孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

西アフリカ  1年半に3か国でクーデター

2022-02-04 23:38:20 | アフリカ
(ブルキナファソの首都ワガドゥグで、反乱を主導したポールアンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐の写真を掲げ、軍への支持を表明する人(2022年1月25日撮影)【1月26日 AFP】)

【西アフリカ イスラム過激派とクーデターのイメージ】
“西アフリカ”に関するニュースと言えば、イスラム過激派の勢力拡大かクーデターなどの政治混乱・・・・といったイメージです。

両者は表裏一体で、政情が不安定なのでイスラム過激派に狙われることにもなりますし、政治の恩恵を受けられ人々の存在が過激派の温床ともなります。また、そうした過激派などの暴力が蔓延することで政権が揺らぎ政治混乱が拡大するという面も。

その西アフリカでイメージどおりの政治混乱が続いています。

【マリ 文民大統領を拘束して軍事政権へ フランスとの関係悪化】
****2度のクーデターに軍政批判 混乱のマリ情勢 過激派伸長の懸念も****
西アフリカ・マリの政情が混乱している。2020年8月と21年5月に2度のクーデターが起き、相次いで大統領が辞任に追い込まれた。暫定政権は来年の総選挙実施と民政復帰を掲げるが、混乱に乗じてイスラム過激派が勢力を伸ばす懸念も高まっている。
 
2度のクーデターを首謀したのは国軍大佐のゴイタ氏(38)で、まず20年8月にケイタ大統領(当時)の身柄を拘束して退任させた。政治腐敗や選挙での不正疑惑で国民の不満が高まっていたことが背景にあり、クーデターは国民の間でも一定の支持を集めた。
 
ただ、国際社会から「民主主義に反する」と批判が続出したこともあり、文民と軍出身者が共同で暫定政権を担うことにした。ゴイタ氏は副大統領に就任した。
 
ところが、ゴイタ氏が率いる軍は21年5月24日、暫定政権のヌダウ大統領とウアンヌ首相の身柄を拘束して追放する2度目のクーデターを実行した。暫定政権内で軍と文民出身者の間にあつれきが生じ、直前に発表された内閣改造人事で軍出身の閣僚2人がポストから外されたことが引き金になったとみられる。
 
今回はゴイタ氏自身が暫定政権の大統領に就いた。ロイター通信によると、6月7日の就任式でゴイタ氏は「民政復帰のプロセスを、人々が望む方向に戻す機会が与えられた」と正当性を主張し、来年2月の大統領選と総選挙の実施を約束した。
 
これに対し、国際社会はゴイタ氏らへの批判を強めている。米国は5月、2度目のクーデターを「強く非難する」との声明を発表。アフリカ連合(AU)や、周辺15カ国で作る「西アフリカ諸国経済共同体」(ECOWAS)は、マリの加盟資格を停止する処分とした。
 
ただ、ECOWASなどはマリ政府との決定的な関係悪化を避けたい意向で、経済制裁には及び腰だ。ゴイタ氏は首相に野党指導者のマイガ氏を指名し「軍事政権」との批判をかわそうとしている。
 
一方、マリではイスラム過激派の活動が活発で、13年には過激派が首都バマコに迫り、旧宗主国のフランスが軍事介入した。
 
過激派は一時弱体化したものの、隣国のブルキナファソやニジェールとの国境付近に移って勢力を保っている。NGO「武力紛争位置事件データプロジェクト」は、対テロ作戦でマリ軍の能力が十分でない上、政治の混乱で仏軍との協力にも悪影響が出ていると指摘する。
 
さらに、フランスのマクロン大統領は6月10日、マリを含む西アフリカに駐留させている5000人規模の軍隊を撤収させる方針を表明した。派遣に伴う費用や犠牲者の増加が重荷となっているためだが、今後、マリの治安悪化に拍車がかかる恐れもある。【2021年6月22日 毎日】
*********************

フランスの関与縮小の空白を生めるようにロシアの民間軍事会社がマリなど西アフリカ地域で活動を活発化差せているという件は、2021年12月28日ブログ“西アフリカ・マリでの欧米の関与縮小の空白を埋めるロシアの民間軍事会社傭兵”でも取り上げました。

