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米中関係  バイデン政権、対中国制裁関税軽減の動きも 近日中に首脳会談 対立の緩和に踏み出すか?

2022-07-23 23:05:30 | アメリカ
(【7月21日 TBS NEWS DIG】)

【インフレ抑制のために対中国制裁関税を緩和したいバイデン氏 国内に反対もあり落としどころに苦慮】
アメリカでは、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産された製品の輸入を全面的に禁止する法律が6月21日、施行されました。

こうしたバイデン政権の姿勢に見るように、米中関係は基本的に厳しい対立が続いています。
しかし、そうしたなかにあって、米中関係の緩和にも見える動きも。

バイデン大統領は、深刻な米国内のインフレ進行を抑制するために、中国からの輸入品に課した制裁関税の扱いを緩和することを検討していると報じられています。

“アメリカは、中国からの輸入品の6割以上に当たる約3700億ドル分に最大25%の関税を上乗せしています。
もともとはトランプ前政権時代の米中対立をきっかけに一方的な制裁措置として課したものですが、それがインフレの要因にもなっていることから、いま見直しの議論が巻き起こっています。”【6月30日 NHK】

****対中関税、一部撤廃か 米、100億ドル規模に限定と報道****
米政治サイト、ポリティコは5日、バイデン米政権が中国からの輸入品に課した制裁関税の扱いを、月内にも決定する見通しだと報じた。

中国側が求める関税撤廃に一部応じるが、規模は100億ドル(約1兆1500億円)程度と限定的にする案が有力だという。
一方、中国製の半導体や蓄電池などを念頭に、新たに制裁関税を課すための調査にも乗り出すとしている。

中国の劉鶴(りゅうかく)副首相は5日のイエレン米財務長官とのオンライン会談で、米国による対中制裁関税の撤廃に「強い関心」を持っていると伝達した。トランプ前米政権が発動した大規模な追加関税の適用に、中国は強く反発してきた。

ポリティコによると、トランプ政権が関税を課した約3700億ドル相当の中国産品のうち、バイデン政権が撤廃に応じる規模は100億ドル程度にとどまる。対象は自転車などの消費者向けの物品を中心に選定される見込みだという。

米国で物価高騰が問題となる中、米政権内では、関税撤廃が輸入物価の引き下げにつながることに、期待する向きもあるようだ。

制裁関税の一部撤廃は、バイデン政権の対中貿易政策の見直しの一環。産業界の要望に応じ、対中制裁関税を免除する手続きも新たに開始するとしている。

ただ、米政府は、半導体をはじめとするハイテク分野を対象に、新たな制裁関税の発動も視野に入れた調査に乗り出すという。

米政府や議会は、中国による「不公正で非市場的な慣行」(イエレン氏)を問題視している。中国側が撤廃を求める関税については「微修正」にとどめ、新たな関税適用に道を開く強硬策も進めることで、国内労働者からの批判を避けたい思惑も見え隠れする。

同サイトによると、こうした対中政策の見直しは米政府内で最終決定されておらず、流動的な部分があるという。【7月6日 産経】
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物価上昇は中間選挙で与党民主党・バイデン政権の死命を制する重要課題であり、“最大の輸入相手国である中国への制裁関税をなくせば、消費者物価の上昇率を最大1.3ポイント抑え込めるという分析もあり、バイデン政権にとって“わらをもつかむ思い”なのです。”【6月30日 NHK】とも。

ただ、中国による「不公正で非市場的な慣行」(イエレン氏)を無視してことを進めることはできませんし、“トランプ前政権は、価格の安い中国の輸入品からアメリカの製造業労働者の雇用を守るとして高い関税をかけました。それだけに、関税を引き下げればアメリカの労働者からも批判が出ることが予想されます。”【同上】という事情も。

そうした事情もあって、制裁関税の扱いについてバイデン大統領は明言を避けています。

****米政府の対中制裁関税一部撤廃「まだ決めていない」=バイデン氏****
バイデン米大統領は8日、通商法301条に基づいて中国からの輸入品に適用している制裁関税について、一部を撤廃するかどうか「まだ決めていない」と語った。記者団からの質問に答えた。

一方でバイデン氏は「われわれは対中関税見直しを(段階的ではなく)一度で仕上げる」とも述べた。

トランプ前政権が導入したこの制裁関税を巡り、バイデン氏はここ数週間、インフレ抑制のために撤廃したいが、中国の不公正貿易政策是正を迫る手段としては維持したいという考えの板挟みとなり、落としどころを見つけ出すのに苦戦を強いられている。【7月11日 ロイター】
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【近日中に米中首脳会談 「対立」から「緩和」に踏み出すか? 背景に両国の国内政治事情】
近日中に米中首脳会談が実施される運びですので、その会談で制裁関税の扱いも明らかにされるものと思われます。

****米中首脳会談「10日以内」 関税、衝突回避を協議か****
バイデン米大統領は20日、中国の習近平国家主席と「10日以内」に会談するとの見通しを明らかにした。オンラインか電話による会談とみられる。

バイデン政権は11月の中間選挙を前にインフレ緩和を目指し、中国からの輸入品に課している制裁関税の一部撤廃を検討。台湾や南シナ海問題などを巡って米中間の緊張が高まる中、偶発的な衝突回避に向けた意思疎通も協議するもようだ。

