(【6月6日 Lmaga.jp】)
【世界幸福度ランキング 下位に低迷する日本】
毎年3月20日の「国際幸福デー」に公表される、“世界幸福度ランキング”という指標があり、日本の順位が低いことなどがときおり話題になります。
もちろん、かつてのCMに“幸せって何だっけ・・・”というものがあったように、“幸福”という曖昧なものを数値化するというのは、“あるルールに従ってやってみたら、こうなった”ということにすぎませんが、それでも順位の上下、比較は気になるところであり、また、社会の特質を反映している部分もあるでしょう。
****世界幸福度ランキングとは****
幸福度ランキングとは、国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が、毎年3月20日の「国際幸福デー」に合わせて発表しているランキングデータである。調査は世界の150か国以上を対象におこなわれ、2012年から毎年実施されている。
調査方法
調査で用いられるのは、主観的な幸福度を調べるためのキャントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる11件法である。「0」~「10」までの11段階のはしごをイメージし、自分自身の生活への満足度が、いまどこにあるのかを判断していく調査手法だ。
このような主観に、以下の6項目の内容が加味される。
1.一人当たり国内総生産(GDP)
2.社会保障制度などの社会的支援
3.健康寿命
4.人生の自由度
5.他者への寛容さ
6.国への信頼度
さらに「各項目が最低値を取ると仮定されるディストピア(架空の国)」と、どれだけ差があるかを加えて、最終的なランキングが決定される仕組みだ。
このような主観に、以下の6項目の内容が加味される。
1.一人当たり国内総生産(GDP)
2.社会保障制度などの社会的支援
3.健康寿命
4.人生の自由度
5.他者への寛容さ
6.国への信頼度
さらに「各項目が最低値を取ると仮定されるディストピア(架空の国)」と、どれだけ差があるかを加えて、最終的なランキングが決定される仕組みだ。
もともと国連機関は、国内総生産(GDP)をはじめとする経済指標を重視していた。しかし世界的な金融危機や環境破壊など、これから先の社会を生きる上で、無視できない問題が多発。これらの経験をもとに「経済指標だけでは本当の幸福度は測れない」と考えるようになった。
こうした経緯を経て誕生したのが、世界幸福度ランキングである。調査はアメリカの調査会社ギャッラップ社が、対象国・地域の数千人を対象におこない、結果をまとめている。過去3年間の平均値をもとに、最終的なランキングが公表される仕組みだ。【ELEMINIST】
こうした経緯を経て誕生したのが、世界幸福度ランキングである。調査はアメリカの調査会社ギャッラップ社が、対象国・地域の数千人を対象におこない、結果をまとめている。過去3年間の平均値をもとに、最終的なランキングが公表される仕組みだ。【ELEMINIST】
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正直なところ、上記説明は良く理解できないところが多々あります。
結果は、北欧フィンランドを筆頭に、デンマーク、スイス、アイスランド・・・といった欧州の国々が上位に並んでいます。日本はと言えば・・・・
****日本の順位が低い理由は「自由度」と「寛容さ」****
世界幸福度ランキングが公開されるたび、話題になるのが「なぜ日本の順位はこれほどまでに低いのか?」ということだ。2020年の日本の順位は62位だったが、2021年は56位と、わずかに順位を上げた。しかし先進諸国と比較すると、低い水準にいることは変わらない。
1人あたりの国内総生産(GDP)の数値でみれば、日本の順位は決して低くはない。資源には乏しいものの経済は発達しており、欧州諸国ほどではないが、社会保障制度も確立されている。寿命の長さは、世界でも上位だ。海外と比較して「日本は治安が良く暮らしやすい」と感じる人が多いだろう。
ではなぜ、日本の幸福度ランキング順位はこれほどまでに低いのか? その理由は「人生の自由度」と「他者への寛容さ」の2項目に隠されている。
日本人の「人生の自由度」に影響を与える要素のひとつと言われているのが、労働環境である。欧米諸国と比較して、よく「日本人は働きすぎ」と表現される。
