孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・上海で厳しいゴミ分別開始 監視員3万人、違反者は「信用スコア」減点

2019-07-14 22:45:29 | 中国

(上海市のゴミ収集所ではオレンジのベストを着た3万人の監視員がゴミを検査している【7月12日 WSJ】WSJ)

 

【“変わる中国” 「北京ビキニ」への当局規制】

中国社会に関しては、日本的な基準から見ると「やれやれ・・・」とため息をつきたくなるようなことも、依然として多くあるのも事実です。

 

最近目にした記事見出しだけあげても・・・

“サッカーの試合中に選手が審判を袋叩きに―中国”【710日 レコードチャイナ】

“日本人女性が大型犬にかまれる、飼い主「責任が全部私にあるわけではない」” 【710日 レコードチャイナ】

“中国のマラソン大会で給水所に市民が殺到、補給品を奪い去る” 【710日 レコードチャイナ】

“高速鉄道で「驚くべき光景」、座席で子どもに大便させる母親―中国” 【79日 レコードチャイナ】

“三峡ダムが歪んでいる! 亀裂も大量に! 不安視する中国国民に「安全だ。心配するな」=中国”【79日 searchina

 

最後の三峡ダムの話は、本当なら深刻な大問題ですが・・・社会の問題というより、政治体質の問題です。

 

上記のような“変わらぬ中国”が残存している一方で、“変わる中国”も目立ってきました。

(“変わらぬ中国”の事例であげた上記のような“トンデモ事件”的な事柄が、中国国内でもニュースになり、多くの中国国民から批判・嘲笑を浴びるということは、大多数の中国国民の意識が変わりつつあることを示すもの・・・とも解釈できます)

 

交通ルールを守らず赤信号でも平気で横断する・・・というのがかつての中国でしたが(中国だけでなく、他のアジア諸国も同様です)、最近は当局が最新IT技術も動員して交通ルール徹底に乗り出しているのはよく報じられているところです。(違反者の個人情報を電光掲示板にさらすなど、中国ならではの方策もありますが)

 

中国でおなじみの「北京ビキニ」(男性の腹だしスタイル)に関する下記記事も“変わる中国”のひとつでしょう。

 

****北京ビキニ、上半身裸は「非文明的」 規制強化に嘆きも****

中年男性が炎天下にシャツから腹を出して暑さをしのぐ――。中国ではシャツをまくった姿を「北京ビキニ」と呼ぶほど定着しているが、当局が「非文明的」として規制する動きが出始めた。

 

「規制は公共マナー向上につながる」と歓迎する声がある一方で、なじんだ光景がなくなることを惜しむ声もある。

 

山東省の済南市政府は1日、公園や広場などで上半身裸になることは「非文明的」として、改善に取り組むよう関係機関に通知した。

 

市の担当者は中国紙の取材に「都市のイメージを高めるため、腹出し行為をなくす必要がある」と答えた。天津市でも公共の場で上半身を裸にする行為に罰金を科すなど、同様の動きが広がっている。

 

中国のSNS上では規制を「良い動き」「支持する」と評価する声がある一方、「地球にやさしい涼み方なのに」「歩きたばこを先に取り締まれ」と嘆く声も。北京の50代の共産党関係者は「私も昔は暑い日にシャツを上げて過ごしていたが、今はやっていない。時代の流れだ」とこぼした。【77日 朝日】

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中国旅行時にもよく目にした「北京ビキニ」ですが、やはり“見苦しい”と言わざるを得ないでしょう。

(日本旅行時に共同風呂で裸になることを恥ずかしがる中国人が、街中で平気で腹を出して歩く・・・文化の違いの一例でもあります)

 

【「5分で食事、片付けに30分」】

「北京ビキニ」などよりはるかに市民生活に重大な影響を及ぼす“変化”が、7月から上海で始まったゴミ分別の取り組み。

 

****上海で始まるごみの分別、「日本の清潔さを羨んできたが、自分たちがやるとなると・・・」=中国メディア****

7月1日から上海でごみの分別が始まることになり、戸惑いを感じている上海市民は多いようだ。中国メディアの捜狐は27日、「中国人は今まで日本の清潔さに羨望の眼差しを向けてきた」としながらも、「自分たちでごみ分別を行おうとすると、不満や批判の声が噴出した」と伝える記事を掲載した。

記事は、「上海市生活ごみ管理条例」が7月1日から施行されることを紹介し、上海人は「史上もっとも厳しいごみ分別」に直面していると伝えた。

 

