
(【7月25日 産経】)
【コロナ禍からの景気回復の遅れが鮮明に】
20%を超える若者の失業率、コロナ禍の落ち込みからかの回復が鈍い個人消費、依然として続く不動産不況、地方政府の巨額債務・・・中国経済のコロナ禍からの回復が予想されたより鈍く、大きな問題を抱えていることが明らかになっています。
GDP前年比で見てもと、足元が大きな数字になっているのは大きく落ち込んだ前年に対する反動にすぎず、全体としては失速傾向にあります。
****中国の景気回復遅れが鮮明に…4月から6月のGDPプラス6.3%は上海ロックダウンの反動か***
中国の今年4月から6月のGDPが発表され、新型コロナからの景気回復の遅れが鮮明となっている。
中国の国家統計局は7月17日、今年4月から6月のGDPを発表し、前の年の同じ時期に比べてプラス6.3%と大きく伸びた事が分かった。
ただ、この数字は経済活動がほぼストップした、去年の上海ロックダウンの反動によるものとみられている。1月から3月の前期と比べると、その伸びは0.8%に留まり、回復の勢いは失速しているのが実態。
FNN北京支局の葛西友久特派員が、中国・河北省を取材したが、アジア最大級の鞄の卸売り市場はゼロコロナ政策の影響で閉店が相次いでいた。今ある店舗も、新たな顧客の獲得が難しいとしていて、景気回復に陰りが出ている。【7月17日 FNNプライムオンライン】
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中国指導部も危機感を持って対応してはいますが、劇的な回復は難しいとの見方が多いようです。
****中国共産党 「国内需要が不足している」と危機感 経済支援策を拡大***
中国共産党は24日、経済に関する重要会議を開き「国内需要が不足している」と危機感を示し、経済支援策を拡大することを打ち出した。
中国国営テレビによると、習近平国家主席が主催する中央政治局会議が24日開かれ、2023年後半の経済政策について議論された。
会議では、現在の経済情勢が「国内需要の不足や一部の企業の経営難などがある」と指摘し、「新たな困難や課題に直面している」と危機感を示した。
その上で、自動車や電化製品、家具など消費の拡大を後押しするため、地方債の発行を増やすなどの方針を示した。
また、低迷が続く不動産市場では「需給関係に重大な変化」があるとして、政策を素早く調整していくと明らかにした。【7月25日 FNNプライムオンライン】
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最近の貿易統計や物価動向にも失速感があらわれています。
****コロナ後の“景気回復”進まず…7月の輸出入が大幅減少 中国****
中国が発表した貿易統計で、7月の輸出額と輸入額がドルベースでともに2桁台の大幅なマイナスとなりました。
中国の税関当局が8日に発表した統計によりますと、7月の輸出額は2818億ドルで去年の同じ月と比べてマイナス14.5%となりました。
中国の税関当局が8日に発表した統計によりますと、7月の輸出額は2818億ドルで去年の同じ月と比べてマイナス14.5%となりました。
また、7月の輸入額は2012億ドルと、こちらも去年の同じ月と比べてマイナス12.4%となりました。コロナ後の景気回復が思ったように進まず、国内需要が伸びていないことなどが主な原因です。
1月から7月の合計ではアメリカへの輸出がマイナス18.6%、日本からの輸入がマイナス16.7%と大幅に減少しています。
一方、ウクライナへの侵攻で西側諸国から制裁を受けているロシアとの貿易額は輸出がプラス73.4%、輸入がプラス15.1%と大幅に増えています。【8月8日 テレ朝news】
1月から7月の合計ではアメリカへの輸出がマイナス18.6%、日本からの輸入がマイナス16.7%と大幅に減少しています。
一方、ウクライナへの侵攻で西側諸国から制裁を受けているロシアとの貿易額は輸出がプラス73.4%、輸入がプラス15.1%と大幅に増えています。【8月8日 テレ朝news】
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米中の緊張の高まりや、中国での賃金上昇などを受け米企業がサプライチェーンを再編し、中国への依存を減らしていることもあって、対アメリカ貿易が大きく減少しています。
****米国輸入で中国が首位陥落 1~6月、15年ぶり****
米商務省が8日発表したモノの通関ベース(季節調節前)の貿易収支によると、2023年1~6月の輸入額に占める国別割合で、中国が15年ぶりに首位から陥落した。2009年から最大の輸入先だったが、今回はメキシコとカナダが上回り、3位だった。
米中は22年に輸出入を合わせた貿易額で過去最高を更新したが、追加関税や規制強化などを背景に勢いが鈍化。貿易活動の構図が変わり、米中経済分断が加速していく可能性がある。
23年1~6月の中国からの輸入額は2029億6500万ドル(約29兆円)で、輸入額全体に占める割合は13・3%だった。5年前の18年1~6月には20%超だったが、急落した。今回はメキシコが15・5%、カナダが13・8%の輸入を占めた。日本は4・7%で、ドイツに次いで5位だった。