マリ軍事政権と旧宗主国フランスの関係は悪化しているようです。

****仏大使を国外追放=軍政、敵対姿勢強める―マリ****
政情不安が続いているアフリカ西部マリの軍事政権は31日、国営テレビを通じ、フランス大使を国外追放すると発表した。72時間以内の国外退去を求めている。

マリ軍政は、仏政府からの最近の「敵対的」発言が追放の理由だと説明、フランスへの敵対姿勢を強めている。AFP通信が報じた。
 
マリ軍政は24日、フランスが主導するマリでの欧州特殊部隊に参加していたデンマーク軍に帰国を要求。これに対し、パルリ仏国防相は「挑発している」とマリを非難。ルドリアン外相も「無責任」だと批判していた。【2月1日 時事】 
*******************

【ギニア 3選を目指した大統領 国民不満を背景に軍のクーデター】
昨年9月にはギニアでクーデターが起きました。

****西アフリカのギニア、軍の特殊部隊が大統領拘束 憲法停止を宣言****
西アフリカのギニアで5日朝、首都コナクリにある大統領官邸付近で銃撃が発生し、数時間後に同国軍の特殊部隊がコンデ大統領を拘束した。同部隊の幹部は大統領を解任し、政府を解散、憲法を停止したと宣言した。

特殊部隊を率いる元フランス外国人部隊兵士のママディー・ドゥムブヤ氏は国営テレビで「貧困と腐敗のまん延」がコンデ氏解任の原動力になったと表明。「われわれは政府と各機関を解散した」とし、「われわれは協力して憲法を改正する」と述べた。

銃撃の数時間後にソーシャルメディアに投稿された動画では、コンデ氏が室内で軍の特殊部隊に囲まれている姿が映されている。ロイターは動画が本物かどうかを確認できていない。

軍関係筋によると、特殊部隊はコンデ氏以外にも政府高官を含む複数人を拘束した。

コンデ氏を拘束した特殊部隊の兵士組織は、コンデ氏に危害は加えておらず、健康を保証しているとの立場を示した。また、軍司令官らが地方政府の首長の座を掌握したと表明した。

声明で、解任された閣僚や各機関のトップを議会で6日午前に開かれる会議に招待したとし、特殊部隊の兵士組織を「国家集結・発展委員会(CNRD)」と自称して「会議への出席を怠ればCNRDへの反逆と見なす」と強調した。

コンデ氏は2期を経て、再出馬が可能になるよう改憲し、昨年10月の選挙で3選。野党は激しい抗議を繰り広げた。

政府はここ数週間に大幅増税や燃料費の引き上げを決めており、市民の間に不満が広がっていた。

5日夜時点で、ドゥムブヤ氏が全権を掌握したかどうかは不明。国防省は大統領官邸への攻撃は撃退したと発表している。

グテレス国連事務総長は「武力によるいかなる政府転覆」も強く非難すると表明し、コンデ氏の即座の解放を求めた。

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のトップは、クーデターだと批判。アフリカ連合(AU)は緊急会合を開いて「適切な措置」を講じる考えを明らかにした。【9月6日 ロイター】
************************

クーデターを首謀したママディ・ドゥンブヤ大佐は10月1日、軍事政権の暫定大統領に就任しています。

紛らわしいですが、ギニアの隣国がギニアビサウ。ギニアが旧フランス植民地であったのに対し、ギニアビサウは旧ポルトガル植民地。そのギニア・ビサウでも混乱が。

****ギニアビサウ、首都で銃撃戦 クーデター未遂か****
西アフリカ・ギニアビサウの首都ビサウにある政府施設付近で1日、激しい銃撃戦があった。後にエンバロ大統領がビデオ演説し、事態の収拾を宣言。ロイター通信などはクーデター未遂と伝えた。エンバロ氏は、自身の殺害を狙った「麻薬密売に関連した」人物らによる攻撃と説明し、軍部の関与を否定した。
 
当時この施設では閣僚らの会議が開かれていた。エンバロ氏は、戦闘で多数の治安部隊員が死亡したと明かし、複数人の拘束も発表した。拘束された人物らの素性は不明。
 
西アフリカでは1月下旬、ブルキナファソで軍がクーデターを起こし、大統領の追放と憲法の停止を宣言したばかり。【2月2日 共同】
*********************

続報を目にしていないのでよくわかりませんが、クーデターは未遂に終わったようです。

もっとも、ギニアビサウは“独立後、1990年代以降は内戦(英語版)が勃発し、軍の反乱やクーデターが頻発するなど不安定な政治が続き、経済的にも依然として世界最貧国の一つとなっている”【ウィキペディア】という国ですから、混乱は日常茶飯事とも言えますが。