具体的な分別方法は「有害ごみ、リサイクルごみ、生ごみ、その他」の4種類の区分で、一見するとそこまで複雑には感じられない。

 

しかし、もし分別せずにごみを捨てた場合は50元ー200元(約780円ー3130円)以下の罰金が課され、悪質な場合はごみが回収されないばかりか、信用管理システムに情報が掲載される可能性も生じるとし、今までより厳しい制度になっていると指摘した。

また、最も上海市民を困惑させているのは「ごみの分別区分が曖昧で分かりづらいこと」だと主張。なぜなら、中国語では4つの区分を「有害ごみ、回収ごみ、濡れごみ、乾いたごみ」と表示していることから、使用済みのティッシュ、紙おむつ、生理用品等が「果たして濡れごみなのか、乾いたごみなのかが分からない」と指摘し、ネット上では様々な誤情報が飛び交い混乱しているという。

なかには、分別基準を「豚」を用いて説明する人もおり「豚が食べるものは濡れごみ、食べないのが乾いたごみ、食べて死んでしまうのが有害ごみで、売って豚と交換できるのが回収ごみ」と発信していると伝えた。

これまで中国には厳しいごみ分別区分がなく「いつでも、なんでも」捨てられるのが普通だった。それゆえ中国のネット上では、上海人がごみ分別で新たな習慣を身に着けるには「家族全員でごみの分別テストを行い、繰り返し努力と練習を重ねて分別を修得しなけらばならない」といったジョークも飛び交っている。【71日 Searchina

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今は、上海以外の人は(いささかプライドの高い)上海人の混乱ぶりを笑っていますが、習近平主席の重要指示に基づく取り組みですから、今後中国各地に広がっていくでしょう。

 

****上海でごみ分別条例施行 罰金など管理強化、市民生活に影響****

(中略)市内の集合住宅などでは条例施行前から既に分別が始まっており、1〜6月下旬に1224件の違反が確認され、指導で捨て方が改められた件数は7822件に上った。

 

しかし市民には「肉のついた骨はどこに分別すればいいのか」「捨てられる時間帯が通勤、勤務時間と重なってしまう」などと困惑の声が出ており、条例の浸透には時間がかかりそうだ。

 

また市は飲食店などに対し、使い捨てのはしやフォーク、ナイフなどの提供を極力控えるよう求める関連規定も定めた。

 

中国メディアは6月3日、習近平国家主席が「資源の節約は社会の文明水準を体現している。細かい実行や広範な教育が必要だ」と述べ、分別の重要指示を出したと伝えた。2020年末までに北京や天津、広州市など46の重点都市で分別処理の体制を整えるとしている。【71日 毎日】

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正直に言えば、私個人はあまりゴミ分別に熱心な市民とは言い難いところがあり、結構いろんなものを生ごみ・燃えるゴミとして出しています。

 

正確に分別しようとすると日本のルールもわからないことが多々あり、上海の人々の苦労・混乱に同情もします。

 

中国版ツイッターのウェイボーで話題になっている投稿画像では、“投稿主は「食後に20分かけて、食卓上のごみを、乾燥したごみ、水分を含んだごみ、リサイクル可能なごみ、有害ごみにそれぞれ分けて袋詰めした」とし、「一通りチェックした母は、罰金の心配はいらないねと満足そうだった」と書き込んだ。”【73日 レコードチャイナ】ということで、「5分で食事、片付けに30分」というのはあながち冗談でもないようです。

 

【違反者は「社会信用」スコアが減点され、就職やローン申請に影響する場合も】

これまでのところは、“8日、中国中央テレビによると、上海市で今月1日から生活ごみの「強制分別」が開始されたが、6日までに都市管理行政執法局員が出した「罰金通知書」は計190枚に上ったという。”【78日 レコードチャイナ】とのこと。

 

「罰金通知書」が190枚というのは少ないようにも思えますが、それだけ当局の監視が厳しく違反できない・・・ということでもあるのでしょう。

 

なにせ中国当局のやることですから、ルールが非常に複雑・硬直的で、しかも、徹底させるための当局側対応が半端ないようです。

 

****ゴミ捨て監視に3万人、極端な上海の新リサイクル制度 *****

異常に複雑なルールを回避するため、電車で市外に捨てに行く人も

 

世界にはややこしいゴミ処理ルールを設けている都市があるが、中国・上海も最近その仲間入りを果たした。だが他の都市とは違い、規制の徹底に余念がない。

 