米中の緊張の高まりや中国での賃金上昇などを受け、米企業がサプライチェーンを再編し、中国への依存を減らしているとみられる。ただ、追加関税を避けるために中国からの輸入を過少報告しているという指摘もある。【8月8日 東京】
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****中国の物価が下落 「かなりヤバい状態だ」エコノミストが指摘****
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が8月9日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。中国国家統計局が同日発表した7月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりのマイナスに転じたことが話題となり、「中国経済はかなりヤバい状態だ」と指摘した。
中国国家統計局が9日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比0・3%減少した。減少率は6月から0・3ポイント拡大した。
辛坊)中国の物価がマイナスに転じたことが報じられました。どのようにみていますか。
永濱)中国は相当ヤバくなっていますね。一言でいうと、30年前の日本と同じような状況です。不動産バブルが崩壊して経済がかなり厳しくなっていて、なおかつ米中対立の影響が出てきています。
辛坊)アメリカの対中貿易が1位から3位まで落ちたんですよね。
永濱)そうです。ですから、中国経済はかなりヤバい状態です。【8月9日 ニッポン放送NEWS ONLINE】
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【バイデン大統領 中国経済を「時限爆弾」と表現】
こうした中国経済の現状をバイデン大統領は「時限爆弾」と表現し、そのあからさまな言い様が中国をことさらに刺激するとして問題にもなっています。 意図した発言か、判断力低下で外交的配慮に気が回らなくなっているのかはわかりませんが。
****バイデン米大統領、中国を「時限爆弾」と表現 経済問題巡り****
バイデン米大統領は10日、経済的な課題を理由に中国を「時限爆弾」と表現し、経済成長が弱いことから同国が問題を抱えていると指摘した。
ユタ州で行われた政治資金集めのイベントで、「彼らは問題を抱えている。悪い人々が問題を抱えると悪いことをするため、これは良くない」と語った。
バイデン氏は6月に行われた資金集めのイベントでも中国の習近平国家主席を「独裁者」と表現。中国は挑発だとして非難していた。
中国の7月物価統計は消費者物価指数(CPI)が2年5カ月ぶりにマイナスとなり、生産者物価指数(PPI)は10カ月連続で下落した。
バイデン氏は中国に害を与えることは望まず、中国との理性的な関係を望んでいるとも述べた。
バイデン氏は9日、半導体や人工知能(AI)など特定のハイテク分野における対中投資を規制する大統領令に署名した。【8月11日 ロイター】
ユタ州で行われた政治資金集めのイベントで、「彼らは問題を抱えている。悪い人々が問題を抱えると悪いことをするため、これは良くない」と語った。
バイデン氏は6月に行われた資金集めのイベントでも中国の習近平国家主席を「独裁者」と表現。中国は挑発だとして非難していた。
中国の7月物価統計は消費者物価指数(CPI)が2年5カ月ぶりにマイナスとなり、生産者物価指数(PPI)は10カ月連続で下落した。
バイデン氏は中国に害を与えることは望まず、中国との理性的な関係を望んでいるとも述べた。
バイデン氏は9日、半導体や人工知能(AI)など特定のハイテク分野における対中投資を規制する大統領令に署名した。【8月11日 ロイター】
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上記の対中投資規制など、米中関係については多々ありますが、そこらはまた別機会に。
【「中国一の金持ち村」の“成功モデル”が破綻 強力なリーダーシップは習近平体制にも共通】
中国経済の低調ぶりを示す下記のようなニュースも。
****「中国一の金持ち村」が破綻 負債は8兆円 村営企業は20円で売却 “成功モデル”が崩壊****
中国一の「金持ち村」とも呼ばれた村が、日本円で8兆円もの負債を抱え、財政破綻しました。背景にいったい何があるのか、現場を取材しました。
記者「こちらの高台からは、村の全体を一望できます。あそこに見えるのが、村のシンボルともいえるビルです」
中国東部・江蘇省にある華西村。「中国一の金持ち村」と呼ばれていました。
目をひくのは、ヨーロッパ風の豪華な一軒家が並ぶ住宅街と、中心部にそびえる地上72階建てのビル。ホテルとして使われているこの建物には、1トンもの金を使って作られた牛の像まで展示されていました。
かつて貧しい農村だった華西村が、なぜ「金持ち村」になったのか。(中略)
