孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米中首脳会談  「お互いを尊重する」ことと、既存の国際社会の法や秩序を遵守することの溝

2013-06-09 22:34:29 | アメリカ

(“初の首脳会談は8日、2日間の日程を終えた。北朝鮮や気候変動、サイバー攻撃などの問題で両国の協力関係の促進と互いの政策の理解を深める上で一定の成果を収めた。”【6月9日 AFP 写真も】http://www.afpbb.com/article/politics/2949092/10875352

摩擦や競争があっても協力できる関係を求める点では同じだが・・・
国家主席就任から約3か月という異例の早い段階でアメリカを訪問した習近平・中国国家主席とオバマ・米大統領は2日間にわたる会談を行っています。

今回会談は、習近平国家主席の中米・カリブ訪問にあわせて、カリフォルニアでオバマ米大統領と非公式に会談するという形で、アメリカの「アジア回帰」路線、中国からのサイバー攻撃問題などで両国関係の緊張・悪化を懸念する米中双方の意向に沿って行われています。

習近平国家主席は、冷戦下の米ソ関係のように対立せず、協力できる分野を増やしてウインウインの関係を築く「新たなタイプの大国関係」をアメリカとの間で構築することをアメリカに求めています。
「我々はチャイニーズ・ドリームを実現し、経済繁栄と人民の豊かさを追求したい。アメリカン・ドリームとは(お互いが利益を得る)ウインウインの関係だ」

“背景にあるのは、北朝鮮やイランなどの核問題、経済、貿易、環境などの地球規模の問題は、もはや中国ぬきでは解決は難しいとの自信だ。中国が経済、外交の面で力をつけたいま、唯一の超大国である米国と安定した関係を構築したい、との思いの表れでもある。”【6月9日 朝日】

この「新たなタイプの大国関係」にあっては、中国側は「お互いを尊重する」ことを求めており、この意味するところは「政治制度や発展モデルなどお互いのやり方を否定せず、相手の選択に任せること」というもののようです。

オバマ米大統領も、「(米中は)世界の2大経済、軍事パワーだ」という認識のもとで、米中の軍事交流強化に言及して、「新しいモデルの米中関係の具体例だ」と応じています。

しかし、同時に地球温暖化問題などで応分の役割を果たすことも求め、また、「米国は各国が同じルールに従い、貿易が自由かつ公平で、米中両国がサイバーセキュリティーや知的財産保護に協力して対処するような国際経済のあり方を追求する」と述べ、既存の国際社会の法や秩序を守り、強引なやり方は控えることが両国関係の前提とらることを示しています。

中国側が求める「お互いを尊重する」ことと、アメリカが求める既存の国際社会の法や秩序の遵守の間には、まだ深い隔たりもあります。

具体的な会談の内容は各メディアが報じているところですが、米中首脳会談にミシェル・オバマ米大統領夫人が姿を見せず、中国側が期待していた彭麗媛(ポンリーユワン)・中国国家主席夫人とのツーショットが実現しなかったあたりに、中国側の主張する「新たなタイプの大国関係」路線に引きずり込まれることを警戒するアメリカ側の姿勢がうかがえるような気がします。

****ツーショット期待したのに…米大統領夫人不在、中国に広がる失望 首脳会談****
米中首脳会談にミシェル・オバマ米大統領夫人が姿を見せなかったことで、中国側に失望が広がっている。
国民的歌手としても人気の彭麗媛(ポンリーユワン)・中国国家主席夫人とのツーショットへの期待もあっただけに、肩すかし感が漂っている。

彭夫人は7日夕、パームスプリングス美術館を訪れた。米中メディアによると、彭夫人はアジア系の生徒に出迎えられ、設置されたばかりの北京の芸術家の彫像を見物。同行したのはブラウン・カリフォルニア州知事のアン夫人だった。

一方のミシェル夫人は、6日はバージニア州で民主党の州知事候補の資金集め会合に出席。AP通信によると、10日に次女サーシャさんの12歳の誕生日を控え、首都ワシントン近辺にとどまるという。
AP通信の中国側への取材によると、事前の打ち合わせで米国側は、ミシェル夫人も同行するような話しぶりだったという。