米中首脳の直接対話は3月のオンライン会談以来となる。ペロシ下院議長が台湾訪問を計画していると英紙が報じたことについてバイデン氏は「軍はいい考えではないとみている」と否定的な見方を示した。【7月21日 共同】
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米中関係については、対中国制裁関税の扱いに限らず、従来の「対立」から「融和」「緩和」の方向に動きつつあるとの指摘もあります。

「緩和」が取り沙汰されるの背景には中国側の党大会、アメリカの中間選挙としいう政治イベントを控えている両国の政治事情があります。

1972年2月のニクソン米大統領(当時)訪中時の「上海コミュニケ」発表から50年が経過しました。
上海コミュニケは「台湾は中国の一部」という中国側の主張を米国が「認識する」と記し(「認める」ではありません)、79年の米中国交正常化につながりました。中国側は、現在の米中対立の主な原因はコミュニケの精神が順守されていないからだと主張しています。

米中会談では、習近平主席は改めてバイデン大統領に上海コミュニケ精神の順守を求めると思われます。
下記記事は、そのあたりの中国側の主張・立場を説明したものになっています。

****米中が近く首脳会談、「対立」から「融和」に動く=経済相互依存で一致、甦る『上海コミュニケ』****
米中関係筋によると、米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席によるオンライン首脳会談が数週間以内に予定されている。両国の関係は「競争、協力、対抗」を基とした「対立」の構図から、「四不一無意」(4つのノー、1つの意図しない)の「約束」の下、大きく変貌しつつあることを見逃してはならない。

「四不一無意」はバイデン大統領が習近平国家主席に2回の米中首脳会談で約束したとされるもので、「四不」は、米国側が(1)新冷戦を求めない(2)中国の体制変更を求めない(3)同盟関係の強化を通じて中国に反対することをしない(4)台湾独立を支持せず台湾海峡の現状変更を求めないことを意味する。「一無意」とは、米国に中国と衝突する意図がないことを示したもの。中国側によると、これらに加えて「中国共産党の執政地位への挑戦をしない」ことも加えられた。

◆米、「あいまい戦略」で中台にクギ
米国は、仮説として中国が武力で台湾統一を図ろうとした場合の対応について、あいまいにしておく戦略をとっている。軍事介入について明確にしないことで、中国による台湾侵攻を抑止する一方、台湾が一方的に独立向け緊張を高める事態を防ぐ意図も込めている。

米国はこの戦略に基づいて、台湾政策について旗幟を鮮明にしていないが、米中両国の裏事情を取材すればするほど「真相」が浮かび上がる。

1972年2月のニクソン大統領(当時)の訪中時に米中間で交わされた『上海コミュニケ』には、両国は平和五原則を認め合い,両国の関係が正常化に向うことはすべての国の利益に合致すること、両国はアジア・太平洋地域で覇権を求めるべきでなく、他のいかなる国家あるいは国家集団の覇権樹立にも反対することが盛り込まれた。

また米国は,すべての中国人が中国は一つであり、台湾は中国の一部であると考えていることを「認識(acknowledge)」し、「この立場に異議を申立てない」こと、台湾からすべての武力と軍事施設を撤去する最終目標を確認し,この地域の緊張緩和に応じて台湾におけるその武力と軍事施設を漸減することを声明した。

「ロシア・ウクライナ戦争のこう着状態が続く中、米中対立は緩和に向かう」(米中関係筋)との見方が有力だ。中国側がこの約束の履行を前提に、数週間以内の米中(リモート)首脳会談に応じることになろう。

中国・環球時報(3月20日付)によると、「四不一無意」について、バイデン大統領と習主席による初めてのビデオ会議が行われた2021年11月にバイデン氏が「中国側に約束した」という。

ロシアのウクライナ侵攻後に行われた米中首脳ビデオ会談(2022年3月)について中国国営新華社通信(3月18日付)は、バイデン大統領が「私(バイデン大統領)は、アメリカが中国との『新冷戦』を求めず、中国の体制変更を求めず、同盟関係の強化による中国への反対を求めず、『台湾独立』を支持せず、中国と衝突する意思がないことを重ねて表明したい」と言明した、と報じた。

新華社通信がバイデン・習両氏の発言を詳細にくり返し伝え、米側も否定していないことから判断して、バイデン氏の「四不一無意」発言があったのは事実だろう。台湾海軍の揚陸艦艦長を務めた経験のある中華戦略研究所の張競研究員も香港の週刊誌(亜洲週刊、5月2〜8日号)で「四不一無意」について、「中国政府とアメリカ政府の共通認識」と記した。(中略)

◆中国、ロシア・ウクライナ両国に「中立」姿勢
中国がウクライナ戦争に対する対応を微妙に変化させていることも、米中対立の緩和に繋がっている。もともと中国は複雑な背景を考慮。「国家主権・領土完全」の原則を貫き、是々非々主義の対応だ。2014年にロシアが併合したクリミアをロシア領と今も承認していない。

