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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  トランプ関税で全面的貿易戦争の様相 米・相手国生産者の不安・とまどい 幾つかの論点

2025-03-23 23:17:45 | 経済・通貨

(【3月5日 TBS NEWS DIG】)

【報復関税の連鎖で全面的貿易戦争の様相】
トランプ関税・・・あまりにも多くの事柄が動いており(しかも、やると言ったり、やめると言ったり・・・)、一体今どの国に対して、何に対して、いくらの関税追加がなされているのか、それに対する報復関税は課されているのか・・・正直なところ、全然把握できていません。

大まかには‟トランプ氏は合成麻薬の流入対策の不備を理由にしたメキシコ、カナダ、中国への制裁関税に加え、12日には全ての国に対する25%の鉄鋼・アルミ関税を発動。さらに4月2日には、相互関税や自動車関税を予定している。”【3月14日 毎日】という状況。

確かなのは、‟米国発の全面的な貿易戦争の様相を呈してきた”ということ。

****鉄鋼・アルミ関税に各国反発 全面的貿易戦争の様相****
ドナルド・トランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウムを標的に25%の追加関税を発動したのを受け、主要な貿易相手国・地域は12日、相次いで報復措置を発表した。これに対し、トランプ氏はさらなる対応を宣言。米国発の全面的な貿易戦争の様相を呈してきた。
欧州連合は4月以降、総額280億ドル(約4兆1000億ドル)相当の米国からの輸入品に報復関税を段階的に導入すると発表。カナダは13日から、207億ドル(約3兆円)相当の米産品に追加関税を課すと表明した。中国は、「必要なすべての措置」を講じるとした。

EU欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、バーボンウイスキーからオートバイに至るまで適用されるEUの報復措置は「強力だが適切」なものだと主張。

これに対しトランプ氏は記者団に、報復措置に「当然」対応するとし、米国はEUとの「金融戦争に勝つ」と語った。

一方、欧州最大の輸出立国、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、米国の関税政策を「間違っている」と非難し、インフレ高進を警告。中国外務省は「貿易戦争に勝者はいない」と批判した。

日本は、関税適用から除外されなかったことに遺憾を表明。オーストラリアは不当だと反発しながら、英国とともに、報復には及ばなかった。メキシコも直ちには報復しないと表明、ブラジルは反応せずとの姿勢を示した。 【3月13日 AFP】
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こうした関税措置は報復の連鎖を生んでいます。

****報復の連鎖…EUの“アメリカ産ウイスキー50%報復関税”受けトランプ大統領がワインに200%関税…「反撃する決意」EU再反発****
アメリカのトランプ大統領は13日、EU(ヨーロッパ連合)がアメリカ産のウイスキーへの追加関税を撤廃しなければ、ワインなどの酒類に200%の関税を課す考えを示しました。

EUは、アメリカによる鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置として、アメリカから輸入するウイスキーなどに4月1日から報復関税を課すことを決めています。

これについてトランプ大統領は自身のSNSで「EUがウイスキーに50%という厄介な関税を課した」と指摘した上で、「撤廃されなければフランスやEU加盟国から輸入されるワインやシャンパン、アルコール製品に200%の関税を課す」と投稿しました。

これに対してフランスのサン=マルタン貿易担当相は、SNSで「ヨーロッパ委員会やパートナーとともに反撃する決意を固めている。脅しに屈することなく、常に自国の産業を守っていく」と反発しています。【3月14日 FNNプライムオンライン】
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さすがにEUもビビったのか、4月中旬に先延ばしにするとしていますが、生産者の不安は消えません。

****「まず理解できない」フランス・パリのワイン生産者や農家から不安の声 「EU産ワインに200%の関税」発動されれば約15兆円損失との試算も****
アメリカのトランプ大統領が「EUのワインに200%の関税をかける」と警告する中、戸惑う生産者や農家の思いをフランス・パリで取材しました。

トランプ政権がEUからの鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課したのに対抗し、EUは4月1日からアメリカ産のバーボンウィスキーなどに関税を課すとしていましたが、4月中旬に先延ばしにすると明らかにしました。

