(トルクメニスタン産の名馬アハル・テケ種のビューティー・コンテストで、愛馬にまたがるベルドイムハメドフ大統領 確かに美しい馬です。国民の娯楽は制約されていますが、大統領のお楽しみは別のようです。なお、漢の武帝が求めた汗血馬は、このアハル・テケ種だった・・・とも言われています。大宛国(フェルガナ)は今のウズベキスタン・タジキスタン・キルギスあたりに相当します。“flickr”より By Kerri-Jo http://www.flickr.com/photos/kerri-jo/5692083814/ )
【投票率約96%、得票率97%】
カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンにトルクメニスタン・・・正直なところ、中央アジアの国々には殆んど馴染みがなく、いつもどの国がどこにあって、誰が指導者で、どんな情勢にあるのか混乱します。
大まかな印象としては、旧ソ連圏の国々で、昨年5月の反政府騒乱でバキエフ前大統領がベラルーシに追われたキルギス以外では、総じて強権的独裁政権が続いているといったイメージです。
中央アジア諸国のなかでも、カスピ海に接し、イラン北部に位置するトルクメニスタンは、あまり情報が伝わってこない国ですが、現職のベルドイムハメドフ大統領が再選されたそうです。
****得票率97%、現職が圧勝 トルクメニスタン大統領選*****
旧ソ連の中央アジア・トルクメニスタンで12日、任期満了に伴う大統領選があった。インタファクス通信によると、現職のベルドイムハメドフ大統領が約97%を得票し、再選を決めた。
任期は5年。選挙には国営企業幹部や地方行政幹部ら計8人が立候補したが、ベルドイムハメドフ氏が圧倒した。投票率は約96%。
大統領は2期目も、豊富な天然ガスの輸出をてこに経済発展をはかる方針とみられる。国の各地に自身の肖像画を掲げさせる個人崇拝や、インターネットの閲覧を規制する情報統制を続けるとの見方も強い。
旧ソ連の崩壊で誕生したトルクメニスタンでは、初代のニヤゾフ大統領が国中に自らの黄金像を建設するなど個人崇拝の体制を確立した。ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。【2月13日 朝日】
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どうやれば、“投票率約96%、得票率97%”という結果が出るのでしょうか?日本的常識では考えられない数字です。2007年2月14日に行われた前回大統領選では89.23%の得票率だったそうですから、更に支持率が上昇しています。この数字を見るだけで、おおよその国の雰囲気が窺われます。
【「中央アジアの北朝鮮」に変化も】
トルクメニスタンは、ニヤゾフ前大統領(06年12月死去)の独裁政権下で長く外国との交流を断ち、事実上の鎖国体制を取っていたこともあって、「中央アジアの北朝鮮」とも呼ばれていました。
ニヤゾフ前大統領死後、07年2月に就任したベルドイムハメドフ大統領は、欧米を訪問するなど外交姿勢を転換し、変化の兆しを見せているとも報じられていました。
確かに、ニヤゾフ前大統領の施策が、オペラやサーカスを禁止し、図書館も廃止するなど、すこぶる“異様”であっただけに、変化は見られます。
****オペラ、サーカスの禁止解く トルクメニスタン****
来月就任から1年を迎える中央アジア・トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領が、故ニヤゾフ前大統領の独裁体制下で始まったオペラの禁止など風変わりな政策の見直しを進めている。
99年に終身大統領となったニヤゾフ氏は01年、「わが国固有の芸術でなく、国民にはわからない」などの理由でオペラやサーカスを禁止した。これに対し、大統領は19日、文化関係者との会合で「今は市場経済の創出など発展のための移行期。新しい考え方が必要だ」と強調、「今後数カ月で国民のための新作オペラをつくり、上演する」との方針を示した。サーカスについても、閉鎖中の首都アシガバートの国立サーカスを大改修して復活させる考えを明らかにした。
またニヤゾフ氏が「田舎の人は字が読めないから」と廃止した地方の図書館も、改めて整備する考えを表明。15日には、10年以上も途絶えていた大学院教育についても、修士と博士両課程の学生受け入れを決めた。
