孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

女性の権利保護という現代世界の大きな流れ

2018-04-29 22:24:41 | 女性問題

(スペイン北部パンプローナで、18歳女性を集団レイプした男らに強姦罪が適用されなかったことに抗議するデモに参加する人たち(2018年4月28日撮影)。【4月29日 AFP】)

性的暴力厳罰化を求める動き
“第三代台湾総督で「軍神」と呼ばれた乃木希典の母親・寿子は、息子と共に台湾へおもむく際に「台湾の女子は幼いころから纏足を強いられていると聞く。わたしは、その足を自由にしてあげたいのです」と語り、明治天皇を感激させたとの逸話が残っている。”【4月17日 WEDGE】

乃木希典が母と妻を携えて台湾に渡ってから、およそ120年の歳月が流れ、周知のように今の台湾は女性総統だけでなく、官房長官にあたる総統府秘書長に南部の高雄市長を務める陳菊氏(67)を起用する発表があり、総統府の「ツートップ」である総統と秘書長が共に女性となっています。

一方、日本では相撲協会が「女人禁制」で揺れ、福田淳一財務次官のセクハラ問題が国政上の大きな問題ともなっています。

女性を“穢れ”とみなすところから生まれた“伝統”なら、それは“伝統”ではなく“悪弊”と呼ぶべきもので、早急な見直しが必要と、個人的には考えています。

日本が世界第114位の“ジェンダー後進国”であることは4月19日ブログ「注目される“保守的”日本のセクハラ騒動 インドの性暴力 フランスのレイプ実態 スウェーデンでは・・・」でも取り上げましたが、同時に、世界各地で女性への性暴力など、女性の権利保護が未だ不十分な状況であることも併せてとりあげました。

そうした状況にあって、女性の権利保護をもっと進めていこうという動きが、現代世界の大きな流れともなっています。

****集団レイプ、強姦ではなく性的虐待で有罪 各地で抗議デモ スペイン****
スペインで、裁判所が26日に同国北部パンプローナで2年前に開かれた牛追い祭り「サン・フェルミン祭」で18歳の女性を集団レイプした5人の男に対し、強姦(ごうかん)罪ではなく性的虐待の罪で禁錮9年を言い渡したことから、各地で同日から2日間にわたって大規模な抗議デモが行われている。
 
27歳から29歳までの男5人は2016年7月7日、サン・フェルミン祭初日にパンプローナのアパートの入り口で、当時18歳だった女性を集団レイプした罪に問われていた。(中略)

男たちは女性の携帯電話を盗み、女性をその場に放置した。男たちは事件の様子を自分たちのスマートフォンで撮影し、その後、メッセージサービスの「ワッツアップ」で自分たちを「La Manada(「一味、群れ」の意)」と名乗り、犯行について自慢するなどしていたという。
 
裁判所は被告の男5人に対し、本件では「暴力や脅迫」は認められなかったと判断し、強姦罪を含めた性的暴行の罪に関しては無罪とし、さらに、被害者の女性は同意したわけではないが拒絶する意思表示もしなかったとの裁定を下した。
 
セクハラ告発運動「#MeToo(私も)」が世界的に広がる中、今回の判決に対して激しい怒りの声が上がり、判決が言い渡されたパンプローナ裁判所の外では27日、デモに集まった人々が「性的虐待ではない、レイプだ!」と叫んだり、「(ここは)不正の館」と書かれた横断幕を掲げたりした。

女性の人権団体によれば、同市内では28日にも抗議デモが予定されている。デモは他にも、バルセロナやマドリード、さらには男たちの出身地セビリアなどでも行われている。
 
スペイン政府は27日、性犯罪関連法の改正について検討する考えを発表した。【4月28日 AFP】
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抗議デモは三日目の28日も続いており、“警察当局によると、パンプローナだけでも28日に女性を中心とする3万2000〜3万5000人が「性的虐待ではない、レイプだ!」をスローガンとする抗議デモに参加した。デモ行進は平和裏に行われたという。このほか、5人に性的虐待での判決を下した判事らの罷免を求めるオンライン署名は、28日までに120万の署名を集めた。”【4月29日 AFP】

