孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  22日総選挙 右傾化する世論 争点にもならない「和平」

2013-01-21 23:50:08 | パレスチナ

(躍進が予想されている強硬な右派「ユダヤの家」のベネット党首 “flickr”より By The Israel Project http://www.flickr.com/photos/theisraelproject/8367953410/

ネタニヤフ首相の続投が有力
イスラエルでは22日に総選挙が行われますが、ネタニヤフ首相率いる与党の右派リクードと極右政党「わが家イスラエル」の統一会派がリードしており、ネタニヤフ首相続投の公算が大きくなっています。
右派のネタニヤフ首相続投となると、中断している中東和平交渉の再開はあまり期待できません。

****中東和平、一層困難に=イスラエル総選挙、22日に投票****
イスラエル総選挙(国会定数120、比例代表制)の投票が22日、行われる。ネタニヤフ首相の与党、右派リクードと極右政党「わが家イスラエル」の統一会派が第1勢力を確保する見通し。パレスチナ問題で強硬なネタニヤフ氏の続投が有力視されており、中東和平交渉の再開は一層困難になりそうだ。

「強い首相、強いイスラエル」をスローガンに、イラン核問題やパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスへの強硬姿勢が支持されるネタニヤフ氏に対し、ヤヒモビッチ氏率いる中道左派の労働党は、現政権下で急上昇した物価高の是正や格差解消などの社会経済問題で切り崩しを図る。【1月21日 時事】 
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自らを「右派」とする有権者が急増
与党の右派リクードと極右政党「わが家イスラエル」の統一会派は、第1党は維持するものの、議席数では現在の42から32前後へ減少する世論調査が出ています。

与党統一会派の減少予測の背景には、先のガザ地区・ハマスとの交戦で地上侵攻を回避したことへ有権者の失望があるとも言われています。
“調査では「停戦を支持する」との回答は31%で、「作戦継続(地上侵攻)を支持する」の49%を下回った。ロケット弾攻撃にさらされ、ハマスに決定的な打撃を加える地上侵攻を期待した有権者にとって「停戦は受け入れがたい決定だった」(マーリブ紙)という”【2012年11月25日 毎日】

また、極右政党「わが家イスラエル」のリーベルマン氏が、背任容疑で起訴され副首相兼外相を辞任したことの影響も考えられます。

ただし、更に極端な右派路線をとる宗教系極右政党「ユダヤの家」が現有3議席を12~14議席に大きくのばしそうで、右派全体が減少する訳ではありません。
「ユダヤの家」については、“党首はイスラエル軍のエリート戦闘部隊出身のベネット氏。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の半分以上をイスラエルに併合すべきだと訴え、テレビ広告では、自ら「最も戦闘的な党」と売り込む”【1月21日 毎日】とのことです。
選挙後は、与党統一会派と宗教系極右政党「ユダヤの家」の連立の可能性も高いとされています。

全体にイスラエルの国民世論は“右傾化”していると指摘されています。
今回選挙においては、“パレスチナとの和平推進は、議論にさえのぼっていない”とのことです。

****語られない「和平」:イスラエル総選挙2013/上 右傾化進む世論****
・・・・最近の世論調査によると、自らを「右派」とする有権者は41%で、3年前の34%から急増している。(ヨルダン川西岸への入植を強く支持する候補者ばかりが比例名簿上位に並ぶという)名簿の顔ぶれは、こうした世論の動向を反映している。

右傾化の背景には、何があるのか。
ネタニヤフ首相が就任した09年3月以降、パレスチナ自治区や周辺国との関係は緊張度を増し、強硬策を取るイスラエルは孤立化を深めてきた。
トルコからのガザ支援船をイスラエル海軍が襲撃した事件(10年5月)をきっかけに、かつての友好国トルコとは反目。
11年末からの「アラブの春」の影響で、隣接するエジプトやシリアではイスラム勢力が台頭している。
パレスチナは昨年9月に国連での地位を「格上げ」、イスラエルが報復措置として入植住宅建設を打ち出すと、欧米諸国は一斉に批判した。

