孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン・カブールからの国外退避  「史上最大かつ最も困難な空輸作戦の一つ」 残される人々

2021-08-22 23:03:32 | アフガン・パキスタン
(国外退避を希望してカブールの空港近くに集まったアフガニスタン人ら=20日【8月22日 時事】)

【バイデン大統領「史上最大かつ最も困難な空輸作戦の一つだ」「最終的な結果がどうなるかは約束できない」】
米軍撤退のあり方についてのバイデン大統領への批判は国内外で多々あり、バイデン大統領の支持率も低下しています。

そのことはしっかり議論する必要がありますが、そうした議論より先に今行うべきことは、出国を必要とする人々を速やかに出国させることです。

バイデン大統領が認めているように、予想よりはるかに早かった首都陥落で事態は困難を極めています。

アメリカ国務省は21日の記者説明で、これまでにアメリカ国民約2500人を含む1万7000人がカブール空港から出国したと説明していますが、現在も最大で約1万5千人のアメリカ人が退避を待っているほか、6万人以上のアフガン人が国外脱出を希望しています。

*****バイデン氏、米国民ら退避は「史上最大かつ最もな困難な空輸作戦」*****
バイデン米大統領は20日、ホワイトハウスで記者会見し、アフガニスタン駐留米軍の撤収に伴い国外退避を求める人々が首都カブールの国際空港に殺到している問題で、米国民やアフガン人通訳などの現地協力者、女性や子供らの退避に「全ての力を動員する」と強調した。

ただ、現在も最大で約1万5千人の米国人が退避を待っているほか、6万人以上のアフガン人が国外脱出を希望しているとされ、混乱が続くのは必至とみられる。

バイデン氏はカブールの陥落が不可避となった14日以降、米軍機によって米国民やアフガン人ら計約1万3千人を国外に退避させたと明らかにした。これとは別に、米政府がチャーターした民間機で数千人が退避したとしている。

また、アフガンの実権を掌握したイスラム原理主義勢力タリバンの標的となる恐れが高い、米メディアのために働いたアフガン人記者や助手ら計204人について、ウォールストリート・ジャーナルなど米紙各社との連携で今週前半までに米軍機で脱出させた。

バイデン氏は「米国とのつながりを理由に標的となるかもしれないアフガン人らを安全に退避させるために力を尽くす。帰国を希望する米国人も必ず祖国に帰す」と強調した。

同氏は一方で、カブールからの国外退避は「史上最大かつ最も困難な空輸作戦の一つだ」と指摘し、「作戦は困難な状況下で実施されており、人的損失の恐れも含め最終的な結果がどうなるかは約束できない」とも語った。

バイデン氏によると、カブール空港では現在、米軍部隊約6000人が展開して安全確保に当たっている。

バイデン氏はまた、性急な米軍撤収が混乱を招いたとの指摘が出ていることに関し「世界の同盟諸国からは米国の信頼性を疑う声は出ていない」と反論。先進7カ国(G7)や北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議の場でも、各国首脳がアフガンへの関与を同時に終了させることで合意したと強調した。

タリバンを正式政府として承認したり支援したりするかについては「米国が適用する条件は厳しい。タリバンが女性や少女、自国の市民らをどのように扱うか次第だ」と述べた。【8月21日 産経】
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【圧死者もでる空港周辺の混乱 テロの脅威も】
現地カブールの空港では押し寄せる群衆で押し潰される圧死者が出る混乱が続いています。
カブール空港は現在米軍が管理していますが、空港外には手が出せない状況となっています。

****アフガン首都、空港近くで大きな混乱 7人死亡****
英国防省は22日、アフガニスタンの首都カブールの空港近くで大きな混乱が発生し、アフガン人7人が死亡したと発表した。アフガニスタンではイスラム主義組織タリバンが権力を掌握して以降、多くの市民が国外退避を試みている。
 
英国防省報道官は、7人が「人混みの中で死亡した」と指摘。タリバンの権力掌握から1週間となる中、米国やその同盟国は、退避便への搭乗を試みる大勢の人の対応に追われている。
 