4月19日ブログでも取り上げたインドの“8歳少女のレイプ殺人”も、世論の激しい怒りが政治を動かすことにもなっています。

****インド8歳少女のレイプ殺人で、少女への性的暴行を死刑に****
<少女を狙った残虐な事件が相次ぎ世論の怒りは高まっているが、レイプが減る気配はない>

4月21日、インド政府は閣議で12歳未満の女児への性的暴行罪に死刑を適用することを認める政令を承認した。背景には、相次ぐ性的暴行事件に対する世論の激しい怒りがある。

ロイター通信によれば、今回の政令はナレンドラ・モディ首相が招集した緊急閣議で決められた。16歳以下の少女への性的暴行の厳罰化という刑法の修正条項も含まれている。

インドでは8歳の少女が性的暴行された末に殺されるという残虐な事件が起き、社会に衝撃を与えたばかり。

ワシントン・ポストが当局者の話として伝えたところでは、被害者は自分のスカーフで縛られ、男たちに繰り返し暴行されたあげく、頭蓋骨を石で打ち割られていたという。この事件はインドで深刻になりつつある宗教的・民族的分断をも浮き彫りにした。被害者の少女はイスラム教徒で、容疑者の男たちはヒンズー教徒だったのだ。

与党の政治家が関与したとされる事件も
またワシントン・ポストによれば、モディ首相の与党インド人民党(BJP)の政治家も未成年者に対する性的暴行で逮捕・起訴された。これに対してインド全土で抗議運動が起き、モディが女性を守るために十分な対策を採っていないとの批判が多くの人々から上がった。怒りの声は同じ与党内部からも聞かれた。

「BJPはこうした犯罪者たちの弁護役ばかり務めてきた。まったく許されることではない」と、ヤシュワント・シンハ元財務相は同紙に述べた。

国民からの激しい突き上げを受けてモディは「幼い少女への性的暴行というのは本当に胸が締めつけられる事件だ。これほどひどい道の踏み外し方はないと思う。性的暴行は性的暴行だ。娘に対するこんな不正義を許しておくことがどうしてできるだろう」と述べた。

こうした事件から思い出されるのが、12年にデリーのバスの車内で、理学療法を学んでいた23歳の女子学生が6人の男に輪姦された痛ましい事件だ。

世論の怒りにもかかわらず、インドの性的暴行事件が減る気配はない。16年の発生件数は4万件を超え、被害者の40%は子供だったとロイターは伝えている。

地元紙タイムズ・オブ・インディアによれば、政令は承認を得るためラム・ナト・コビンド大統領のもとに送られる。【4月23日 Newsweek】
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もっとも、女性への性暴力がなくならないだけでなく、上記“8歳少女のレイプ殺人”の結末もインド社会の深刻な問題を明らかにしています。

****ヒンズー教徒による8歳女児の集団レイプ殺人、イスラム教徒が離村 印*****
インド北部ジャム・カシミール州で今年1月、8歳になるイスラム教徒の少女がヒンズー教徒の男らに集団レイプされた末に殺害された事件以降、少女の家族が住んでいた村ラサナではイスラム教徒が一切いなくなってしまった。
 
現地警察によると、少女はバカルワルと呼ばれるイスラム教徒の遊牧民出身で、村の多数派を占めるヒンズー教徒たちの一部が、夏季には丘陵地帯で放牧を行うバカルワルの人々を追い出すべく、少女をレイプし殺害したという。
 
