孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ワクチンに関する様々な問題  「ハラル」 売り込み競争 優先順位 「普通の生活」 

2020-12-29 22:58:40 | 疾病・保健衛生

(【12月29日 日テレNEWS24】 個人的には「1日最大で500人」というのは、「随分少ないね・・・」という印象も。今後更に拡充されるのでしょう)

 

【ハラル問題 「ワクチンは生命や生活を守る助けになり、こうした目的は明らかにイスラムの教えの一部だ」】

新型コロナ禍からの出口として期待されているワクチンですが、有効性・安全性、あるいは国力によるワクチン確保の格差といったメインの問題以外にも、いろいろな問題・波紋も。

 

そのひとつが、アルコールや豚肉などの禁忌があるイスラム教徒にとっての「ハラル」の問題。

製造過程や成分が戒律に沿うかどうかが議論になっています。

 

****イスラム教徒が多い国 コロナワクチン「問題なし」、政府や法学者の見解相次ぐ****

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、イスラム教徒が多い国ではワクチン接種について政府やイスラム法学者が「問題ない」との見解を相次いで出している。一方で、インドでは一部法学者が「中国製ワクチンは認めない」との見解を示した。

 

「材料に関係なく、イスラム教徒が接種しても構わない。ワクチンは生命や生活を守る助けになり、こうした目的は明らかにイスラムの教えの一部だ」。

 

シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版)によると、シンガポールではムフティ(イスラム法学の権威)のナジルディン師が13日、ワクチン接種を奨励する見解を示した。人口の約1割を占めるマレー系のイスラム教徒の間で不安が広がっていたため、ナジルディン師が混乱を防ぐために対応した。

 

中東のエジプトでも、イスラム教の解釈を示す政府機関ファトワ(宗教令)庁の幹部が21日、地元メディアに対し、仮に豚由来の成分が含まれていたとしても「(製造過程で)性質が転換されるため、不浄だとの前提での判断は成り立たなくなる」として、接種を認める見解を示した。

 

アラブ首長国連邦の国営通信も22日、イスラム教の権威機関であるファトワ評議会が「他に方法がないならば、人体を守る必要性が優先され、ワクチンは豚に関するイスラムの規制対象にはならない」とのファトワを出したと伝えた。

 

だが、インド誌インディア・トゥデイ(電子版)によると、南部ムンバイで23日に地元のイスラム法学者の会議が開かれ「中国製ワクチンは豚由来のゼラチンを含んでいるとの情報があるため、イスラム教徒の使用は許されない」と結論づけた。【12月27日 毎日】

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“インドネシアの新型コロナ感染者は65万人を超え、東南アジアで最多。ジョコ大統領は16日、「ワクチンは自分が率先して接種する」と話し、国民の懸念払拭を目指している。

 同様の懸念はイスラム教を国教とするマレーシアでも起きており、イスラム教団体が対応を協議している。”【12月19日 産経】

 

全般的に「容認」の方向のようです。

まあ、「人命」を考えれば妥当な判断ではありますが、「普段、女性や性的マイノリティーの権利に頑ななイスラム法学者にしては柔軟だね・・・自分の命がかかわっていると・・・」って、皮肉のひとつも言いたくなります。

 

インドの反応は、中国との領有権問題などの政治的要素を反映したものでは・・・とも勝手に憶測しています。

 

【ワクチン売り込みでフェイク情報も】

ワクチン争奪戦はよく話題になりますが、売り込み側の競争もあるようです。

 

****ロシア、ワクチン売り込みで欧米産の偽情報拡散=EU外交トップ****

欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は28日、ロシアの公共メディアは国産の新型コロナウイルスワクチンを売り込みたい国々に対し、欧米のワクチンについて偽情報を拡散していると批判した。

ボレル氏はブログへの投稿で「ロシア政府の支配下にある多言語メディアで欧米のワクチン開発業者は公然とこき下ろされ、ワクチンの投与を受けた人がサルに変身するというばかげた主張につながったケースもある」と指摘。

このような偽情報は明らかに、ロシアの国産ワクチン「スプートニクV」を売り込みたい国々に向けられたものだとし、新型コロナ感染拡大が続く状況下で公衆衛生を脅かしていると批判した。具体例は挙げなかった。

