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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カナダ・オーストラリア  反トランプ世論が逆転させる総選挙情勢

2025-04-29 22:53:46 | 国際情勢

(自由党の勝利が確実になり、同党本部で支持者らを前に笑顔で手を振るマーク・カーニー首相(29日、オタワ)【4月29日 BBC】)

【カナダ  トランプ大領への世論反発で、20ポイント差を逆転して与党勝利】
カナダでは28日、総選挙の投票があり、アメリカ・トランプ政権による高関税政策やカナダ併合論への対応を主要な争点とする異例の選挙戦が展開されました。

トランプ大統領は28日、SNSでカナダ併合論を改めて主張。米国に併合されれば「関税はなくなる。良いことばかりで悪いことはない」と述べ、持論を繰り返しています。

****トランプ氏「カナダは米国の州でなければ」 総選挙当日に挑発の投稿*****
カナダで下院選の投票が始まった28日、トランプ米大統領は「カナダは(米国の)州でなければ意味がない」などと自身のソーシャルメディアで挑発し、カナダの主要政党の党首は一斉に反発した。

トランプ氏は投稿で、自身への投票を促すかのように「関税や税金をゼロとする強さと知恵を持った人物を選ぼう」と記した。またカナダが「愛すべき(米国の)51番目の州」となれば「世界最高レベルの軍事力を無料で」享受し、主要産業の規模を「4倍」にできると一方的に主張した。

カナダ総選挙は関税や併合に言及して揺さぶりをかけるトランプ氏への対応が最大の焦点となっている。与党・自由党を率いるカーニー首相はトランプ氏に直接言及せず「ここはカナダだ。ここで起きることは私たちが決める」とX(ツイッター)に投稿した。

最大野党・保守党のポワリエーブル党首もXで「トランプ大統領、私たちの選挙に関わらないでほしい」と反発。「決してカナダは51番目の州にはならない」とも記した。【4月29日 毎日】
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最大野党・保守党のポワリエーブル党首の「トランプ大統領、私たちの選挙に関わらないでほしい」というのは切実な本音でしょう。

今年1月の世論調査では、野党・保守党が20ポイントのリードで、総選挙は圧勝の“はず”でした。

ところが隣国アメリカのトランプ大統領の上記のような併合論や関税に世論は憤慨、トランプ政権との対決姿勢をとるカーニー首相と与党・自由党の支持率がグングン上昇。トランプ大統領に宥和的とみられた野党・保守党はついに逆転を許す急展開となってしまいました。

****カナダ総選挙、与党が支持率リード 「強い信任を」と首相訴え****
カナダのカーニー首相は21日、トランプ米大統領による関税の脅威に対処するため、28日の総選挙で強固な信任を与えてほしいと有権者に改めて呼びかけた。

東部プリンスエドワード島のシャーロットタウンで開かれた集会で、トランプ氏による関税と併合に関する発言は大きな脅威だとし、カナダが米国依存を減らして経済を再構築する必要があることを意味していると強調。

「強く明確な信任を受けた政府が必要だ。時宜を得た計画を持った政府が必要だ」と訴えた。

世論調査によると、野党保守党は年明けに支持率で与党自由党を20ポイントリードしていたが、現在は自由党に後れを取っている。

21日に公表されたナノスの世論調査では、自由党の支持率は43.7% 、保守党は36.3% だった。
自由党と中道左派の票を争う新民主党の支持率は10.7%。

この支持率が投票に反映されれば、自由党は下院343議席の過半数を獲得することになる。【4月22日 ロイター】
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結果は・・・与党・自由党が第1党を確実にしています。

****「トランプ氏の分断工作許さない」 カナダ首相が選挙勝利演説*****
カナダ総選挙(下院、定数343議席)が28日、投開票された。カナダ放送協会(CBC)などは、3月に就任したカーニー首相が率いる中道左派・自由党が第1党となり、政権を維持することが確実な情勢と伝えた。単独で過半数を確保できるかが焦点となる。

カーニー氏は勝利演説し、「米国がカナダを手に入れるため、トランプ氏が我々を分断しようとしている。それはあってはならない」と国民に団結を呼びかけた。

自由党は、隣国のトランプ米大統領が関税や「併合」に言及して揺さぶりをかける中、対米強硬路線を明確に打ち出し、リベラルな野党や地域政党の票も取り込んだ。

長引く物価高騰の影響などを受け、少数与党の自由党の支持率はこの数年低迷が続いた。今年1月初旬にはCBCがまとめる各種世論調査の平均で約20%にまで落ち込んだが、トルドー前首相の辞任とトランプ米政権の発足を機に急回復。

最大野党の中道右派・保守党は終盤で追い上げたものの、議席配分の多い大都市圏を抱える東部オンタリオ、ケベック両州での劣勢が響いた。

3月の自由党党首選で圧勝したカーニー氏は政権基盤の安定を目指し、10月までに予定されていた総選挙の前倒し実施に踏み切った。カナダの下院選は小選挙区制で第1党の党首が首相に就く。元中央銀行総裁で議席がないまま首相に就いたカーニー氏もオタワの選挙区から出馬した。【4月29日 毎日】
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カーニー氏は「トランプ大統領は、アメリカが私たちを所有できるよう、私たちを壊そうとした。それは絶対に起こらない」、「これまでのアメリカとの統合関係は終わった」、「私たちはアメリカの裏切りによるショックを乗り越えた。互いをいたわることが必要だ」と支持者に語っています。【4月29日 BBCより】

カナダのバンクーバーでは選挙直前の26日夜、フィリピン文化を祝う伝統的な祭りの歩行者天国に車が突っ込み11人が死亡する事件がありましたが、車を運転していた現地に住む30歳の男は精神的な問題があったとみられ、「今回の事案はテロ行為ではないと確信している」(警察の声明)ということで、選挙に大きく影響することはなかったようです。

