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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パナマ運河 香港企業が港湾事業売却 奏功した米の棍棒外交 中国は激怒 南北米大陸で増す対米不信

2025-03-24 22:32:45 | ラテンアメリカ

(パナマ運河入口のバルボア港。CKハチソンが運営する=2025年3月12日 【3月18日 新潮社Foresight】)

【アメリカ側の警戒感:中国が米国との紛争時にパナマ運河を閉鎖する】
周知のようにグリーンランドと並んでトランプ大統領が欲しがっているのがパナマ運河。そのためには軍事行動も排除しないとも。

****米国は「パナマ運河取り戻す」、トランプ氏就任演説で****
トランプ米大統領は20日の就任演説で、太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河を「取り戻す」と表明した。西部開拓時代に領土拡張を正当化するために使われた標語「マニフェスト・デスティニー」を引き合いに出し、宇宙開拓計画についても触れた。

パナマ運河は米国が数十年にわたり運河の大部分を建設し、完成後には管理権を握っていたが、99年にパナマに全面返還していた。

トランプ氏は運河の管理権を渡すべきではなかったと主張し、米国の船舶は非常に高額な通行料の支払いを強いられ、「公平に扱われていない」と述べた。

トランプ氏は就任前から、米国がパナマ運河の管理権を取り戻すために軍事行動や経済措置を取る可能性を排除しないとの考えを示していた。

これに対しパナマのムリノ大統領はXへの投稿で、米国を含む世界貿易のために責任を持って運河を管理していると言明。その上で、パナマ運河は「パナマのものであり、これからもそうあり続ける」と述べた。(中略)

トランプ氏はパナマ運河以外にも、デンマーク領グリーンランドの獲得に意欲を示しているほか、カナダ併合を巡る発言を繰り返すなど、他国に食指を動かしている。

トランプ氏は就任演説でメキシコ湾の名称を「アメリカ湾」に改める意向も再び示した。

「米国は再び自らを成長国家とみなすだろう。われわれの富を増やし、領土を拡大し、都市を築き、期待を高め、国旗を新しい美しい地平へと運ぶ国家だ」と強調。「われわれはマニフェスト・デスティニーを追及し、星々に米国の宇宙飛行士を送り出し、火星に星条旗を立てる」と述べた。【1月21日 ロイター】
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トランプ政権が問題視しているのは、香港企業が運河の両端にあたる太平洋側の港と大西洋側の港の運営権を握っており、有事の際にパナマ運河の運用が中国によって左右されるとの認識です。

****パナマ運河、紛争時に中国が閉鎖する恐れ 米国務長官が警戒****
ルビオ米国務長官は30日、中国が米国との紛争時にパナマ運河を閉鎖するという緊急対応策を用意していることには「疑いの余地がない」と述べ、米国は国家安全保障上の脅威とみられる事態に対処すると強調した。

パナマ運河は米国が建設し、1999年にパナマに返還するまで管理してきた。トランプ米大統領は就任演説で、パナマ政府が運河返還時の協定に違反し、中国に運営を譲り渡したと批判した。一方、パナマ政府はこれを否定している。

ルビオ氏はメーガン・ケリー・ショーのインタビューに応じ、パナマ運河に対する中国の影響についてトランプ氏の懸念を改めて示した。

パナマ運河は、香港企業、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)の子会社が運河の両端にあたる太平洋側の港と大西洋側の港の運営権を握る。

ルビオ氏は長江和記実業について、「(中国)政府の指示は何でも従わなければならない」ため米国にとってのリスクだと指摘。「もし紛争時に中国政府がパナマ運河を閉鎖するよう指示すれば、そうせざるを得なくなるだろう。実際、中国にそのような緊急対応策があることを全く疑っていない。これは直接的な脅威だ」と懸念を示した。【1月31日 ロイター】
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1999年にパナマ運河がアメリカからパナマに返還された際、いくつかの港湾運営権が民間企業に移行しました。その際、香港系のHutchison Portsが複数の港を取得しました。

なお、パナマ運河に隣接する港湾にはシンガポール系企業が管理運営するロドマン港やパナマ政府が一部関与する公営港湾もあって、すべてを香港系企業が管理運営しているものでもありません。

【米圧力でパナマ政府は「一帯一路」離脱表明 中国反発】
ルビオ国務長官は2月2日にパナマを訪問してパナマ側に対応を求めています。パナマ側は“中国企業の事業見直しに意欲を示した”とも。