その企ては目論み通りになったようにみえる。事件後、少女の家族は警察の保護の下で村から丘陵地帯へ移動し、また他のイスラム教徒およそ100人全員が村を離れた。
 
犠牲となった少女の家族が暮らした家は空き家となり、武装した警官5人が警備に当たっていたものの、その半数は外で椅子に座り眠っていた。
 
警察によると少女はヒンズー教の寺院に5日間監禁され、繰り返しレイプされた末に撲殺された。
 
ジャム・カシミール州はインドで唯一イスラム教徒が多数派を占める州だが、事件が起きた南部ジャム県はヒンズー教徒が多数を占める。ただ当局の文書によると、ラサナではヒンズー教徒とイスラム教徒はしばしば、お互いについて警察に訴え出ることはあったものの、事件までは比較的平和に共存していたという。
 
少女の家族にお金を寄付しようとパンジャブ州からやって来たイスラム教徒グループの男性は、事件がナレンドラ・モディ首相率いるヒンズー至上主義の政権があおったイスラム教徒に対する敵意を反映していると非難。
 
ただ一方で、「インドでは今、この事件を機に考え方が変わりつつある。みんなが病的な考え方に立ち向かっている」と語った。【4月24日 AFP】
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“この事件を機に考え方が変わりつつある”・・・・そうであることを願います。

ウガンダや中国でも女性への暴力・差別が問題視
一方、アフリカの多くの国々では、女性への性暴力はおろか、住民の生命さえいともたやすく奪われるような現実がありますが、そんなアフリカにも多少は女性権利保護の波は及んでいるようです。

****妻は殴れ」発言のウガンダ議員、抗議殺到で謝罪****
アフリカ東部ウガンダで、男性たちに妻を殴って「しつける」よう勧める発言を行った議員に抗議が殺到し、同議員は14日、謝罪に追い込まれた。
 
オネスマス・トゥイナマシコ議員は議会への書簡で、本心では「女性に対するあらゆる形態の暴力を憎んでいる」とし、「議員各位、世間一般の皆様、とりわけ女性の方々に私の心からの率直な謝罪を受け入れてほしい」と陳謝した。
 
トゥイナマシコ議員は8日の「国際女性デー」の翌日、地元テレビ局NTVのインタビューで「男たるもの、妻をしつけなければならない。本気で妻をしっかりさせたければ妻に触れ、組み合い、何なら殴る必要だってある」と発言し、女性たちの怒りを買った。
 
ただ、このような考えはウガンダでは珍しくない。政府が2016年に発表した報告書によると、同国の14〜49歳の女性の5人に1人が過去1年以内に身体的、または性的な暴力を受けたと明かしたという。【3月15日 AFP】
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もっとも、ウガンダでは2013年に同性愛行為に対して最高刑で終身刑を科すと定めた「反同性愛法案」が成立し、人権保護の面では国際的にいつもやり玉にあがる国のひとつです。

人権保護とは縁遠い中国にあっても、大手企業が求人広告などにおける女性差別を国際人権団体から批判され、謝罪する事態に。

****女神」募集・・・・中国アリババなど性差別的な求人広告を謝罪**** 
アリババやテンセントなど中国の大手IT企業数社が、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が23日公開した報告書を受け、求人広告に含まれる性差別について謝罪し、問題に対処することを約束した。(中略)

中国のIT大手や政府機関は「男性限定」の求人広告を出す一方、他の広告では女性の応募者に「整って」おり「見た目がよい」ことを求めていた。

電子商取引大手のアリババは今後「より厳格な審査を実施する」とし、ネット大手のテンセントは謝罪した。

アリババは魅力的な女性従業員を雇用するキャンペーンで、ソーシャルメディア上で求める人員の表現に「アリ・ビューティーズ」(アリババの美人の意)や「女神」といった言葉を繰り返し使ったと非難された。

中国で最も一般的なメッセンジャーアプリWeChatを運営するテンセントや同じくネット大手のバイドゥ、中国最大の通信会社ファーウェイなど他の大手企業も、女性従業員の美しさについて広告を出したことで責任を問われた。

HRWは広告が、女性は男性よりも能力が低いとか、家族介護者など中国女性に関する型にはまった役割からくる女性は自らの仕事に全力を傾けないだろうといった「伝統的かつ深く差別的な視点」を反映したものだと指摘した。