1978年に始まった中国の「改革開放」路線のもと、当時の村のトップ・呉仁宝氏は強力なリーダーシップで、「集団経済」という特殊なシステムを導入。村民の給与の80%を村営企業が吸収し、株や新たな事業への投資に活かして鉄鋼業などを急速発展させました。2010年には年間の売り上げが6000億円にものぼったといいます。
しかし先月、ある異変が…。「華西村は破産だ。とっくの前から破産しはじめていたのだよ」 なんと、財政破綻したのです。
ここまでさびれてしまった理由について、村の男性は。
村の男性 「幹部は全部トップが認めた人たちばかり。トップの言うことは絶対。もし指示に従わなければ、工場長でも明日は普通の従業員になってしまう。これが華西村の特徴だね」
トップだった呉氏のやり方は村を発展させた一方、人々の自由な起業活動を制限したり、過剰な投資に反対しづらい環境を生んだりするなど弊害も多かったといいます。
2013年に呉氏が亡くなって以降、息子が村営企業の経営を引き継ぎますが、新たな産業を育てることはできず、負債は8兆円にまで膨張。先月、村営企業はたった1元、日本円にしておよそ20円で投資会社に売却されました。(中略)
改革開放の成功モデルとまで言われた村の破綻。地方政府の財政悪化が深刻になっている中国で、今後、第二の華西村が生まれる可能性もあります。【8月11日 TBS NEWS DIG】
記者「こちらの高台からは、村の全体を一望できます。あそこに見えるのが、村のシンボルともいえるビルです」
中国東部・江蘇省にある華西村。「中国一の金持ち村」と呼ばれていました。
目をひくのは、ヨーロッパ風の豪華な一軒家が並ぶ住宅街と、中心部にそびえる地上72階建てのビル。ホテルとして使われているこの建物には、1トンもの金を使って作られた牛の像まで展示されていました。
かつて貧しい農村だった華西村が、なぜ「金持ち村」になったのか。(中略)
1978年に始まった中国の「改革開放」路線のもと、当時の村のトップ・呉仁宝氏は強力なリーダーシップで、「集団経済」という特殊なシステムを導入。村民の給与の80%を村営企業が吸収し、株や新たな事業への投資に活かして鉄鋼業などを急速発展させました。2010年には年間の売り上げが6000億円にものぼったといいます。
しかし先月、ある異変が…。「華西村は破産だ。とっくの前から破産しはじめていたのだよ」 なんと、財政破綻したのです。
ここまでさびれてしまった理由について、村の男性は。
村の男性 「幹部は全部トップが認めた人たちばかり。トップの言うことは絶対。もし指示に従わなければ、工場長でも明日は普通の従業員になってしまう。これが華西村の特徴だね」
トップだった呉氏のやり方は村を発展させた一方、人々の自由な起業活動を制限したり、過剰な投資に反対しづらい環境を生んだりするなど弊害も多かったといいます。
2013年に呉氏が亡くなって以降、息子が村営企業の経営を引き継ぎますが、新たな産業を育てることはできず、負債は8兆円にまで膨張。先月、村営企業はたった1元、日本円にしておよそ20円で投資会社に売却されました。(中略)
改革開放の成功モデルとまで言われた村の破綻。地方政府の財政悪化が深刻になっている中国で、今後、第二の華西村が生まれる可能性もあります。【8月11日 TBS NEWS DIG】
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村のトップ・呉仁宝氏の強力なリーダーシップによる“成功モデル”とその破綻は、中国全体の習近平国家主席の指導体制にも通じるものがあります。
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フランス紙「ル・モンド」は「中国は突然崩壊に直面した」と題する文章を発表し、中国経済が直面している十大問題を列記した。すなわち「不動産バブル」「巨額の借金」「デフレ」「人口問題」「米国の制裁」「投資家の離脱」「中央銀行」「政府」「信頼の欠如」「若者の失業率」だ。
「ル・モンド」は、中国政府について「この危機の時に、専制政権の弊害が現れている。特に、(政策が)習近平主席(の考え)と完全に一致しており、習主席の决定は全く予測できないからだ」と主張した。
記事は前例として新型コロナウイルス感染症の対策で、「ほぼ一夜にして、全面封鎖からすべての措置の全面撤廃に突然舵を切った」と指摘し、習主席の行動を「気まぐれ」と評した。【8月14日 レコードチャイナ】
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【不動産市場低迷 「中国恒大集団」に続いて昨年販売実績首位の「碧桂園」も】
“十大問題”のうち「若者の失業率」については、7月2日ブログ“中国 当世若者事情 厳しい競争社会 人生を決める“一発勝負”「高考」 20%超の失業率”などで何回か取り上げてきましたので、今回は「不動産バブル」について。
中国不動産バブルの象徴となったのが2年前の「恒大集団」の経営難でした。その「恒大集団」の苦境は未だ続いています。改めて“傷の深さ”が確認されたという感もあります。