****米国務長官、パナマ政府に運河周辺の中国企業問題で対応要求****
ルビオ米国務長官は、パナマ運河付近の港を運営する中国企業に対する米国の懸念に直ちに対応するようパナマ政府に求めた。(中略)

パナマのムリノ大統領は2日、同国を訪問したルビオ氏と会談。会談後、パナマ運河の主権は議論の余地がないと強調した一方、香港に本社を置くCKハチソン・ホールディングスが運河の両端にある港の運営権を握っていることを含め、パナマにおけるいくつかの中国企業の事業見直しに意欲を示した。

同大統領は、重要な問題を巡ってトランプ氏と直接会談することが重要だと述べた。【2月2日 ロイター】
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更に、ムリノ大統領は、パナマに運河の運営権があると反論した一方、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱する方針を示しています。

****米国務長官と会談したパナマ大統領「一帯一路」から離脱方針示す…運河は「我が国が運営」****
米国のルビオ国務長官は2日、就任後初となる外遊先の中米パナマでホセ・ラウル・ムリノ大統領と会談し、パナマ運河から中国の影響力を排除するよう求めた。

ムリノ氏は、パナマに運河の運営権があると反論した一方、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱する方針を示した。(中略)

米側の発表によると、ルビオ氏は会談で、トランプ氏が「中国共産党が運河を管理している現状は脅威だ」と指摘していると伝え、「早急な変化がなければ、米国は必要な措置を取る」と警告した。運河の再管理を主張するトランプ氏は軍事力の行使も示唆している。

ムリノ氏は会談後の記者会見で「運河は我が国が運営していることに疑いはなく、今後も変わらない」と強調し、トランプ氏の主張を否定した。

一方、パナマは港湾運営会社に対する監査を始めている。ムリノ氏は、パナマが中国と国交を結んだ2017年に交わした「一帯一路」の協力に関する覚書について「私の政権では更新しない」と明言し、早期終了も検討する考えを示した。米側に歩み寄った形で、中国の反発は必至だ。【2月3日 読売】
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当然ながら中国は反発しています。

****パナマ政府の「一帯一路」離脱表明に中国側が抗議「パナマ政府と国民に確かな利益」****
(中略)中国外務省の趙志遠外務次官補は7日、中国に駐在するパナマ大使と会談し、「中国とパナマは『一帯一路』建設の枠組みのもとで実りある成果をあげ、パナマ政府と国民に対して確かな利益をもたらした」と述べたうえで、パナマ政府の方針に抗議しました。

さらに、趙次官補は「アメリカが圧力や脅しといった手段を使って中国とパナマの関係を損ない、『一帯一路』建設を破壊しようとしていることに断固反対する」と述べ、アメリカの対応を非難しました。

そのうえで、「パナマが両国関係を大局的に見たうえで両国民の長期的な利益を考慮し、外部からの干渉を排除して正しい決断を下すことを期待する」述べ、再考を促しました。(後略)【2月8日 TBS NEWS DIG】
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アメリカとパナマの間では運河通航無料をめぐる混乱も。

****米、運河通航無料「同意」と発表 パナマ側は否定****
米国務省は5日、太平洋と大西洋を結ぶ交通の要衝パナマ運河を巡り、パナマ政府が米政府の艦船の通航料を無料にすることに同意したと発表した。トランプ米大統領はパナマ運河の管理権奪回を主張し、圧力をかけていた。

これに対し、パナマ運河庁は声明を出し「通航料の調整はしていない」と無料化を否定した。「艦船の通航に関して米国の当局者と対話する用意がある」と交渉過程との認識を示した。

トランプ氏は米国の船舶がパナマ運河の通航料を徴収される現状が不公平だと非難し、是正されなかった場合には管理権の返還を要求すると主張してきた。【2月6日 共同】
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どうして米船舶が通航料を徴収されるのが「不公平」なのかは知りません。

【香港企業 米資産運用会社率いる投資家連合に港湾事業売却 事前の承認要請がなかったことに習近平氏怒る】
長々とこれまでの経緯をなぞってきたのは、ここにきて事態が急展開したため。

****パナマ運河の港湾事業、香港企業がアメリカの資産運用会社率いる投資家連合に3兆4000億円で売却へ…中国は非難****
香港企業CKハチソン・ホールディングスがパナマ運河の港湾事業を米資産運用会社が率いる投資家連合に売却すると発表したことについて、中国政府で香港政策を担当する国務院香港・マカオ事務弁公室が強く非難している。
 