ヨーロッパ各国のように、長期休暇を取る風習もなければ、「有給休暇はあっても取りづらい」と感じる人が多い。また「休暇の取りづらさ」以上に、「職場の中で自分に合った働き方を自由に選択できない」と感じる点が問題だと指摘する声もある。
「他者への寛容さ」の項目については、寄付やボランティア活動が非常に大きな要素となる。日本には、積極的に寄付をおこなったりボランティア活動に参加したりする風習が根付いていない。社会全体でこうした取り組みが積極的におこなわれている国ほど、幸福度ランキングは上昇しやすいという特徴があるのだ。
GDPや健康寿命など、客観的な数値で示されるデータに注目すれば、日本は間違いなく「幸せな国」である。一方で、国民の主観にもとづくデータを見ると、「幸せではない国」としての要素が見え隠れする。この主観的データが、幸福度ランキングで日本の順位が低迷する原因だ。【同上】
世界幸福度ランキングが公開されるたび、話題になるのが「なぜ日本の順位はこれほどまでに低いのか?」ということだ。2020年の日本の順位は62位だったが、2021年は56位と、わずかに順位を上げた。しかし先進諸国と比較すると、低い水準にいることは変わらない。
1人あたりの国内総生産(GDP)の数値でみれば、日本の順位は決して低くはない。資源には乏しいものの経済は発達しており、欧州諸国ほどではないが、社会保障制度も確立されている。寿命の長さは、世界でも上位だ。海外と比較して「日本は治安が良く暮らしやすい」と感じる人が多いだろう。
ではなぜ、日本の幸福度ランキング順位はこれほどまでに低いのか? その理由は「人生の自由度」と「他者への寛容さ」の2項目に隠されている。
日本人の「人生の自由度」に影響を与える要素のひとつと言われているのが、労働環境である。欧米諸国と比較して、よく「日本人は働きすぎ」と表現される。
ヨーロッパ各国のように、長期休暇を取る風習もなければ、「有給休暇はあっても取りづらい」と感じる人が多い。また「休暇の取りづらさ」以上に、「職場の中で自分に合った働き方を自由に選択できない」と感じる点が問題だと指摘する声もある。
「他者への寛容さ」の項目については、寄付やボランティア活動が非常に大きな要素となる。日本には、積極的に寄付をおこなったりボランティア活動に参加したりする風習が根付いていない。社会全体でこうした取り組みが積極的におこなわれている国ほど、幸福度ランキングは上昇しやすいという特徴があるのだ。
GDPや健康寿命など、客観的な数値で示されるデータに注目すれば、日本は間違いなく「幸せな国」である。一方で、国民の主観にもとづくデータを見ると、「幸せではない国」としての要素が見え隠れする。この主観的データが、幸福度ランキングで日本の順位が低迷する原因だ。【同上】
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自分自身の生活への主観的満足度をどのように評価・表現するかは多分に国民性によるところがありますが、そのあたりはまた後述します。(「あなたは幸せですか?満足していますか?」と尋ねられて「はい、幸せです」と答えるほど能天気じゃねえよ!・・・と私的にも思います)
なお、コロナ禍の影響はあまり大きくはなかったようです。
1位のフィンランドは新型コロナによる死者が欧州の中では比較的少なかった国ですが、それでも人口当たりでみると、日本の2倍ほど。
しかし、“新型コロナウイルスの幸福度への悪影響より、コロナ禍で得た「他者との連帯感や仲間意識、つながり」のほうが、幸福度に大きなプラスの影響を与えたと理解できます。”【PRESIDETonline】とのこと。
【「幸せの国」ブータン ランキングが急激に低下 調査対象外へ】
ところで、この世界幸福度ランキングで上位にランキングされ、「幸せの国」と称されるようになったのが、ヒマラヤの小国ブータン。
2013年には北欧諸国に続いて世界8位にランキングされましたが、2019年版では、ブータンは156か国中95位にとどまりました。下記はそのときの記事。
****交通渋滞で幸福度低下? 経済発展で環境への影響も ブータン****
国内総生産よりも「国民総幸福量」を優先することで知られているブータンは、持続可能な開発の優等生とされてきた。
ブータンは、排出される二酸化炭素が吸収される二酸化炭素を上回る「カーボンネガティブ」の国としても知られている。だが現在、自動車ブームに沸いており、世界でもまれなカーボンネガティブという立場のみならず、交通渋滞が国民の幸福度に影響を与える可能性も出てきた。