トランプ大統領がどういう意図でカナダ併合論を選挙当日まで拡散していたのかは知りませんが、結果的に、反トランプの首相・与党勝利をアシストした形になっています。

【オーストラリア  カナダ同様の展開 「安物トランプ」と揶揄される野党苦戦】
カナダと似たような状況にあるのがオーストラリア。
オーストラリアでは5月3日投開票の総選挙を巡り、一時優勢とされた野党・保守連合(自由党と国民党)が苦戦を強いられています。

野党・自由党のダットン党首はトランプ大統領類似の政策を主張していましたが、世論のトランプ大統領への反発が強まるなかで、「安物トランプ」とも揶揄される状況に陥っています。

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「安物トランプ」 豪総選挙、対米感情悪化で保守系野党が苦戦****
5月3日投開票のオーストラリア総選挙を巡り、一時優勢とされた野党・保守連合(自由党と国民党)が苦戦している。1月に就任したトランプ米大統領を巡る「誤算」が大きな要因で、巻き返しに躍起となっている。

「#TemuTrump」
選挙に向け、豪州の交流サイト(SNS)上ではこんなハッシュタグ(検索目印)が頻出するようになった。中国発の格安オンライン通販「Temu(テム)」と、トランプ氏を掛け合わせた文言で、自由党のダットン党首を「安物のトランプ」と冷やかす意図がある。

「政府効率化」「反DEI」
「ダットン氏はトランプ氏と結びつけられたことで、非常に困難な政治的立場に追い込まれた」。そう語るのは、独立系シンクタンク「オーストラリア研究所」のエマ・ショーティス研究員(国際・安全保障問題担当)だ。

2大勢力の支持率推移
保守連合は昨年、アルバニージー首相率いる与党・労働党を世論調査の支持率で一時リードしていたが、3月末に労働党に逆転されて、再浮上できていない。大きな原因と指摘されているのが、トランプ氏をまねたような政策の数々だ。

ダットン氏は1月「政府効率化」を公約に掲げ、効率化担当相を新設すると表明。その後、当選した場合、大規模な政府職員削減や、国家公務員のテレワーク廃止を行う方針も示した。

さらに政府のDEI(多様性・公平性・包摂性)担当職員について「豪州の一般市民の生活改善に全く役に立っていない」と述べ、当選後に解雇すると訴えた。

世界的混乱で裏目に
ところがダットン氏の政策は裏目に出る。当初は「トランプ氏人気に便乗している」と批判された。さらにトランプ氏が、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援を渋ったり、諸外国からの輸入品に高関税をかけたりして国際的な反発を受けると、ダットン氏もあおりを食らってしまった。

シンクタンク「ローウィー研究所」が3月に行った調査によると、「米国が責任ある行動を取る」と信じる豪市民はわずか36%で、前年から20ポイントも低下。過去20年で最も低い数字だった。豪市民の対米不信はかつてないほど高まっている。

世論調査機関「ニュースポール」の最新の調査(27日公表)によると、2大政党の支持率は労働党が52%、保守連合が48%で、与党が政権を維持する可能性が高まっている。

反転攻勢なるか
保守連合は路線変更を余儀なくされている。今月7日には、国家公務員のテレワーク廃止を巡り、ダットン氏が出演したテレビ番組で「我々は政策で過ちを犯した。おわびする」と謝罪し撤回した。政府職員削減についても、大規模な解雇ではなく、採用凍結や自然減で対応すると説明した。

ダットン氏は以前、トランプ氏について「保守連合には一緒にゴルフをしていた大使がいた」と関係をアピールしていた。しかし4月中旬のテレビ討論会では、「トランプ氏がどんな人物かは分からない」と述べて距離を取った。

ただ保守連合のイメージ修正は思うように進んでいない。4月中旬には、有力議員が演説で、トランプ大統領のスローガン「MAGA(マガ=米国を再び偉大に)」をまねて「オーストラリアを再び偉大に」と発言し、釈明に追われた。

豪メディアはダットン氏が気候変動や外交政策について失言を繰り返したことも、首相候補としての人気を失速させた要因だと指摘している。

一方、アルバニージー氏はトランプ氏の高関税政策発表直後、会見で「全く正当性がない」などと批判し、国民の間で相対的に評価が上がっている。ただ労働党が単独過半数を取れない可能性もあり、その場合は環境政党「緑の党」などとの連立交渉が求められる。【4月29日 毎日】
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「○○のトランプ」と称される政治家が人気を得る国もありますが、カナダやオ―ストラリアなどリベラリズムが根付いた地域では、トランプ大統領と結び付けられるのは大きなリスクになるようです。

【フランス  政府機関の3分の1を統合または廃止へ】
ただ、トランプ流の無茶な人員削減・支出カットは別にして、日本を含めた多くの国で肥大した政府機能の非効率な部分の整理統合は現実的課題です。

****仏、政府機関の3割を統合・廃止へ 年内に提案=予算相****
フランスのド・モンシャラン予算相は27日、政府は経費削減のため、政府機関の3分の1を統合または廃止することを年内に提案すると明らかにした。

仏放送局Cnews/Europe1とのインタビューで、「大学を除いて、国の支援を受ける機関・運営機関の3分の1について統合や廃止することを年内に予算案で提案する」と述べ、これにより20─30億ユーロの経費削減が可能になると説明した。

バイル政権は、公共部門の財政赤字を対国内総生産(GDP)比で今年は5.4%、2029年には欧州連合(EU)の上限である3%に削減することを目指している。

またロンバール財務相は先に、政府は来年度に支出を400億ユーロ削減する考えを示した。【4月28日 ロイアター】
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