同弁公室は13日と15日、中国共産党政府の意向を代弁しているとされる中国系香港紙・大公報の記事をホームページに転載した。

CKハチソンが今月、パナマ運河主要2港の港湾事業などを米資産運用会社のブラックロック率いる投資家連合に228億ドル(約3兆4000億円)で売却すると発表したことに関し、「国家の利益を考慮したのか。中国と世界に損害を与えるのか」と批判したものだ。

これに関連し、香港紙・明報は17日、中国当局が売却の事前通告がなかったことを問題視しているとの見方を報じた。明報は「民間企業への政治的包囲は私有財産保護を定めた香港基本法に違反する」との財界人の指摘を伝えた。香港の経済界では、中国政府の民間取引への介入に対する警戒が広がっているとみられる。【3月17日 読売】
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米ブルームバーグ通信は3月18日、香港系複合企業が世界各地に保有する港事業の権益を米資産運用大手が率いる共同事業体に売却する件について、中国当局が調査を始めたと報じています。

中国、習近平国家主席は長江和記実業が中国当局との調整をしないまま売却を決めたことに不満を募らせている・・・と言うか、もっと平たく言えば、怒っているようです。

****中国主席、パナマ運河巡る米主導グループとの取引に怒り=WSJ****
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は18日、中国の習近平国家主席が香港企業によるパナマ運河権益売却計画に怒りを示していると伝えた。米主導の投資家グループに売却することについて香港企業から事前に承認要請がなかったことも一因という。(中略)

この取引を巡っては、中国への裏切りとして批判するコメントが国営メディアに掲載された。一方、トランプ米大統領は歓迎の意を示した。

WSJが複数の関係筋の話として伝えたところによると、習指導部は元々、パナマ運河権益問題をトランプ政権との交渉材料にするつもりだったという。【3月19日 ロイター】
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****トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒...「国益のために犠牲を払うのは当然」****
<パナマ運河問題で怒り心頭...。第2次トランプ政権がもたらす地政学的変化の中で、立場を悪化させる中国>

香港の大富豪・李嘉誠(レイ・カーセン)は、最新の地政学的対立の波をまともにかぶっている。原因はパナマの港湾関連資産だ。

パナマ運河を中国の支配下から取り戻すというトランプ米大統領の脅しを受け、李はこの戦略的要衝の港湾事業を約230億ドルで米投資会社に売却することにした。李はこれまで地政学的リスクを巧みに回避してきたが、今回は違った。(中略)

中国当局はこれまでも、ビジネス上の意思決定でナショナリズムを何より重視するよう要求してきた。今回もトランプ政権との外交交渉に力を入れる代わりに、米中の間で地政学的課題に直面する企業を攻撃することにした。

中国の当局者は、中国発の企業が中国の国益のために犠牲を払うのは当然だと考えている。当局の領有権主張に沿った地図の使用や、現体制に都合のいい(だが自社の利益に反する)決定の強制など、中国政府は政治的忠誠心の証明をたびたび企業に要求する。

中国に拠点を置く企業が、中国政府の犠牲になるのは今回が初めてではない。
通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)は2010年から、第5世代(5G)技術の先進国市場戦略の一環としてカナダへの投資を開始した。

だが18年、副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)が逮捕され、その後カナダ人が中国国内で拘束されたことで、流れは一気に逆転した。

カナダ政府は22年、5G通信網からのファーウェイの排除を発表。既存の5G機器とサービスについても24年6月までの撤去を求め、ファーウェイは10年間のカナダ投資で多額の損失を出した。

動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)と親会社バイトダンス(北京字節跳動科技)も、アメリカ事業で同様の逆風に直面している。

中国政府は国内企業に対する矛盾したアプローチを続けている。中国経済は雇用と経済成長を民間部門に依存しているが、指導部は依然として企業の信頼性と政治的忠誠心に疑念を抱いたままだ。

中国当局は高いハードルや障壁、脅迫を企業統制の手段に用いる傾向がある。問題の背後にある政治的緊張を緩和する努力は二の次だ。現体制は明らかに経済的利益より政治的安定を優先している。

国内企業への統制強化は、中国の地政学的利益につながる貿易や安全保障、経済発展上の機会損失を招いている。トランプの関税はカナダやEUなどの反発を買っているが、民主主義体制の先進国にとって権威主義を強める中国との関係強化は困難だ。