ロシアはこのような疑惑を繰り返し否定し、スプートニクVが外国政府を後ろ盾とする偽情報拡散活動のターゲットになっているとしてきた。

ロシアは先週、アルゼンチンに1000万回分のワクチンを届ける契約の1回目を供給。中南米の他の国々やアジアの一部の国々とも供給契約を結んでいる。ロシア産ワクチンは必要とされる2回の投与の価格が20ドル未満に抑えられている。【12月29日 ロイター】

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「ワクチンの投与を受けた人がサルに変身する」・・・怖いですね。

サルはともかく、これまでもワクチン・予防接種で、「不妊になる」などの風評が政治的プロパガンダから流され、大きな健康リスクにつがっているケーズもありますので、この種のフェイク情報には厳しく対処する必要があります。

 

【悩ましい人種と優先順位の問題】

実際接種する際に問題になるのが、対象者・優先順位

 

****NYでワクチン優先順位違反か 州当局が医療法人捜査****

米東部ニューヨーク州当局は28日、新型コロナウイルスのワクチンを不正に入手し、州の優先順位に反して医療従事者ら以外に提供した疑いがあるとして、ニューヨーク市ブルックリンに拠点を置く医療法人パーケアに対する捜査に乗り出したことを明らかにした。

 

ニューヨーク・タイムズ紙によると、パーケアは2300回分のワクチンを確保し、既に850回以上を接種。州当局の指摘を受け、残りのワクチンは返却した。パーケアの患者の多くは正統派ユダヤ教徒だという。【12月29日 共同】

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何事につけ「不正」はつきものですが、上記記事で引っかかるのは、「パーケアの患者の多くは正統派ユダヤ教徒だ」ということ。

 

超正統派ユダヤ教徒は、集会禁止やマスク着用などの政府等からの要請・指示を無視して行動することが多く、ニューヨークでも七千人規模の結婚式を秘密裏に行ったとして罰金を課された事例も。

 

その正統派ユダヤ教徒(記事だけでは「超正統派」と「正統派」の区分は定かではありませんが)が、自分たちのワクチンは「不正に・・・」ということがあったとしたら、「それはないんじゃない」という感も。

 

優先順位に関して、アメリカではもっと悩ましい問題もあります。

 

****人種でワクチン優先度を決めるべきか、各州に難題****

米国の黒人やラテン系の住民は、白人の2倍以上の割合で新型コロナウイルスによって死亡している。各州は今、最も打撃を受けたこれらのマイノリティーが平等に――場合によっては優先的に――ワクチンを受けられるようにすると約束している。

 

だが、ファイザーとモデルナのワクチンが全国で投与され始める中、これらのコミュニティーにいつどのようにワクチンを利用できるようにするのかを巡り、各州は依然頭を悩ましている。

 

ワクチンがより広く配布されるようになったときに有色人種の市民が取り残されないようにするため、積極的な支援活動に力を入れている州もある。

 

ノースカロライナ州は、黒人とラテン系のコミュニティーに支援の手を差し伸べるために広告会社を雇った。ニューヨーク州は聖職者や保健当局者、公民権擁護活動家で構成されるタスクフォースをつくった。その狙いは、効果的なワクチン配布に必要な洗浄用品や注射器が低所得者層の住む地区に確実に届くようにするなどして、支援することだ。

 

他の州はさらに一歩進んで、コロナの被害を最も大きく受けたグループがより早くワクチンを接種できるようにすべきだとしている。

 

コロラド州はワクチン接種計画の中に制度的な人種差別を巡る認識を書き込んでいるが、どのような対応を取るかについて当局者はまだ明言していない。カリフォルニア州の計画には、他のグループに先駆けてワクチンを接種できる可能性のある「重要な住民」に人種的・民族的少数派のグループが含まれている。

 

米国公衆衛生協会のエグゼクティブ・ディレクター、ジョルジュ・ベンジャミン氏は、各州は最もリスクの高い人々にワクチンの初期接種を集中させるべきだと述べる。これにはマイノリティーのグループも含まれるが、人種だけを理由にワクチンを早期に接種することは避けるべきだという。

 