交通当局責任者ペンバ・ワンチュク氏によると、過去20年で車、バス、トラックの数は5倍以上に増えており、首都ティンプーが最も影響を受けている。
世界銀行によると、ブータンの経済は過去10年間、毎年7.5%成長してきた。総人口75万人のブータンで、自動車の保有率は7人に1台に達していると当局は推定している。
交通渋滞は、ブータンが直面している広範な経済変化の影響の一つだ。国民総幸福量で知られる同国は、観光客には穏やかで素朴なイメージを持たれているが、国内では不満を持つ人も出てきている。
世界銀行の昨年の報告書によると、地方から都会への流入の増加で若者の失業率が高まり、それが都市部の資源を圧迫している。
また、国民の幸福を優先する国との評判にもかかわらず、国連が発表した「世界幸福度報告書」2019年版では、ブータンは156か国中95位にとどまっている。
インターネットやスマートフォンの普及が欲望をあおり、自動車販売業者らは日本や韓国ブランドの新車をショールームに並べて客を誘い込む。自動車税が引き上げられ、自動車ローンに対する規制も強化されたが、国民の自動車購入意欲は衰えていない。
国内の金融機関が貸し出した自動車ローンの総額は、2015年は32億ヌルタム(約50億円)だったが、昨年は67億ヌルタム(約103億円)に達している。
地元の実業家にとっては素晴らしいといえる数字だが、ブータンを世界で最も環境に優しい国の一つにとどめておきたい環境保護主義者らはこの数字に懸念を抱いている。(後略)【2019年8月11日 AFP】
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更に、2020年調査以降は、調査対象外としてランキングから名前が消えました。
何故調査対象外となったのか・・・は知りません。あまりの下位に、「国民総幸福量」を優先することで知られているブータンが反発して調査を許可しなかったのか・・・全く別の理由か・・・。
【社会変化で国内に不満が高まる?】
ランキングはともかく、社会変化の方は続いています。
コロナ禍に加え、たばこ販売も解禁せざるを得ない状況に。
****「禁煙国家」ブータン、コロナ対策でたばこ販売を解禁****
ヒマラヤの王国ブータンで、長年禁止されていたたばこの販売が、新型コロナウイルスの流行対策として、異例にも解禁された。
経済的利益よりも国民の幸福を重視する「国民総幸福量」で知られるブータンは、1729年にたばこを取り締まる法が敷かれた。葉タバコは、女悪魔の血液で育つと考えられており、仏教徒が大半を占める同国では今も喫煙は罪とされている。
1999年までテレビが違法とされていた、人口約75万人の同国は、たばこの製造と販売、流通を2010年に禁止。だが政府が重い関税や税金を課した上で一定量のたばこ製品の輸入を認めていたため、隣国インドから密輸された闇市場が繁盛している。
そうした中、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受けて、ブータンは今年に入ってインドとの国境を封鎖。すると取引業者のインドへの入国が困難になったため、たばこの闇価格は4倍にまで跳ね上がった。
それでも一部は忍び込み続けていたものの、インドとの間を往来していたブータン人の行商人が8月12日、国境に近いプンツォリンで新型ウイルス検査を受け、陽性反応を示した。
これを受け、週末に医師の仕事を続けているロテ・ツェリン首相率いる政権は再考を迫られ、密輸入品への需要を減らすことで、理論上は国境をまたぐ感染リスクが抑えられるとして、長年禁止していたたばこの販売を解禁。同首相は一時的な措置だと強調している。
この決定により、愛煙家は国営の免税店でたばこ製品を購入できるようになり、たばこが新型ウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中も購入可能な生活必需品に加えられた。
政府はさらに、自宅待機中のヘビースモーカーからたばこを取り上げると、家庭内の緊張が高まる可能性があると主張。ツェリン首相は、「治療したり習慣を変えさせたりするには悪いタイミングだ」と、地元紙に語った。
一方、首都ティンプーの免税店の店長は、1日に約1000本の電話が入ると話し、注文に応えるため朝8時から深夜まで働きづめだと説明。「必死に問い合わせる電話があまりに多くかかってくる。食事をする時間もない」と話した。
新型コロナをめぐっては、インドでは300万人超の感染者が確認された一方、ブータンでは200人未満にとどまっている。 【2020年8月29日 AFP】