公式訪問ではないため同行しないのも不思議ではないとの見方がある一方、「彭夫人に冷たい」(豪紙)との批判も。AP通信は「彭夫人の外交上の役割に誇りを持つ中国人には極めて不満」「完璧を求める中国人は必ずや落胆する」との中国の学者やジャーナリストのコメントを紹介した。【6月9日 朝日】
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もっとも、こうした中国側の不満に配慮してか、オバマ大統領と彭夫人の面会がセットされたとのことです。

一方、中国側はあくまでも自国の路線は堅持し、アメリカなどの人権改善要求には応じないという強硬な姿勢を見せています。

****劉暁波氏義弟に懲役11年=「迫害」と批判、上訴へ―米中首脳会談終了直後に判決****
中国・北京市懐柔区人民法院(裁判所)は9日、ノーベル平和賞を受賞した獄中の反体制作家・劉暁波氏の義弟で、詐欺罪に問われた劉暉氏(43)に対し、懲役11年の実刑判決を下した。

劉暁波氏の妻で、夫の平和賞受賞決定後2年8カ月間にわたり自宅軟禁されている劉霞氏は実弟の判決公判を傍聴後、予想外の重い判決に「迫害であり、不合理な判決だ」と憤慨した。

劉暉氏の弁護人を務める莫少平氏が時事通信に明らかにした。莫氏は「間違った判決だ」と批判し、上訴する意向を示した。

この日の判決は、米カリフォルニア州で行われた習近平国家主席とオバマ大統領の会談終了直後に言い渡された。米側は、劉暁波氏の釈放や劉霞氏の軟禁解除を求めており、オバマ氏も習氏に人権問題の重要性を提起。
しかし中国共産党は、判決を通じて劉夫妻に圧力をかけるとともに、人権改善を要求する国際社会に断固とした対応を示した形だ。【6月9日 時事】
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中国の言う「お互いを尊重する」ということには、こうした中国国内の問題に口出しするな・・・ということなどが含まれていますが、それでは中国と“ウインウインの関係”は築けません。

もっとも、中国との経済関係が深まり、政治的関係も複雑な状況において、ストレートに口出し・批判することは返り血を浴びる覚悟も必要で、そのやり方には慎重な配慮も求められます。

そうした既存の国際社会の法や秩序にそぐわない面が中国に多々あるため、一気に米中蜜月とは行かないでしょうが、2020年代には世界一の規模の経済になると予測されている中国ですから、アメリカにおいても米中関係が今後一層重要視されていくことは間違いないでしょう。

薄まる日本の存在感
そうした米中接近のなかで日本の影が薄くなることを懸念する向きもあるようですが、ある程度はやむを得ない流れでもあり、その流れでのなかで冷静に対応を考える必要があります。

「日本経済がこのまま衰えると、米国にも世界にも、だんだん相手にされなくなる。日本経済が復活することが外交のためにも重要だ」・・・もちろん日本経済の復活は日本国民にとって重要ですが、日本経済が復活したところで、中国との経済規模の差はますます開くことから目をそらすことはできません。

「米国にとって、中国より日本のほうがよほど大事。摩擦が少ないから、日米関係が目立たないだけ」・・・現実を直視すれば、アメリカにとっては中国との関係が最重要課題でしょう。
もちろんそのことと、安全保障問題で日中が衝突した場合に日本を支援するかどうかという問題は別です。
中国との関係は重要ですが、同盟国を見捨てては西側世界のリーダーとしての立場が維持できません。
ただ、そういう危機的状況にならないように、日本にも譲歩を求めることはあるでしょう。

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1 コメント

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記事転載のお願いです (ぴんくきらぶるー)
2013-06-10 05:01:52
こんにちわ。
日本国内にない記事なので、何が起きているのかがよく理解できます。

こちらの記事も私のブログに転載させていただきます。
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