豊かな天然ガス資源を持つ同国だが、ニヤゾフ氏は教育や文化へ予算を向けずに荒廃させた。その再建が新政権の重要課題となっている。【08年1月23日 朝日】
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“異国の文化”として禁じられていたサーカスは10年4月に9年ぶりに公演されています。
なお、娯楽施設は現在も少なく、首都アシガバートでも、観客の投票で見たいDVDを選び、大型テレビで鑑賞する「映画館」と呼ばれる施設が1軒しかないという状況です。【10年4月26日 毎日より】
【自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出】
ネットカフェも出来たようですが、自宅でのネット使用に対する制約など、制限は厳しいようです。
****トルクメニスタン:「中央アジアの北朝鮮」 積極外交、鎖国に変化*****
・・・・インターネットカフェの開設も改革政策の一つ。
公務員用の高層住宅が並ぶ新市街の一角にあるネットカフェでは、4台のコンピューターに若者が向かっていた。その一人で石油関連企業に勤めるハハン・クルバンマメドフさん(25)は「英国とドバイ(アラブ首長国連邦)にいる親類にメールを書いているんだ。自宅のパソコンは通信ができないから」と話した。
同国では自宅でネットを使用するには勤務先の上司から許可状をもらい、国に提出する必要がある。
店長のオバド・セルダさん(23)によると市内にはネットカフェが現在5店ある。いずれも通信省傘下の国営会社が運営し、セルダさんも公務員だ。ただ、利用料は1時間3万マナト(約200円)で、平均月収が1万~1万5000円とされる市民にはまだ割高。セルダさんが「規制がある」と認めるように、反体制派や一部の外国サイトに接続できないのが実態で、1日の利用者は10~30人にとどまっている。・・・・【08年12月6日 毎日】
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そんなトルクメニスタンで、中国の無償援助により小学1年生全員に中国製PCが無償支給されるという報道もありました。
****トルクメニスタン、小学1年生全員に中国製PCを無償支給****
トルクメニスタン政府は、今年度から小学校の1年生全員に、中国製のノートブックPCを無償で支給することを決めた。教育省の関係者が1日、AFPに明らかにした。
中国政府から同国に対する5000万元(約6億円)相当の無償援助の一環として、トルクメニスタン政府と中国パソコン大手、聯想(レノボ)が6月、ノートブックPCの無償提供で合意した。
配布されるノートPCは、基礎文法やアルファベットなどの教育ソフトを備えた小学1年生向けの特別仕様だという。
海外資源を貪欲に求める中国は近年、融資やエネルギー協定を通じて、資源に恵まれた中央アジアの旧ソ連諸国において政治・経済両面での影響力を拡大している。既に7月から全長8700キロのパイプラインを通じたトルクメニスタン産天然ガスの中国向け供給が始まっている。
トルクメニスタンのインターネット事情は、回線の信頼性が低い上に料金も高い。1世帯あたりの高速インターネットサービスの常時接続料金は、月額でおよそ7000ドル(約54万円)もする。それでも、トルクメニスタンの学校や大学の多くが、デスクトップ・パソコンを備えている。
2007年からグルバングルイ・ベルドイムハメドフ大統領がトップの座にあるトルクメニスタンは、世界でも強権的で不透明な点が多い国家の1つだ。【11年9月2日 AFP】
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【“黄金像”復活 ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画も】
上記のような変化はあるものの、冒頭【朝日】記事に“ベルドイムハメドフ氏は当初、開放政策を宣言したものの、前大統領と同様の路線をとっている。”とあるように、基本的な政権の性格はあまり変わっていないようです。
ニヤゾフ前大統領に対する個人崇拝の象徴であった巨大な“黄金像”は、ベルドイムハメドフ大統領に変わって、「景観向上」を理由に一旦は撤去されましたが、最近郊外に復活しています。また、ベルドイムハメドフ大統領自身の肖像画が市内あちこちに掲げられているそうです。
