
(パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファで、米国支援のガザ人道財団から支援物資を受け取った後、イスラエル軍の発砲に警戒する避難民(2025年5月27日撮影)【5月28日 AFP】)
【イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給開始 混乱と銃撃 国連は不参加】
イスラエル軍の支援物資搬入阻止によって飢餓の危機・医療崩壊が懸念されているパレスチナ・ガザ地区では先日2か月半ぶりに搬入が再開しましたが、未だその量は極めて不十分です。
****ガザ 支援物資搬入2カ月半ぶりに再開 子ども7万人以上が“深刻な栄養失調”****
パレスチナ・ガザ地区への支援物資の搬入が2カ月半ぶりに再開されましたが、WFP(=世界食糧計画)は7万人以上の子どもが深刻な栄養失調に直面していると発表しました。
ロイター通信が24日に入手した映像では、多くの人々が食料の入った白い袋を持ち運んでいます。19日に、2カ月半ぶりに搬入が再開された支援物資の一部が人々の元に届き始めているということです。
ただ、国連によるとイスラエルが搬入を認めたのは「小さじ1杯分に過ぎない」としており、WFPは24日、ガザの子ども7万人以上が深刻な栄養失調に直面していると発表しました。
支援物資を積んだトラック15台が略奪されるなどしており、「空腹や絶望が治安悪化を招いている」とさらなる物資搬入の必要性を訴えています。(ANNニュース)【5月25日 ABEMA Times】
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あくまでもイスラエル側が認めたものだけが搬入される状況で、境界沿いに多くのトラックが待機するなかで、域内では危機が進行しています。
****ガザ地区、医療物資の深刻な不足続く トラック51台許可待ち=WHO****
世界保健機関(WHO)は26日、パレスチナ自治区ガザで医療機器の大半が底をつき、鎮痛剤などの基礎的な医薬品の多くが枯渇しつつあると明らかにした。
WHOのバルヒー東地中海地域事務局長はジュネーブで記者団に対し「医療機器の約64%、必須医薬品の43%、ワクチンの42%が在庫ゼロの状態にある」と述べた。
バルヒー氏によると、WHOはガザ地区との境界沿いに支援物資を積載したトラック51台を待機させているが、ガザ地区に入る許可がまだ下りていない。【5月27日 ロイター】
WHOのバルヒー東地中海地域事務局長はジュネーブで記者団に対し「医療機器の約64%、必須医薬品の43%、ワクチンの42%が在庫ゼロの状態にある」と述べた。
バルヒー氏によると、WHOはガザ地区との境界沿いに支援物資を積載したトラック51台を待機させているが、ガザ地区に入る許可がまだ下りていない。【5月27日 ロイター】
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そうした状況で、26日、メリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。
****アメリカ、イスラエル主導の支援物資配給ガザ地区で開始と人道援助団体が発表****
人道状況の悪化が深刻なパレスチナ・ガザ地区でアメリカとイスラエルが主導する形で支援物資の配給が始まりました。
「ガザ人道財団」は26日、ガザ地区南部の緩衝地帯に拠点を開設し、支援物資の配給を開始したと発表しました。
配給した量に関しては明らかにしていませんが、「支援の流れは日を追うごとに増していく」としています。
アメリカとイスラエルが主導するこの配給の枠組みでは、イスラム組織「ハマス」に物資が略奪されないようにするとされています。
国連は中立性を保てないなどとして参加しない方針です。(後略)【5月27日 テレ朝news】
「ガザ人道財団」は26日、ガザ地区南部の緩衝地帯に拠点を開設し、支援物資の配給を開始したと発表しました。
配給した量に関しては明らかにしていませんが、「支援の流れは日を追うごとに増していく」としています。
アメリカとイスラエルが主導するこの配給の枠組みでは、イスラム組織「ハマス」に物資が略奪されないようにするとされています。
国連は中立性を保てないなどとして参加しない方針です。(後略)【5月27日 テレ朝news】
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国連や国際援助団体は、イスラエルおよび米国が支援する「ガザ人道財団(GHF)」による支援物資配給が、人道支援の基本原則である「中立性」「公平性」「独立性」を損なっていると懸念しています。
GHFの活動が、実質的に移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしています。
また、国連のグテレス事務総長は、イスラエルが主導し米国が支援するガザへの人道援助配給計画に対し、「国際法や人道の原則のほか、公平性や独立性、中立性を尊重しない、いかなる計画にも参加しない」と明言しています。