さらに共産党が政府、軍、民間、学術界など中国のあらゆる面をコントロールすると宣言しているため、「当局の影響が及ばない中国」との交流も難しくなっている。

自国の民間企業に対しても影響力を強める中国は、第2次トランプ政権がもたらした地政学的変化の中で、立場をむしろ悪化させている。【3月24日 Newsweek】
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このまま売却されるのか、中国が差し止めるのかは不透明です。

****パナマ港湾売却阻止へ圧力 米に対抗、香港企業に再考迫る―中国****
香港の複合企業がパナマ運河港湾の運営権を米投資会社に売却する計画を巡り、中国政府が阻止しようと香港側へ圧力をかけている。習近平政権は、事業売却は「国益」に反すると主張。パナマ運河の奪還を目指すトランプ米政権への対抗姿勢をむき出しにしている。

香港系企業の港湾運営は「違憲」 パナマ司法長官が見解
「全ての中国人への裏切りだ」「国家の利益を考えたのか?」。中国政府で香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室は今月、売却を批判する中国系香港紙・大公報の論説を2度にわたり公式サイトに掲載した。「一国二制度」下の香港において、同紙は習政権の意向を伝える手段として利用されることが多く、間接的に売却元企業へ再考を迫った形だ。

香港の長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)は4日、パナマ運河の要衝にある2港湾の運営権などを米投資会社ブラックロック率いる連合体に228億ドル(約3兆4000億円)で売ると発表。「中国がパナマ運河を支配している」とのトランプ大統領の不満に対処した格好で、ハチソンに巨額の収益をもたらす取引だ。交渉には同社創業者で96歳の李嘉誠氏も参加し、数週間で話がまとまったと報じられている。

一方、中国側は売却を事前に把握していなかったもようで、いら立ちを強めている。米ブルームバーグ通信は18日、中国当局が売却に関する調査を開始したと報道。国家市場監督管理総局などが、安全保障リスクや独占禁止法違反の有無を調べるという。

ただ、中国側も表立った介入には踏み切りにくい事情がある。香港では2020年に国家安全維持法が施行され、政治や社会の各方面で中国本土との一体化が進む。中国当局の力で国際的な商取引がつぶれれば、外資の香港離れが加速しかねない。中国にとっては、企業が自主的に取引を停止するか、香港政府が差し止めに動く展開が望ましい。

中国側の意をくむように、香港政府トップの李家超行政長官は18日、記者団に「外国政府が経済・貿易において脅迫的手段を用いることに反対だ。いかなる取引も法規制に沿う必要がある」と指摘。米国が売却を「強要した」とのシナリオを念頭に、法的対処の可能性を示唆した。

近く売却の最終的な合意文書が締結される見通し。習政権は今後、香港側への圧力をさらに強めていくとみられる。【3月24日 時事】
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香港企業CKハチソン・ホールディングス(長江和記実業)は中国当局が激怒することは百も二百も承知のうえでの今回売却計画でしょう。背景に何があったのかは知りません。

単純に「今が売り時」との経済的判断なのか、アメリカ側から有無を言わせぬ圧力があったのか・・・

【米の棍棒外交に不信感を募らせる南北アメリカ大陸諸国】
上記【3月24日 Newsweek】は中国側の理不尽な対応を批判していますが、それ以前に問題とすべきはアメリカ・トランプ政権の欲しいものは何でも手に入れようとする対応でしょう。

「軍事行動も排除しない」というジャイアンのような棍棒外交は、抗うすべもない、かつ、対米依存度の高いパナマのような国には短期的には極めて有効でしょう。(パナマの輸出先の約20〜25%がアメリカ向け、輸入の約30%もアメリカから パナマは独自の中央銀行を持たず、米ドルを法定通貨として使用 パナマ運河取引量の約70%がアメリカ関連)

ただ、長期的・総合的判断は別物。長年アメリカは南北アメリカ大陸において、時に軍事介入したり、時にクーデターを画策したりわが物顔でふるまってきました。

結果、中南米諸国にはアメリカに対する強い不信感があります。(カナダへの脅迫で、カナダを含めて南北全体に・・・と言っていい状況にも) 今回のパナマ運河に関する件は、そうした不信感を更に助長させるものでしょう。
その不信感の広がりは南北アメリカに限ったものではないでしょう。

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