****アシガバート 近づけぬ黄金像に迫る*****
・・・・「像には近づけません。遠くから見るのもだめ」。トルクメニスタン外務省職員にいきなり断られた。像がそびえる「中立の塔」は現在、移設工事中で見せられないという。
同国では報道規制が厳しく、今回の同行でも、希望する取材先を事前に提出させられ、認められたのはわずか。移動中は常に当局員が随行した。「少しでも国のマイナスイメージになると判断されると、取材はできない」と、ある住民は語った。
像と中立の塔は、同国が1995年12月12日に永世中立国になったのを記念して建設された。高さはその記念日に合わせ、それぞれ12メートル、95メートルという。両手を上げたニヤゾフ氏が常に太陽の方向を向きながら1日で1回転する。(中略)
かつては首都のど真ん中に立っていた。2代目の現大統領ベルドイムハメドフ氏が昨年、約8キロ離れた郊外に移設を決めたという。街のあちこちにあったニヤゾフ氏の他の黄金像も次々と撤去されて少なくなった。威光排除が目的とされる。その代わりに、至る所にベルドイムハメドフ氏の肖像画が掲げられている。【11年12月19日 朝日】
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【三つ巴の天然ガス争奪戦】
“謎の国”トルクメニスタンが話題になるのは、多くは、その豊富な天然資源を巡ってのことです。
なかでも、天然ガスの確認埋蔵量は7兆9000億立方メートルで世界第4位(1位はロシアの43兆立方メートル)とされており、従来から独占してきたロシア、ロシアに対抗するパイプライン計画“ナブッコ”を進める欧州、新たに参入した中国の三つ巴の資源争奪戦が展開されています。
****トルクメニスタン:中国へ天然ガスの直通パイプライン完成*****
世界有数の天然ガス埋蔵量で知られる中央アジアのトルクメニスタンから中国までの直通パイプラインが完成し、14日、起点となるトルクメン東部サマンテプで開通式典が開かれた。同国からの天然ガス輸出はこれまでロシアにほぼ独占されてきたが、中国向けパイプラインの開通によってロシアと中国、別のパイプライン計画を推進する欧州の間で三つ巴の争奪戦が激しさを増しそうだ。
タス通信によると、完成したパイプラインはトルクメンからウズベキスタン、カザフスタンを経て中国・新疆ウイグル自治区へ至る約2000キロ。同自治区から沿岸部までの既存のパイプラインと合わせた総延長は約7000キロに及ぶ。06年に関係国が計画に調印し、07年に着工。約73億ドルとされる建設費の多くを中国が負担したという。
開通式典には、中国の胡錦濤国家主席ら沿線4カ国の首脳が出席した。トルクメンのベルディムハメドフ大統領は式典に先立つ13日、胡主席との会談で「地域の安定要因となる傑出した世紀の事業が完成した」と述べた。
同大統領によると、中国への天然ガス輸出量は最大で年400億立方メートルを予定しており、従来のロシアへの輸出量(年約500億立方メートル)に匹敵する。対露輸出は今年4月のパイプライン事故以来、価格や輸出量を巡る対立もあり停止中。中国という巨大な競争相手の出現でロシアは交渉上、厳しい立場に立たされそうだ。
欧州連合(EU)主導のロシア迂回(うかい)パイプライン「ナブッコ」計画も、トルクメンを有力供給源の一つとみており、欧州向け輸出ルートの独占を続けたいロシアとの競合が始まっている。
トルクメンは91年のソ連崩壊に伴う独立後、経済的にはロシアに大きく依存する一方、故ニヤゾフ前大統領の独裁政権が「永世中立」を宣言し、事実上の鎖国状態にあった。しかし、07年に就任したベルディムハメドフ大統領は積極外交で欧米やイランとの関係強化に動き、対露依存体質からの脱却を目指している。
一方、ベルディムハメドフ大統領は16~18日、同国元首として初めて日本を訪問し、鳩山由紀夫首相と会談するほか、天皇陛下とも会見する。大統領はガス田開発や液化天然ガス(LNG)技術の向上などに向け、日本に投資や経済協力の促進を呼びかけるとみられる。【09年12月14日 毎日】
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先述の“小学1年生に中国製PC無償供与”の話も、この中国の天然ガス確保戦略の一環です。
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