報道官は「依然として現場の状況は極めて厳しいが、あらゆる手を尽くしている」と強調した。
 
英スカイニューズは21日、白い防水シートで覆われた空港の外の3人の遺体を捉えた映像を放送した。
空港にいたスカイニューズのスチュアート・ラムゼイ記者は、集団の一部の前方にいた人々が「押しつぶされた」と報道。その他にも「脱水症状の人やおびえた人」がいたと伝えた。
 
ベン・ウォレス英国防相は大衆朝刊紙デーリー・メールに対し、米軍のアフガン撤退期限である今月31日より前に「全員を退避させることができる国はない」と語っている。 【8月22日 AFP】
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空港へ至るまでの検問所でのタリバンの妨害に加えて、タリバン敵対勢力(IS系)によるテロの危険も。

****ISIS系、カブール空港へのテロ攻撃を謀議か 米分析****
米国民らの国外退避が続くアフガニスタンの首都カブールの国際空港やその周辺で過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」系の組織によるテロ攻撃の脅威が高まり、米軍が空港へつながる新たな経路開設に動いていることが22日までにわかった。

米国防総省当局者はCNNの取材に、テロ攻撃の可能性は強いと指摘。カブールにいる上位の外交官はこの脅威の信用度は高いとしながらも差し迫った段階にはないと述べた。

代替の進入経路は国外避難を急ぐ米国人、外国人や資格要件を満たしたアフガン人に提供されるとした。
同省当局者によると、アフガンの実権を握ったイスラム主義勢力タリバンもこの代替経路の設定を把握し、米側と協力しているとした。アフガンで活動するISIS系組織はタリバンの仇敵(きゅうてき)ともされる。

米国防総省は国外退去のため人々が殺到するカブール空港周辺の状況を注視。ISIS系組織による攻撃は車爆弾、自爆攻撃や迫撃砲攻撃などの可能性があるとした。

代替経路の計画ではタリバンと協力し、人々の集まりを分散させ、大規模な群衆の出現を阻止するなどとしている。

このISIS系組織は「ISIS―K」と自称。「K」はアフガンやパキスタンなどの地域を含むとする「Khorasan(ホラサン)」を意味する。両組織はイデオロギーや戦術を共有するが、組織面や指揮系統、管理面でどの程度密接な関係にあるのかは全面的に解明されていない。

米情報機関当局者は以前、ISIS―Kの構成員にはシリアから来た経験豊富なジハード(聖戦)主義者らの少人数が含まれるとし、幹部級の工作員10〜15人を割り出したとCNNに明かしてもいた。【8月22日 CNN】
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【今月末までに全員を出国させるのは不可能との予測も】
こうした状況で、撤退期限の今月末までに希望者全員を出国させるのは「人数上、不可能だ」という認識も強まっています。

****全員退避は不可能との観測も****
カブール空港は現在、米軍が管理している。米軍は自国と他国の人々の退避を支援している。西側諸国の部隊のために働き、タリバン政権では安全が懸念されるアフガニスタン人も、支援の対象としている。

ただ、米政府は今月31日を米軍の撤退期限に定めている。その日以降に何が起こるかは不明だ。
北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、9月1日以降も退避の支援活動を継続できるよう、カブール空港を利用可能な状態のままにすることを、いくつかの加盟国が提案していると明らかにした。

BBCの取材では、イギリスもそうした国の1つで、数日間の延長を求めている。

各国がすべての自国民や、危険な状況にあるとみられるアフガニスタン人全員を退避させるのは不可能だとの見方も出ている。空港では行列する人たちの出国手続きに時間がかかっており、退避便の増便もうまく進んでいない。

欧州連合(EU)外務トップのジョセップ・ボレル氏はAFP通信に、アメリカが渡航許可証を持っているすべてのアフガニスタン人を今月末までに出国させるのは「人数上、不可能だ」と述べた。

また、アメリカの安全管理は厳し過ぎ、欧州諸国のために働いたアフガニスタン人が空港に入れていないと、EUとしてアメリカに「抗議した」と話した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は20日、「帰国したいアメリカ人はすべて帰国させる」と宣言した。ただ、退避について、「損失のリスクは排除できない」とし、「史上最も大規模で困難な空輸」だとした。【8月22日 BBC】
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【ベルリン空輸当時の措置活用で民間機提供命令の検討も】
タリバンやテロの危険性もさることながら、退避が進まない根本原因は、限られた数の飛行機しか使えないという制約でしょう。

