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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  極右政治家マリーヌ・ルペン氏の次期大統領選挙への出馬が司法判断で困難に

2025-04-01 23:30:02 | 欧州情勢

(フランスの極右政党「国民連合」(RN)の指導者、マリーヌ・ルペン氏=パリで3月31日、ロイター【4月1日 毎日】)

【マリーヌ・ルペン氏 有罪判決で仮執行 次期大統領選挙への出馬は困難に】
フランスの極右政治家で大統領の椅子も現実味を帯てきていたマリーヌ・ルペン氏の次期(2027年)大統領選挙出馬が非常に困難となるという、フランス政治・・・というより、欧州政治に多大な影響を与える司法判断が下されました。

****ルペン氏の被選挙権5年間停止 27年仏大統領選出馬困難に 公金不正流用で有罪判決****
パリの裁判所は3月31日、極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン下院議員に対し、公金不正流用で5年間の被選挙権停止を言い渡した。

判決は「仮執行」が適用され、控訴審判決を待たずに即時執行される。2027年の次期大統領選で有力候補だったルペン氏の立候補は阻まれ、政界に激震が走っている。

ルペン氏は、欧州連合(EU)の欧州議員だった2004〜16年の間、秘書給与の名目で党の活動員への支払いに公金を流用したとして有罪になった。被選挙権停止に加え、10万ユーロ(約1600万円)の罰金刑が言い渡された。

「仮執行」は最終審を待たずに判決の一部、あるいはすべてを強制執行できる仕組み。通常は民事で債権差し押さえなどで適用されるが、フランスでは政治家の汚職判決にも適用できる。

フランスでは16年以降、腐敗撤廃を目指す法改正が進んでおり、検察はルペン氏への求刑で仮執行の適用を求めていた。

ルペン氏は、裁判で起訴事実を一貫して否認しており、国民連合のジョルダン・バルデラ党首は「不当であり、フランスの民主主義に対する断罪だ」と判決を非難した。公金流用では、党や党幹部にも罰金刑が課せられた。

27年の大統領選は、任期満了で退任が決まっているマクロン大統領の後継者を決める選挙。ルペン氏は12年以降、3度の大統領選では党公認候補となり、4度目の出馬に意欲を示していた。

今月30日の世論調査では、27年大統領選で出馬が取り沙汰される政治家のうち、「ルペン氏に投票する」と答えた人が34〜37%を占め、最も多かった。ルペン氏が立候補できない場合、党はバルデラ氏を大統領候補に擁立するという見方が強い。【3月31日 産経】
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重要なのは「有罪」判決ではなく、「仮執行」が認められたことです。 通常は「有罪」となっても控訴し、上級審で有罪が確定するまでは被選挙権が残りますが、「仮執行」によって直ちに被選挙権を失い、2027年選挙に出られない可能性が非常に高いという点です。

フランスの場合は知りませんが、アメリカのトランプ大統領のように、いったん大統領になってしまえば、法律の適用条件も政治環境も変わるケースが多く見られます。

ルペン氏は控訴の意向を問われ、「可能な限り速やかにする」と語ってはいますが、選挙参加の可能性は非常に限定的です。

“仮に控訴審が27年までに開かれ、無罪判決が出た場合や、有罪判決でも仮執行が命じられず、上告審で有罪判決が確定する前であれば、ルペン氏は大統領選への出馬が可能になる。ただ、フランスでは控訴審までに数年を要するケースが多く、27年の大統領選までに公職選出禁止が解除されない可能性が高い。”【4月1日 毎日】

【仏・欧州政治に多大な影響を及ぼす司法判断 反ルペン陣営からも批判】
今回判断には欧州極右陣営、極右支持のマスク氏だけでなく、反ルペン陣営からも批判が出ています。

****被選挙権停止の仏ルペン前党首、控訴を表明「政治判決だ」 マスク氏や欧州右派が援軍****
極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン前党首は3月31日、公金流用で5年間の被選挙権停止を命じた判決について、民放テレビで「政治的判決」と抗議し、控訴する構えを示した。

