孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  西アフリカのエボラ出血熱拡大へ異例の米軍投入

2014-09-17 22:04:18 | アメリカ

(“flickr”より By David Jordan https://www.flickr.com/photos/114803223@N07/15072058898/in/photolist-oY8L4p-oY7df4-oY9GYd-pfqjTa-peR8ag-oXEj6h-oXuGk7-oxR3Xj-oC2ibt-pfDVoX-okyoAK-osaN3j-pauFaK-pfz6gZ-oXSf1s-oYq3S1-oxm4JH-oQWtYx-ojbMey-pcoQai-ouJ7ct)

9月13日ブログ「エボラ出血熱  西アフリカ全域での感染者の「飛躍的増加」も危惧される」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140913)に引き続き、エボラ出血熱関連の話・・・と言うより、アメリカの話というべきか。

西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱の現状については、WHOの16日、西アフリカ5か国での感染者数は疑い例を含め4985人、死者は2461人になったと発表しています。

****国別の内訳****
リベリア 死者1296人 感染者2407人
ギニア  死者595人 感染者936人
シエラレオネ 死者562人 感染者1620人
ナイジェリア 死者8人 感染者21人
セネガル 1人が感染後回復
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関係者からは「対応能力をはるかに上回るペースで感染が拡大している」「闘いに負けている」「完全に圧倒されている」といった声が出ていること、WHOは西アフリカ全域での感染者の「飛躍的増加」を予想しており、特にリベリアでは今後数週間で数千人規模の新たな感染者が出る恐れがあると警告していることなどは前回ブログでも取り上げました。

今後の予測では、感染者は2万人を超えるとも言われていますが、実態が正確に把握されていないことを考えると、もっと悪い事態が進行していることすら懸念されます。

****エボラ封じ込めに1千億円…年内2万人超感染か****
国連は16日、エボラ出血熱の封じ込め対策に9億8700万ドル(約1050億円)の資金が必要との試算を発表した。

資金の内訳は、感染者の診断と治療にかかる費用、死亡した患者を安全に埋葬するための費用など。総額の約半分は、感染者の増加が著しいリベリアに充当されるという。

リベリアのほか、シエラレオネ、ギニアでもエボラ出血熱の治療にあたる医療設備や医師・看護師の不足が深刻となっている。

国連は感染者の累計が年内に2万人になるとの見通しも示した。最終的な感染者は2万人を超えるとの見方が有力となっている。【9月17日 読売】
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リベリアの国防相は安保理で、「リベリアは国家存亡をかけた深刻な脅威に直面している」と発言していること、現地では医療スタッフが絶対的に不足いることなども、キューバが医療団を派遣することなどは前回ブログで取り上げたところです。

こうした危機的状況のなかで、アメリカ政府は16日、エボラ出血熱の封じ込めに向け、米兵約3000人を動員した米軍主導の大規模支援を実施することを決めました。

****放置すれば感染数十万人も=エボラ熱対策で大規模支援―オバマ米大統領****
オバマ米大統領は16日、南部ジョージア州アトランタの疾病対策センター(CDC)で演説し、西アフリカでのエボラ出血熱の流行封じ込めに向けた米軍主導の大規模支援策を発表した。

大統領は、流行拡大を今すぐ止めなければ「数十万人が感染する事態に直面する恐れもある」と強調。国際社会には直ちに行動する責任があると訴えた。

大統領はこれより先、エボラ熱対策について「国家安全保障上の優先事項だ」と述べ、米軍を投入する方針を示していた。

大規模人道援助に不可欠な施設や機材を提供する米軍の能力は、昨年フィリピンを襲った台風災害などで証明済み。米政府は疾病対策でも、国際社会の支援活動を支えるために米軍のインフラを活用できると期待している。

大統領は演説で、「(エボラ熱で)2400人以上が死亡したとされるが、実際の死者数はさらに多いと強く疑っている」と表明。

「エボラはこれまで経験したことがないほど流行しており、制御不能の状態に陥りつつある」と指摘し、パニックが広がれば、世界全体に政治・経済・安全保障面で深刻な影響を及ぼすと警告した。【9月17日 時事】 
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米軍はこれまでも東日本大震災(2011年)や米国内外のハリケーンなど自然災害の被災地に出動し、医療支援を行ってきましたが、疾病対策に乗り出すのは極めて異例とされています。

****米軍3000人投入へ 医療支援や施設建設****
国連安全保障理事会議長のパワー米国連大使は15日、エボラ出血熱の感染拡大を防ぐため、18日に緊急会合を開催することを明らかにした。

AP通信によると、武力紛争やテロなど、平和への脅威を議論する安保理で公衆衛生がテーマになるのは2000年のエイズ対策以来初めて。
(中略)
具体的には、リベリアの首都モンロビアに米政府機関や国際NGO(非政府組織)の活動を調整する司令本部を設置し、医療設備や資材、要員を必要地域に素早く投入できるようにする。

ホワイトハウスや米メディアによると、ほかに▽治療施設(100床)を17カ所建設▽毎週500人の医療要員を教育できる訓練施設を導入▽感染リスクの高い住民40万世帯に消毒液やマスクなど「予防キット」を配布--など。リベリア政府からは了解を取っているとみられる。

これまで医療関係者にも感染が広がっていることから、今後現地入りする米軍関係者が感染する可能性は否定できない。

オバマ大統領が米軍出動の大胆な対策に乗り出した背景には、11月の中間選挙を控える中、米国内外でエボラ熱への対応が不十分との批判がくすぶり続けていたこともありそうだ。【9月16日 毎日】
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米軍の投入にしても、安保理での検討にしても異例のことですが、事態がそれほど悪化しているということでもあります。

オバマ大統領は世界各国や国際機関にも感染拡大国への支援を要請。18日の安保理に続き、来週には国連の潘基文(バンキムン)事務総長と共に各国に呼びかけを行うとのことです。

医療スタッフをはじめ、現地スタッフが絶対的に不足している状況で、米兵約3000人の動員というのは、制御不能状態のリベリアなどにとってはありがたい話です。

感染リスクにもかかわらず、また、疾病関係での動員が異例とされるなかでの米軍投入の背景に、単なる危機対策以外の何かの思惑があるのか・・・そのあたりは知りません。

ただ、アメリカにどういう思惑があるにせよ、現地にとって“ありがたい話”であることには変わりありません。

アメリカは「イスラム国」対応でシリア空爆を含む戦線拡大の決断が世界的に注目されていますが、エボラ出血熱に対する今回対応も特筆すべきものでしょう。

正直な感想としては、なんだかんだ言っても、世界の警察官がどうこうとは言っても、アメリカの国際的影響力が低下しているとは言っても、結局アメリカが動かないと現在の世界情勢は動かない、こういうときに頼れるのはやはりアメリカか・・・・という思いがあります。

こういう国と他の国の発言力に差があることもやむを得ないところです。

また、今後アメリカの“内向き”志向が更に進んだ場合、世界はどうなるのか・・・という不安も感じることも正直なところです。

エボラ出血熱に関しては、これまでは当事国と国際医療団体「国境なき医師団」にまかせきりの感もありましたが、今回の米軍投入を機に、やや影が薄かったWHO・国連が前面に立つ形で国際支援体制がとられ、エボラウイルスに対する反転攻勢がかけられることを期待します。
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