アリババの広報担当者は23日、BBCに対し「雇用だけではなく、指導的役割に女性を就かせてきた我々の実績は、自社を物語っている」と語った。

同社は創業者と管理職の3分の1が女性だとの事実を示したものの、「性別に関係なく平等な機会」を提供するという「ポリシーの遵守」の保証を今後より徹底するとも述べた。

テンセントはBBCに、報告書で強調された取り組みは「我々の価値観を反映していない」と話した。
同社の広報担当者は「広告が生まれたことを申し訳なく思う。再びこのようなことが起こらないよう迅速な対応を取る」とした。

CNNによるとバイドゥの広報担当者は「女性従業員が組織全体で果たしている重要な業務を評価しており、我々の求人広告がバイドゥの価値観に沿わなかったというこの事例を深く後悔している」と述べたという。
CNNはまた、バイドゥがHRW報告書の発表前に問題の求人広告を確認し削除したとも報じた。

スマートフォン製造の世界的大手、ファーウェイは、疑惑について再検討し、同社の求人資料が「性平等性に完全に配慮」されることを確実にするよう取り組むと語った。

「男性のみ応募可能――中国の求人広告における性差別」と題された報告書は、公的機関の雇用慣行にも焦点を当てた。

HRWのソフィー・リチャードソン中国部長は、「中国で2018年に出された国家公務員を募る求人広告の5分の1が、『男性限定』または『男性が好ましい』としていた」と話す。

「中国当局は、女性を明白に差別している政府機関や私企業による雇用慣行を終わらせるため、既存の法律をただちに執行する必要がある」

99ページにわたる報告書は、2013年から2018年の間に中国の求人サイトおよび企業サイト、そしてソーシャルメディア上に出された3万6000件以上の求人広告を分析した。【4月24日 BBC】
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まあ、問題となった大手企業は外国でも活動をしていることから、こうした批判が事業への悪影響を招くことを警戒して謝罪等を行っているのでしょう。中国国内だけに限れば、そうした問題意識も共有されてはいないのでは。

反作用として、伝統回帰を重視する動きも
女性の権利保護を進める動きが世界で大きな流れに・・・とは言いつつも、何事においても、作用があれば反作用もあります。

カトリックなどの宗教右派には、こうした流れを伝統破壊とみなす考えも根強く、巻き返しの動きも。

****クロアチア首都で大規模デモ、女性への暴力防止条約の批准に反対****
クロアチアの首都ザグレブで24日、女性に対する暴力防止を目指す「イスタンブール条約」の批准に反対するデモが行われ、報道機関の推計で最大1万人が参加した。
 
イスタンブール条約は配偶者による性的暴行から女性器切除まで女性へのさまざまな暴力行為の防止を図る法的拘束力のある取り決めとしては世界初のもの。欧州評議会が策定し、これまでに欧州連合加盟17か国を含む28か国が批准した。

クロアチアでは22日にアンドレイ・プレンコビッチ首相が率いる連立政権が議会に批准を求めていた。
 
この条約をめぐりクロアチアの世論は割れている。カトリック教会が支援する保守派は、中道右派の与党「民主同盟」の強硬派とともに批准反対を表明。

女性の保護を装って伝統的な家族を台無しにする「ジェンダーのイデオロギー」を奨励しているなどと主張している。

批准反対の立場を取るカトリック教会はここ数週間、聖職者がミサの後に抗議するなど激しい活動を展開していた。
 
2013年に最も新しいEU加盟国となったクロアチアは人口約420万人の90%近くをカトリック教徒が占めており、教会が社会で大きな役割を果たしている。【3月25日 AFP】
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日本でも“サザエさん一家”に見られるような“伝統的家族観”は根強く、未婚化や少子化を若者の価値観の変化や共働きの弊害だとして“伝統的家族観”への回帰を唱える人々も少なくないようです。

伝統回帰で今後の少子高齢化を乗り切れるのか・・・という問題もありますが、何よりも、そこに生きる人々が幸せになれるのか?という問題でしょう。

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