これに先立ち、トランプ大統領は「EUのワインに200%の関税をかける」と警告していました。

こうした中、パリで21日から始まったワインの見本市には200を超える小規模のワイン経営者や農家が一堂に会し、例年約1万人の客が訪れます。

農家からは「まず理解できないし、それから怒りも少しある」「アジアやヨーロッパで新たな輸入業者を見つけて補おうと考えている」といった声が聞かれました。

フランスにとってアメリカはワインの最大の輸出先で、今回、200%の関税が発動されればフランスで920億ユーロの損失が出るとの試算もあります。【3月22日 FNNプライムオンライン】
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生産者の不安・とまどいはアメリカ・相手国を問わず共通です。

****米中貿易戦争がエスカレート、米国の農家は耐えられるのか―独メディア****
2025年3月3日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国が米国による追加関税への報復措置を検討する中で「米国の農家は耐えられるのか」と題した記事を掲載した。(中略)

環球時報が中国による報復措置について「米国産農産物に対する追加関税の可能性が高い」と報じていることに言及。中国は第1次トランプ政権期の18年に、大豆や牛肉、豚肉、小麦、トウモロコシ、高粱(コウリャン)など主要な米国産農産物に対し最大25%の報復関税をかけ、中国による米国産農産物輸入額が23年は前年比20%減、昨年は同14%減と減少を続けているものの、それでも輸入総額は約300億ドル(約4兆5000億円)に上っており、中国は依然として米国農産物の最大市場であることを指摘した。

そして、もし中国が新たな報復関税を発動すれば米国産農産物の対中輸出はさらに減少する見込みであり、米国の農業関係者や商業者は中国の需要の減少を補うために他の市場を探し始めているものの、中国市場は彼らにとって「代替不可能」な存在であり、中国市場抜きにはやっていけない状況は変わらないと論じた。(後略)【3月4日 レコードチャイナ】
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【トランプ大統領「全く曲げるつもりはない」】
報復関税の連鎖を呼ぶ関税戦争について、さすがに実業家でもあるマスク氏は関税の負の側面を憂慮しているようです。

****マスク氏率いるテスラ トランプ政権の関税政策に「競争力を失う」と慎重な対応を要請****
イーロン・マスク氏が率いる電気自動車大手「テスラ」がトランプ政権の関税政策について、テスラが報復関税の対象となれば競争力を失う可能性があるとして、アメリカ政府に慎重な対応を求めました。
テスラはUSTR(アメリカ通商代表部)に宛てた11日付の書簡で、政権の関税政策について「公正な貿易を支持する」としつつも「うかつにもアメリカ企業が損害を被ることのないように」と要望しました。

過去に起きた貿易摩擦を念頭に、相手国の報復関税に直面することを避けたいとしています。

また、関税の上昇に伴う国内のサプライチェーンの問題点を指摘し、「アメリカの製造業者が不当に負担を強いられることがないように」と求めています。

国内企業が対応する時間が必要だとして、政権が相手国へ関税を発動する「実施時期についても考慮すべき」と指摘しています。

テスラを巡っては株価が大幅に下落していて、マスク氏がトランプ政権のもとで推し進める人員削減などへの反発が業績に悪影響を及ぼすのではとの懸念が広がっています。【3月14日 テレ朝news】
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今のところトランプ大統領の考えは変わらないようです。

****トランプ氏、関税による景気後退の可能性巡り直接の言及避ける****
トランプ米大統領は9日に放送されたFOXニュースの番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」のインタビューで、関税政策によって米国が景気後退に陥るかどうか直接的な言及を避けた。

年内の景気後退入りを想定しているかと聞かれたトランプ氏は「われわれは非常に大きなことを実行しているので、一定の経過期間が存在する。少し時間はかかるが、われわれにとって必ず素晴らしい事態になると思う」とだけ語った。

トランプ氏は先月2日、包括的な関税が国民にとって「短期的な」痛みをもたらす可能性があると発言していた。

ただ側近や政府高官は関税の悪影響を繰り返し否定している。

9日にはラトニック商務長官がNBCテレビの「ミート・ザ・プレス」で、関税を通じて一部の外国製品の価格は高くなるが、逆に国産品は割安になると主張。「米国が景気後退に突入することは絶対にない」と断言した。【3月10日 ロイター】
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****トランプ氏、関税引き上げの考え「曲げるつもりない」 市場に不安****
トランプ米大統領は13日、金融市場に不安を与えている関税引き上げについて「全く曲げるつもりはない」と述べ、たとえ米経済に打撃を与えるとしても検討中の関税を強行する姿勢を示した。ホワイトハウスで記者団の質問に答えた。