むしろ持病を持っている人や多世代世帯に住む人のような最もリスクの高い人たちが、より早くワクチンを受けるべきだとベンジャミン氏は主張。そうすれば実際には、高リスクグループの中に比較的多い人種的マイノリティーが恩恵を受けるとしている。

 

「人種に敏感になる必要はあるが、よりリスクが高い人を排除しないようにしなければならない」

 

複数の州の当局者によると、最初の課題は、英語を話せない人を含むマイノリティーグループにワクチンに関する情報を提供することだ。

 

米疾病対策センター(CDC)の報告書によると、黒人やラテン系、先住民系の住民は白人やアジア人よりインフルエンザワクチンの接種率が低い。無保険の人が多いことも一因だという。【12月28日 WSJ】

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感染者・死者に人種的格差がある現実のなかで、ワクチン接種の順位に人種をどのように反映させるか・・・悩ましいところです。

 

少なくとも、情報面や手続き面でこぼれ落ちてしまいがちな人種的・民族的少数派のグループに対する積極的アプローチは必要でしょう。

 

【日本が集団免疫の状態になるのは22年の4月】

ワクチン接種が広範に行き渡れば、やがては「普通の生活」はもどってくる・・・・のか?

 

****通常の生活に戻るのはいつ?*****
イギリス以外でもアメリカのほか、EUなどでファイザーのワクチンの接種が始まった。このワクチンについては日本政府も6000万人分の供給を受けることでファイザーと合意している。

こうした中、イギリスの調査機関「Airfinity」はワクチンの供給予定を基に各国がいつ「通常の生活」に戻れるのか予測を示している。

最も早いのがアメリカで2021年4月下旬にコミュニティーの中で感染が広がらなくなる「集団免疫」の状態に達するとしている。

 

以下、数か月遅れてカナダは6月上旬、イギリスは7月上旬、EUは9月初め、それぞれ集団免疫の状態に至るとの予測だ。

一方まだワクチンが承認されていない日本が集団免疫の状態になるのは2022年の4月とされている。【12月29日 日テレNEWS24】

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もっとも、現在騒がれている変異種の問題も。

ウイルスは普段に変異しますので、将来的にこれまでのワクチンが有効に防御できないウイルスが出てくることは十分にあり得ます。ウイルス変異と新たなワクチン開発の競争になるのかも。

 

まあ、それでもワクチンがあるということで社会的パニックにならずにすめば、「普通の生活」とまではいかなくても「普通に近い生活」は戻ってくる・・・・のかな? どうでしょうか?

 

【新型コロナは「警鐘にすぎない」】

なんだかんだ言っても、新型コロナの脅威は、例えばエボラ出血熱などと比べれば極めてマイルドです。

今後、より危険なウイルスが発生することもあるのでしょう。

 

****コロナは「必ずしも大惨事ではない」 将来のパンデミックに警鐘 WHO****

世界保健機関は28日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は深刻だが「必ずしも大惨事ではない」との見解を示した上で、将来さらに悲惨なパンデミックが起こり得るとして世界各国に「真剣に」備えるよう呼び掛けた。

 

WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏は、新型コロナウイルス対策に明け暮れた1年を振り返る会見で、「これは警鐘にすぎない」と述べた。

 

世界で8000万人以上が感染し、180万人近くが死亡した新型コロナウイルスのパンデミックは「非常に深刻」で、「あっという間に世界中に広がり、地球のあらゆる場所に影響を及ぼしてきた」とライアン氏は認めた。

 

一方で「しかし、これは必ずしも大惨事ではない」と発言。新型コロナは非常に感染しやすく、人を死に至らしめることもあるが、「現時点での致死率は他の新興感染症と比べてかなり低い」と強調し、「将来起こり得るもっと悲惨なものに備えなければならない」と訴えた。

 

WHO上級顧問のブルース・エイルワード氏も、世界は新型コロナ危機に対応する中で、記録的な速さでのワクチン開発など大きな科学的進歩を果たしたが、将来のさまざまなパンデミックを防ぐには程遠いと指摘。

 

新型コロナは「第2波、第3波に入っているが、われわれはそれらに対処する準備がまだできていない」と述べ、「改善されてはいるが…今回の備えが完全でない以上、次については言うまでもない」と語った。 【12月29日 AFP】

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