住民は毎晩ゴミを捨てる際、市内に3万人いる「ゴミ箱監視員」から現場で検査を受ける。違反者には厳罰が科される場合もあるため、巧妙な手段を駆使して何とか規制をかわそうとする人たちもいる。市外にゴミを運んで捨てたり、殺虫剤をかけて「危険物」として処理したりといったやり方だ。

 

中には、ワン・チョンギさん(24)のような個人でゴミの分別を請け負う人に委託している住民もいる。ワンさんは月額6ドル未満で12回、家庭のゴミを引き取り、監視員の検査をパスするよう仕分けしている。監視はビデオカメラでも行われている。

 

上海では道路にポイ捨てされたゴミにはほぼ無関心のようだが、鶏肉と豚の骨を一緒に捨てる行為には突如30ドルの罰金が科されるようになった。前者は「生」ゴミで後者は「乾燥」ゴミとみなされている。

 

住民のジ・ヨンギャンさん(61)は「ゴミを捨てるときに見張られている」とし、「だとすれば分別するしかない」と話す。

 

同市は全土に先駆けてこの新システムを導入したが、現在のところ住民の多くは困惑している。そのルールは世界の標準からしても異常に複雑だ。

 

違反者は「社会信用」スコアが減点され、就職やローン申請に影響する場合もある。ロビーに規則を順守している住民のリストを掲示している住居ビルもある。

 

ゴミの仕分けを商売に

一方で、ワンさんのように混乱に商機を見いだしている人もいる。ワンさんの冷蔵庫に貼られた分別表にはゴミが46種類に分類されている。

 

ワンさんは軍の砲兵部隊に5年間勤務したあと、ルームメートと共に分別の仕事を始めた。電話番号を印刷した緑のTシャツを発注し、アパートのドアに「ゴミの分別、請け負います」と掲示した。電話は鳴りやまない。「私たちはとても真剣です」と通話相手に告げるワンさん。

 

安価な料理宅配サービスが人気の上海では、お金を払って誰かにゴミを捨ててもらうのは自然な成り行きかもしれない。市内では最近、その手のサービスが少なくとも20件は登場している。

 

新しいゴミ規制ではゴミを4色の容器に分けて収集する。家庭の食料品ゴミは「生」、本やガラスは「再利用可能」、ナイロンタイツやおむつなどの再利用不可能なものは「乾燥」、電池や医薬品などは「危険」とそれぞれ表示された容器に捨てる。だが、正しく分別するのは見た目ほど簡単ではない。

 

基本は、可燃性の素材と再利用可能な素材は台所の生ゴミとは分けるべきという考え方だ。だが、それによって夕食の後片付けが危険な仕事になりかねない事態になっている。

 

使用済みの紙ナプキン(乾燥ゴミ)を野菜の皮(生ゴミ)と一緒に捨てるのは違法になるからだ。貝殻(乾燥ゴミ)はロブスターの殻(生ゴミ)と混ぜては駄目で、サクランボは生ゴミだがその種は乾燥ゴミ。電池は構成される化学物質によって2つのカテゴリーに当てはまるが、ココナツの殻、陶器、メガネ、たばこの吸い殻はいずれも乾燥ゴミだ。

 

一方、犬を散歩させる場合、排せつ物は持ち帰り、自宅のトイレに流すことになっている。

 

豚が食べるものは「生」ゴミとみなすというのが、上海市の非公式の大まかなルールだ。しかし、最も手っ取り早い方法として、ゴミに殺虫剤をかけて「危険」ゴミとして捨てるというアドバイスが広く出回っている。

 

こうした住民の苦労に対し、中国共産党の機関紙・人民日報は電子版に掲載した論評で「食べるのに10分、分別に30分」かかると懸念を示した。

 

ゴミ捨て規制の背景には、中国政府が大気や水質・土壌汚染などの中国にまつわるイメージを払しょくしようと取り組んでいることがある。

 

習近平国家主席は昨年11月、執務室で4つのゴミ容器の前に立ち、上海市にゴミの分別を開始するよう指示。「ゴミ分別は新しい流行だ」と述べた。

 

窓から投げ捨てる人も

分別ルールの根底には、年間22000万トン以上出るゴミを利用しようという中国政府の計画がある。中国はゴミの焼却で発電する施設に数十億ドルを投じているが、水分の多いゴミは燃えないからだ。

 

しかし、焼却施設を歓迎している住民はほとんどおらず、その建設計画をきっかけに、中国本土の一部都市ではここ数年で最大規模のデモが発生している。今月に入ってからも中部の武漢市で抗議活動が行われた。

 