関税政策を修正する可能性を問われたトランプ氏は「鉄鋼もアルミニウムも自動車も、全く曲げるつもりはない。我々は何年もの間、ぼったくられ続け、不要なコストを負担させられてきた」と明言。欧州連合(EU)などから米国は不当な扱いを受けてきたとの持論を改めて展開し、米国に高率の関税を課す国に同程度の関税を発動する「相互関税」などを、予定通り実行する考えを示した。(後略)【3月14日 毎日】
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【トランプ関税に関する幾つかの論点】
細かく取り上げたらきりがないので、トランプ関税に関する総論的な指摘を要点のみいくつか。

****トランプ氏の「対等関税政策」は本当に米国に有利か?国際貿易秩序崩壊の可能性も―独メディア***
(中略)トランプ大統領が対等関税を発動する背景について、米国が国際貿易で不公平に扱われ、各国における米国製品への関税が、米国による輸入関税より高いため、貿易の不均衡すなわち貿易赤字が生じているとの認識を持っていると分析する一方で、経済学者からは「ドルが世界的な準備通貨である以上、米国が国際貿易で大規模な貿易赤字を維持してもドルの流通が活発になり、外国に流出したドルが株式投資や不動産購入によって戻って来ることを考えれば、実際には(低関税の貿易赤字という現況は)米国にとって有利に働く」との見方が出ていることを紹介した。

また、経済学者たちはトランプ大統領による関税措置が米国の輸入商品の価格を引き上げ、インフレを悪化させる可能性があるとも警告しているとし、中国、カナダ、メキシコに対する関税が全て効力を発揮した場合、米国の消費者価格は最大0.7%上昇する可能性があるというS&Pグローバル・レーティングスの推計を紹介。

関税政策によって米国内の製造業者や小売業者は恩恵を受けつつも、一方で原材料の輸入コストの上昇やサプライチェーンの混乱にも直面することになると指摘した。

さらに、米国の輸出業者は貿易相手国による報復措置に苦しむ可能性があり、中国、カナダがすでに報復措置を発表し、EU加盟国内でも報復を示唆する声が上がっており、他の国々も報復の流れに追随するとの予想が出ているとした。(後略)【3月11日 レコードチャイナ】
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トランプ大統領の狙いは声高に叫んでいる「生産のアメリカの回帰」ではなく、「消費税の一種の導入による財源確保」にあるとの指摘も。

****生産のアメリカ回帰は起こらない? トランプ関税に隠された「真の狙い」****
(中略)いったいトランプは何を考えているのか。本人談にしたがえば、「麻薬と不法移民の流入を阻止する」「不当な通商慣行をただす」「国内製造業の復活」が目的という。がしかし、本当の狙いは別のところにあると、私は考えている。

トランプの本命は、4月2日から始まる全世界向け一律関税であり、これについては発動の延期も対象の緩和もない。なぜそう考えるのか。以下、説明してみたい。

トランプ関税の真の狙いはどこに?
まず、関税とはどのように徴収されるものか。(中略)最終的には消費者が負担する。つまりこれも、消費税の一種と言い換えることもできるだろう。とりわけ、対象国や対象品を絞らず、広く一律に課した関税であれば、「輸入全品を対象にした消費税」に近しい。

(中略)アメリカの場合、州単位で類似の間接税制はあるが、国全体では消費税の類は、存在しない。同国では、歳入と歳出のギャップが年2兆$に迫り、国債発行残高はGDP比120%を超える財政状況のため、新規財源として消費税制度は喉から手が出るほど欲しいだろう。

ただ、日本を見てもわかる通り、消費税に対しては左派・右派問わず、猛烈な反発が起きる。ましてやアメリカでは、税金不払いを標榜するティーパーティ運動や、小さな政府を強く志向するフリーダムコーカス(自由議員連盟)の影響力が強く、彼らはトランプ支持層とも重なる。だから、口が裂けても「新規に消費税を導入する」などと言えはしない。

