孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  政権を揺さぶるシャリフ派と法曹グループのデモ

2009-03-14 08:40:50 | 国際情勢

(07年当時の弁護士などによる反ムシャラフのデモのようです。
“flickr”より By orionoir
http://www.flickr.com/photos/orionoir/1890841514/)

アフガニスタン対策の要になる国、パキスタンのザルダリ政権にとって大きな試練になりそうな大規模反政府デモが始まっています。

****パキスタン野党側、各地でデモ 政府、参加者らを拘束****
野党指導者の被選挙権停止で激化したパキスタン政府と野党側の対立で、野党と法曹団体は12日、南部などで大規模な反政府デモを開始した。16日まで続ける予定で、政府は拡大を阻止しようと前日に引き続き野党職員やデモ参加者を拘束。海外や人権団体から批判が出ている。

リーダーのシャリフ元首相らの被選挙権が無効とされたイスラム教徒連盟シャリフ派など野党と、法曹・市民団体が参加したデモ隊は12日、数百人規模で同国南部のカラチと西部のクエッタからバスや乗用車に分乗し、イスラマバードを目指して出発。16日ごろの合流を目指すという。また、東部ラホールでも弁護士ら数百人が街頭を行進するなど、各地でデモが相次いだ。地元テレビは12日もカラチでデモに参加した弁護士ら50人以上が逮捕されたと伝えた。
同国の人権団体「パキスタン人権委員会」は11日、「集会の自由への抑圧や不当逮捕はかつてのムシャラフ軍事政権と同じやり方。民主的に選ばれた政府の性質と相いれない」とする声明を発表した。【3月12日 朝日】
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パキスタン最高裁は2月25日、下院最大野党のイスラム教徒連盟シャリフ派を率いるナワズ・シャリフ元首相と、弟でパンジャブ州首相のシャバズ・シャリフ氏の被選挙権を認めない決定をしました。
元首相は過去に汚職などで国外追放されたこと、シャバズ州首相も汚職で過去に訴追されたことが理由とされています【2月26日 朝日】

この決定に対し、シャリフ元首相は対立するザルダリ大統領ら現政権の意向があったと示唆、全国的な抗議行動を展開すると表明していました。
すでに今月2日には、ラホールなどの都市で、シャリフ氏支持者の一部が車両に放火したり、警官隊と衝突するなど、抗議行動が暴動化し、ザルダリ氏が大統領の座について以来、最大規模の反政府行動となっています。

もうひとつの反政府グループは、07年にムシャラフ前大統領に解任されたチョードリ元最高裁長官の復職を求める弁護士グループ・市民団体です。
07年の長官解任時にも大規模デモがあって多数の死傷者を出していますが、ムシャラフ前大統領が陸軍参謀長兼務のまま大統領に就任したことの違憲性を主張するチョードリ元最高裁長官の存在は、ムシャラフ退陣の大きな要素となりました。

チョードリ元最高裁長官は民主化運動の象徴的な存在となっていますが、元長官はムシャラフ前大統領が人民党のザルダリ氏らの汚職訴追を免除したことも違憲と考えているとされており、ザルダリ大統領にとってもその処遇が大きな問題となってきました。
当初連立を組んだイスラム教徒連盟シャリフ派は、元長官の復職を強く要求することで人民党側を揺さぶり、結局連立は解消されました。

もともとザルダリ大統領は国軍に対する力を持たないうえに、党内でもブット元首相の夫という立場にすぎず、人民党内部の権力基盤も弱いと言われています。
そういう基盤が脆弱なザルダリ政権にとって、シャリフ派と元長官支持グループのデモは脅威となりそうです。


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