国連としては、支援対象者をハマスとの関連で選別し政治的・軍事的な目的と関連づけるではなく、また4か所の配給所という極めて限定された形でなく、境界の封鎖を解除して大量の支援物資を必要としている者のもとへ届ければそれですむ話だ・・・という立場です。
配給開始二日目の27日、配給所には数千人が押し寄せ大混乱状態となったようです。
****ガザで支援物資の配給、米支援の団体が開始 人々が殺到し混乱****
パレスチナ・ガザ地区南部ラファで27日、アメリカとイスラエルが支援し、論議を呼んでいる団体が設置した支援物資の配給所に、数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。この配給所は前日に業務を開始したばかりだった。
現地の映像では、「ガザ人道財団(GHF)」がラファに設置した施設においてフェンスや盛り土が破壊され、その上を群衆が歩いている。
別の動画では、数千人の男性、女性、子どもたちが配給所の敷地に流れ込んでいる。銃声と思われる音が鳴り響く中、人々が走ったり身をかがめたりしている動画も出回っている。
目撃者は、人々が食料などの支援物資を奪い取り、混乱状態だったと話した。また、近くに駐留していたイスラエル兵らが発砲したと述べた。
GHFによると、あまりに多くの人が支援物資を手に入れようと訪れたため、スタッフらが一時退避したという。
イスラエル軍は、近くにいた兵士らが威嚇射撃をしたと説明した。
GHFは、ガザでの支援物資の配給を、国連を通さずに、自分たちが主体となって実施することを活動目的としている。アメリカの武装警備請負業者を使っている。
ガザへの支援物資の搬入は、イスラエルが11週間にわたって阻止していた。封鎖は最近、緩和されたが、専門家らは、飢餓の危機が迫っていると警告している。(中略)
GHFをめぐっては、国連や多くの援助団体が協力を拒否している。その活動が、人道主義の原則に反し、「支援を武器化」していると思われるというのが理由。
実質的に、移動が困難な人々を排除し、避難をさらに強いるほか、何千人もの人を危険にさらし、支援を政治的・軍事的な目的と関連づけているため、世界各地での援助物資配給にとって容認し難い前例になるとしている。
国連の報道官は、GHFの取り組みは「実際に必要なことから目をそらすもの」だとし、すべての検問所を再開するようイスラエルに求めた。
一方、イスラエルは、イスラム組織ハマスが支援物資を盗むのを阻止するため、現行の配給システムに代わるものが必要だと主張している。 ハマスは、自分たちは支援物資を盗んではいないと反論している。
GHFは声明で、「現場のニーズは大きい」とし、これまでに現地のNGOと協力して、食料を入れた箱約8000個(46万2000食分)を配ったとした。
また、「ハマスによる封鎖のせいで」パレスチナ人が配給地点に行くのに通常より数時間の時間がかかったと、根拠を示さず説明した。
この日の配給所での混乱について、現場にいたという男性は、「極めて困難な状況だった。(GHFは)一度に50人しか中に入れなかった」、「ついには混乱状況が発生した。人々はゲートを乗り越え、他の人々を攻撃し、すべて(の支援物資)を奪った」と、BBCアラビア語のラジオ番組で話した。
この男性は、「屈辱的な経験だった」、「私たちは飢えて苦しんでいる。お茶をいれるためのわずかな砂糖と、食料のパンを探しているだけだ」と続けた。
ある女性は、飢えと困窮で「すべての人が参っている」と述べた。「人々は疲れ切っている。食料を見つけ、子どもたちに食べさせるためなら、命を危険にさらすることさえする」。
ガザでハマスが運営する政府メディアオフィス(GMO)は、イスラエルによる支援物資の配給が「惨めに失敗した」とした。また、人々がGHFの配給所に行くのをハマスが止めようとしたことはないと主張した。
国連のステファン・デュジャリック報道官はニューヨークでの記者会見で、「『ガザ人道財団』が設置した物資配給所の周辺で撮影された映像を見ている。率直に言って、これらの映像、画像には心が痛む」と述べた。
そして、「私たちと複数の提携組織には、絶望的な状況にある人々に援助を届けるための、詳細で、原則に従い、健全に実行できる計画があり、加盟国の支持も得ている。飢饉(ききん)を防ぎ、どこだろうとすべての人々のニーズに応えるためには、人道活動の意味ある拡大が不可欠だと、私たちは引き続き強調する」と付け加えた。
国連によるこうした批判を、米国務省のタミー・ブルース報道官は「偽善の極み」だと非難。「残念なことに、いま問題なのはガザに支援物資を届けることなのに、突然、支援のスタイルや支援者の性質に関する不満が問題になってしまっている」と記者団に述べた。
GHFの独立性と中立性についてBBCから問われると、ブルース氏は、この地域での食料と支援物資の配給の方法をめぐっては「多少の意見の違い」があると認めたうえで、「私たちのほとんどは、これが良いニュースだと同意すると思う。(中略)本当の話題は、食料支援が運び込まれているということだ」と述べた。