そこで、「関税」の登場だ。「麻薬と不法移民対策」「工場の国内回帰」などのお題目で擬装しているが、一皮むけば、単なる大型間接税に他ならない。(後略)【3月17日 海老原嗣生氏 PHPonline】
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トランプ関税は結局のところアメリカの消費者が負担することになる・・・というのは、多くの論者でほぼ共通した認識です

****「トランプ関税」の本当の敗者は米国の消費者…どうなる?米国抜きの世界経済、中国に好機を与える可能性も****
BRICSの概念を提唱した元ゴールドマン・サックス会長で元英国財務大臣のジム・オニールが、2025年2月24日付のProject Syndicateで、トランプが関税措置を政策手段とすることで、世界各国は米国市場を離れ、結局米国は孤立し米国の消費者が敗者となると論じている。

(中略)米国は他国に比較し国内貯蓄率が恐ろしく低く、所得と富の不平等が著しい。もし米国をより偉大な国にするというなら、財政状況を改善し、特に貧困層の所得を幅広く増加させ、より包摂な成長を達成する必要があろう。

(中略)トランプとその側近は、米国の主要貿易相手国に対して関税引き上げの脅しをかけ続けて、米国への輸入全体を減らすことが、物価上昇を通じて、または、米国の貯蓄率を上げざるを得ないことで、米国の消費者に害を及ぼすという事実にも平然としているように見える。

米国は世界の GDPの15〜26%を占めているとはいえ、それ以外の世界経済はその3〜5.5倍はあり、他の国々が米国の消費者に頼ることなく、多角化すれば良いと考えることは容易に想像できる。(後略)【3月19日 WEDGE】
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そもそもトランプ関税には、経済的目標を直接的に追求する場合に発動される「実効関税」と、政治的な譲歩や交渉の駆け引きを目的とした「ディール関税」の二つがあるとの指摘も。

****トランプ政権発足から2カ月“トランプ関税”構成する「実効関税」と「ディール関税」の背後にある戦略的意図は****
(中略)
トランプ政権が使い分ける「実効関税」と「ディール関税」
まず実効関税とは、貿易収支の改善を直接的な目標とし、輸入品に対する価格障壁を設けることで国内生産を保護し、輸入依存度を低減させるものである。例えば、米国が長年抱える対中貿易赤字を是正するため、中国からの特定製品(例:電子機器や鉄鋼製品)に高関税を課すケースがこれに該当する。この場合、関税は経済的成果を定量的に測定可能な形で設計される。

対して、ディール関税は、相手国との交渉において譲歩を引き出すための「脅し」として機能する。関税の導入自体が最終目的ではなく、交渉のテーブルに相手を着かせるための手段である。例えば、カナダやメキシコとのNAFTA再交渉時に見られたような、関税をちらつかせて貿易協定の改定を迫る手法が典型例である。

そして、この二面性は単なる通商政策の違いに留まらず、国家安全保障や地政学的優位性の確保に直結する。実効関税は、産業基盤の強化やサプライチェーンの自国回帰を促し、長期的な経済的レジリエンスを高める。

一方、ディール関税は、短期的な外交成果を追求しつつ、相手国との力関係を再定義するツールとして機能する。

トランプ政権がどちらの関税を採用するかは、その時々の経済状況や国際関係の文脈に依存するが、いずれにせよ経済安全保障の強化が背後にあることは明らかである。(後略)【3月19日 Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹氏 FNNプライムオンライン】
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いずれにしても、本来は膨大な準備を要する関税変更への拙速とも思える対応は恣意的に運用される懸念がるとも。

****トランプ政権「相互関税」に恣意的運用の懸念 4月2日公表 国ごと税率、広範な算出基準****
トランプ米政権が4月2日に公表する「相互関税」の制度設計を急いでいる。相手国と同水準まで関税を上げるとした相互関税について、米政府は相手国の税率だけでなく、非関税障壁なども考慮し、国ごとに一つの関税率を決める見込みだ。

ただ、200カ国近くある貿易相手ごとに、客観的で公正な数値を短期間に算出するのは困難で、恣意(しい)的に運用される懸念がぬぐえない。(中略)

相互関税について、CSISのラインシュ氏は「貿易ルールを無視し、小国をいじめる中国と同じような行動を、米国がするのだと世界に示す」ようなものだと指摘している。【3月23日 産経】
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