米軍は、ベッド100床の治療施設計17カ所の設置などを柱にした支援策を実行に移す計画だ。 【10月4日 時事】
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医療スタッフを派遣しているキューバも増派を決定しています。

****エボラ熱対策で医師増派=キューバ****
キューバ政府は、西アフリカで感染が拡大しているエボラ出血熱の封じ込めに向け、現地に派遣する医師と看護師を計約460人に増員することを決めた。キューバのメディアが26日報じた。

キューバは既に、エボラ熱対策の訓練を受けた医師と看護師計165人のシエラレオネ派遣を決定。今回、新たに296人をリベリアとギニアに派遣することにした。【9月27日 時事】 
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やや遅きに失した感はありますが、国連も緊急ミッションを始動しています。

****エボラ拡大阻止は「世界の最優先事項」 国連が緊急ミッション始動***
西アフリカで流行するエボラ出血熱の世界的な拡大を阻止するために国連(UN)が「最優先事項」として立ち上げた「国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)」が2日、始動した。

UNMEERを率いるアンソニー・バンバリー氏が同日、エボラで最も大きな被害の出ている西アフリカの3か国視察を、リベリアの首都モンロビアからスタートさせた。

バンバリー氏は、エボラ流行の危機を終わらせる唯一の方法として、「最後の1人までエボラ患者をなくすことができれば、他者への感染リスクはなくなる。これが達成できた時が、UNMEERが去る時だ」と語った。

バンバリー氏によれば、UNMEERは保健および教育関連活動に加え、まだエボラ感染が及んでいない近隣諸国に感染を防ぐ措置として輸送手段を提供するという。

バンバリー氏は報道陣らに「UNMEERの活動が早く終結するほど、われわれ全てにとって望ましい」と述べ、「できるだけ早く達成したい。それは失われる命も少ないことを意味するからだ」と語った。【10月3日 AFP】
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今頃“3か国視察をスタート”でもないとは思いますが、対応しないよりはましでしょう。
こうした国際社会の対応もあって、140万人感染という最悪シナリオが回避されることを期待します。

なお、安倍首相は先週の国連の会合で、日本として4000万ドル相当の追加支援を行うことを表明しています。
これを受けて、日本政府は、国際機関を通じて、現地の医療活動などを支援するため2200万ドル(およそ24億円)の緊急無償資金協力を実施することを決定しています。

付随する問題・・・親を亡くした子供
感染者の医療も当然ですが、それ以外にも、例えば隔離地域住民の生活(食糧確保など)をどうするのか・・・といいた問題も起きていることは、これまでのブログでも取り上げてきたところです。

エボラで親を亡くした子供をどうするのか・・・という問題も起きています。

****エボラ出血熱>親失い行き場ない子供激増 3700人以上*****
西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱で、両親または片親を亡くした子供が3700人以上に上ることが、国連児童基金(ユニセフ)の推計値で明らかになった。親を亡くす子供は最近数週間で激増しており、今月中旬までに倍増する恐れもあるという。

ユニセフは9月30日に推計を発表。これらの子供たちの多くが、感染への恐れのために親類などから世話を拒まれたりしていると指摘、「子供たちへの配慮と支援が急務」と呼び掛けている。【10月4日 毎日】
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