GHFは今週末までにガザで100万人に食料を配給する予定だとしているGHFの当初の計画では、ガザ南部と中部の4カ所に配給所を設置し、パレスチナ人が支援物資を受け取れるようにする。GHFは、今週末までに100万人(ガザ人口の半分弱)に食料を供給することを目標としている。
GHFの配給所は、アメリカの請負業者が安全を確保し、イスラエル軍が周囲をパトロールする。パレスチナ人は、身分証明書のチェックとハマスとの関係についての審査を受けなければ、配給所内に入れない。
GHFのジェイク・ウッド代表は25日夜、辞任を表明した。現状のシステムでは、人道主義の原則の尊重や公平性、独立性などを実現できないと、理由を説明した。
これに対しGHFの理事会は、ウッド氏の批判は当たらないとし、「現状から利益を得ている人々」が「支援物資を運び入れることより、今の状況を引き裂くこと」に専念していると非難した。
GHFは26日、ハマスについて、支援物資の配給所で支援活動をするNGOに殺害予告をし、人々が支援物資を手に入れるのを妨害しようとしたと主張した。
ハマスはパレスチナの人々に対し、GHFに協力しないよう警告している。【5月28日 BBC】
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****配給時のチェック体制****
GHFの配給所では、支援物資を受け取るために以下のようなチェックが行われています:BBC
身分証明書の提示:受給者は身分証明書を提示し、本人確認が求められます。
ハマスとの関係の審査:イスラエル当局者は、新しい援助システムの利点の一つは受領者を選別し、ハマスとつながりのある人物を排除できることだと述べています。
これらのチェック体制は、ハマスによる支援物資の転用や押収を防ぐことを目的としていますが、国連や援助団体は、人道援助が紛争当事者とは無関係に、必要性に基づいて分配されるべきだという原則を損なうとして、GHFをボイコットしています。【ChatGPT】
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単に、数千人が押し寄せて大混乱になったというだけでなく、イスラエル軍の発砲によって47名前後が負傷する事態にもなっています。
イスラエル軍は「威嚇射撃」と説明していますが、世間常識では47名ほどが負傷する状況は「威嚇」のレベルを越えています。
****米支援のガザ配給所でイスラエル軍が発砲 47人前後が負傷 国連****
パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファの新たな支援物資配給所で混乱が起き、47人前後が負傷した。イスラエル軍による発砲が主な原因とみられている。国連関係者が28日、明らかにした。
AFP記者によると、米国支援のガザ人道財団が運営する配給所に数千人のパレスチナ人が殺到し、混乱が生じた。イスラエルは、国連を介さずに支援物資の配給システムを新たに導入している。
イスラエルは3月2日にガザ地区への支援物資の搬入を全面的に阻止し、ガザでは深刻な食料・医薬品不足が起きていた。イスラエルは、事件が起きた数日前、封鎖を部分的に緩和したばかりだった。
被占領パレスチナ地域の国連人権高等弁務官事務所代表を務めるアジス・ソンガイ氏はスイス・ジュネーブで、「われわれの把握している情報によると、27日の事件で47人前後が負傷した」と発表。
「負傷者の大半は発砲によるもの」で、これまでに得た情報では「イスラエル国防軍が発砲していた」とし、詳しい状況を調査・確認している段階だと強調した。
イスラエル軍は27日、「部隊が施設の外で威嚇射撃」を行い、「再び制御下に置いた」と主張した。
国連や国際支援団体は、GHFとは協力しない考えを示している。GHFをめぐっては、パレスチナ側には一切関与せず、イスラエルとだけ連携していると非難が起きている。
ソンガイ氏は、「われわれは、(GHFとイスラエルによる)こうしたやり方に多くの懸念を表明してきた」とし、「昨日の事件は、GHFが行っているような状況下で食料を配給する危険性を如実に示している」と指摘した。 【5月28日 AFP】
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このイスラエル軍による「威嚇射撃」だか「警告射撃」だかで3人が死亡したとのことです。【5月28日 FNNプライムオンラインより】
【「残虐行為から目をそらすための行為だ」(UNRWAのラザリーニ事務局長)】
こうした支援物資配給と同時に、イスラエル軍は激しい攻撃も継続しています。
****ガザの学校空爆で20人死亡、イスラエル軍はハマス拠点攻撃と発表****
イスラエル軍は26日、パレスチナ自治区ガザ市の避難民を収容する学校を空爆し、地元当局によると少なくとも20人が死亡し数十人が負傷した。 医療関係者によると、負傷者の中には女性や子どもが含まれるという。
イスラエル軍は26日、ガザで25日夜間に「イスラエルの市民や国防軍に対するテロ攻撃を実行するための計画や情報収集」に使われていたイスラム組織ハマスの指令拠点を攻撃したと発表した。【5月26日 ロイター】