ルペン氏の2027年の大統領選への出馬を阻む判決に対し、トランプ米大統領に近い実業家、イーロン・マスク氏や欧州の右派政治家が相次いで批判した。

ルペン氏はテレビで、裁判は結審まで推定無罪が原則なのに、判事は「仮執行」と呼ばれる判決の即時執行手続きを命じて「私が(大統領選で)選ばれないようにした」となじった。

2年後の大統領選までに、控訴審で判決を覆すのは難しいことを認める一方、政界引退は否定した。29歳のジョルダン・バルデラ党首を大統領候補として擁立する可能性については、明言を避けた。

フランスではこれまで、ジュペ元首相やフィヨン元首相が公金流用で有罪となり、被選挙権を停止された。執行はいずれも上級審で判決が確定してからのことだった。ルペン氏は判決確定を待たず、判事が再犯防止を理由に即時執行を命じる異例のケースとなった。

判決にはルペン氏の「政敵」からも批判が出た。22年の大統領選でルペン氏と争った急進左派のメランション元下院議員は「政治家の排除は有権者が決めるべき」と主張した。中道右派「共和党」幹部、ベラミ欧州議員も「支持率で首位に立つ候補の出馬を司法が阻んでよいのか」と訴え、判決は民主主義に陰を落としたと論じた。

一方、世論調査では57%が「罪状からみて、ルペン氏への判決は当然」と答えた。マクロン政権は沈黙を保っている。

国際的にも波紋は広がり、マスク氏は「急進左派は選挙で勝てないと、司法を操って政敵を収監しようとする」とSNSで判決を批判。ハンガリーのオルバン首相、イタリアのサルビーニ副首相はルペン氏への支持を表明した。ロシアのペスコフ大統領報道官は「民主主義の規範を踏みにじる道をたどっている」と記者団に述べた。(後略)【4月1日 産経】
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「仮執行」の理由としては“検察側は24年11月、判決後に公職選出禁止を即時仮執行するよう求めており、裁判所はこれを認めた。裁判官は即時仮執行の理由として、被告に反省の念が欠如していることを挙げた。”【4月1日 毎日】

ルペン氏はこれまで大統領選挙の決選投票に進むところまでは到達していますが、決選投票では有権者の「反極右」感情に勝利を阻まれてきました。

ただ、ルペン氏自身の「極右色」を抑えるソフト化路線(“脱悪魔化”)に加え、ドイツのAfD、イタリアのメローニ首相、オランダの自由党、オーストリアの自由党などの欧州における昨今の極右勢力台頭に見られるように、国民の側にも一定に極右勢力を受け入れる流れが出てきていることを考えると、2027年選挙で大統領に到達する可能性も現実味を帯てきていました。

もし、ルペン大統領誕生となれば、フランス政治だけでなく、フランスが中心的地位にあるEUの性格も大きく変わることになります。

ルペン氏はソフト化路線(“脱悪魔化”)で最近はEU離脱は否定するようになっていますが、EU離脱を疑われるような政治家が中心国フランスの大統領となれば、当然にその在り様は大きく変化します。 そしてロシアと欧州の関係も。

****仏極右ルペン氏、EU離脱する「秘密計画」ないと主張*****
仏極右政党「国民連合」のルペン党首は12日、欧州連合(EU)を改革する試みが失敗に終わった場合にEUから離脱する「秘密の計画」はないと言明した。

ラジオ局フランス・アンテルに「仏国民の多くは現在のようなEUをもはや望んでいないだろう。完全に非民主的に機能し、脅しによって前進し、国民の利益に反する政策を実施している」と述べた。

ルペン氏はEU、ユーロ、シェンゲン協定からの離脱はもはや掲げないとしている。だが同協定について再交渉し、税関職員の数を増やし、他のEU諸国からの輸入品に対する検査を再導入すべきとの立場を示している。

EU改革の取り組みが全て失敗に終わればEUから離脱するかとの質問に対し「(そうした考えは)全くない」と否定した。【2022年4月12日 ロイター】
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そうしたフランス、欧州の今後に非常に大きな影響力を持った政治家の出馬を“被告に反省の念が欠如している”という裁判官判断で潰してしまっていいものか・・・疑問があります。