地域における孤立化と、国際社会への反発が促すナショナリズムの高揚。バルイラン大学のシュムエル・サンドラー教授は「(イスラエルは)生存のために戦っている」と述べ、右傾化を当然視する。だがその結果、過去20年の選挙で大きな争点となってきたパレスチナとの和平推進は、議論にさえのぼっていない。
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労働党:「和平」より「生活」という「現実路線」で躍進予想
一方、中道左派とされる労働党は現有8議席から17~18議席に回復し、第2党となる勢いです。
労働党はかつては和平推進を政策の柱に据えていた政党ですが、和平交渉が進展しないなか、選挙のたびに議席を減らしてきました。
今回予想されている復調は、こうした和平推進が評価された訳ではなく、生活や経済の改善を前面に押し出した姿勢が支持を広げているとのことです。

“労働党がとらえたのは、イスラエル市民の間に高まる「不公平感」だ。政府は近年、公営企業の民営化に踏み切るなど、新自由主義的な経済路線へとかじを切った。だがその結果、貧富の格差は拡大。テルアビブなど都市部では、中・低所得者向けの住宅・賃貸価格が高騰した。「政府は安全保障にばかりカネを使う」。不満は高まり、11年夏には、「公平な社会の実現」などを求める市民が、数十万人という前代未聞の規模でデモ行進を繰り返した。
労働党はこうした市民の怒りに「理解」を示し、安全保障ばかりに目を向ける右派を「市民不在」と攻撃。徹底的に生活や経済の改善を掲げることで、中・低所得層を中心に急速に支持基盤を広げている”【1月21日 毎日】
「和平」より「生活」という「現実路線」が、有権者をとらえているとのことです。

イスラエルの有権者の2割弱を、イスラエル国籍を持つアラブ(パレスチナ)系住民が占めています。
こうしたアラブ(パレスチナ)系住民を代表する政党もありますが、近年これらの政党へのアラブ(パレスチナ)系住民支持が低下しているそうです。

“民間団体「アブラハム基金イニシアチブ」が昨年秋に発表したアラブ系有権者の政治意識調査によると、アラブ系議員に対する批判は強い。「社会・経済問題に労力を費やさない」「和平問題ばかり扱う」。有権者が「最優先の課題」にあげたのは、教育(24%)や貧困(同)、犯罪(16%)で、和平は12%にとどまった”【1月21日 毎日】

ここでも、「和平」より「生活」という国民意識が表れています。

パレスチナ独立国家樹立支持が半数を上回る調査結果も
国民世論の「右傾化」、「和平」より「生活」というなかにあっても、パレスチナの独立国家樹立を支持するイスラエル人がわずかながら半数を上回るという世論調査結果もあるようです。どの程度の精度の調査かはわかりませんが。

****パレスチナ国家」をイスラエル人の半数以上が支持 日刊紙調査****
イスラエルの世論調査で、パレスチナの独立国家樹立を支持するイスラエル人がわずかながら半数を上回る結果が出た。

日刊紙イスラエル・ハヨムが800人以上を対象に行った調査では「2国共存、すなわちイスラエルから独立したパレスチナ国家の創設という考えに賛成か、反対か」と質問した。すると、回答者の約54%が「支持する」と答えた。「反対する」と答えた人は38%で、残りは無回答だった。

ただし、同じ調査で54%以上がパレスチナとの和平協定締結は不可能だと考えており、またパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長を和平交渉の相手とはみなさないと答えた人も55%に上った。

イスラエルが占領しているヨルダン川西岸のユダヤ人入植地建設をめぐっては「支持する」が43.4%、「建設凍結が望ましい」が43.5%でほぼ拮抗した。(後略)【1月7日 AFP】
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