かつて第二大戦中、ドイツ軍に追い詰められた英仏軍はダンケルクの戦いで40万人の将兵をイギリスに向けて脱出させましたが、それが可能だったのは輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべてを動員することが出来たから。

内陸国アフガニスタンでは飛行機のみ。それもカブールの空港のみ。

そういう隘路を打開すべく、ベルリン大空輸当時の措置が蘇るようです。
商用民間機を提供させ、アフガニスタンからの退避者が足止めされている各国米軍基地からアメリカへの移送を行うもののようです。

****米、アフガン退避に民間機協力命令を検討****
バイデン米政権はアフガニスタンの首都カブールからの退避作戦を大幅に拡大するため、米国の主要航空会社に数万人の移送に協力させる準備を進めるとともに、アフガン人の退避者を収容できる米軍基地の数を増やす計画を立てている。
 
米政府関係者によるとホワイトハウスは、第2次世界大戦後のベルリン空輸を契機に1952年に創設された民間予備航空隊(CRAF)の制度を活用し、最大5社の航空会社に20機近くの商用ジェット機を提供させることを検討する見通し。これにより、アフガニスタンの基地からアフガン人を輸送する米軍の取り組みを助ける計画だという。
 
これらの民間機はカブールを発着することはない。民間航空会社のパイロットと乗組員がカタール、バーレーン、ドイツの米軍基地に足止めされている数千人のアフガン人などを運ぶ手助けをするという。カブールは15日、イスラム主義勢力タリバンの支配下に置かれた。
 
民間航空会社の参加は、アフガン人の退避者で急速に埋まりつつあるこれらの基地の圧力を軽減することになる。米軍と関わりを持つことでタリバンからの報復を受ける可能性のある数千人のアフガン人が、この1週間にカブールの空港に殺到。米国は空港からアフガン人を退避させる取り組みを拡大している。
 
米軍の一部である輸送軍は航空各社にCRAFの編成を指示する可能性があることを通知したと、米政府関係者は述べている。

ホワイトハウス、国防総省、商務省の関係者は、まだCRAFの使用について最終的な承認をしておらず、代替案が導入される可能性もあるという。CRAFの使用の可能性については、これまで報道されていなかった。
 
業界関係者によると、航空各社は20日夜にCRAFが発動される可能性があることを通知された。各社はまた、政府の空輸活動を支援するための自主的な取り組みについて議論しているという。(後略)【8月22日 WSJ】
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また、“アフガン人の退避者で急速に埋まりつつあるこれらの基地の圧力を軽減する”ということに関しては、避難民の収容で日本にある基地の利用もあり得るとか。

****米、カブール空港回避を勧告=避難民収容、日韓基地も候補か―有力紙*****
(中略)米メディアによると、バイデン政権や米軍は、民間機を活用した退避活動支援を視野に入れているほか、日本や韓国、ドイツなどにある米軍基地をアフガン人避難民の一時収容先候補として検討しているという。(中略)

避難民の収容に関しては、米東部ニュージャージー州の基地で仮設住宅の設営が進んでいる。同紙はこれに関し、バージニア、カリフォルニア両州などにある米本土の複数の基地に加え、日韓独やコソボ、バーレーン、イタリア各国内の米軍基地も一時収容先の候補として検討されていると報じた。(後略)【8月22日 時事】 
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【ひどく不安で不透明な未来を前にして、現地に取り残される多くの人々】
今対応に苦慮しているアメリカなど各国が自国民や協力者として認める者以外にも、身の不安を感じて出国しようと願う更に多くの人々がいます。

*****英旅券を振りかざし……脱出しようと必死の大混乱 カブール空港から****
「下がって! 下がって!」。イギリス兵士が叫ぶ。イギリス大使館が避難させた人たちが出国前に一時かくまわれた避難先の前で、集まった群衆に向かって。

兵士の前では大勢が必死の様子で、イギリスのパスポートを振りかざしていた。自分も中に入れてもらおうとして。しかしゴムホースを手にしたアフガニスタン人警備員の一団が、群衆を押し返そうとしていた。