一方で、中国はロシアとの関係への配慮も見せている。世界最長の国境を挟む「厄介な大国」(中国筋)を相手に背後から刺すようなことをしたら今後数十年にわたって恨まれると懸念している。米国の要請を受ける形でロシアへの軍事支援は控えており、ロシアとの技術・金融協力も事実上停止状態である。

米中関係筋によると、中国は「中立」姿勢にシフトしており、ウクライナ戦争の調停に乗り出す可能性もある。

中国の報道も当初のロシア寄りから微妙に変化している。当初ロシアに同調する宣伝報道が目立ったが、同時に「各国の主権・領土保全の尊重」を強調して間接的に反対の立場を表明した。

4月30日に、新華社がクレバ・ウクライナ外相への書面インタビューを全文掲載。この中で「ロシアによるウクライナ侵攻」という語句を3度にわたって使用した。このほか、中国はウクライナに人道支援援助を提供、王毅外相はロシアとウクライナの外相と同じ日に会談。戦況もウクライナの視点がCCTV(中国中央電視台)などで報じられ、「中立」へのシフトが見られた。(中略)

◆米中外相、「5時間協議」で地ならし
インドネシアのバリ島で7月9日に会談したブリンケン米国務長官と中国の王毅国務委員兼外相は対中関税引き下げ問題や首脳会談などについて5時間余り協議した。(中略)

ブリンケン氏は「米国は2国間関係におけるリスク要因の管理に力を注ぐ」と話した。台湾や人権など幅広いテーマで対立点を抱える米中が当面は緊張緩和にカジを切るのは、今秋に両国で重要な政治イベントが控えるためだ。

中間選挙を前に関税の引き下げでインフレを抑えたい米国と、秋の共産党大会を前に低迷する「経済」を米国向けの輸出増でテコ入れしたい中国の利害は一致する。王氏は「米国は中国に対する追加関税を速やかに撤廃し、中国企業に対する制裁を中止すべきだ」と求めた。

米中が近く予定している首脳間のオンライン協議では関税引き下げのほか、ウクライナ情勢、エネルギー・食料危機、気候温暖化など多岐にわたる問題がテーマとなる見通しだ。特に最大の課題である約40年ぶりの物価上昇への妙案がないバイデン大統領にとっては、政策を総動員する姿勢を示す思惑があるという。

バイデン大統領は20日、ワシントン郊外で記者団に対し、中国の習主席との首脳会談を「10日以内」に行うとの見通しを示し、対中制裁関税の引き下げにも言及した。また米下院のナンシー・ペロシ議長が8月に台湾を訪問すると報じられていることについてバイデン氏は、「軍は良い考えだと思っていないようだ」と述べ、否定的な見解を明らかにした。習主席は22日、新型コロナウイルス検査で陽性と判定されたバイデン大統領にお見舞いのメッセージを送った。

激しい「対立」が長期化する米中だが、両国はもともと合理主義の国。経済の相互依存はさらに深化し、各レベルで対話を繰り返している。利害が一致すれば、ニクソン大統領(当時)の電撃的な訪中(1972年2月)などにみられるように、想定外の展開もありうる。対立は「緩和」に向けて動き出している。(後略)【7月23日 レコードチャイナ】
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インフレを抱え中間選挙を控えるバイデン大統領の立場は明瞭ですが、習近平主席も秋の党大会での3選を控える状況で経済は不調で課題を抱えています。

****緊張緩和を探る?米中両首脳の思惑とは****
(中略)
右松キャスター 「中国はゼロコロナ政策の影響で経済が悪化しています。国民の不満の広がりをどう見ていますか?」 

益尾佐和子氏 (九州大学準教授)「中国の私の友人たちも言ってくるのですが、『これは政権による人権侵害である』というような見方が非常に強まっています」 「今まで"ウイグル人がいじめられている"と言っても、あんまりピンときてなかった。ところが『共産党というのは、いきなり人を犯罪者のように家の中に閉じ込めて、2か月以上も監禁するということができてしまう政権なのだ』と。やはり自分の身に起きたことですので」 「ゼロコロナ政策は政権への不満の温床になってしまっているところはあると思います」 

右松キャスター 「国内に溜まっている不満を抜かなければという時に、アメリカとの貿易関税引き下げを習主席が拠り所にせざるを得ない?」 

益尾氏 「習主席自身は、おそらくそこまでアメリカとの大きな改善は望んでいないのです。ただ、習氏に反対する勢力の声自体は相当強まってきています」 「習氏に対してもっと経済政策をうまくやれ、であるとか、そんなにロシアの肩ばかり持って世界と対立するなとか、世論の圧力というのは、徐々に生じてきていると思います」(後略)【7月5日 日テレNEWS】
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制裁関税の扱いはともかく、3回にわたって確信犯的に台湾「あいまい戦略」を否定するような“発言ミス”を繰り返しているバイデン大統領が、台湾問題でどのような発言をするのか・・・。

現在のバイデン大統領の政治状況は“想定外の展開”を可能にするような自由度はないように見えますが、どこまで「緩和」に踏み込むか注目されます。

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