イスラエル軍は26日、ガザで25日夜間に「イスラエルの市民や国防軍に対するテロ攻撃を実行するための計画や情報収集」に使われていたイスラム組織ハマスの指令拠点を攻撃したと発表した。【5月26日 ロイター】
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来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長はイスラエル主導の支援物資配給を「残虐行為から目をそらすための行為」と厳しく批判しています
****イスラエル提案のガザ支援策は「人道支援の原則に反している」 UNRWA・ラザリーニ事務局長が東京都内で会見****
来日中のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のラザリーニ事務局長は28日、都内で会見を行い、イスラエルが提案しているガザ支援策について、「人道支援の原則に反している」と述べました。
パレスチナ難民への支援活動を行うUNRWAのラザリーニ事務局長は28日、都内の日本記者クラブで会見し、アメリカやイスラエルなどが主導するガザ地区での支援物資の配給について、「物資の無駄遣いで、残虐行為から目をそらすための行為だ」と述べ、「人道支援の原則に反している」と批判しました。
ガザ地区には200万人が住んでいるとされていて、ラザリーニ事務局長によりますと、少なくとも1日トラック500台から600台分の支援が必要で、現在の支援は「必要な量にはほど遠い」と指摘しています。【5月28日 FNNプライムオンライン】
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【「もはや理解できない」(ドイツのメルツ首相)】
イスラエルの頑なな姿勢に欧州各国は厳しい目を向けるようになっています。
ホロコーストの歴史から、イスラエル批判を避けてきたドイツも「もはや理解できない」(メルツ首相)と。
****独首相、イスラエルに異例の厳しい警告 「もはや理解できない」****
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は26日、イスラエルに厳しい警告を発し、パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエルの戦争目的は「もはや理解できない」と述べた。
イスラエル軍がイスラム組織ハマスの壊滅を掲げて軍事作戦を拡大する中、ドイツ首相の異例の発言は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相への圧力をいっそう強めるものとなっている。
メルツ氏は公共放送・西ドイツ放送に対し「率直に言って、イスラエル軍が現在ガザ地区で何をしているのか、その目的がもはや理解できない」と発言。「過去数日間で民間人にますます甚大な被害が出ている状況は、もはやハマスによるテロとの戦いによっては正当化できない」と述べた。
また第2次世界大戦とホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の暗い歴史を踏まえ、ドイツは「地球上のどの国よりも」イスラエルに対する公的な発言に慎重でなければならないと述べた上で、「問題は、われわれが今、どれだけ明確に批判の声を上げるかということだ。歴史的な理由から私は控えめにしているが、今はもう少し明確に言う必要がある」と強調。「一線が越えられ、国際人道法が侵害されているときには、ドイツの首相も声を上げなければならない」と述べた。
さらに「われわれの立場は明確にイスラエル側だが、ガザ地区の人々の運命を無視するわけにはいかない」「ガザ地区からの追放はあってはならないし、飢餓政策もあってはならない。援助と人道物資の積極的な供給が必要だ」と続けた。 【5月27日 AFP】
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****アイルランド、イスラエル占領地と禁輸へ****
アイルランド政府は27日、国際法で違法とされている、パレスチナ自治区のイスラエル人入植地からの商品の輸入を禁止する法案の策定を承認した。欧州連合加盟国として、前例のない動きだ。
この動きは、国際司法裁判所が昨年、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザにおけるイスラエルの占領が国際法に違反しているとする勧告的意見を出したのを受けたもの。
外務省報道官はAFPに対し、「政府は占領下のパレスチナ領土にある違法な入植地との商取引を禁止する法案を推進することで合意した」と語った。
閣議決定を控え、サイモン・ハリス外相は記者団に、他のEU諸国も追随することを期待していると述べた。 【5月28日 AFP】
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