ここに集まったほとんどの人は、自分がイギリス政府に退避させてもらえるという通知を、受け取ったわけではない。

それでも、アフガニスタンをなんとかして出国しようと必死の思いで、ここへやって来た。他方で、中には大使館からのメールでここへ集まるよう指示されてきた人たちもいる。ここへ来て、出国便の搭乗手続きを待つようにと。

その中の1人は、ヘルマンド・カーンさんだ。ロンドン西部に住むウーバーの運転手で、幼い子供たちと親類を訪れるために数カ月前にアフガニスタンに来たばかりだ。幼い息子2人が隣にいる。数冊のイギリス・パスポートを握りしめて、私に向かって突き出した。「もう3日前から、中に入ろうとしているんだ」と必死の面持ちで私に言う。

英陸軍の通訳だったハリドさんもいる。妻は2週間前に出産したばかりで、このような事態で生まれたばかりの赤ん坊が死んでしまうのではないかと、恐怖におののいている。「朝からずっとここにいる。ここへ来る途中にタリバンに、背中を鞭(むち)で打たれた」。

少し離れた場所には、この避難所への正面玄関がある。数千人がここへ来たがその大半は、本当に出国できる可能性は実際にはない人ばかりだった。イギリスの兵士たちは時折、群衆を鎮めるために空へ向かって発砲していた。

中へ入るには、なんとかして群衆をかき分けて進み、兵士たちに向かって書類を振りかざすしかない。どうにかして、入れてもらえますようにと願いながら。

米兵が警備を担当する空港のゲートは、さらに状況が混乱しているようだ。空港の、市民が使う正面玄関では、タリバンが空への発砲を繰り返し、中へなだれ込もうとする群衆を押し返している。(中略)

自分は国際的なバスケットボール選手なのだと、私に言う若い女性もいた。イギリス大使館との接触は何もないが、殺されてしまうかもしれないと恐怖にかられているという。いかにおびえているのか語ろうとして、喉が詰まり、涙声になってしまった。

タリバンは、政府と結びつきのある全員に恩赦を与えたと強調する。「包摂(ほうせつ)的」な政府を樹立するつもりだと言う。しかし、ここにいる大勢は将来を深く危惧(きぐ)している。

市内の別の場所に移動すると、情勢はもっと落ち着いている。まるで別の世界のようだ。店舗や飲食店は再開つつある。ただし、青果市場の露天商たちによると、出歩いている人たちは普段よりはるかに少ない。化粧品を売る男性は、とりわけ女性の姿がはるかに少ないと話す。通りを歩く女性は珍しくはないのだが。

他方でタリバンは至るところにいる。アフガン治安部隊から奪った車両に乗って、あちこちをパトロールして回っている。略奪や世情不安を防ぐために、市内でことさらに存在感を示しているのだとタリバンは言うし、確かにそのおかげで安心だと話す住民もいる。今や当のタリバンは、暗殺や爆弾攻撃を繰り広げていないだけに。

タリバン支配下の生活がどういうものになるのか、多くの人はまだ考えあぐねている最中だ。タクシー運転手の1人は、タリバン戦闘員の集団を市内の端から端まで乗せたという。その間、ずっと車内ステレオで音楽をかけながら。「何も言わなかったよ」と、運転手はにやりと笑顔で私に言う。「前みたいに厳しくない」。

しかし、決してそうではないという話も相次いでいる。複数の報道関係者や元政府関係者の自宅にタリバンが押し掛けて、尋問したなど。自分たちが標的にされ、攻撃されるのは時間の問題だと、大勢が恐れている。

空港近くに戻ると、英軍通訳だったハリドさんと家族は、赤ちゃん共々ついに避難施設内に入ることができた。

それでも、まだ大勢が中に入ろうとしている。1人のアフガニスタン系イギリス人が、私に協力してくれと訴えてきた。「この込み合う中を、子供たちを連れて通るわけにはいかない」のだと。

そして、イギリス政府による退避対象ではないものの、なんとしても出国しようと必死の大勢が、ここに残されることになる。ひどく不安で不透明な未来を前にして。【8月22日 BBC】
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