****不動産大手「中国恒大集団」、2年分の赤字は11兆円…負債総額は47兆円でGDP2%相当****
経営危機に陥っている中国不動産大手の中国恒大集団は17日、公表を延期していた2021年と22年の12月期決算をまとめて発表した。最終利益は2年連続の赤字となり、赤字額は2年分で計約5800億元(約11・2兆円)に上った。
22年12月期の負債総額は2兆4374億元(約47兆円)に達し、債務超過に転落した模様だ。中国の国内総生産(GDP)の2%に相当する規模となる。20年12月期の最終利益は80億元の黒字だったが、23年1月まで続いた「ゼロコロナ政策」や、政府による不動産融資の総量規制の影響で業績が大きく悪化した。
開発中や販売目的で保有している不動産の評価損のほか、金融資産の価格下落による損失も広がった。不動産販売も落ち込み、22年12月期の売上高は2300億元と、20年12月期の半分以下に縮小した。
恒大が事業を継続するには海外を中心とした債権者の同意が欠かせず、再建の道筋は一段と不透明感が強まった。経営危機は21年に表面化し、昨夏には財務を巡る不正を理由に夏海鈞最高経営責任者(CEO)が事実上の解任に追い込まれた。【7月18日 読売】
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負債総額は47兆円でGDP2%相当・・・こうなると、潰そうにも潰せない・・・という感も。
今日報じられているのは、不動産大手「碧桂園」 22年の中国不動産販売額で首位だっ不動産大手です。
****中国の不動産大手、1兆円の赤字へ 社債の利払いも履行できず…市場に不安広がる****
中国の不動産大手「碧桂園」は、ことし上半期の純損益がおよそ1兆円の赤字になる見通しを発表しました。社債の利払いも履行できておらず、中国の不動産市場に不安が広がっています。
「碧桂園」によりますと、ことし1月から6月までの純損益は、およそ9000億円(450億元)から1兆1000億円(550億元)の赤字になる見通しで、景気減速に伴うマンション販売の低迷などが影響したということです。
ことし7月までの販売額は、およそ2兆8000億円(1408億元)で、去年の同じ時期に比べ35%の減少、2021年の同時期と比べると61%と大きく減少しました。ロイター通信によりますと、「碧桂園」は、アメリカドル建ての社債の利息が支払えておらず、資金繰りが悪化しているということです。
「碧桂園」の去年の不動産販売額は国内最大で、債務不履行に陥れば、不動産大手・「恒大集団」の経営危機より影響は深刻だとみられています。【8月14日 日テレNEWS】
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不動産大手の経営破綻は関連企業の連鎖的な破綻をもたらします。
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中国の市場関係者の間には、同社(中国恒大集団)の債務の巨大さゆえに、経営危機が(関連業界や金融システムに広く波及する)システミックリスクを引き起こしかねないとの懸念が広がった。
例えば、恒大集団は大部分の不動産開発プロジェクトの着工にあたり、建設会社や資材の納入業者と「一括請負方式」の契約を結んでいた。
この方式では、建設会社や納入業者が自己資金を投じて先に工事に着手し、恒大集団は代金を後払いしたり、(後日の支払いを約束する)手形で決済したりする。そのため、恒大集団の支払いが滞れば、危機がたちまち取引先に波及するのだ。【7月21日 東洋経済オンライン「中国「恒大集団」、債務超過11兆6000億円の激震」】
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また不動産市場の低迷は巨額の債務を抱える地方政府財政を更に悪化させます。
****地方財政への影響****
中国では土地は公有であり、地方政府が土地使用権を不動産企業に売却して不動産開発が実施されており、地方政府の歳入における土地使用権譲渡収入への依存度は高い。
2021年は、日本の一般会計に近い一般公共予算の税収が17.3兆元であるところ、日本の特別会計に近い「政府性基金」での土地使用権譲渡収入は8.7兆元となっており、その大きさが分かる。
不動産市場の低迷によって不動産開発が落ち込めば、土地使用権譲渡収入が減少し、地方政府の財政を悪化させる可能性がある。
実際、2022年の1月から8月までの土地使用権譲渡収入の累計は、前年同期比で28.5%減少している。【財務相HP 大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 時永 和明氏 「中国の不動産市場」】
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不動産市場の低迷は、まさに「時限爆弾」の起爆装置のような感じも。
ただ、中国指導部は不動産大手や地方政府の破綻をなんとしても避けるべく事実を糊塗することも厭わないでしょう。それは「時限爆弾」を当面不発化させるものであっても、事態を改善させるものではなく、むしろ経済の在り様を更にゆがめ、傷を深めることになるのかも。