一部の上海住民は突拍子もない方法で分別ルールに対処している。目撃者や現地メディアによると、窓からゴミを投げ捨てたり、分別しないまま夜中に捨てたり、ゴミを人目に付かない場所まで地下鉄に乗って捨てに行ったりしている人もいる。

 

上海市によると、同市は講習会を13000回開き、6800万世帯にゴミの捨て方を教えた。また、多くの人たちがゴミを正しい容器に移動するモバイルゲームをダウンロードした。

 

同市では、喫煙や爆竹、信号無視など以前からの都市の習慣を素早く変えるために罰金を利用してきた。ゴミ捨ての取り締まりについては、至る所に設置された監視カメラで補強しているほか、ゴミ箱に鍵をかけ、社会信用スコア管理用のカードをかざして解錠するようにしている地区もある。

 

ある日の夜、夕食後の後片付けの時間になると、分別を請け負うワンさんは仕事仲間と共に35階建ての住居ビルに向かい、住民から食べ物の持ち帰り容器が入ったビニール袋を3つ引き取った。

 

1階の裏手にある汚れたゴミ捨て場では、ベストを着用した監視員が、それぞれの袋から生ゴミをきちんと取り除いているワンさんたちを「いい人たち」と褒めていた。「ゴミの分別の仕方が分かっている人はいい人」だと監視員は話した。

 

ワンさんたちが別の場所に引き取りに向かう途中、彼らが着ているTシャツがガオ・ウェイウェンさん(53)の目に留まった。「たった40元? 安いね」。ウェイウェンさんはこう言うとワンさんたちと1カ月の契約を交わした。「この作業はプロにやらせればいいんだね」【712日 WSJ

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分別ルールの根底にゴミ焼却発電の計画がある云々はどうでしょうか?

まあ、そういう計画もあるのでしょうが、一番は「大国である中国が他国から馬鹿にされるようなゴミ状況であってはならない」という「大国」中国のメンツの問題が指導層にあるのではないでしょうか。

 

まあ、それは悪いことではありませんが、3万人の監視員に監視カメラというのはいかにも中国的ですし、違反すれば「社会信用」スコアが減点されるというのも、これまた現代中国、あるいは世界の将来の姿を象徴しています。

 

(なお、私の自宅前が燃えるゴミ置き場になっているのですが、ときおり違反物を置いていく人がおり、回収車がこれを持っていかないため、その後もずっと置きっぱなしになっている・・・ということもありますので、監視員に監視カメラというのはうらやましい感もあります)

 

ゴミ分別が大繁盛のビジネスチャンスになっているのも中国らしいですが、面倒な仕分けをするぐらいならカネですませてしまうというぐらいに、上海世帯の所得水準が向上していることでもあるでしょう。(日本ならゴミの中身を他人に見られるのを嫌がるという話も出てくるでしょうが)

 

“窓からゴミを投げ捨てたり、分別しないまま夜中に捨てたり、ゴミを人目に付かない場所まで地下鉄に乗って捨てに行ったりしている人もいる”・・・「上有政策、下有対策」という“変わらぬ中国”のひとつのようにも。

 

【“上から目線”の物言いはできない日本人のレベル】

もっとも、日本でも自販機横の空き缶用ゴミ箱に家庭ごみを捨てていく輩が大勢います。決して日本人の意識も、上から目線で中国のことをとやかく言えるようなレベルではありません。

 

****「日本人客お断り」 沖縄県石垣島のラーメン店 客の悪態が年々悪化 バイトが接客を苦に退職し店主一人で切り盛り****

 ■お客様は神様?

「日本人客はお断り」―。沖縄県石垣市内にあるラーメン店の一つが1日から、観光客や地元客を含む日本人客の入店を制限している。

 

理由はマナーの悪さ。食品を持ち込んだり長居したり、席を余分に取ったり。

 

1人で切り盛りする店主の男性(42)は「日本では『お客さまは神様』とされ、客自身もそう思っているが、そうなのか。金を払えばいいというのはおかしい」と話している。制限は9月末までを予定。(後略)【713日 沖縄タイムス】

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最後に、路上のポイ捨ての話をすれば、現在の中国は少なくとも大都市、地方主要都市ではずいぶんと道路はきれいになっており、清潔とされる日本に比べてそん色がありません。昨年の貴陽・南寧旅行の実感です。

 

ポイ捨て、痰吐き、列車内の無秩序・・・・30年前の中国はひどかったですが・・・。

“変わる中国”を甘く見てはいけないようです。

コメント (1)
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