【ブルキナファソ イスラム武装勢力への対応に不満の軍のクーデター】
上記記事にもあるように、1月24日にはブルキナファソでもクーデターが起きています。

****ブルキナファソ、軍が全権掌握 将校が発表****
アフリカ西部ブルキナファソの軍は24日、全権を掌握し、ロック・カボレ大統領の政権を転覆させたと発表した。
軍将校が国営テレビで発表した。治安情勢が悪化したため、軍が権力を奪取したと説明した。

ブルキナファソでは、イスラム教主義の反政府勢力の動きを止められないことに対して、カボレ大統領への不満が高まっていた。

大統領の消息は明らかになっていない。軍将校は、拘束した人々は安全な場所にいると述べた。
治安当局関係者は、大統領と閣僚らが首都ワガドゥグの兵舎で拘束されていると話した。

カボレ大統領のツイッターのアカウントには、軍将校による発表の前に、2件の投稿があった。2件目の投稿は、「より高次の国益のため」、兵士たちに武器を置くよう求めている。誰が投稿したのかは不明。

今回のクーデーターの前日には、首都ワガドゥグで軍部隊が兵舎を占拠し、発砲音が聞こえていた。
与党・国民進歩運動(PMP)はクーデーターの前、カボレ大統領と閣僚1人が暗殺未遂にあったと明らかにしていた。

23日には軍部隊の反抗勢力が、軍上層部の解任を要求。さらに、イスラム国(IS)やアルカイダとつながりのある武装勢力と戦うため、より多くの資源が必要だと訴えていた。

「国をまとめられなかった」
軍将校は声明を読み上げ、カボレ大統領は国をまとめられず、「私たちの国の根本を脅かす」治安危機に効果的に対処できていないと主張した。

声明は、未知の団体「防衛と再建のための愛国運動」(MPSR)の名前で出された。読み上げた将校とは別の将校、ポール=アンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐が署名している。

同中佐は今回のクーデターを主導したとみられている。イスラム武装勢力との戦いで長年の経験を有している。
声明は、議会と政府は解散され、憲法は停止されたとした。ただ、「妥当な時間」内に「憲法の秩序を回復」すると約束した。また、ブルキナファソの国境は閉鎖されたとした。

国連などが非難
国連のアントニオ・グテーレス事務総長はクーデターを非難し、軍に対してカボレ大統領の「保護と身体的な無事の保証」を求めた。

アフリカ連合(AU)と、地域連合体の西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)も、武力による権力奪取を非難している。ECOWASは、大統領の安全について、関与した兵士の責任を問うとしている。

BBCのアン・ソイ・アフリカ特派員は、カボレ大統領の拘束のニュースが流れると、首都ワガドゥグでは歓喜や祝福の声が上がったと伝えた。

首都の様子を捉えたビデオ映像には、大統領が使用していたとされる武装車両が、多数の銃弾の穴が開いた状態で路上に放置されているとみられる状況が映っている。

無線インターネットは接続ができなくなっているが、有線では接続が可能で、家庭などのWi-Fi(ワイファイ)は機能しているという。

23日には、市民ら数百人が屋外で兵士への支持を表明した。与党本部の建物に火をつける人もいた。

ブルキナファソでは1週間前、カボレ政権の転覆を謀ったとして、兵士11人が逮捕されていた。
昨年11月には、治安部隊のメンバーを中心とした53人が、ジハーディスト(イスラム聖戦主義者)とみられる勢力に殺害された。今月22日には、同国で禁止されている、政府に対する抗議デモが開かれ、数十人が逮捕された。

西アフリカで近年、軍による権力奪取が起きたのは、ブルキナファソで3カ国目となった。前2国のギニアとマリにはECOWASが制裁を科している。【1月25日 BBC】
**********************

2012年にマリでも同様に、イスラム武装勢力との戦いで武器が足りないという軍の不満からクーデターが起きています。

西アフリカでクーデターが頻発・・・とは言っても、北アフリカのリビアは東西分裂、東アフリカのエチオピアは内戦状態、スーダンでも政治混乱が続いていますので、別に“西アフリカ”だけの話でもないのでしょうが。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウクライナへロシアが軍事進... | トップ | トルコ・エルドアン大統領 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アフリカ」カテゴリの最新記事