個人的にはルペン氏のような極右路線には同意しませんが、受け入れるか否かを決めるのはやはり選挙による国民の判断でしょう。

****ルペン氏の有罪判決「非常に大きな問題」、トランプ氏が見解****
トランプ米大統領は31日、フランスの極右政党、国民連合(RN)の指導者マリーヌ・ルペン氏が公金不正流用で有罪判決を受け、2027年の次期大統領選への出馬を禁止されたことについて「非常に大きな問題だ」と述べた。

人権擁護団体は、両氏が移民やマイノリティーに対し攻撃的な主張を展開していると批判してきた。

トランプ氏は記者団の質問に対し「非常に大きな問題だ」とし「この件についてはよく知っている。多くの人々は彼女が何の罪にも問われないと考えていた」と発言。

「だが彼女は5年間立候補を禁止された。彼女は有力候補だ。この国のようだ。この国に非常によく似ている」と語った。自身が大統領就任前に訴訟に直面したことに言及したとみられる。【4月1日 ロイター】
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ルペン氏と多くの疑惑をたくみな法廷戦術ですり抜けて大統領に当選したトランプ氏が同じかどうかは別にして、もし、ベラルーシとかベネズエラのような国で、ルペン氏と同じような理由で反政府政治家の選挙出馬が阻まれたら(実際、阻まれていますが)、フランスを含めた多くの欧州諸国が批判するでしょう。

それを考えると、ルペン氏の「仮執行」を容認するのは二重基準にも思えます。

今後については、ルペン氏が立候補出来ない場合は“党はバルデラ氏を大統領候補に擁立するという見方が強い”とのことですが・・・

****立候補の道探る意向****
最新の世論調査では、次回大統領選の第1回投票でルペン氏に投票すると答えた人が最多となるなど、ルペン氏は次期大統領の有力候補の一人と目されていた。ルペン氏が出馬できない事態となると、RN(国民連合)にとって大きな痛手となる。

29歳と若いバルデラ党首は大統領選に立候補するには政治経験が浅く、党内には手腕を不安視する声もある。

ルペン氏はTF1テレビでバルデラ氏の大統領選擁立の可能性について「彼は党のすばらしい切り札であり、それをむやみに使う必要がないことを願う」と述べ、当面は自らが立候補する道を探る意向を示した。【4月1日 毎日】
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【ルーマニアでは第1回投票でトップになった極右候補がやり直し選挙への出馬を認められず】
なお、欧州ルーマニアの大統領選挙では、第1回投票でロシア寄り極右候補がSNSを駆使した選挙活動で泡沫候補かや一躍トップに躍り出ましたが、ロシアによる選挙干渉の疑惑もあることでやり直し選挙となり、そのやり直し選挙に当該候補の出馬は認められないことになっています。

****ルーマニア選管 極右候補の大統領選立候補を拒否 世論調査では支持率首位****
ロシアによる干渉が指摘され、5月にやり直しが予定されているルーマニア大統領選挙を巡り、選挙管理委員会が今月9日、前回首位だった極右候補の立候補を拒否しました。

地元メディアによりますと、ルーマニアの選挙管理委員会は9日、5月のルーマニア大統領選挙への立候補を表明していたロシア寄りで極右のジョルジェスク氏の立候補を拒否しました。

ジョルジェスク氏は、去年11月のルーマニア大統領選の第1回投票で、無名の泡沫候補扱いでしたが、動画投稿アプリ「TikTok」を駆使した選挙活動で、得票率が首位でした。

その後、ロシアによる選挙への干渉が指摘されるなどして、憲法裁判所が選挙を無効と判断し、5月にやり直しが予定されています。

ルーマニアの検察は、ジョルジェスク氏を虚偽情報の流布やファシズム・人種差別主義組織への支援などの疑いで捜査中ですが、地元メディアの世論調査ではジョルジェスク氏の支持率は4割を超えて首位です。

ジョルジェスク氏は立候補の拒否を受けて、SNSで、「世界中の民主主義の確信への直接的な打撃だ」と非難しています。

首都ブカレストの選挙管理委員会周辺には、ジョルジェスク氏の支持者らが集まり、バリケードを破壊するなど抗議していて、治安部隊が催涙ガスなどで対応にあたっているということです。【3月10日 テレ朝news】
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