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“1999年までテレビが違法とされていた”というのも、すごいと言うべきか・・・。
なお、新型コロナワクチンに関しては“ヒマラヤの小国ブータンは7日、先月27日の新型コロナウイルスワクチン接種の開始から9日で、国民の約6割が1回目の接種を終えたと明らかにした。”【4月8日 AFP】という驚異的スピードで接種されています。
このあたりは、週末に医師の仕事を続けているロテ・ツェリン首相の判断が影響しているのでしょう。
世界幸福度ランキングの方は、2021年調査でもブータンの名前はありません。
****ブータン「世界一幸せな国」の幸福度ランキング急落 背景に何が?****
2012年から毎年国連が発表している「世界幸福度ランキング」という調査がある。世界150以上の国と地域を対象とした大規模調査で、アンケートやGDP(国内総生産)、社会保障制度、人生の自由度や他者への寛容さなど、さまざまな項目を加味してジャッジされる。
実はこの調査で、日本は例年、順位が振るわないのだ。2021年の最新ランキングでも56位と、G7(先進7か国)の中でも最下位だ。
いまだにセルビアとの国境で緊張が続くコソボ(33位)や、コロナの感染爆発が起きていたブラジル(35位)よりも下である。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科講師で行動経済学者の友野典男さんは、この結果は日本人の気質が反映されていると指摘する。
「幸福度を他国と比較することには、まったく意味はありません。この調査の根幹はアンケート。日本人は控えめな気質ですから、“あなたはいま幸せですか?”と聞かれても、“それなりに幸せだけど、もっと上がいるから”と考えます。他国のように、恥ずかしがらずに“イエス!”と断言できる人が少ないのです。東アジアに共通する傾向なのか、中国(84位)も韓国(62位)も、同様に幸福度は高くありません」
一方、南アジアにあるブータンは、発展途上国ながら2013年には北欧諸国に続いて世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られるようになった。国民が皆一様に「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と答える姿が報じられたのを覚えている人もいるだろう。
しかし、ブータンは2019年度版で156か国中95位にとどまって以来、このランキングには登場していない。
「かつてブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入ってこなかったからでしょう。情報が流入し、他国と比較できるようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がったのです」(友野さん・以下同)
それまで幸せを感じていても、人と比べ始めたとたんに幸福度が下がる。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「日本の幸福度が低いのは、他人と比べたがる気質も関係しているでしょう。精神医学においても、他人と比較する人は幸せになれないことがわかっています。欧米人は、他人と自分を比較したがらない。横並びを嫌い、収入、学歴、容姿、ファッションなど、さまざまな要素で他人と違うことを好みます」
GDP(国内総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重視
近年は特に、SNSの普及などにより、他人と自分を比較して幸福度が下がる人が増えている。
2017年、英王立公衆衛生協会が発表した調査報告では、SNSに投稿された画像を自分と比較することで、劣等感や不安感が高まることがわかっている。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所で幸福学を研究する前野マドカさんが言う。
「SNSに投稿される画像には“虚像”も含まれます。投稿した人の本当の姿や本心までは推し量れません。それなのに、高級レストランや海外旅行、ブランド品などの写真を見るとうらやましくなり、自分も他人にうらやましがられたくなる。そうして承認欲求だけが膨らみます」
すると、他人との比較や他人からの評価でしか幸せを測れなくなり、どつぼにはまる。もちろん、これは一般庶民もお金持ちも同じだ。家計コンサルタントの八ツ井慶子さんも言う。
「自分の年収が順調に増えていても、他人がそれ以上に増えていると、その人の幸福度はそれほど上がらないといわれています。誰かと比較することで、幸福度を下げてしまうのです。傾向として、他人を気にする人は、いくら年収や貯蓄が増えても幸福を感じにくい。一方、いい意味で自分中心の人はまわりに流されないので、幸せそうにわが道を進んでいます」
前出のブータンが“幸せの絶頂期”だった頃、当時の国王は「GDP(国内総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重視する」と語った。
「お金のほか、住まいや食べ物など、200以上の項目について調査してきた結果、これらのあらゆる項目がバランスよく幸福度に貢献していることがわかりました」(八ツ井さん)
どれか1つでも突出しすぎていたり、著しく欠けている国はGNHが低い。ブータンはほとんど偏りがなかったのだ。(後略)【女性セブン2021年11月4日号】
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ブータンはともかく、“他人と比較する人は幸せになれない”というのは人生の真実でしょう。とは言うものの・・・。
【国際関係においても、中国とインドの対立という現実への対応を迫られる】
国際情勢の観点から見ると、ブータンはインドと中国の国境紛争の渦中にもあります。
ブータンは伝統的にインドの影響力が強く、前述のコロナワクチンもインドから寄付されたもののようです。【4月8日 AFPより】
しかし、近年は中国のアプローチが強まっています。(なお、ブータンは現在までに20カ国あまりとしか国交を結んでおらず、中国とも国交は未締結です)
****中国、ブータンに接近 国境画定目指す覚書、インド揺さぶり図る****
国境をめぐる対立が長年続いてきた中国とブータンが、国境画定交渉を加速させる覚書に署名した。中国はブータン接近を通じ、ヒマラヤ地域で対立が深まるインドに揺さぶりを掛ける狙いがある。
インドは外交・安全保障面でブータンの後ろ盾であり、交渉の行方は座視できない状況といえそうだ。
中国とブータンは1984年以降、400キロ以上に及ぶ国境画定に向けた交渉を24回重ねたが合意に至っていない。両国には国交もなく、中国はインドの介入があると批判している。
そうした中、中国とブータンは今月14日、国境画定を実現するための3段階の行程を定めた覚書を交わした。覚書の詳細は不明だが、中国の呉江浩外務次官補は「国交樹立に向けても有意義な貢献をする」と称賛し、ブータン外務省も「国境交渉における前向きな進展だ」と歓迎する声明を発表した。
中国のブータン接近は、インド牽制(けんせい)が思惑にある。中印両軍は昨年、事実上の国境である実効支配線(LAC)付近で衝突し、中印関係は急速に冷え込んだ。
インドにとってブータンはインド中央部と北東部をつなぐ戦略的要衝「シリグリ回廊」と近い。ブータンが〝親中化〟すれば国防に影響が出る可能性が高い。
ブータンには中国との関係を安定化させ、摩擦を軽減したい思考が働く。中国は近年、ブータン領内に無断で道路や集落を建設しており、昨年には東部の自然保護地区の領有権を主張する構えを見せた。いわば、中国の圧力が国境をめぐる交渉を前進させた形だ。
ブータンには長年の後ろ盾であるインド一辺倒ではなく、自力で安定を確保したいとの意識が強まっている。
インドはヒマラヤ地域での軍事インフラ整備や軍隊の展開力で中国に遅れ、自国領での中国対応で手一杯ともいえる状況だ。
「近年の状況は(ブータンに)安全保障面のインド依存には限界があると認識させた」と、印シンクタンク「オブザーバー研究財団」のマノジ・ジョシ研究員は分析した。
ブータンは輸出入の8割以上をインドが占めるなど経済的な結びつきも強く、簡単に中国になびく環境にはない。
インド外務省は事態を注視する構えだが、ジョシ氏は「中国は(インドの影響力が強かった)ネパール、スリランカ、バングラデシュに食い込んだ。インドとブータンの特別な関係にも挑戦したいと考えている」と警戒感をあらわにしている。【10月28日 産経】
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ブータンは国内的にも「変化」にさらされていますが、国際的にも中国とインドの対立という難しい状況に直面し、現実的対応を迫られています。